英雄の魔法と最終の人類   作:koth3

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第二十六話

第二十六話 怪傑 解決

 

 あれから真心は天ヶ崎千草や、彼女を秘密裏に支援していた重鎮たちを捕縛して呪術協会の牢の中に入れた。千草は途中で捕まえたが、重鎮たちは初日の野暮用で捕まえた者たちだ。

 彼らを牢の中に入れた真心はそのままとある場所へ向かう。

 そこで待っていたのは

 

 「よお、久しぶりだな」

 

 赤い彼女だった。

 

 「久しぶりだな。哀川」

 「あたしの苗字だけではなく呼び捨てとはいい度胸だな」

 

 人類最終に相対してなお不敵に笑う。

 赤い彼女はその笑みをさらに深くし、

 

 「まあ、お前があのことを請け負うなんてな」

 「請け負えといったのはどこのどいつだ」

 

 最終も笑う。嘲笑う。

 

 「はっ! 選択したのはてめえだろう。責任を押し付けんなよ。あたしたちは請け負えばいいんだよ」

 「それ以外の選択をさせないようにした人間の言うことかね」

 「良いんだよ。ああでもしなきゃお前はあのまま孤独につぶれていただろうが」

 

 二人は闇の中いつまでも笑い続ける。

 

 「げらげらげらげらげらげふぉげっほ」

 「あっ、せき込んだ。まー君せき込んだ(幼い木乃香の声)」

 「うるせえ。っていうか木乃香の声を使うのやめろ」

 

 恥ずかしいそうに顔を真っ赤にした真心が叫び、

 

 「じゃーな、まーたん。

 それと良い情報だ。クソ親父がまたなんか企んでいるみたいだぞ」

 

 赤い彼女は森の中に消えていった。

 

 「あー、畜生。借り作っちまった」

 

 

 

 

 

 真心は赤い彼女と対談の後、呪術協会へと戻らずに旅館へ帰りネギたちの帰りを待っている。

 

 「よう、遅かったな」

 「遅かったなではないわ。協会ではなくこちらに戻っているとはどういうことだ!」

 

エヴァが真心に対して怒鳴りつけほかのメンバーもそれにうなずく。

 

 「誰も協会で待つとは言っていないだろう?」

 

 確かに真心はそんなことは言っていない。

 

 「もういい。さあ、お前の魔法を話してもらうぞ」

 

 エヴァはそんな真心の様子を見て、何を言っても無駄だと悟り先に進めようとする。

 

 「さあ?」

 「貴様ふざけてるのか?」

 

 真心の回答にエヴァは静かに殺気を放ち始める。

 

 「言葉通りさ。知らない間に俺は魔法が使えるようになったのさ」

 「そんなことありうるわけがないだろう! 魔法は式だ。法則を理解せずあんなことができるはずがないだろう!!」

 

 エヴァの言った通りに魔法は始動キーで精霊と簡易的な契約を結び、呪文で何をさせるか指定し、魔力を流すことで発動させる。このうち真心は言ってしまえば魔力を流しただけで魔法を使っているも同然なのだ。

 だからこそその異常な魔法が認められない。それはつまり術式を作ることすら必要がないということ。そうエヴァは判断したからここまで激昂する。

 

 「それができるのならもはやそいつは人間とは言わん! 神というのだ!!」

 「だから言っただろう俺は“神と悪魔の申し子 ニャルラトテップ”と」

 

 そこまで言うと真心は立ち上がり、部屋へ戻っていく。

 

 「お前では永遠に届かないよ。エヴァンジュリン」

 

 真心はそれだけを言い残し、この修学旅行中もう二度と魔法について話さなかった。

 

 

 

 

 

 「護衛に関しての依頼は完了したぞ、近衛門」

 

 修学旅行が終わったため、真心はクライアントに報告しに学園長室へ尋ねた。

 

 「うむ、すまん。それとおぬしに頼まれていたことの調査じゃが」

 「どうだったかあててやろう。何もわからなかっただろう?」

 「その通りじゃ。古いつてで関西の中枢にすら調べたが不明じゃ。

 なぜ、天ヶ崎千草がリョウメンスクナノカミを模造した式を知っていたかもな」

 

 飛騨の大鬼神。

 それは神話にすら登場する存在。のちの世でゆがめられた情報もあるがその存在が高々600年程度生きた吸血鬼の一撃など本来通るわけがない。本来の宿儺はいまだ飛騨のとある場所で厳重に封印されている。

 

 「それを知っているのは本当に限られたものだけじゃ。なぜなら、この地の神や鬼をおこすのは危険すぎる。日本という土地では古いものほど力を増していくからの」

 

 だからこそ、関西呪術協会は宿儺をまねた式を過去に作り上げた。大江山に存在するかつて封印することに成功した最強の鬼が復活した際の足止めとするための切り札として。

 宿儺をまねることにより、本来の性能よりはるかにすぐれた式となったスクナは封印が解けた際の時間稼ぎとして呪術協会の暗部に伝わっている。

 

 「いくら木乃香の魔力でも神と比べれば一厘ほどの魔力にはならん。式神だからこそ起こして操ることができた」

 「それを実行するには情報が必要だ。木乃香の魔力で式を動かせるという情報がな。式のことを千草に教えた存在がいるはずだ。

 千草はバカではない。本物のスクナを自身では制御できないと知っていた。しかし、式なら別だと考え教えられたそちらを利用しようとした。」

 

 これが真心がスクナのことを駄柱と呼び、あれほど簡単に倒した理由だ。

 本当の宿儺なら、いくら真心でもそう簡単に消失させられなかっただろう。

 

 ここまで情報を合わせていた真心だがもう必要な情報はないと判断し、立ち上がる。

 

 「こちらからも関西呪術協会には忠告するがしっぽをつかめんかったんじゃ。おそらくは無意味じゃろうな」

 「無意味だな」

 

 真心は学園長を出てから先ほど近衛門に返した言葉につなげる言葉を吐く

 

 「最悪の狐相手ではな」 




今回の題名
怪 いまだかげでなにかが蠢いている様子。
傑 こちらは本当に万葉仮名。つまりはただのごろ合わせ。

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