まあ別に焦ってないからいいんですけどw
というわけで前回予告したところまで行かなかったのですが許してね♪
それではどうぞ。
再び校舎外に降り立った雅は、背負っていた巨乳美女校医、鞠川静香を降ろし辺りを見回す。
「ねぇ、斬島君。本当に大丈夫なの? なんだかこわ~い人たちさっきより増えてる気がするんだけど」
静香の言うとおり、まばらではあるが、奴らが集まりだしていた。
雅1人ならば気配を殺し、音も消し去れば難なくバスまで辿り着ける。
しかし今回は静香も一緒だ。
嫌でも奴らに感付かれるだろう。
だが忘れてはいけない。
静香と共にいるのは世界一、真剣術に長けた普通の高校生、雅である。
雅がそんなつまらない行動をとるはずがなかった。
「別にいいんじゃねぇか? どのみちやることは変わらねぇし。ただまぁバラバラってのは面倒だよな」
すると雅は日本刀の鞘を近くにある手すりに打ち付ける。
ギィ~ン、と辺り一帯に鉄独特の音が響き渡った。
「ちょ、「ちょっとあんた何やってんのよ! そんなことしたら奴らが寄ってくるじゃない! 奴らは音に反応してんのよ!」」
二階から沙耶のどなる声が聞こえてくる。
雅はそれに右手を振るだけで答えた。
「んじゃ先生、行くぞ」
「い、行くってこの中を!?」
「当然だろ? こっちの方が面倒がなくていい。先生は後ろから付いてこいよ」
そして雅は歩き出す。
困ったように、しかし置いて行かれまいと、静香もそれに続いた。
前方、バスの止まっている場所までの奴らの数はおよそ50体。
ただ、先ほど響かせた音により、昇降口や校庭にいた奴らもゆっくりと雅たちの方へと動き出している。
当然、校舎内の奴らも反応したことだろう。
これにより、職員室に残っている者たちの危険は少なからず減少したことだろう。
現に雅の危険すぎる行動は自分たちの為なのだと、残っている5人は判断し、即座に脱出に移った。
しかしながら雅はそんなことまで考えてはいなかった。
単に、物足りなかっただけである。
「な、なにこれ・・・? どうなってるの・・・?」
静香は困惑していた。
前を歩く少年、雅を見て。
刀を一振りすれば、同時に3体もの奴らの胴体を切断し、死角から襲われたにもかかわらず、振り向くことさえせずに、ピンポイントで額に突き刺さる刀。
それだけではない。
雅はこれまでに一度も立ち止まってはいなかった。
静香は思う。
自分は最初に言われたとおり付いて行っているだけだ。
ただの一度も歩みを止めることなく、最初と同じ歩調で。
にもかかわらず、あれだけ集まりだしていた奴らが次々と地に倒れていく。
胴体を切断された奴らは、死にはしないが立つこともできず這い寄るだけ。
それらにもきっちりと止めとなる頭を潰しながらも悠々と雅は歩みを進めている。
唖然とそれを見つめ、ただ歩いていた静香は気付いた時には目的であるバスの目の前まで来ていた。
「んじゃ先生、運転よろしく」
呼吸一つ乱さず、汗すらかくことなく涼しげに告げる。
「え? あ、わ、わかったわ」
ようやく我に返り運転席へと乗り込んだ静香は、雅を乗せて、皆が出てくる昇降口、その前にある階段下までバスを寄せる。
バスの奏でるエンジン音によって再び奴らが密集し始めたのを確認した雅が笑みを浮かべた。
自らの欲求を満たす有象無象が湧いたことの喜びをかみしめるように。
「静香先生。あいつらが出てくるまでちょっと遊んでるからよ。出発んときに呼んでくれ」
「え、ちょちょっと斬島君!」
有無も言わさずバスを降り、近くの奴らから斬り伏せる。
まるで水を得た魚、金棒を手にした鬼のように心底嬉しそうに斬殺を繰り返す。
今の雅を止められるものなどこの世には存在しない。
「は、はは、はははは――いい・・・いいんだけどよ・・・」
歓喜の笑い声をあげながら、一切の無駄なく相手を斬り伏せる。
しかしふと、校庭のど真ん中で雅は動きを止めた。
そして瞬く間に奴らに囲まれる。
その数およそ100。
雅はその中心でなにやら独り言をつぶやいていた。
そのころ、ちょうど皆がバスに乗り込むところまで来ていた。
移動中に生存者を見つけたのか人数も増えている。
「ちょっと、あいつ何やってんのよ! 逃げ場がないじゃない!」
「確かに・・・あの数ではいくら彼でも・・・」
「助けに行こう!」
「馬鹿言わないで小室! あんなのどうやって助け出すのよ!」
「だけど・・・雅はおれたちの為に・・・」
沙耶のいい論に、無理だとわかっていても諦めきれない孝は意を決し、一人飛び出そうとする。
「あの~? 斬島君は準備ができたら呼んでくれって言ってたんだけど」
「はぁ? 呼んだところで自分が身動きできないじゃない。ここで呼んでも無暗に奴らをおびき寄せるだけよ」
沙耶の言い分はもっともだ。
普通はあの状況で生きて出てこれるなどだれも思わない。
けどそれでも僅かな希望を込めて、孝はバスの窓を開け叫んだ。
「雅ッ! こっちは準備できたぞッ! あとはお前だけだッ! だから出てこいッ!」
誰もが無理だと思いながらも、一様に奴らの集団へと視線を向ける。
直後だ。
全員の表情が一瞬で青ざめた・・・。
奴らの首が、恐ろしい数の頭部だけが上空に舞い上がるという、ありえない現象によって・・・。
「ああ、つまらない・・・。抵抗するでもなく、鮮血を撒き散らすこともない。ぬるいよ、お前ら。この程度でおれの欲求を満たしたいならあと300は連れてこいよ。そしたら少しは面白くなるだろうぜ」
奴らに囲まれ、否、動きを止めたが故に奴らに囲まれた雅は1人、ひどく物足りなさそうな表情で呟く。
当然だ。
いくら動いているとはいえ、奴らは一度死んだ死人だ。
血などとっくに通っておらず、痛覚がないが故に、斬る際に抵抗することもない。
雅にとってはまるで豆腐、いや、空気を斬っているよな間隔で物足りなかった。
故に、動きを止め、こうして囲まれてみたものの、皆目、恐怖すら湧かない。
もういい、と雅は諦めた。
そして、このつまらないをショーを終わらすべく、鞘に納めた刀の柄に手を添える。
ちょうどその時だった。
バスの方から自分を呼ぶ声が聞こえる。
俗にいう抜刀術。
その構えのまま、雅は不敵に笑った。
次の瞬間、雅の身体が、腕が、構えていた刀が消え、気付けば刀は鞘に戻り、構えも解いていた。
「雅流抜刀術、百人斬首(ひゃくにんざんしゅ)ってか? はは。だっせぇ名前。沙耶にでも命名してもらうとするか」
そう笑って自分のセンスのなさを実感する雅だが、目の前に広がる光景はまさに名の通りだった。
一振り、いや、一振りだったかも認識できない剣速で、だが確かに振るったその刀で、100体もの奴らの首を一度で飛ばしてみせたのだ。
地に倒れ伏す奴らを尻目に、バスへ向け雅は歩き出す。
確認のため、もう一度だけ言おう。
雅は世界一の真剣術使いであり――――――
普通の学校に通う高校生であり――――――
母親すら斬った男だった――――――
さてさて、そろそろ冴子との絡みを本格化させていきたいところです。
正直、雅を見た、それから校舎から出てくる際におそらく渡された刀で奴らを斬っただろう冴子はそろそろ色々と限界でしょうからね←なにが?(笑)
次回は前回言っていたシーンになります。必ず!
そして都合のいい展開も頭には浮かんでいるのでそっち方面で進めつつ、冴子と関わりを深めていこうかしら?
あ、ヒロインは感想にコメしてくれた皆さんの希望通り冴子で行こうと思いますので。
それではまた次回、さようなら。