IS インフィニット・ストラトス 金と銀の瞳が見据えるモノ リメイクversion   作:フレイムバースト

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ちょっと読み直して、磨美に対して自分が感じた事を詰め込んだ話。


学年別トーナメント…逆転

「磨美りん!磨美りん待ちなって!」

「サっちーも来て!相部屋の女の子が減るのは嫌でしょ!」

「嫌だけどさ!あれはどう見ても普通じゃないじゃん!」

「わかってる!」

「わかってるなら止まって!誰かぁー!この子止めてぇー!」

 

アリーナのカタパルトへと向かう廊下を走る少女が二人。一人は焦った様子で前を見ずに駆け、もう一人はそれを追う形で走っている

「サっちー、止めないでよ!」

「普通じゃないからってだけで止めてるんじゃないよ!!磨美りんは口ではラウラさんのこと言ってるけどその目と頭が織斑一夏でいっぱいだろうから止めてんの!」

「だから何!」

「今の磨美りんがなんかしたら余計な被害が出て、ラウラさんか織斑一夏のどっちか…いやどっちも犠牲になるかもしれないんだって!」

その言葉を聞いて、前方を走っていた少女は立ち止まった。

「磨美りんのISの火力、どう見たって過剰火力の体現でしょ。そんな武器で暴走したラウラさんのISを撃ったらラウラさんごと消し炭にしかねないし、下手に介入したら織斑一夏のことだから磨美りんを庇おうとして致命傷喰らうかもしれないんだよ」

「じゃあ…じゃあどうしろって言うのよ」

「…織斑先生と山田先生のところ行こう、とりあえず今磨美りんは落ち着くべきだよ」

「ぐぅぅぅ…」

歯痒さと無力感を滲ませる唸り声を出しながら磨美は壁を殴りつけ、サフィはそんな磨美を引っ張りながら織斑千冬と山田真耶がいる管制室へと向かっていく。

 

「管制室ー!開けてくださいー、サフィ・マーキスが磨美・アーデルハイトを引っ張ってきました!」

サフィが管制室の扉を叩きながらそう言うと、管制室の扉が開き、その中でオペレーター業務をしていた山田真耶と織斑千冬から視線が飛んでくる。

 

「マーキス、待機命令が出ていたはずだが…その様子だと問題児を捕まえて連れてきてくれたようだな。ご苦労」

「ちょっと磨美りんが今熱くなってて普通の判断ができないんで先生の近くに置かせてくださいね。」

「構わん。二人とも適当な椅子に座っておけ。…さて、アーデルハイト。わかってはいるがなぜ飛び出したか聞かせて貰おうか。…相部屋の仲間が心配だったか。それとも一夏が心配だったか。他にも理由があるなら言え。」

「………一夏くんが心配で、援護に回りたくて…」

 

磨美は織斑一夏が世界で初めてISを動かしたことを知った後、彼を狙うマスコミや研究者が彼個人の生活を侵害したことへ怒り、ISを動かしたことで自由を失った織斑一夏に対する心配、そしてIS学園の生活で一夏が苦労していることへの憐み。それらが彼女の中で恋愛感情と共に肥大化し、彼女を織斑一夏に深く依存させていた。一夏を助けようとしたのもラウラのためではなく磨美自身の自己満足だった。

 

「ほう、自分の力で一夏を助けようとしたか。…なら、ボーデヴィッヒはどうする気だった」

 

ラウラ・ボーデヴィッヒの事をまともに考えていなかったなどと言えるはずもない。彼女は口では心配することができても、心から気持ちを送れる相手が織斑一夏以外に存在しないのだから。そしてそれをようやく自覚した彼女は自身の行動の気味の悪さに頭を抱えて黙り込む。

 

「……」

「答えられんか。……ふむ、まぁナントカは盲目とはよく言ったものだな…。いいかアーデルハイト。誰かの力になりたいのなら自分の力を理解しろ。理解しないまま力を振るえば目的は為せても別の何かを失うぞ。私からの忠告だ」

「………はい」

「…それともう一つ言っておくが、あいつはお前が思っているほどヤワでもない。しっかり見ておけ」

「へ…まさか織斑先生、織斑一夏にアレ対処させるつもりですか!?」

「私はそのつもりじゃなかったが、アイツは本気でやるつもりだぞ。…まぁ…アレが私の猿真似なら私をしっかり見ていた人間なら対処は容易い。…所詮過去の記録だ、成長し続ける者たちにはその武器は届くまいさ」

 

その言葉を聞いた四人がモニターを注視する。片腕だけにISを展開した織斑一夏と、織斑千冬を模倣した存在がほぼ同じ得物を持って向かい合う

 

そして模倣した存在が斬りかかったところを織斑一夏は切り払い、そして生まれた隙に、相手の前面を斬り払う。

 

「……す、すごい…」

 

日本武道を思わせる一瞬の剣戟で決着がつき、そのまま機能停止したISから解放されるラウラ・ボーデヴィッヒを受け止める織斑一夏を見て、サフィは口を開けて驚き、磨美はその様を見届けた後に頭を抱えて管制室から退出した。

 

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何もわかってなかった。

 

私は一夏くんが大変だろうから、助けてあげたい一心で今まで動いていた。

一夏くんを守ってあげるのが私の役割だと、勝手に思っていた。

実際は一夏くんは誰かを助けられるほど強くなっていて、私が過剰に助ける必要なんてなかった。

私は、私だけが一夏くんだけを見ていられればいいと知らないうちに思い込んでいた。

そのために誰かが犠牲にしようと、誰かを踏み台にしようとしていた。

それで私は幸せになれても一夏くんが幸せになれるはずがない。私は一夏くんの事を想っていたつもりだったが、それは私が一夏くんで幸せになるための自己満足で、手段と目的が入れ替わってしまっていた。

 

「馬鹿にしてた…」

 

そこから何も考えずに私は更衣室に戻り、着替えを確保した後寮の自室へと戻ってただ無気力な状態で過ごした。




善意は時として無差別に傷つける危険物になる


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