ゼツが生み出した結界の中で密かに鎮座している
朝日が大地を照らす時刻、朝食料理担当の子供たちが起き上がりせっせと調理を開始していた。そんな中、着物を纏う少年ゼツが外に出て都心に向かう準備をしていた。
着物を正し、黒の羽織を纏うゼツの隣で弁当箱を持ったルリが準備が出来た事が分かると、持っていた弁当箱をわたす。それを受け取ったゼツはお礼を述べてから待機していたミレニアモンの手にのる。
「じゃっ行ってくる」
「気を付けて下さいね」
ルリは持ってきた火打ち石を擦って火花を散らさせる。それは厄除けのまじないで、何も出来ないルリがせめての目で見えるまじないとして出かけるゼツにするようになったものだ。
その火花を見てから一気に都心に向かう。
都心に向かうと言ってもミレニアモンにずっと乗っていく訳ではなく、人気のない場所で降りてから徒歩で行くのだ。
人気ない場所に到着、降りてからミレニアモンはそのまま姿を透明化して消える。消えた事を確認したゼツは歩きだす。
目的地は里見家。目的は昨日のことを謝ることだ。だが、ゼツは自身が発した言葉に悪いとは思っていなかった。何故なら、それが本心で偽りないゼツ自信が思ったことだからだ。
「もう少し、優しく言えばよかったかな……」
ゼツは蓮太郎が精神的に微妙である事は薄々ではあるが感じ取っていた。そして、天童木更の精神もまた何処か壊れだしている事も気付いていた。
「木更さんのアレ……似てるんだよな」
脳裏に浮かぶのはゼツと同年代の少年の姿。
背景が紅蓮の炎、その前で少年が涙を流しながら高笑いする光景。
『アヒャヒャヒャヒャ。ゼツ、これが答えなんだよ。これが……世界の』
少年が残した最後の言葉。それを思い出したゼツは口元を押さえ、込み上げてくる吐気を耐える。自身に言い聞かせるように「大丈夫」と繰り返して呟く。
吐気が治まると大きく深呼吸を数回して荒れている精神を落ち着かせた後、目的地に歩き出す。
既に多くのゼツと同年代らしき子供たちが学校に登校している。登校する子供とは正反対に歩くゼツはやはり目立ってしまい、周囲の子供たちは訝しい視線を送る。
そんな視線を無視して歩き続け、次の角を曲がって行こうとした瞬間、何者かにぶつかってしまった。
誰とぶつかったのか確認して直ぐに誰なのかをゼツは理解した。
橙色のツインテール、黄色いコートにミニスカの少女。見間違える筈のない、藍原延珠だ。だが、何か雰囲気が違う事に気付いた。
「延珠ちゃん?」
「ッ、ゼツ!」
天真爛漫を絵に描いた存在である延珠の瞳には涙が浮んでいることに気付いたゼツは目を丸くして驚く。延珠もまた、ここでゼツと出会うとは思っていなかった為に驚きの表情を浮かべた。
「泣いてるの?」
「あっ違う。これは、そう眼にゴミが入っただけなのだ!」
「……嘘、だよね」
「……アハハ。ゼツに隠し事は出来ぬな」
誤魔化そうとする延珠ではあったがゼツが一発で看破する。
そこで誤魔化せないと判断した延珠は空笑いした後、明らかに落ち込んだ表情になる。
ゼツは溜息を吐いて延珠の腕を掴み歩き出す。急に掴まれ歩き出された事に延珠は驚きながらも抵抗することなく歩いていく。
歩くこと数分、人通りが少ない横道に到着してゼツは掴んでいた手を離す。
「でっどうしたの?」
「…………」
沈黙。何も答えないので流石のゼツも何を言いていいのか分からず頭を掻いて溜息をはく。すると、延珠は小さくボソボソと呟くように話し出した。
「学校で妾が、"呪われた子供"だと、知られた」
「……それで」
「それで皆、妾を、ガストレアって……っ!」
「そっか」
説明を終えて延珠の瞳にはまた涙がうかぶ。
事情を理解したゼツは、延珠の頭を撫でてる。そこで、ゼツは更に質問を続けた。
「でも、何で急に延珠ちゃんの素性が」
「……あの仮面の男が明日になれば判ると言っていた」
「蛭子影胤か」
脳裏に蛭子親子の姿が浮ぶゼツ、そこで何処で出会ったのかを延珠に訊くと答えた。
昨日、ゼツと離れた蓮太郎と延珠たちは多少口喧嘩してしまうも一緒に帰宅していた時、あの影胤親子に遭遇したそうだ。
影胤たちは蓮太郎をゼツと同じく仲間に引き入れようとした。だが、蓮太郎もまたゼツと同じく否定した。だが、そこで影胤は引く際「明日、学校に行ってみるがいい。現実を見るんだ」と言い残して去っていった。
その話を訊いてゼツは表情を歪ませる。
「成程、蛭子の奴は延珠ちゃんの正体を暴露したんだな」
蓮太郎の精神に付け込んだか。そう思いながらゼツは悩ませる。
今の学園は"呪われた子供たち"を入学を拒否する所が多い。他にも疑わしい生徒は直ぐにIISOに送られ、例え呪われた子ではないと判断されても居辛くて転校する生徒もいる。
「……どうするの?」
「妾は今、蓮太郎の家には帰れぬ」
「そう……それなら」
「んっ?」
不思議に頭を傾げる延珠に、ゼツは笑顔を見せた。
◆
ゼツは来た道を往復するかのように延珠と一緒にディアボロモンに乗って空を翔ける。
有無言えずに強引に連れられる延珠は、困惑しながらもゼツに導かれていきそして、目的地である
最初は霧の出現に驚くも、次の校舎らしき建造物を見た延珠は眼を丸くして驚く。
「あっアレは何なのだ!?」
「秘密だよ」
ゼツたちを乗せたままの状態でディアボロモンはグランドの中央に着地、身体を伏せてゼツたちを降りれやすくする。
降りた延珠は周囲を見渡しながら校舎らしき建造物を眺める。
「コレは……」
「密かに建造した建物。"呪われた子供たち"が安心して暮らせる場所だよ」
「もしかしてゼツ、お主もこの建築に携わっておるのか?」
「まぁね。建築提案したの俺だし」
「成程な。一ヶ月前ぐらいに家に中々帰って来なかったのはコレの所為なのだな」
苦笑しながらゼツは歩みだし、それに続けて延珠も後を追う。
向った場所は長老と愛称で呼ばれている松崎が居る部屋、その部屋にゼツが入ったのだが住人たる松崎が居なかった。
「あれ、おっかしいなぁ……。何処行った?」
頭を掻きながら部屋内を見渡しながら部屋に入っていく。
室内に入るものの誰も居ない事を確認したゼツは、そのままソファーに座る。
「座って」
「んっ」
向かい側に座った延珠はそのまま、膝を抱えて丸くなって座る。
特に会話らしきものは無く、その状態が続く。部屋には静寂が続き、所々に子供の笑い声が聞える。
「何も訊かんのだな……」
「……訊けば答えてくれるの?」
「それは」
「こういう場合は、何も言わず聞かず傍に居るのが適切だと思ってね」
勿論、何か慰めの言葉を述べる冪なんだろう。だが、それは自分ではなく常に傍にいた蓮太郎の役目だと思うゼツは何も語らずに黙りこむ。それからある程度の時間が過ぎた後、部屋に誰かが入ってきた。
「おや、ゼツくんではありませんか。都心に向われたのではないのですか?」
「予定が狂ってね」
入ってきたのは、この部屋の住人である松崎だった。
部屋に入るとゼツが居た事に驚きながらも疑問を問い掛けて、その後にもう1人の客人に視線を向けた。
「そうですか。彼女は?」
「藍原延珠。今ホームステイしている所の子だよ」
「あぁ、ゼツくんが話していた向日葵みたいなイニシエーターの子ですか」
「そう」
以前、ゼツが話していた内容を思い出して松崎は頷いた。だが、話で聞いていた向日葵のように元気は無く、暗い表情をしている事に気付いた松崎はゼツに視線で訴える。
その視線に気付いたゼツは落ち込んでいる内容を説明する。
「そうですか、お辛いですな。今の学園は彼女達には厳しすぎます。ましてや、子供たちみたいな純粋な者ほど……」
「"呪われた子供たち"が自ら手を下している訳でもなく、只単にガストレア因子を宿しているだけで疎まれる。本当に嫌な世の中だ……」
延珠に向けていた視線を逸らすゼツは、苦虫を噛み締めた表情を浮ばせる。松崎もまた悲痛の表情を浮ばせた。
「それで、彼女のプロモーターは?」
「さぁね。でも、もしかしたら外周区を廻って探してるかもね」
「どうしますか?」
「……少しだけ試してよっかな。延珠ちゃん」
「えっ?」
急に呼ばれた延珠は伏せていた顔を上げる。
「少しだけ手伝ってくれる?」
「なっ何をだ?」
「里見蓮太郎の本心を聞くために」
◆
場所は外周区。
周囲は廃墟のままで手を加えられていない場所。そんな場所にゼツは目蓋を閉じてじっと立ったままで居る。すると、1人の人影がゼツに近付いてくる。
「……ゼツ」
「来たか」
目蓋を開け、その視線にはゼツの見慣れた人物が神妙な趣で見詰ていた。
藍原延珠のプロモーターである里見蓮太郎だ。
「ゼツ。メールで延珠を見つけたって連絡があったけど、何処なんだ?」
「……里見蓮太郎」
「ッ!」
ゼツの両腕に橙色の鍵爪が衣服の上から出現した。相手をフルネームで呼び、そして武器を出現した事に流石の蓮太郎も驚き身構える。
「何で、武器を出すんだよ?」
「構えろ。じゃないと――死ぬぞ?」
「ッ!? クソッ!」
ゼツが出した武器はグレイモン系最終形態と呼ぶに相応しい竜人種の究極体『ウォーグレイモン』。その『ウォーグレイモン』の両腕に装着しているドラモン系のデジモンに圧倒的な効果を示す武器『ドラモンキラー』である。
互いの刃部分をぶつけて火花を散らして一気に蓮太郎に襲い掛かる。その鋭いゼツの瞳を見て、相手がその気で来ていると判断した蓮太郎はホルダーから愛銃を取り出し構える。
だが、構えると同時にゼツの姿がブレて消える。
「何ッ!?」
目標を失った蓮太郎が周囲を見渡すがゼツの姿を目視出来ない。すると、自身に影が差したことに気付いて視線を上に向ける。
そこには空中前方一回転しながら踵落しをすようとするゼツの姿。
回避行動に移るには既に避ける時間も失っており、蓮太郎は腕をクロスしてゼツの踵落しを受け止める。
子供の体重とは思えないほどの破壊力ある一撃に連太郎は歯を食い縛って耐える。だが、その防御している上からゼツは両手を互いに握り締めて殴り付ける。
「グオッ!」
腕をクロスしていた防御は攻撃の上から崩されうつ伏せに地面に叩き付けられる蓮太郎。地面にダウンしている蓮太郎にゼツは無慈悲の如くドラモンキラーの刃を振り下ろす。
串刺しになれば無事では済まない。蓮太郎はその場で横に回転して仰向けの状態で銃を構えて弾丸を放つ。
「ッ!」
反撃に流石のゼツは後ろに飛び跳ねて避ける。
一旦距離をゼツが取った事で、蓮太郎は近付いてくる前に立ち上がり銃口を向ける。
「急に何なんだよ!?」
「…………」
「クソッ! 何とか言えよ!」
何も語らずドラモンキラーを構えるゼツ、その姿に悪態を付いて顔を歪ませる蓮太郎は冷汗を流す。
ゼツは"呪われた子供たち"と渡り合える程の実力者。愛銃のみ使用して勝てる相手ではない、だからと言って自身の切札を使う訳にもいかない。
突貫してくるゼツに対して蓮太郎は通常弾を放つが、それらの弾丸は全てドラモンキラーの装甲で弾かれる。そして、蓮太郎を攻撃範囲に入ると腕を大きく振りかざしドラモンキラーを振り下ろす。
蓮太郎はそれを横に飛んで回避する。だが、それと同時に余っていたドラモンキラーをゼツは投付ける。
「うおっ!?」
身体を仰け反りながら回避、前髪が切れて宙に舞う。
回避されたドラモンキラーはそのまま突き進み地面に突き刺さる。回避出来たことに安堵の溜息を吐くが、顔に強烈な衝撃が襲われる。
声無き叫び。急な痛みに耐えながら視線を襲ってきた衝撃の先に向ける。そこには、ゼツの膝があった。
(膝蹴りされたのか!)
地面に数回転がり仰向けで倒れる蓮太郎。そして、喉元にドラモンキラーの刃が寸止めの状態で止められていた。
「もう、お終い?」
「……何で」
襲うのか。その疑問を投掛けようとする蓮太郎。だが、その前にゼツが話し出す。
「今日、偶然ね。延珠ちゃんに会ったよ」
「ッ、延珠にか?」
「ねぇ。蓮太郎にとってさ延珠ちゃんみたいな"呪われた子供たち"って何なの?」
「それは」
急な質問に蓮太郎は困った。
延珠は自身や木更を変えてくれた掛替えのない家族。何故、その様なことを聞いてくるのか蓮太郎は疑問に思う。
「昨日、あの時の子供を何故助けなかったの?」
「それは、俺の手じゃ余るから。それに、あそこであの子を助ければ延珠にも被害が及ぶ。だから」
「だから、その他の子供は助けなくて良いって?」
「ッ、違う!」
「何が違う!」
蓮太郎の首横にドラモンキラーだ突き刺さる。
地面に突き刺したドラモンキラーをそのままに腕を抜き、蓮太郎の胸倉を掴む。
「もし延珠ちゃんの事を思うのであらば全てを救う、それぐらい言いのけるぐらいの甲斐性を見せてみろ!」
「ッ!」
数ヶ月とは言え、今まで見せた事もないほどの剣幕を見せるゼツに息を飲む。そして、その無茶苦茶な内容に蓮太郎も反論する。
「全部救うなんて無理に決まっているだろ!」
「そんなの百も承知だ! それでも延珠ちゃんにとって里見蓮太郎とはヒーローなんだ。そんなヒーローが無理だ無茶だなんて言っていたら、そのヒーローの背中を見て育つ子供たちは何を信じて生きれば良い!? もう一度言うぞ里見蓮太郎。無茶を押して道理を引っ込ませて全てを救ってみせろ! それが先人として生きる大人の役目、もし出来ないであるなら最初っから人に優しくするな!」
「うあっ!?」
ゼツは胸倉を掴んだ状態で仰向けに倒れている蓮太郎を背負い投げの要領で投げ飛ばす。そして、投げ飛ばされた蓮太郎を確認して袖から一枚のカードを取り出した。
「エネルギーボム」
カードは粒子となり、粒子は左手に集りエネルギーの塊が形成されていく。
カードに描かれていたのはメタルマメモン。完全体であり"スマイリーボマー"の異名を持つマメモンが更に強力に進化したサイボーグ型デジモン。体の9割は機械化されており、左腕に装備されたサイコブラスターが装備されている。
「ぶっ飛べ」
エネルギーの弾は蓮太郎に向かって放たれた。
◆
藍原延珠は2人の戦いを少し離れた場所で眺めていた。
コートを強く握り締め、今にも助けに行きたい気持ちを堪えながら一部始終を見詰る。
「蓮太郎……」
IISOで出会った2人は当初、お世辞にもいい関係ではなかった。
藍原延珠は人間不信、里見蓮太郎は不幸の日々。互いの不運が呼び合いそして出合った。
不幸顔で荒い口調ではあったものの、パートナーとなった延珠の関係を良好にするために出来ない料理を必死に勉強して腕を上げた。
結果として半年で良好な関係となり、人間不信であった延珠は誰にでも万遍の笑顔を見せる向日葵な少女にへと変わった。自身を人へと戻した里見蓮太郎に自然と恋に落ちるのは仕方なき事かもしれない。
恋して病まない存在。その蓮太郎がゼツの鋭い猛攻に攻められる。
今にも助けに行きたい。だが、それではゼツとの約束を破る事になる。駆け出したい気持ちを堪え、見守り続ける。
「エネルギーボム」
「ッ!?」
ゼツの左手からのエネルギー弾が蓮太郎を捕らえ吹き飛ばす。どうやら直撃は避けているようだが攻撃の余波は強く、蓮太郎はゴミの様に宙に舞って地面に叩き付けられる。
身動きが出来なくなる蓮太郎。それを確認したゼツは一歩ずつゆっくりと近付く。
「もう、終わりか?」
「グッ!」
苦痛の声を漏らす蓮太郎。その姿を冷えた眼で見詰るゼツ。
「なぁ、蓮太郎。もう一度訊くけど、延珠ちゃんは蓮太郎の何?」
大本を触れる話。それを隠れて傍で聞いていた延珠は身体をビクッと反応する。
「俺にとっての延珠……」
動かすだけでも苦痛である蓮太郎は身体を起き上がらせようとする。
「延珠は、俺にとって掛替えのない存在だ。IISOで初めて会った延珠は今とは想像も付かない程に人間不信で、俺を仇を見る目で見ていた。それを見て、俺は延珠を助けたいと思った」
「それで」
「出来ない料理を懸命に覚えた。最初は失敗ばかりだけど、徐々に上手になって延珠が美味しく出来た料理を食べて笑顔を浮かべた時、救えたと思った」
語られる延珠に対する蓮太郎の思い。それを隠れながら聞いていた延珠は言葉と共に蓮太郎と過ごした日々を思いだす。
楽しかった事、面白かった事、嬉しかった事、そんな有触れた日々の日常を延珠は噛み締める。
「では、改めて……里見蓮太郎は藍原延珠をどう思う?」
「延珠は俺の家族だ」
「なら、その家族が涙流すモノが現れたなら蓮太郎はどうする?」
「倒す!」
「それが強大な敵であってもか!?」
「あたりまえだ!」
「……なら、延珠ちゃんを救ってやれ。それが家族としての勤めだ」
ゼツは隠れて忍んでいる延珠の場所を指差す。
指差す場所に視線を向ける蓮太郎。物陰に身体を隠してはいるが、ツインテールの髪がはみ出ていた。
「延珠」
「じゃぁね。今度こそ、失望させないでね」
それだけを述べてゼツは踵を返して去っていく。
残された蓮太郎と延珠。互いに沈黙して何を言い出せばいいのか迷う。
「れっ蓮太郎。妾は……」
「話は聞いた。悪いな、辛いときに傍に居てやれなくて」
「妾は、人だ」
「あぁ延珠、お前は人だ。誰かがお前をガストレアと呼ぼうとも延珠、お前は人間だ!」
「蓮、太郎」
延珠の瞳に涙を溜める。
溢れ出す感情を堪えられなくなった延珠は駆けだし蓮太郎に抱き付いた。抱き付いてきた延珠を愛しく思いながら蓮太郎は憂さしく抱きしめる。
「ちゃんと、家に帰って来い。あの家は、俺とお前の家なんだからな」
「うむ、もう逃げたりせぬ」
涙流す延珠に微笑を浮かべる蓮太郎。蓮太郎と延珠、その2人は収まるべき場所に収まった。その光景と遠い場所で眺めていたゼツ。
「ふぅ、これで大丈夫……かな」
頬を掻きながら2人の見詰ながら満足の結果に微笑みを浮かべる。
何も言うまい。もう疲れた。
キャラの心象を表現するのがここまで疲れるとは想像もしていませんでした。
ゼツ君に言わせている内容が正論すぎて臭い。世の中、正論ばっかじゃないのに……。まっご都合主義って事で……。
さて、そろそろ蛭子親子の激戦もまじかです。
次回も頑張ります。