ブラック・ブレット -黒のヒーロー-   作:めしお

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遭遇

 一方通行《アクセラレーター》は、ここ数日民警の仕事を見に行っていた。わかったことは2つ。

 

まず1つ、民警は依頼を受け、それをこなすことで報酬金を依頼主からもらっている。

 

そして、民警には特別な武器、<バラニウム>というものを加工した武器が提供されるらしい。

 

 

 

見ていた限り、バラニウムで加工した武器と通常の銃では、傷の修復速度が違ったことから通常の武器ではガストレアに対抗できないことがわかった。

 

彼は自分の持っている銃を一瞥し、ため息をついた。

 

(ってことは、こいつは意味ねェってことか。)

 

「どーしたんですか?」

 

横から不意に聞こえてきた声に反応し、そちらを向くと佐奈が首を傾げてこちらを見上げていた。

 

「・・・・・なんでもねェよ。」

 

出会った当初とは違って、明るめの声を出していた。どうやら、数日一方通行《アクセラレーター》と一緒に行動をともにしていたからか警戒を解いているらしい。

 

「ふーん。そういえば最近はなんで民警さんの仕事を見て回ってるんですか?」

 

「あァ? 民警ってやつはどンなことしてんのか知りたくなってな。」

 

「民警さんはガストレア退治がお仕事ですよ?」

 

「どォやらそうらしいな。」

 

「これからどうするの?」

 

「とりあえず、あいつを探してみるか・・・・・。」

 

歩き始めた一方通行《アクセラレーター》の隣に佐奈はついていった。

 

 

 

 

 

 

 蓮太郎はひとり外周区にいた。

 

それというのも、商店街で起きた窃盗事件の容疑者-赤い目の少女-が、パトカーに連れ去られていってしまったからである。

 

普通は、被害者から話を聞いたりするものだが、なぜか警官たちはそれをしなかった。この意味を考えながら、ひたすらに後を追い続けた結果、蓮太郎は外周区へとたどり着いたのである。

 

呪われた子供たちへの憎悪は警察たちでも持っているため、最悪の場合はあの子が・・・・・。そんな想像をしていると、警官たちが乗っていたパトカーを発見した。遠目からでも誰も乗っていないことがわかった。

 

すると、鉄柵を越えた辺りから声が聞こえ、そちらに足を向けた。声のした場所まで歩くと部屋のような天井が開いた場所に出る。物陰に身を隠し中の様子を伺うと、少女を今まさに警官が銃で撃とうとして

 

いた。次の瞬間訪れるであろう悲劇に蓮太郎は思わず目を瞑った。

 

しかし、警官の指は引き金を引くことはなかった、代わりに蓮太郎にとって聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「-------オイオイ、お前ら警察官だろ?なンでガキに銃を向けてやがる。」

 

その声は警官たちのいたほうから聞こえた。目を向けると赤目で白髪の青年-一方通行《アクセラレーター》-が少女と警官の間に立っていた。

 

「何だ貴様!!」

 

「どこの世界にも屑ってのはいるもンだなァ。」

 

「なんだと!? ・・・ふん。お前も化け物の仲間か。だったらここで死ね。」

 

一方通行《アクセラレーター》の赤い目に気づいた警官が見下すように吐き捨て、銃の照準を彼の頭にあわせた。

 

「まっ・・・・」

 

彼の力を知っている蓮太郎は警察を止めようとした。

 

そして、またしても引き金は引かれなかった。

 

横から凄まじい速さで小さな影が警察官へと突っ込んだ。

 

そのまま吹き飛ばされた警察官は、壁に叩きつけられて動かなくなった。どうやら気絶したらしい。それを見た警官が慌てて銃を抜こうとするも小さな影は警官の腹部を殴りつける。強い衝撃を受けてうめき声を上げながらその場に警官が崩れ落ちた。

 

「いきなり先に行かないでくださいよ!」

 

警官を瞬時に無力化した、小さな影-佐奈-は一方通行《アクセラレーター》へと声を張り上げて講義する。

 

「あァ?気にすンなよ。」

 

「気にします! いきなり銃の前に出て行かないでください!危険です!」

 

「ん?あァ、オレは大丈夫だ。銃程度なら傷つかねェ。ってか、さっさとそいつを見てやれ。死ぬぞ?」

 

彼の後ろに横たわっている暴行などを受けたと思われる少女をあごで指しながら佐奈へと指示を出す。

 

「は、はい。わかりました。」

 

思い直したように、少女の下へと小走りでかけ寄り状態の確認を始めた。

 

「で?そこで隠れてンのは誰だ?」

 

そう言って、蓮太郎が隠れている場所に拳銃を向ける。

 

「ま、まて、俺だ。里見蓮太郎だ!」

 

「・・・誰?」

 

 

 

佐奈は首をかしげながら一方通行《アクセラレーター》の方へと顔を向ける。

 

「民警の里見蓮太郎ってやつだ。・・・丁度いい。聞きてェことがある。」

 

一方通行《アクセラレーター》の後ろでは、佐奈が先ほどの少女を介抱していた。どうやらここに来るまでにも暴行を受けていたらしく、今は佐奈の肩を借りて立っている。彼はそれを確認した後、蓮太郎に向き直ってこういった。

 

「この辺で迫害されてるガキは他にいるか?」

 

「い、いや。わからない。」

 

鋭い視線で睨まれさすがの蓮太郎もひるみながら答える。

 

「ちっ。 使えねェ。 おい。行くぞ。」

 

後ろの佐奈たちに一声かけ、一方通行《アクセラレーター》は、外周区の方へと歩き始めた。

 

いきなりの罵倒に唖然としていた蓮太郎は、疑問に思っていたことを尋ねた。

 

「あんた一体どこに住んでるんだ?」

 

「お前には関係ねェ。・・・・・・・・って言いたいとこだが教えといてやる。」

 

「松崎って爺のとこだ。外周区のマンホールの中だ。用があるならそこに来い。」

 

そういった一方通行《アクセラレーター》は蓮太郎に背を向け、佐奈たちを連れて外周区へと歩き始めた。

 

「・・・その子を頼む・・・・・。」

 

聞こえるかどうかの小さな声で呟いた蓮太郎の声は一方通行《アクセラレーター》にしっかりと届いていたようで一度こちらを振り返ると一言呟き、また歩き始めた。

 

返答を聞いた蓮太郎は安心した様子で、岐路に着いた。

 

(任せろ・・・か。   本当にあいつは何者なんだ?  まぁ、子供たちには優しいみたいだし。任せるか。)

 

自分の中で整理をした蓮太郎は一人、延珠の待つ家へと帰るのだった。

 

 

 

 

一方通行《アクセラレーター》はマンホールの蓋を開けて、少女二人を先に行かせ、辺りの安全を確認してから、自身も中へと降りていく。

 

中に入り少し進むと、広い空間へとでた。そこには、小さな女の子達が生活をしていた。壁際に置かれていた椅子に座っていた老人が一方通行《アクセラレーター》と二人の少女が入ってきたのを確認する

とねぎらいの言葉をかけた。

 

「お疲れ様です。また一人連れてきたのですか?」

 

「ああ。頼んだぞ。」

 

「ええ、それは構いませんが。 奥のソファで休んでいってくれませんか? 彼女も心配いていますよ?」

 

そう言った松崎の視線の先には、先ほどの少女を奥の部屋に寝かして戻ってきていた佐奈がいた。その瞳は今まで動き続けてきた彼を本気で心配しているやさしい目だった。

 

彼はそれを見ると何もいえなくなってしまい、少しいらだった口調のまま

 

「ちっ、わかったよ。それなら6時間たったら起こせ。」

 

そう言って、ソファに横になった。一方的に言った彼に対して、優しげな微笑を崩さない松崎はそのまま奥の部屋へと姿を消した。

 

佐奈はとことこと一方通行《アクセラレーター》が横になったソファの近くに来るとそのソファに寄りかかる形で眠り始めた。

 

「・・・・・。そンなとこで寝てンじゃねえよ。」

 

佐奈が寝たのを見計らって起き上がり自分と佐奈の位置を交換してその小さな体に毛布をかけてやり、自分の分も毛布を持ってくると彼はもう一度眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、蓮太郎の携帯に延珠の通っている小学校から、電話が来て延珠が呪われた子供たちだったことを隠していたことを責められた。延珠の所在を確認したところ、

学校を飛び出して戻ってきていないという。延珠を捜そうともしない学校に腹を立て、電話を切り学校を抜け出した。蓮太郎は延珠を捜し回っていた。先日回った商店街や家の周辺などを探していたときに、ふと一方通行《アクセラレーター》に言われた台詞を思い出す。思い出したと同時に体が動いていた。

 

 

蓮太郎は外周区のマンホールをノックし続けていた。そして、叩いた数が二桁に届こうとしたとき、マンホールが持ち上がり中から少女が顔を出した。

 

「人を探してるんだが、少しいいか?」

 

その少女は蓮太郎の顔を見るなり少し驚いたそぶりを見せたが、蓮太郎の質問に真顔に変わった。

 

「けーさつの方ですか?・・・・・それともせーはんざいしゃですか?」

 

「なんでその二択なんだ・・・・・、民警だ。里見蓮太郎。」

 

言葉とともに懐から取り出したライセンスを取り出しながら見せながら告げる。すると少女は蓮太郎にとって予想外の発言をした。

 

「知ってますので。お兄さんから聞いていました。」

 

「へ?     お兄さん?ってちょっと待て。お前知ってて性犯罪者かどうか聞いたのか?」

 

「はい。不幸顔の民警が来たら通してやれって言われてましたので。思った以上に不幸顔だったので確認でした。」

 

「・・・・・・・。」

 

釈然としないながらも”お兄さん”には見当がついた蓮太郎であった。

 

 

 

 

下水道は以外にも温度が丁度よく中は広く快適だったが少しの悪臭に頭がくらくらした。

 

少女について歩くうちに開けた場所に出た。そこには赤い目をした少女たちと一人の老人がいた。

 

「あんたが松崎さんか?俺は里見蓮太郎、民警だ。」

 

「はい。お話は彼から伺っていますよ。今日はどのようなご用件で?」

 

(なるほど、やっぱりアクセラレーターはここにいるのか。今は姿が見えないが。)

 

「人を探してるんだ。この子を見なかったか?」

 

延珠の写真を見せながら、老人の反応を伺う。すると

 

「ええ、今朝からこちらに来ていますよ。ただ・・・・」

 

「?」

 

「今は一人になりたいそうでして。」

 

「そっか、じゃああいつに伝言頼む?」

 

「はい。なんでしょう?」

 

「晩飯作って待ってるから、あんまり遅くなるなよ。って。」

 

「わかりました。伝えておきます。」

 

 

 

 

「オイ・・・・戻ってやンねェのか?」

 

暗がりで呟かれた一方通行《アクセラレーター》の言葉は少女に聞こえたはずだが少女-延珠には答えられなかった。それでも一方通行《アクセラレーター》続ける。

 

「人ってやつはどォしても醜い部分ってのはあるもんだ。それは確かに自分にとってはつらい事かもしれねェ・・・・・・。」

 

その言葉を聞いて何を思い出したのか、小さな嗚咽が聞こえ始めた。彼はそれでも構わずに続ける。

 

「でもよ、自分が信じた奴、そいつらからどれだけ嫌われようとそいつらの楽しい日常を護ってやれるのはお前ら民警、って奴なんじゃねェのか?  ・・・・・それに、自分を信じてくれる奴がいるってこ

 

とをわすれんじゃねェぞ?」

 

「お前らの仕事はお前が大好きな人たちの日常を護れンだからよ。これからも護ってやればいい。どうしても嫌われンのがいやなら見捨ててもいいんじゃねェか?」

 

「見捨てるなんて!妾にはできない!」

 

一方通行《アクセラレーター》の方を向き、顔を涙でくしゃくしゃにしながら叫ぶ。そんな延珠に向かってなおも一方通行《アクセラレーター》は続ける。

 

「だったら護ってやれ、お前がどんなに嫌われても、おまえ自身が大切だと思う奴、お前を信じてくれる奴をお前の力で護ってやりァいいじゃねェか。そうやって自分のしたい事を精一杯やりゃあいい。

 

そうすれば、いつかはわからねェが、お前を認めてくれる世界が出来るんじゃねェか?それまではお前の力で大切な奴らを護ってやれ。」

 

その言葉を聞いて少しすると延珠はすくっと立ち上がり彼の方へと振り向き頭を下げた。

 

「ありがとう!すまぬ心配をかけたな。」

 

まだ涙の跡は残るものの、先ほどとは違い先ほどまでの暗い雰囲気は消えているように感じた。

 

「気にすンな。それよりもさっさとあいつのとこに戻ってやれ。」

 

「うむ!またな!」

 

「あぁ。じァあな。」

 

別れの挨拶をした延珠は颯爽と広間を飛び出していった。おそらく蓮太郎の待つ家へと向かったのだろう。その姿を見送った後、いつものソファで眠りについたのであった。

 

 

 

 

 

 

次の日、蓮太郎からの連絡で23区まで佐奈と一緒に来ていた。(あの後、蓮太郎たちはちゃんと仲直りをしたらしい。)

 

どうやら、感染源ガストレアがこちらで見つかったため一緒に見つけて欲しいとの事だった。

 

「ったく、詳しいことは聞いてねェが、空を飛んでるらしい。見えるか?」

 

頭の後ろを掻きながら退屈そうに隣に立っている佐奈に聞く。

 

「えーと、うん。いました。 ヘリもいますね。あ、誰か飛び降りて攻撃しましたね。」

 

その台詞につられて佐奈が見ているほうを向いてみるとヘリの高度が下がりもう一人飛び降りたようだった。

 

「はァ? あの高さから飛び降りンのかよ、自殺行為だな。」

 

「行きましょう! たぶんあの民警です。」

 

「ったく、世話が焼ける奴らだ。」

 

そうして、落下地点であろう場所に急いで向かった。

 

すると聞きなれない声と、剣が空を切るを音が聞こえた。どうやら連太郎たちとは別の民警がいるらしい。協力してガストレアを倒しているのだろうと適当に予想を立てながら、戦っているであろう場所へと

 

急いだ。しかし、彼の予想は間違っていた。蓮太郎ともう一組のペアが戦っていたのである。

 

(なんだありゃ?)

 

それが彼の素直な感想である。蓮太郎と戦っているのは外側へ押し出す何らかの力を持ったふざけた仮面をつけた男だった。その男は、蓮太郎を謎の力で近くの岩へと叩きつけていた。

 

「オイオイ、仲間割れか? お前ら頭ン中大丈夫かよ?」「え!?ちょっと!」

 

佐奈の制止の声を無視して戦いのど真ん中へと歩いていく彼に向かって、仮面の男は銃を顔も向けずに即座に発砲した。

 

放たれた銃弾は、彼の心臓へとまっすぐ飛び彼の肉体に当たった直後、向きを変え仮面の男へと跳ね返った。

 

仮面の男は謎の力で自分に戻ってきた弾丸をとめて、興味深げに一方通行《アクセラレーター》へと向き直る。蓮太郎を拘束していた力はなくなり、地面へと落とされる。

 

「なかなか、面白い力を使うじゃないか。今のは何をしたんだい?銃弾を反射させたように見えたが?」

 

「わかってンじゃねェか。そういうお前は何だ?」

 

「教えてもらったからにはこちらも言おう。私は蛭子、蛭子影胤。あそこで戦っているのは、蛭子小比奈。私の娘だ。それと、私のこれは斥力フィールドというものでね・・」

 

「あァ。もうわかったから黙れ。」

 

そういうと足元の向きを変え、仮面の男へと肉薄する。突進してくるのを予想していたのか、斥力フィールドで応戦しようと展開をし一方通行《アクセラレーター》を吹き飛ばそうとするが、彼の体に斥力フィールドが当たった瞬間、その力は影胤へと反射された。自分の技をモロにくらい後ろへと吹っ飛ぶ影胤を確認した小比奈は悲鳴に近いものをあげながら、影胤へと寄っていった。

 

「パパァ!!」

 

影胤は何事もなかったかのようにむくりと起き上がると一方通行《アクセラレーター》へと向き直った。

 

「なるほど。反射は君の体に触れればどんなものも弾き返すのか。実に興味深い。」

 

「ちょっと違ェが、まァ大体そンなもンだ。」

 

「これは、分が悪いね。私たちは引かせてもらおうか。」

 

「さっさと失せろ。目障りだ。」

 

「これは失礼。いくよ小比奈。」

 

「うー。延珠斬りたい!」

 

「だめだ、おろかな娘よ。」

 

「ぶー。パパ嫌い。」

 

そんな会話をしながらも、影胤達はケースを持ち去っていった。影胤たちがいなくなって蓮太郎はため息を1つき、一方通行《アクセラレーター》の方へと顔を向けた。

 

「さんきゅ、助かったぜ。」

 

少しはなれたところから延珠が駆け寄ってきた。

 

「蓮太郎!無事か!?」

 

そんな延珠を受け止め、頭を撫でながら

 

「ああ、延珠も大丈夫そうだな。」

 

 

「うむ!妾は強いからな!」

 

 

「そっか。」

 

「あんた達もありがとな。」

 

「次からは自分でやれよ?ったくめんどくせェ。ところでよォ、あのケースは持ってかれちまったがよかったのか?」

 

それを聞き蓮太郎が、こちらを振り返り深刻な顔でこういった。

 

「手を貸してくれ一方通行《アクセラレーター》。東京エリアが消えるかもしれない。」

 

予想だにしない回答に一方通行《アクセラレーター》は蓮太郎の方を向きながらいやそうな顔をしていた。脇では、佐奈が目を輝かせながら彼を見つめていた。




お久しぶりです!

更新遅れてすみません。見ていただければ幸いです。

感想、評価などよろしくお願いします。

誤字などあれば報告お願いします。

一部修正しました。

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