ブラック・ブレット 『無』のテイマー現る   作:天狐空幻

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 蓮太郎が眠っている病室。

 未だに眠りから覚めない蓮太郎を心配そうに見詰る木更、そこから少しだけ離れた場所で壁に凭れかかって見詰ているゼツの姿があった。

 すると、蓮太郎から呻き声が聞えて2人が反応した。

 

「里見くん!」

 

 その呼びかけに反応するかの様に蓮太郎は重たそうな目蓋を開ける。

 蓮太郎が最初に視界に入れたのは涙目の木更だった。

 

「よう、木更さん」

 

「お帰りなさい、里見くん」

 

 未だに半ボケ状態ではあるが相手が誰で何者かをハッキリしている所を見ると障害らしき物はなさそうだ。

 蓮太郎は視線を天井に向けて木更に問い掛ける。

 

「どれくらい寝てた?」

 

「丸一日くらい。ゼツ君がデジモンを使って一直線に病院に運んでくれたから大事には至らなかったわ。後でゼツ君にお礼を言わないとね」

 

「そうか。ゼツ、居るのか?」

 

 蓮太郎の呼び掛けに背中に凭れかかっていたゼツは立ち上がり、見える立ち居地に立つ。

 ゼツは呆れた顔で見詰て、その視線に蓮太郎は苦笑いを浮かべる。

 

「悪い。助かった。ありがとう」

 

「死ぬと延珠ちゃんたちが泣くからね」

 

 肩を竦めて述べたゼツは、また壁際に向って壁に凭れた。

 すると、木更が神妙な表情を浮かべる。

 

「あのね里見君、わたしたち、死ぬかもしれない」

 

「なに?」

 

 木更の急な告知に蓮太郎は訝しげな視線を向ける。

 訝しげに浮かべる蓮太郎に教えられた内容は、目的のケースの中身にはガストレアⅤ《ゾディアックガストレア》を呼び出す触媒である事、蛭子親子が元序列百三十四位である事、それらを聞かされ驚愕の表情を浮かべる。

 

「蛭子影胤はたちは現在モノリスの外『未踏査領域』に逃げて、ステージⅤを東京エリアに呼び出す準備に入ってる。いま政府主導で大規模な作戦が計画されてる」

 

「俺が寝ている間にそんなことが……」

 

 信じられない内容を聞かされた愕然とする蓮太郎ではあったが、痛む身体を動かして起き上がろうとする。それを制止しようとする木更だが、それでも起き上がる。

 

「それで奴らを止められなければ東京エリアは……」

 

「ッ、行く気なの? 勝てるの?」

 

 握り締めた蓮太郎の拳を見た木更は驚きの表情を浮かべながら問う。

 

「勝たなきゃ駄目なんだ」

 

「死ぬわよ?」

 

「覚悟の上だ!」

 

 再度問うが返事は同じく覚悟を決めた瞳を浮かべる。それを見た木更は溜息を吐きながら微笑を浮かべた。

 

「君、絶対安静なのよ。本当は……」

 

「……悪い。木更さん」

 

 視線を逸らし、謝る蓮太郎。

 だが、木更は「私の前に、謝る相手が居るでしょ」と言って蓮太郎が被っている布団を捲る。そこには安らかに眠っている延珠の姿があった。

 あどけない眠る少女の姿に、先程の荒れていた心が落ち着いた蓮太郎は微笑を浮かべて傍に眠っている延珠を優しく撫でる。

 すると、木更の携帯に着信音が鳴った。木更は二言三言話したあと蓮太郎に携帯を渡し、それに出る。

 

『里見さん、私です』

 

「……何の用だ。聖天子様?」

 

 出たのは聖天子であると気付いた蓮太郎は携帯を話してマジマジと見詰たあと、携帯を耳元に戻す。

 

『里見さん、蛭子影胤追撃作戦が始まります。私は、あなたにこの作戦に参加してほしいと思っています』

 

「どうして俺なんだ?」

 

 蓮太郎の疑問をぶつける。聖天子はその質問されることがわかっていたのか平然と冷静に返事を返す。

 

『それは、あなたが一番よくわかっていると思いますよ』

 

「アンタ等のためにやるんじゃないこと忘れるなよ」

 

『ご武運を、里見さん』

 

 憎まれ口を叩きながら蓮太郎は携帯を切った。

 それを見ていた木更は険しい表情を浮かべる。

 

「何言っても無駄そうだから止めたりはしないけど……。社長として命令します。影胤・子比奈ペアを撃破してステージⅤの召喚を食い止めなさい。君は私のために百倍働いて。私は君の千倍働くから」

 

「絶対に止めてみせます。あなたのためにも!」

 

 蓮太郎と木更が盛り上がっている中、仲間外れみたいになったゼツは病室を出て病院出入口前の待合室で座っていた。すると、1人の白衣を着た女性が近付いてきた。

 ゼツは近付いてくる気配に敵意がないと判断して、身動きせずに視線を向けないままの状態で話しかける。

 

「何か御用ですか?」

 

「君がゼツ君かい?」

 

 話しかけてきた女性、そして女性はゼツの事を知っていた。

 流石に不思議になったゼツは顔を向けて、話しかけた相手を肉眼で捕らえた。

 

「あなたは……」

 

「おっと、初めましてだね。私は室戸菫、蓮太郎君から話は聞いていないかい?」

 

「あぁ、蓮太郎が言っていた先生か」

 

 この2人は蓮太郎を経由して名前だけは知っていたが顔を見せ合うのはこれが初めてだった。

 最初に菫を見た感想は『何か全てを絶望した表情』とゼツは評価して、菫は『何か不思議な雰囲気を持った少年』とゼツを評価した。

 互いに自己紹介をしたあと、ゼツは疑問を持ちかけた。

 

「あなたは何故、此処に? 蓮太郎のお見舞い?」

 

「それもあるが、これを渡しにね」

 

 菫が持っているバックを見せる。見せられたバックに視線を向けたゼツは鼻に刺す臭いに顔を歪ませる。その臭いはゼツは嗅いだ記憶があった。

 

「火薬、蓮太郎の武器か?」

 

「当たりだ。この距離で火薬の臭いを嗅当てるとは、規格外の肉体スペックだね」

 

「褒めてる? 貶してる? どっち?」

 

「どっちでもある。君の想像に任せるさ」

 

「そう」

 

 菫の評価に『胡散臭い』とゼツは追加させた。

 2人の話はそれで終え、菫は蓮太郎の病室に向かって待合室から去っていった。去ったのを確認したゼツは1人愚痴る。

 

「あの人が蓮太郎の、そして……」

 

 呟いた後、ゼツは深い溜息を吐きながらスマホを取り出して画面を操作する。

 色々なアイコンが表示され、その中から1つのアイコンをクリック。映し出されたのは『カードホルダー』とタイトルが打たれた画面だった。

 

「……最悪、ゾディアック相手にはこのカードを使わないといけないか?」

 

 画面に表示されているカード。

 金色の鍵爪、真紅の翼、凶暴な赤目、西洋龍を思わせるシルエットをしたドラゴンが描かれており、そのカードをみたゼツは顔を歪ませる。

 

「このカード、一枚しかないからな使いたくはないけど……」

 

 背に腹は代えられないか。そう愚痴ってスマホの画面を消したゼツは立ち上がって病院の出入口前に立つ。

 病院の奥から2つの影が近付いてきた。

 橙色のツインテールの少女、黒色の学生服の青年。蓮太郎・延珠ペアが覚悟を決めた表情を浮かべて歩いてきた。

 

「覚悟は……言わなくて良いか」

 

「あぁ。行くぞゼツ」

 

「頑張ろうなゼツ!」

 

「うん」

 

 

  ◆

 

 

 軍隊が用意されたヘリコプター『ブラックホーク』に其々の民警の人たちが乗り込んでいく。その中、ゼツは蓮太郎と別行動に出た。

 急な別行動宣言に流石の蓮太郎も驚いたが、耳元に小さく「蓮太郎たちの傍にはミレニアモンが護衛させてりから」とだけ呟いてゼツは去っていった。

 目的はとある人物が乗り込んだ『ブラックホーク』だった。

 その人物を発見したが既にヘリコプラーに乗り込んだあとで、今にでも扉を閉めて飛び立とうとしていたのでゼツは待ったを掛けて無理矢理に乗り込んだ。

 急な子供が入ってきた事にヘリコプラーに入って待機していた民警の者たちは視線をゼツに向けるが、当の本人はそんなことお構いなしにある人物を発見した。

 

「見つけた」

 

「ゼツさん!?」

 

「クソガキ!?」

 

 とある人物とは将監・夏世ペアの2人だった。

 急な登場に流石の将監たちは驚きの表情を浮かべるがゼツはその様なことを気にせずに夏世の隣に座った。それと同時にヘリコプターは飛び立った。

 夏世はいそいそと髪を整えて服装を正し、隣に座ったゼツに質問する。「何故、こちらのヘリコプターに定席したんですか?」その質問にゼツはシンプルに答えた。

 

「心配だから。それじゃ駄目?」

 

「えっ、いえそう言う訳では……」

 

 真直ぐに瞳を見詰ながらゼツは答えたものなので、夏世は頬を染めて照れてしまい顔を俯いていしまう。すると、夏世の隣にいた将監の手がゼツを捉える。

 

「テメェはどうして、そう何度も俺様を無視して夏世と話に花咲かしてんだ?」

 

「いいじゃん。滅多に会えないんだし」

 

「あの不幸面のガキはいいのか?」

 

「それはもう一体に任せてある」

 

「どっちだ?」

 

「四本腕」

 

「アレか」

 

 将監の脳裏に浮かぶのは、機械の大砲を背負った四本腕の化物。

 あの化物ならステージⅣが出ても対抗出来るだろうと思いながら将監は手を離して踏ん反り返り、黙って座りなおした。

 どうやらこの場ではゼツにどうこう言う気は無いようだ。

 それが分かったゼツはそのまま夏世と話を続けた。

 

「夏世は緊張してない?」

 

「はい、大丈夫です。将監さんも居ますし」

 

「……頼りになる。この脳筋?」

 

 指差して述べるゼツ。その言葉を聞いた将監は鋭い眼光を向け、それに気付いた夏世は苦笑して誤魔化す。すると、ゼツが睨むような視線に気付いて隣に振向く。

 ウェーブのかかった金髪ツインテールにスレイブチョーカーや皮製ベスト等、スレた格好した"呪われた子供"。

 

「えっと、なに?」

 

 何故、睨まれているのか疑問を浮かべるゼツは問うと少女は更に眼光を強める。

 

「緊張感ないね。遊びじゃないんだよ」

 

「えっと、ご注意ありがとう?」

 

「バカにしてんのよ! 後、何で疑問系!?」

 

 怒り孕んだ顔を浮かべて怒鳴る金髪少女。

 流石のゼツも初対面にそうまで言われて何を言ったらいいのか分からず困惑していると、その少女の隣に座っている黒のカーゴパンツにフィールドジャケット、金色に染めた髪にサングラスをかけた男性が話しかけてきた。

 

「まっ落ち着けマイスウィート、肝が据わってるんだろ。または神経がイカレてるんだろ」

 

「イカレてるとは酷いね。お兄さん?」

 

 イカレていると言われて苦笑を浮かべながら男性に視線を向ける。

 格好が似ており互いに金髪、男性は少女をマイスウィートと呼ぶって事は兄妹なのだろうと憶測を浮かべるゼツに、男性は話を続けた。

 

「そうだろ。こんな大作戦にユーはヘラヘラしてらぁそう思われるだろ。家に帰ってママァの乳でも吸ってろ」

 

「ッ!」

 

 ママ、との単語に誰から見ても分かるようなガタッと反応を見せた。。

 表情を暗く影が射し、明らかに落ち込んでいる事が分かる。それを見た夏世は不思議に思いゼツの肩に手を置く。

 

「どうしたんですか?」

 

「……うんん。何でもないよ」

 

 無理をしている。誰から見ても分かる。

 それでも大丈夫と述べて視線を逸らしたゼツに、夏世は何も言わずに互いの間を埋めて取り添った。

 急な夏世の行動に驚くがゼツは振り払う事無くそのままの状態で維持し続けた。

 

「ケッ」

 

「兄貴ィ」

 

 急に落ち込み黙り込んでしまったゼツに居た堪れなくなった二人の兄妹、兄は両手を組んで頭後ろに置いて背中に凭れかかり妹はバツ悪そうに兄に近付いた。

 微妙な空気がヘリコプター内で続くと、アナウンスが流れた。

 

『目的地まで後五分です。民警の方々は準備して下さい』

 

 アナウンスを聞いた民警たちは思い思いの武器を持ち直して出動の準備をする。ゼツもまた、両頬を叩いて気合を入れて準備をする。

 ブラックホークはモノリス外『未踏査領域』、そのヘリコプターが降りられる開けた場所に着地すると、ハッチが開かれ次々と民警たちが出て行く。

 

「行くぞ夏世」

 

「はい。ゼツさん、後ほど」

 

「うん」

 

 大剣を背負った将監はヘリから降りて森奥にへと進んで行き、夏世も後を追っていく。

 金髪の兄妹も一度だけゼツに視線をくべた後はそのまま森に、最後にゼツがヘリから降りるとハッチを閉めて飛び立っていった。

 此処は既にモノリス外、何時までもヘリが現場に居続ければガストレアに襲われる危険性があるのだ。目的を果たしたらそそくさと飛び立つのは仕方ない事である。

 飛び立ったヘリを眺め、周囲に誰も居ない事を確認したゼツはディアボロモンを呼び寄せる。

 

「ディアボロモン、蛭子親子を探せ」

 

「ケケケッ」

 

 不気味に笑った後、暗き闇夜の空に飛び立って姿を消す。

 開けた場所、暗闇の森の中でゼツは一人で立っているとスマホが震えた。袖から出されたスマホを見ると画面にゼツを中心にマップが表示され、ディアボロモンのSDキャラがケケケッと笑ってある場所に指差していた。

 

「此処か……」

 

 スマホを袖に戻して目的地に向って歩き出した。

 だが、ここは未踏査領域。多くのガストレアの住みかであり、この様な場所で1人子供が歩いていれば……

 

「んっ」

 

 森奥から真紅の閃光が所々から放ち、ゼツを見詰るかのように発光している。

 その発光体がガストレアの赤目である事に気付いているゼツは一枚のカードを取り出した。取り出されたカードは二対の剣が描かれていた。

 

「顕現せよ『菊燐(きくりん)』」

 

 東洋のコンピュータで発見された信じ難い戦闘回数と戦績を持つ、グレイモン系の亜種である竜人型デジモン『ガイオウモン』の剣。

 具現化された菊燐の柄同士を合わせ弓状に変形させる。

 

「ゴメン。今、気が立ってるから」

 

 筒からバラニウム製の矢を取り出し番え、構えると矢に淡い光が灯る。そして、

 

「燐火撃」

 

 一斉に襲い掛かるガストレアに対して一条の閃光が放たれる。

 襲い掛かるガストレアは放たれた矢の閃光に飲まれていき、痛みを感じる事無く姿を掻き消される。

 

「さて、指示された場所に向おっか」

 

 合体させていた菊燐を解除して一気に森の中を駆け抜けていく。

 途中、襲い掛かるガストレアは通りしなに首を切り飛ばして突き進む。だが、倒せど倒せど絶え間なくガストレアは出現してくる。

 

「邪魔邪魔邪魔邪魔……邪魔だって!」

 

 夜行性のガストレアは絶え間なく四方八方から襲い掛かってくる。

 ゼツは気付いていなかったが、周囲に居たガストレアは直感的に危険な存在――ゼツ――を排除しようと襲っていた。

 襲い掛かるガストレアの所為で進むに進めないゼツはストレスが溜まっていき、そしてキレた。

 

「邪魔なんだってぇー!」

 

 一枚のカードを力強く空に投げ飛ばす。

 カードは発光、呼び出されたのはバイクだった。だが、それは普通のバイクではなかった。

 七つの大罪【暴食】を司る七大魔王の一柱・ベルゼブモン。そのデジモンの愛車と呼ぶべき意思を有した大型バイク型マシーン『ベヒーモス』である。

 ゼツはハンドルには一切に手を付けず、両手には菊燐を持ったままの状態で座席に座る。

 

「目的地までお願い」

 

 呼びかけられたベヒーモスはエンジンを吹かせて返事を返すと、後輪を一気に回転させて突き進む。

 その凄まじい速さ、前方の障害物など物ともせず粉砕していく。

 ガストレアたちは襲おうとする。だが後方から襲おうにも速すぎて追いつけず、前方からではベヒーモスが踏み潰し、横からではゼツが菊燐で切り裂かれていく。まさに動く要塞化したゼツは目的地に向って、文字道理一直線に突き進む。

 このまま一直線に進もうとした時であった。急な爆発音が夜の森を襲った。

 

「ッ!? ベヒーモス、あっち!」

 

 ブロロロッ、エンジンが吹くと同時に自動でハンドルが切られゼツが指差した方角に方向転換、爆発音がした場所に向う。

 進む事数分、見覚えのある後姿が見えた。

 

「筋肉達磨?」

 

「あぁ何でこんな場所でバイクが、てっテメェか!」

 

 大剣を背負った伊熊将監だった。

 既に先行してもっと奥に進んでいると思っていたが中盤あたりで立ち往生していた事に驚きながらもゼツは、傍に夏世が居ないことに気付いた。

 

「筋肉達磨、夏世はどうしたの?」

 

「夏世か。逸れた」

 

「何で?」

 

「ガストレアの畜生にしてやられた……」

 

 将監から聞かされた内容はこうだった。

 森奥からライトパターンが見え民警だと思い近付いたがガストレアだった為に、夏世は驚き手榴弾を投げてしまったのだという。その爆発音で周囲の眠っていたガストレアたちを起こしてしまい襲われ逃げ惑っていたら別れてしまった。

 

「夏世の奴は無事だと思うが……イルカの因子だからな。再生能力、そこまで優れてねぇのが欠点だ」

 

「何処に逃げたのか分からないの?」

 

「この暗い森の中で分かるかよ」

 

「まっそれも確かか……」

 

 この暗闇では別れてしまえば探すのは難しい。それに、四方八方からガストレアが襲ってくる可能性がある以上、下手に動けない。

 すると、将監の視線がバイクに向けられた。

 

「テメェ、豪華な物乗ってんな……」

 

「乗せないよ」

 

 ケッと唾を吐く将監は、無線機を使って夏世を呼び出すが返ってきたのは雑音のみであった。その雑音を聞いた舌打しながら眉間に皺を寄せる。

 

「おい、ガキィ。お前ならあの仮面野郎の居場所を知ってるか?」

 

「……ここに居るよ」

 

 マップ表示されたスマホを将監に見せた。

 それを見た将監は場所を確認した後、その場所に向って歩き出した。

 

「おい」

 

「んっ?」

 

 歩き出そうとする将監だが、一旦足を止めて視線だけをゼツに向ける。

 呼び掛けにゼツは返事を返す。

 

「夏世の事、頼めるか?」

 

「……急だね。そんなに心配なら自分が行けばいいのに」

 

「急がねぇと他所が仮面野郎を倒しちまうだろう。テメェならこの森中でも見つけられるだろう」

 

「はぁ~……正直じゃない人」

 

 愚痴を零したゼツはベヒーモスを降りてバイクを叩く。すると、ベヒーモスは独りでに進み将監の隣で停止する。独りでに動いた事に驚く将監だがゼツでは仕方ないと思いながら視線で「何だコレは」と訴える。

 

「使って良いよ。ただし約束して」

 

「何だ?」

 

「死ぬなよ」

 

「ヘッ、俺様が死ぬかよ。だが、コレは使わしてもらう」

 

 ベヒーモスに跨って乗る将監ではあったが、ゼツがあることを思い出し合掌する。

 

「それ気性荒いから気を付けてね」

 

「はっ? 気性が荒いってどういう意味だぁてっ、ウオオオォォォオオオォォォーーー……!」

 

 何かいけなかったのかベヒーモスは勝手に動き出して将監を振り落とす勢いで突き進み、叫ぶ将監の声がエコーするように森の中に消えていった。

 消えていった将監の後ろ姿を眺めた後、ゼツのスマホから一通のメールが届いた。

 

「何々、ミレニアモンか。えっ、夏世が蓮太郎に保護された?」

 

 メール文からは「蓮太郎・延珠ペア、負傷した夏世と遭遇」と書かれていた。

 その文を読んだゼツは急いでマップでミレニアモンが居るであろう場所を表示させる。此処から少し離れた場所に赤点滅が表示されていた。

 その場所に向ってゼツは走り出す。




皆さん、遅くなって申し訳ありません。執筆に凄く時間をかけてしまいました。

今回は室戸菫と片桐兄妹との出会いでした。片桐はアニメでも所々出てたので早めに会わせてみました。まっこの後はどうなるかはお楽しみに。
さて、ゼツ君が出したバイク《ベヒーモス》を乗り回してガストレアを踏み潰していきました。ガストレアざまぁwwww

さて、次回はいよいよ蛭子とのバトルですね。
頑張って一部を終わらせます。それで、一部と二部の間に数話程度ですが番外編を書こうと思います。
それもデジモン騒動系にしようと思います。まっ面白い話が出来れば良いのですが……。では、次回をお楽しみに!

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