魔法科SSシリーズ   作:魔法科SS
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前々回の深雪×リーナSSとは異なる設定(ちょっと未来の話なのは一緒ですが)の百合妄想です。深雪×リーナなのかリーナ×深雪なのか……。


※こちらではpixivの投稿作品を転載しています
掲載元:http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3189395


好かれると可愛い【深雪×リーナ】

Scarlet Can Whiten



「リーナって私のこと相当好きよね」
「はあああ?」
 リーナは即座に「何言ってんのこの子」という顔をした。
 もっとも、リーナが「何言ってんだコイツ」というリアクションを取るのはいつものことではあるので、彼女の呆れ方度合いが正確に深雪に伝わったかは心許ない。
「相当というより、かなり好きなんじゃないかしら」
「ソートーとカナリの違いがわかりづらいんだけど」
 アメリカ育ちのリーナは純粋にニュアンスの違いに疎かっただけだが、これはもっともな疑問であって、「相当」にせよ「かなり(可ナリ)」にせよ、「充分な量に達している」という意味で「甚だしい」を表す由来は同じだ。
 一応現代語としては、「かなり」の方が幾分強いニュアンスを持つだろうか。
 深雪もそのつもりで口にしたのだが……「好きになるには充分なほど好きなんじゃないかしら」という言い重ねの強調になる点では、やはり変わらない。
「だっていつも、じろじろわたしを見てるじゃない」
「じろじろなんて見てないわ」
「体を触ったら、みょうに狼狽えるでしょう」
「うろたえてるわけじゃなくて、その……ミユキがべたべた触りすぎなのよ」
「じゃあ二度と触らないことにするわ」
「えっ───」
「嘘。安心しなさい」
「…………………」
「今、ものすごい表情の変わり方してたわよね」
「んな、何が言いたいのよ」
「ふふ……面白い」

 他者からの好意を素直に受け入れられないのは兄の欠点のひとつだ、と常々感じている深雪だが、なかなかどうして、深雪自身も人のことは言えず「他者からの好意」が苦手な少女だった。
 達也とは反対に、強すぎる慕情に慣れすぎているので、よく言っても無頓着、悪く言えば冷淡になりがちである。
 もちろん、相手に冷淡さを悟らせない対応ができる点では、無神経でもなく無愛想でもない。しかし、その身に向けられる好意の大半は、心に届く以前に突っぱねてしまうことが、深雪にとっては自然体にもなっている。
 どれだけ強い想いを向けられようが、「敵意を感じない、いい人」で留まり、その他大勢と公平に扱ってしまう。それどころか、警戒に繋がることも少なくない。
 深雪の方から信頼し、心を許せるような相手と認識しないかぎり、簡単には好意に応えようとはしない(表面的にしか応えようとしない、が正しいか)。
 彼女の愛情というものは大部分が実兄(実母の生前は母も含まれていたが)のために費やされるので、それ以外には最低限の好意しか分け与える気にならない、という理由もあるだろう。
 とは言っても、身内と認めないかぎり心を開こうとしないのは、そもそも十師族の魔法師共通のメンタリティではあるし、四葉の一族はとりわけその傾向が強い。
 その上、令嬢として器量を磨き上げられた彼女にとって「最低限の好意」は俗人以上の余裕があった。人の上に立つ者としての余裕ゆえに、社交的で心優しいお嬢様という風情を深雪はまとうことができている。
 柔和とも冷酷とも呼べる、貴人らしい性質だった。
 そんな深雪にとって、リーナは唯一、その好意を重荷に感じない相手だった。そして、興味の尽きない存在だった。
 一言で言えば、リーナからの感情には「憧れ」というものがないからだ。
 ときおりコンプレックスのような感情をにじませることはある。だが、深雪に対して嫉妬と対抗心を維持できる者自体が稀だ。一人挙げるとしたら、一学年下の再従妹、亜夜子くらいだろうか。
 しかし亜夜子の対抗意識は、深雪にとってまだ可愛いと思えるもの。亜夜子にすれば、その「余裕」は「油断」にすぎないものだと思わせたいところだろうが……。身内の亜夜子よりもいまや付き合いの深くなったリーナなら、互いの武器を良く知る仲だけに油断を覚える余地もない。
 唯一のライバル。かつてそう心に誓った以上、深雪にはリーナ以外の「ライバル」はどこにも存在しない、とも言える。
 深雪が決めた「唯一」の人、という意味で、リーナはあの兄にも準じる存在だった。それは、リーナ本人が知る由もない想いだったが。
 そして対等と認めた相手から、崇められるでもなく、飾りもの扱いされるでもなく、どうやら好かれているらしい、ということが新鮮で嬉しかった。
 2096年の早春以来、しばらく離れていた二人だったが、こうして一緒にいられるようになってから、深雪はリーナを一方的に独占しようとしていた。
 ひとつには、あまり達也とリーナが意識しあうようにしたくないから、という兄中心の事情によるもの。もうひとつには。
「第一、なんでいつもワタシにつきっきりなの? プライベートってものがあるでしょう」「そうね。あなたに悪い虫がつかないように、独り占め……が理由かしら」
 口元に指を乗せて、真面目に考え込むフリで目を伏せ、答える。みょうに色っぽい──と、見る者に思わせるに充分な仕草だった。
「ナニよ、それ……っ!」

 彼女の隣に座っていたリーナの腰も、思わず浮くというものだ。
 だってまるで、さっきから見抜かれていたリーナの気持ちよりも、むしろ深雪の方が。
「ま、まるでそれって……。わ──ワタシのこと」
 口淀んでしまって、言葉の先が出てこない。
 言葉に出してしまうと、自分の中の常識が崩れてしまいそうな気がする。でも、そう(﹅﹅
)
だとしたら? まさかこのコが? 自分のことを……
「リーナ? 今スッゴク嬉しそうな顔してるわよ」
「は?!」
「口の端がニヤニヤしてたわ」
「べ、べっつに」
 しかし、顔が熱い。単に恥ずかしいとか、照れているのでもない。つい先程「深雪が自分に気があるのかも」と想像しただけで、ありえないほど浮かれた気分になっていた。彼女が根っからの日本人だったなら「いやったあ」や「よっしゃあ」くらいは心で発していたかもしれない、という程度には。
「前から疑ってたのだけど……リーナって女の子が好きな人だったりはしない?」
「な」
 なんてこと言うのよ、とリーナは慌てたが、深雪はどういう意味での「好き」なのかはまだ明言していなかった。
 深雪の周囲には、自然と少女趣味の同性が大量に集まってくる(「目覚める」とも言う)ので、珍しくない話をしているとも言える。
「きっとそうだわ。どう? わたしの隣にいてドキドキしないかしら。ねぇ……もっと近くに寄ってもいい?」
 ──男たらしか! リーナは思わず声に出して叫びそうになった。危ない。どう振舞おうとしても、表情のゆるみが隠せなかった。胸がドクドク鳴って、前後の向きすらあやふやに感じる。
 当然というか、こんな時に思い出したのは彼女の兄のことだった。このブラコン妹が、兄以外にこんな媚びた表情を見せるはずがない。つまり自分は、あの男だけが(﹅﹅﹅﹅﹅﹅)知っているこのコの顔を見ていることになる。
 これでいつも平然としている達也の正気を疑う──彼本人に言わせれば平然でもないにしろ──と同時に、「自分だけにこの顔を見せている」という特別感に酔い痴れそうになる。
 どうせ「達也の次に」でしかない立場の屈辱感は、胸の中の灼熱でかき消された。そんな都合のいい心の動き自体が、屈辱的と言えそうなものだが。
 にくったらしいけど、全力で抱きしめてやろうか、という衝動とリーナは懸命に戦っていた。
 深雪が性別を超えた美しさを誇ることは、留学生時分によく思い知らされていたことだ。彼女と同窓の女の子たちは、他の女子と同じように深雪を見ることができない。体育の授業で、鼻血をこぼしそうになっていた(実際に流していたかもしれない)女子も知っている。
 でも同時に、深雪は「美しすぎて気後れする」という扱われ方をするタイプでもあった。目を奪われるのだが、まぶしすぎて直視できないといった類のだ。何かの間違いでもなければ、飛びかかろうとも考えられない。
 その点で、今のこの状況は明らかに「間違いがある」に含まれると思われた。普通なら迫ることも叶わない対象が、向こうから迫ってきているのだから、誰でも理性を失いかねない。
 そう、誰でも。ここに及んでもなお、リーナは脳裏から「恋愛感情」を排除しようと努力していたのだ。男だって、好きでもない異性に鼻の下を伸ばす生き物だろう。深雪の魅力が性別を問わないとすれば、女同士でも同じ言い訳が成り立つはず──、ようは不可抗力で興奮しているだけなのだ。
 でも、本当にそうだろうか。この感情を不可抗力で片付けるのは、何か大事なものを汚しているような気もした。
 防戦一方なのがくやしい。自分自身はなんとも思われていないのだろうか。自惚れるわけではないが、同性にモテた経験がリーナになかったわけではない。軍で活動する前の少女時代は、アイドル並にモテまくっていたとさえ言える。
 リーナの葛藤をよそにして、深雪はじっと目を合わせようとさらに近寄った。思わず顔を背けようとするが、視界の端に映る面差しから意識を外すことまではできない。視線を感じるたびに、心拍数が上昇することを否応なく自覚する。
 やっぱり押し倒してやろうか、と思うと同時に、ひょっとしてこのまま抱きついてこないかしら……と淡い期待をしてしまう。そんな期待をする自分が一番、恥ずかしい。
 前にも後ろにも動けないでいると、次第に深雪からの視線が、単に目を合わせようとしているのではなく、「観察」の色を帯びはじめていることに気付いた。
「ねえリーナ」
 そっと、カーペットの上で遊ばせていた手に指を重ねられた。その指は細く、おそろしく柔らかいが、込められた力は強い。ごくっと喉の音が鳴ってしまう。
 おもむろに真剣な表情で、冷ややかな美貌が放つ全開のプレッシャーを込めながら、深雪はこう切り出した。まさしく、研ぎ澄まされた刃物で突くように。
「あなた、わたしの恋人になりなさい」
「ッ……!? い、イヤよ。お断りだわ」
 少し噛んだけど、リーナは即答ではっきりと断った、はずだったが。
「ふうん………………?」
 表情の奥を見透かすように、囁き声でも届く距離まで顔を近付け、上目遣いに覗き込んでくる。
「嫌、……ね。普通なら『何それ?』とか全力でツッコんでくるところじゃない? 何言い出すのかわけわかんない! って。それがいきなりお断りの返事ってことは──リーナ、あなた選択肢としてアリだと思ってるんじゃない」
「はああっ?」
 今度は全力のツッコミだった。しかしこれは、流れ的に「図星」と言っているような反応だと自分で気付き、危機感に戸惑う。まずい。何より、さっきから顔の温度が熱すぎる。耳も。つまり外から見れば、白人種特有のピンクがかった白い肌が、首から上だけ真っ赤に染まり上がっていた。
「ミユキ……それ本気なの?」
「絶対、他の誰にも渡す気がないという意味では本気よ」
 くやしいことに、胸を鷲掴みされてしまうようなセリフが返ってきた。冷静に聞けば、何やらはぐらかしを含んだ言葉なのだが。
 事実、「本気で好きなのか」という答えがうまく誤魔化されている。達也に対して特別に「本気」を捧げている深雪は、一番ではなく二番目にリーナを位置付けざるをえない。
「本気であなたを口説くつもりで言ってるわよ? ──絶対、にね」
 だが、必ず落としてみせるという意志がある点では、堂々と言い切れるわけだ。
「ご、強引すぎよ!」
「強引なのは嫌? じゃあ……優しくしてほしい?」
 体をもたれかけさせてきた。これはこれで強引という気がするが、拒絶をしないリーナには効き目があったようだ。
 ここで好きになっちゃダメ、とリーナは頭の中で警鐘を鳴らす。ああ……ここで抱き返すとかもダメ。ダメだから。たぶん、引き返せなくなるから。
「どうせなら結婚しましょうか」
「結婚」
「わたしとあなたで」
「冗談」
「だから本気よ。……まぁ、結婚を前提にお付き合いしましょう、に訂正してもいいのだけど」
 彼女が兄妹で行っている近親相愛に比べるなら、いや、比べるまでもないほど常識的な提案をされていることは理解できる。ハードルの高さはあるが、いま不可能なことではないのだから。
 不道徳があるとすれば、いわゆる「浮気」に該当するのではないかとリーナは思ったが。

 それに将来のある魔法師の女性としても、思い切りがよすぎる告白じゃないか。まだ、からかわれている気がしてならない。
「ミユキはワタシと……その、そういうコトもしたいって思うの」
「うーん……。リーナがしたいなら、してあげるわ」
 これだけ誘惑しておいて、「してあげる」はないだろう。やはりこの娘は、人の気持ちを弄んで楽しんでいるだけじゃなかろうか──。
「でも、今チョッとやってみたいって思ってるかな。……リーナって、無防備よね」
「えっ」
「どう? わたしに襲われたい? それとも襲いたいかしら」
 今のリーナにしてみれば、恐ろしいまでの二択を迫ってくる。ぞくっと、背筋を冷たいものが走った。瞬間、その背中からの刺激が体の奥の方に響いたあと、予想しがたい官能感へ変化したことに自分で驚く。
「黙ってると、襲うからね」
「だ、ダメ、待って」
「ダメって言われた方が襲い甲斐があるってことはわかる? 襲う、ってことは抵抗されることもセットなんだから」
「今は待って」
「今すぐじゃなきゃOKって言ってるの?」
「とにかく今はまずいの」
「ふうん……。でも女同士っていいものね。なぜあなたが慌ててるのか、自分のことのようにわかる気がするから」
「えっ」
 深雪はリーナの上体に体を添わせながら、共感の働きを自覚していた。火照った体が汗ばみ、体内の一点を意識しながら我慢に震える姿が、自分の「あのとき」を思い出させる。リーナの感覚を五感でトレースすることで、それは容易に想像ができた。異性である兄相手では、いくら「想って」も共振できない類のものだ。
 少しずつ、リーナの目が動揺で染まっていく。確信。
 深雪の動きは速かった。元々近い距離だった顔と顔を、上半身の反動だけで隙間を埋める。虚を衝かれたリーナは口づけを避けられなかった。続いて、握っていた片手はそのままに、残った腕が背中をかき抱く。
 浮き上げた腰を戻す勢いで、深雪はリーナを巻き添えにして背後に倒れた。一瞬の接触を惜しむように、唇同士が離れる。
 自分から襲うと宣言しておきながら、その結果は「押し倒した」のではなくて、「押し倒された」格好。
 部屋の照明で影を作りながら、リーナは上気した顔で微笑する深雪を見下ろし、深雪は涙目で唇を噛んでいるリーナを見上げていた。
「──あなたさっき、いやらしい気分になってたんでしょう」
「う……」
「やっぱり面白い」
「面白いって何よ。こんな時に。他の言い方があるでしょ」
「ええと、──リーナのエッチ、……とか?」
「ちがっ……だから…………その。いきなりするなんて。──『好き』とか『可愛い』とか、言わないの?」
「ふっ、あはは、うん。そうねえ」
「こっちの、一方的なのなんてイヤですからね」
 あなたはそこで白状するのか、と深雪は思ったが、これはあと一押しかなと解釈する。確かに、熱烈なプロポーズをしているようで、好きだとも可愛いとも伝えていない。普段から「すごく可愛いわ」「とても綺麗ね」とは言っているのだが、今言うのとは意味が違うのだろう。
「そうよ、リーナが可愛いから襲っちゃった」
 本音を言えば、単にリーナを束縛したかったからだ。相手の好意を利用する、という酷い方法で。その手管にはサディスティックな悦びを感じつつも、自分がリーナに「惚れている」かというと、深雪には少し微妙だった。
 そんなのどうでもいいんじゃないか、という気もするが。リーナも勢いに流されて、続きをしてくれたらラクなのに。
「ホントに…………?」
「じゃあ、このまま、わたしの体を自由に触っても大丈夫って言ったら信じる? そんなの好きな人とじゃないと、誰にも許さないわ」
 ダメ押しとばかりに、殺し文句を使ってみる。影の中でも分かるほど赤く染まる美貌を見るに、効果は覿面だったろう。それでも、リーナは返答に詰まって硬直したまま動く様子がない。──もしかして、この娘はいわゆる「ヘタレ」と呼ばれるやつなのだろうか。じれったすぎる。キスだってもう済ましているというのに。
 リーナは、もう一度してみたいとは思わないのだろうか。わたしと。

「ミ、……か……して」
「え?」
「み、ミユキから、して──ミユキからしてよ。それならいい。もう、ホント……ワタシから言わせないで」

「──可愛い」

 直前の「可愛い」とは逆の、本音から出る言葉だった。深雪は真上にあるリーナの頭を引きずり落ろし……その発声機能の自由を奪った。艶めいた吐息の音だけが漏れる。
 再び明かりの下に照らし出されたリーナの素顔は紅潮したままで、恥じらい、続きを期待していることがよく理解できるのが、不思議な感覚を誘う。わたしも兄としているときは、こうなのだろうか。
「……なんだか変な感じがするのね。やっぱり女同士だから、自分で自分にキスしてるような気分になるのかな。鏡に触ってるみたいに。体のつくりだって、変わらないのだし」
 対するリーナの感想は、深雪の正反対だった。触れた感触が柔らかすぎる、と頭がさっきからびっくりしている。
「でもその違和感が……慣れると気持ちいいかな。なんだかいけない感じがして」
 生憎リーナには、深雪の言う「いけない感じ」が全然分からなかった。ぎゅっとしたら柔らかいし、いい匂いがして、深雪の体の心地よさにのめりこんでいたから。
 深雪に比べてリーナの体が硬い、ということは当然ない。深雪よりも体を鍛えているのは確かだが、「体のつくりがさして変わらない」のは深雪の言う通りで、初めて味わう柔らかさは、「あの」深雪を抱いているという驚きの強さで作り出される感触だった。
「改めてプロポーズするけど、リーナ、大好きよ。わたしのこと好きなら、ずっとこういうことしましょう」
「う、うん」
「わたしはまだリーナの言葉を聞いてないんだけど?」
「す、好き。……ミユキのことが」
「フフっ、嬉しい──。じゃあ、今日はこのくらいにしておきましょうか」
「?……どうして」
「焦らしたいから」
「それ、ヒドくない」
「焦らした方が、次がなきゃって気になるでしょ。今日だけで終わらせたくない。時間をかけないとやり方もワカんないし。その時はもっとリーナの可愛いところを見てあげるから、覚悟するといいわよ」
 既成事実も作ったし。わたしこそ、コッチのことに興味が湧いてきたし。と、深雪は今回の成果に満足していた。しかしリーナは急速に頭が冴えてきたようで、目をしばたかかせていた。
「ありえない」
「何が?」
「今したこと、全部よ!」
 後悔か自己嫌悪なのか、どんどん青ざめていくリーナの顔が、元の白い肌へと戻っていく。
 深雪に服を脱がされていた──、わけではないが、はだけかけていた部分を押さえつけ、居住まいを正そうとする。
「もう二度としない、こんなこと。ミユキもワタシも、今日はおかしかったわ! こんなの、こんなの……っ」
 ふるふると震えて丸くなるリーナを眺めた深雪は、口元に笑みが漏れてしまうのを我慢できなかった。
「ふううん、そう。リーナは、とっても手強い人なのね。フフ」
 「てごわい」に妙なアクセントを乗せて強調し、鼻先で笑う。
 カッとなったリーナは、何かを言い返そうとした。──が。両腕で自身を抱き締めながら、涙目でにらみ返すだけで、何も言えなかった。
 その可愛らしい反応でもう、また次の逢瀬は決まったようなものだ。と深雪は思う。
「今度続きをする時は、何回でも『可愛い』って言うわね。──リーナの好きなだけ」
「……んっ」
 最後に記念のキスをしようとすると、やはりリーナは避けたりしなかった。

 女の子に好かれることが、こんなに心を満たすことだと、深雪は知らなかった。
 もっとリーナから愛されたいと、深くて長い口づけを交わしているあいだ、何度も繰り返し願っていた。



-Scarlet Can Whiten-
End.



 pixivではSBSさんにトビラ絵を提供していただいてました。ご本人による、トビラ絵と深雪×リーナまんがはこちらからご覧になれます。→http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=40833725

 英題にした「Scarlet Can Whiten(スカーレットカンワイトゥン)」は、タイトルの響きにかけた言葉を探しているうちにこうなりました。
 直訳すると「深紅は白に染められる」「紅は白くなる場合がある」で、深紅→アンジー・シリウス→リーナが深雪さんに染まる、それと肌が赤くなったり白くなったりする……的な言葉遊びを考えたりも。






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