ブラック・ブレット 『無』のテイマー現る   作:天狐空幻

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ストブラ書き終えていないけど投稿してしまった。後悔はしていない。
さて、今回はブラブレとデジモンのクロスです。最初は無難にロイヤルナイツかなっと思いましたが、それだとありきたりなので少し変えてみました。
では、本編をどうぞ。感想なども書いてくれるとやる気がでますので、宜しくお願いします。


プロローグ
001


 荒野に一人の少年が歩いていた。

 小さな身体を覆うほどにフードを着込み、強く差し込む太陽光を避けるために頭や顔全体に布を巻いている。その眼には疲労の影が差し込んでおり、呼吸も荒れており視線を地面にジッと向けたまま歩いており、今にでも倒れそうである。

 歩いていた少年は何かに気付いたのか地面に向けていた目線を上げる。視線の先には荒野には似つかわしくない霧が発生しており、風に乗って霧が少年に向かってきていた。天を覆う霧は速度を上げて少年を襲う。

 顔全体に巻いていた布を手で押さえて襲ってきた霧と風に耐えるように身体を丸めて縮こまる。霧と風が過ぎるのを待つ、すると温度と雰囲気の変化した事に少年は気付き目線を再度上に向ける。

 霧が晴れる。そこには今まで荒野だった風景画が一編して廃墟に変わっていた。その変化に少年は驚きを隠せずに眼を見開いた。

 

「ここは……町? いや、廃墟か」

 

 立ち上がって周囲を見渡す。

 放置されて何年も経っているのだろうか鉄が雨で塗らされて赤錆が浮かび上がっている。コンクリーも雨でボロボロの削られている。先程まで自分が居た場所とは正反対もいい所程に変わってしまった事に少年は驚きながらも全身に篭る熱に眉を顰める。

 

「熱いな。それに、日差しもそこまで強くないし……脱ぐか」

 

 巻いていた布を解き、着込んでいたフードも脱ぎ捨てる。

 中肉中背。黒髪に複数の紫色のラインが刻まれ、身長から見て小学生程度、フードの下に来ていた衣服は若葉色の着物に黒の羽織を被った姿。

 荒野にも廃墟にも似合わない出で立ち。その少年は袖からスマホを取り出し、投げ捨てた布やフードに画面を向ける。すると、布やフードは淡く光って粒子となりそのままスマホに吸い込まれてしまう。

 少年はそれを確認した後、周囲を見渡す。

 少年の目に最初に飛び込んでいた物は大きな建物。天高く聳え立つ黒々とした長方形の建造物、それも1個だけではなく幾つも存在している。あの建造物は何なのか不思議に思いながら高層ビル群に目線を向けた。

 

「……日本。まさか、帰って来た? いや、ありえないしあんな超高建造物なんて知らないし」

 

 少年は目を細めながらビル郡に向かう事にした。すると、スマホのランプが数回点滅する。それに気付いた少年は少しだけ微笑みスマホを撫でるように叩く。

 

「大丈夫。危なかったら頼む」

 

 少年に耳に荒々しい獣の息潜めた唸り声が響く。

 その唸り声が子守唄の様に微笑みを浮べながらビル郡に向かって歩き出した。歩いて30分ほど歩き続けると住宅街に到着、だが目的は此処ではないので更に都心に向かっていく。

 進むにつれて人が多くなり、数人程度が少年の出で立ちに興味を示すがその程度で直ぐに興味を無くして去っていく。

 

「やっぱし日本。……でも、何……この違和感、んっ?」

 

 歩いていた少年は何処からか歌声が聞えた。透き通った綺麗な歌声に少年は興味を示して、その声が聞える場所に向かって歩き出し数分、その人物を見つけた。

 汚れたケープを羽織る少女、托鉢用の椀を持ち道行く人に向かって歌いかけている。そして、その少女の隣に置かれた板切れには『私は外周区の"呪われた子供たち"です。妹を食べさせるためにお金が必要です。どうかお恵み下さい』と書かれていた。

 

「呪われた子供たち……」

 

 その言葉の意味が判らない少年。

 言葉の意味を考えながら遠くで少女を見ていると、ある事に気付いた。それは、少女の目が一向に開かないことだ。眼でも怪我して見えないのだろうかと考えていると、周囲の通り過ぎていく人間の負の感情を少年は感じ取った。

 

「憎しみに満ちた眼、他にも幾つか……"呪われた子供たち"って何だ?」

 

 まるで仇を見るかの眼。少女が何をしたのか不思議に思っていると複数の若者――少年から見て高校生ぐらい――が少女を取り囲むように集まった。そして――

 

「アッ!」

 

 少女を蹴り飛ばした。持っていた椀がその衝撃で飛ばされ、丁度少年の足元に転がった。その光景に冷静に見守っていた少年は驚きが隠せずに眼を丸くする。

 急な出来事。だが、その光景を道行く通行人たちは取り巻きで見守るも誰一人として止めず、そして誰も携帯で警察などに連絡はしなかった。

 

「この化け物が!」

 

「貴様らなんて死ねばいいんだ!」

 

 思い思いの罵声。だが、ケープの少女は微笑を絶やさない。

 そこで、少年はその微笑の意味を理解した。あの微笑みは、感情などで出してるものではなく、自身を守るための防衛的適応での微笑み。

 少年の眉間に皺が寄る。少女は未だに周囲の若者達に暴行を振られ、殴られ蹴られる少女は微笑を絶やさず耐えている。

 そこで、少年は袖からスマホを出す。片手に椀、もう片手にスマホを持ったまま少女に近付いてく。

 周囲の取り巻きを押しのけていき、そして暴力を振るう若者たちも押しのけた。

 

「……大丈夫?」

 

「えっ?」

 

 膝を折り、少年は倒れている少女を手を差し伸べて立ち上がらせた。持ってきた椀を少女に持たせて、転がって泥やゴミなど汚れたケープを綺麗に払っていく。

 すると、少年の肩に若者の手が握られた。

 

「おいガキ! 何してやがる!」

 

「邪魔すんなよ! お前も"呪われた子供たち"か!?」

 

「だったらお前もボコボコにしてやる!」

 

 若者が掴んでいる手に力が篭る。少年の着物に皺が寄り、苦痛の表情を浮べた瞬間、肩を握っていた若者が吹き飛ばされた。

 

「ゴホッ!」

 

 数メートルほど吹き飛ばされ壁に叩き付けられる。若者は吐血して、壁にズルズルと下がっていき地面に倒れる。

 吹き飛ばされた若者。その結果を周囲の者たちが認識して理解するには、ある程度の時間が掛かった。そして、理解した瞬間、周辺に居た者たちは顔色を恐怖に染まる。

 

「はい、これキミのお椀だよね」

 

「あっはい、そうです。彼方は……」

 

「自分はゼツ。キミは?」

 

「私は――」

 

 少女が名前を答えようと発そうとした瞬間、何人か近付いてくる足音に気付いたゼツと名乗る少年。一度、少女の口に手を置いて喋らないようにして、近付いて来るものに目線を向けた。

 向ってきたのは警察官。小太りで年齢から見て三十後半の男性、それに同行する二十台後半の男性が2人。

 周囲の取り巻きを退けてゼツと少女に向ってきた。

 

「貴様ら何をしている!?」

 

 先頭で駆けて来た小太り警察官が怒鳴る。

 そして、次に向けた視線はケープの少女だ。だが、その瞳には憎悪を宿している事にゼツは一瞬で気付き、眼光を鋭くした。

 

「このクソ餓鬼が!」

 

 小太りの警察官は少女の胸倉を掴み乱暴に引こうとする。だが、その手は引かれなかった。その掴んだ警察官の腕にゼツが握り締めて止めていたからだ。

 

「貴様、何をする!? 公務執行妨害だぞ! 掴まりたいのか!?」

 

「…………」

 

 ゼツは何も言わない。だが、それでも警察官の腕を放そうとしない。小太りの警察官は後ろに同行している二人の警察官に視線を向ける。その視線に二人の警察官はゼツに近付き取り押さえ様とする。だが、

 

「邪魔だ」

 

 小声でゼツは呟いた。

 同時に持っていたスマホの画面が輝き、そして何か見えない物で取り押さえ様としていた警察官2人が吹き飛ばされる。その光景を眼前で見た小太り警察官は驚きの表情を浮かべ、そしてゼツは更に呟いた。

 

「失せろ」

 

 小太り警察官は何を言っているのか分からなかった。だが、それを理解する前に警察官は何かに握られるように身体が圧迫され、そして宙に浮いた。

 

「あああぁぁぁ!?」

 

 小太り警察官は圧迫される痛みに苦痛の声を上げる。その苦痛を上げる警察官を少年ゼツはまるでゴミを見ている眼で見つめていた。その少年の姿に周囲に未だ居た者たちは恐怖を覚え、我先にと逃げていく。

 

「うるさいから捨てろ」

 

 悲鳴が耳障りになったゼツは捨てる様に言うと、小太り警察官は見えない何かに投げ捨てられる様に飛ばされた。これで、ゼツと少女の周辺から静寂が訪れた。

 その一部始終を傍で聞いていた少女は驚きを隠せずにぽかっとしていた。

 

「そこに、何か居るんですか?」

 

「……分かるんだ」

 

「はい。まるで彼方を守るように……大きい何かが」

 

 眼が見えない少女は、気配や雰囲気で何かが居ることを見抜いた。

 少年ゼツは驚くことも無く微笑みを返す。そこで、ゼツは改めて少女の名を問うた。

 

「私は瑠璃(ルリ)と言います」

 

「そう、ルリちゃんか。妹さんは?」

 

「妹は璃亜(リア)って言います」

 

 やっとの事で互いは自己紹介を終えた。

 そして、ゼツは続けて少女ルリにある事を訊いた。"呪われた子供たち"とは何か。何故、眼を瞑っているのか。何故、ルリみたいな少女が迫害を受けているのか。他にも色々と質問した。

 それらの質問をすると、ルリは驚いた表情を浮べる。

 

「知らないんですか?」

 

「うん。少し色々と事情があってね……ダメかな?」

 

「うんん。最初は驚いたけど大丈夫だよ。えっと……」

 

 ゼツの質問にルリは知り限りの事を教えた。

 "呪われた子供たち"とはガストレアウィスルを宿している事、周囲を囲んでいるの超巨大建造物は"モノリス"と呼ばれる物、そのモノリスがガストレアと呼ばれる化物の進行を止めている事、眼は鉛を流し込んで潰している事、他にも色々と聞いたゼツはこの世界を大まかだが理解した。

 

「ありがとルリちゃん。凄く役立ったよ」

 

「それなら良いんです。でも、何で知らないんですか?」

 

 少女ルリが今まで疑問に浮べていた事を質問した。ゼツはどう説明しようかと悩み、そして答えた。

 

「自分が異世界人だからかな」

 

「異世界人……」

 

 以外過ぎる答え。

 オウムの様に呼び返すルリ。その様に呆然とするルリが可愛らしくて見詰ていると、遠くからパトカーのサイレンが耳に入ったゼツは舌打ちをする。そして、ゼツは呆然としていたルリをお姫様抱っこをする。

 急な事にルリは悲鳴をもらし驚く。

 

「そろそろ、此処も厄介そうだし離れよっか」

 

「でっでも、どうやって?」

 

「それはね。……飛べ"ディアボロモン"」

 

 2人の後ろに一体の巨体が現れた。

 黄色の鬣。グレーに近いゴミ質的な身体。肩と胸、頭と両手に青紫の鋼鉄鎧に似た装甲。そして、両手足と背中にに血を吸ったルビーの様な鉤爪。

 人間世界では絶対に見られる事のない異形の存在・ディアボロモンは2人を優しく両手で掴み、空高く飛び跳ねて姿を消した。

 

 




さて、原作なら三巻、アニメなら八話に出てきた眼を鉛を流し込んだ"呪われた子供たち"の少女です。名前が出ていなかったのでオリジナルとして勝手に名付けてしまいました。
っで、主人公のパートナーデジモンは皆様のトラウマ『ディアボロモン』です。あの子、見た目はあれだけど強いでしょ?
タブーを幾つか犯していますが、ウォーグレとメタガルとの2対1でもそこそこ頑張って戦ってましたし。
さて、これからどうなるのか楽しみにして下さい。

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