ハイスクールD×D〜転生して作る物語〜   作:傘理

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二話

「ふふふ、面白いな」

 

空から声が聞こえてきた。駒王学園にいる全員はすぐに空を見上げ何者かを探る。

木場祐斗はそれを見つける。そして気付いた。

全身を駆け巡る緊張感と体の底から湧き上がる恐怖に。

それは空から降ってくる。シトリー眷属によって駒王学園全体に貼られた結界をいともたやすく破って。

最初に見えたのは白い閃光だった。闇の世界を切り裂いて凄まじい速度で地面へと降下してくる。地響きと共にクレーターが生まる筈だが、白い閃光は地面スレスレで止まる。

全身を白い鎧によって包まれたものがそこにいた。

体の各所に宝玉が埋め込まれ、背中から八枚の光の翼が闇夜を切り裂き、神々しいまでの輝きを発している。

その姿はかつて、兵藤一誠が自分の左腕を対価にしてなった姿。赤 龍 帝 の 鎧(ブーステッドギアスケイルメイル)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)禁 手(バランスブレイカー)状態にそっくりだった。

 

『白い龍』(バニシング・ドラゴン)

 

コカビエルがその名を呟く。

やはりそうだ。二天龍の片割れ。赤龍帝『赤い龍』(ウェルシュ・ドラゴン)と対をなす者。白龍皇。

その存在が今、目の前にいる。

 

「鎧となっているということは禁 手(バランスブレイカー)状態。白 龍 皇 の 鎧(ディバインディバイディングスケイルメイル)という訳か・・・赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)同様、忌々しい限りだ」

 

コカビエルは舌打ちをし、吐き捨てるように言う。

 

「・・・赤に惹かれたか。白龍皇。邪魔だてはーー⁉︎」

 

気づいた時にはコカビエルの黒き翼が鮮血を撒き散らし宙を舞う。

 

「まるでカラスの羽だ。アザゼルの羽はもっと薄暗く、常闇のようだったぞ?」

 

木場だけではない。その場にいる全員が彼がいつ動いたのか気づかなかった。

 

「き・・・貴様ぁぁ‼︎俺の羽を‼︎」

 

コカビエルは怒り狂い空に無数の光の槍を出現させる。

だが白龍皇は小さく笑い、ハッキリと口にする。

 

「我が名はアルビオン」

『Divide!』

 

鎧から音声が聞こえ、コカビエルが展開していた光の槍の半数以上が霧散した。

 

「我が神 器(セイクリッドギア)白龍皇の光翼(ディバインディバイディング)の能力の一つ。触れたものの力を十秒ごとに半分にさせていく。お前の力は我が糧となる。さあ、いつまで持つ?早く倒さなければそのうち人間にも勝てなくなるぞ?」

 

伝説の通りだ。

赤龍帝は自らの力を倍加し、他人に譲渡する。

白龍皇は相手の力を奪い、自らの糧とする。

コカビエルは残りの翼を羽ばたかせ、空中にいる白龍皇へ立ち向かう。だが、白龍皇は捉えきれない速度でコカビエルを翻弄する。

 

『Divide!』

 

「おのれ‼︎」

 

コカビエルは光の槍と剣を両手に持ち、白龍皇へ攻撃を仕掛けるが、白龍皇が腕を横に振るうだけで槍と剣は消失する。それだけではない。再び十秒が経ち、コカビエルの力が更に半分になっていく。

 

『Divide!』

 

もはやコカビエルの動きは誰の目にも止まるほどに落ちていた。白龍皇が嘆息する。

 

「もはや中級堕天使クラスまで落ちたか。つまらないな。もう少し楽しめると思ったんだが・・・終わらせるか」

 

フッ。と白龍皇が消え去り、再び現れた時にはコカビエルの腹に拳を突き立てていた。

ドゴッ!

体がくの字に曲がり、コカビエルが地面に落ちる。

吐瀉物を撒き散らし立ち上がることができない。

白龍皇を睨みつけ何かを言おうとした瞬間、

 

この場にいる誰でもない声が聞こえてきた。

 

 

「あァ?結局終わっちまってるじゃねェか」

 

 

突然だった。

倒れているコカビエルの横に空から音もなく降り立つ白髪赤眼の白い服を着た少年。年はそれほど離れていないだろう。

 

「・・・き・・・貴様は・・・一方通行(アクセラレータ)・・・⁉︎」

 

「一方通行ですって⁉︎」

 

「一方通行だと⁉︎あいつが⁉︎」

 

コカビエルが呟いた少年の名前にリアスとゼノヴィアが驚愕をあらわにする。

 

「一方通行・・?誰ですか?それ」

 

一誠やアーシアは彼が誰なのかはわかっていない。

リアスだけではないその場にいる白龍皇、一誠やアーシアを除いた全員が衝撃を受ける。

 

「一方通行・・・彼はグリゴリの中でも白龍皇以上の強さを持っていると言われている人間だよ、イッセー君」

 

「教会の間でもその名前は有名だった。噂によれば、教会の者が50人程エクソシストを引き連れ彼を殺そうとした話があるが、そのエクソシスト全員が2度と帰って来なかったらしい」

 

「なッ・・・・・⁉︎」

 

木場とゼノヴィアが一誠に説明し、一誠は絶句する。

一方通行は首元に手をやり、右手についている巨大な腕輪のような部分から杖を出して白龍皇の方を見上げる。

 

「ハァ、やっぱ来なくてもよかったかもなァ」

 

白龍皇は地面に降り立つ。

 

「コカビエルの方は俺がやろう。キミはフリードの方を頼む」

 

「チッ、面倒くせェなァ」

 

一方通行は舌打ちをしながら倒れているフリードの方へ歩いていく。

それを見た白龍皇はコカビエルを抱えようとした瞬間。

 

「ふ・・・ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!!俺が‼︎この俺が負ける訳がないんだぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

叫び散らしながらコカビエルは立ち上がり、背を向けている一方通行の方へ向けて光の槍を放つ。白龍皇によって力が落とされているが、それでも致命傷を負わせられるだけの威力はある。

一方通行の方へ向かう槍。すると一方通行は再び首元にあるチョーカーのような物に手を伸ばす。

その瞬間、光の槍が一方通行に当たる。

そして血を吐く声がする。だが、それは一方通行では無い。

コカビエルだ。

 

「ゴフッ‼︎・・・・・・ば、馬鹿・・・・な・・・」

 

一方通行に当たった筈の光の槍はコカビエルの腹に刺さっていた。

コカビエルはそのまま地に崩れ落ち、動かなくなる。

 

「あン?殺しちまったか?・・・まァ、いいか」

 

一方通行はなんでもないことのように言い、再びフリードの方へ向かい、白龍皇は溜息を吐きながらコカビエルを肩に担ぐ。一方通行はフリードを担ぎ上げるとポケットから紙のような物を一枚取り出す。

 

「ンじゃ、先に帰ってるからな」

 

そう白龍皇に言った後、小さく何かを呟き彼の身体を光が包み込み消える。恐らく転送されたのだろう。

 

白龍皇は光の翼を展開し、空へ飛び立とうとした。

 

『無視か、白いの』

 

一誠の左腕にある赤い籠手が光だし声を発する。

 

『起きていたか、赤いの』

 

白龍皇の鎧についている宝玉も白く光る。

赤龍帝と白龍皇。

2人の中にいるドラゴンが会話を始めたのだ。

 

『せっかく出会ったのにこの状況ではな』

 

『いいさ、いずれ戦う運命だ。こういうこともある』

 

『しかし白いの、以前のような敵意が伝わってこないが?」

 

『それはそちらも同じだろう?』

 

『お互い、戦い以外の興味対象があるということか』

 

『そういうことだ。こちらはしばらく独自に楽しませてもらうよ。たまには悪くないだろう?また会おう、ドライグ』

 

『それもまた一興か。じゃあな、アルビオン』

 

お互いにそれだけを伝え、光が消える。だが、一誠は納得できていないかのように前へ出る。

 

「おい!どういうことだ⁉︎お前とさっきの一方通行ってのは何者で、何をやってんだよ⁉︎」

 

白龍皇は浮かび上がり一言だけ残す。

 

「全てを知りたければ強くなることだ。また会おう、俺の宿敵くん」

 

一瞬で白い閃光となり飛び立っていく。残された全員があまりの出来事に言葉を失っている。

コカビエルの展開していた破壊の魔法陣はいつの間にか消滅していた。 終わったのだ。戦いが。

木場は暫く呆然としていた。

すると木場の頭を叩く物がいる。何かと思い振り返れば一誠がいた。

 

「やったじゃねぇか、色男!へー、それが聖魔剣か。白と黒が混じっててキレイなもんだなぁ」

 

興味深そうに一誠は聖魔剣を見る。

 

「イッセー君、僕は」

 

「ま、いまは細かいのは言いっこ無しだ。とりあえず、いったん終了ってことでいいだろう?聖剣もさ、お前の仲間のことも」

 

「うん」

 

心が感謝の気持ちでいっぱいになる。復讐にとりつかれていた自分の為に、彼は本当に色々と考えて動いてくれた。

 

「・・・木場さん、また一緒に部活できますよね?」

 

アーシアが不安そうに木場に問いかける。神の存在を否定され、心中はショックの筈なのに、彼女は木場の心配をしていた。大丈夫。そう答えようとした時、

 

「祐斗」

 

リアスが笑顔で木場の名前を呼んだ。

 

「祐斗、よく帰ってきてくれたわ。それに禁手だなんて、私も誇れるわよ」

 

「・・・部長、僕は・・・部員の皆に・・・何よりも、一度命を救ってくれたあなたを裏切るような真似をしてしまいました・・・。お詫びする言葉が見つかりません・・・」

 

リアスの手が木場に伸び、彼の頬を優しく撫でる。

 

「でも、あなたは帰ってきてくれた。もう、それだけで十分。彼らの想いを無駄にしてはダメよ」

 

「部長・・・僕はここに改めて誓います。僕、木場祐斗はリアス・グレモリーの眷属、『騎士』として、あなたと仲間達を終生お守りします」

 

「うふふ、ありがとう。でも、それをイッセーの前で言ってはだめよ?」

 

一誠の方を向けば、彼は嫉妬の眼差しで木場を睨んでいた。

 

「俺だって騎士になって部長を守りたかったんだぞ!でも、お前以外に騎士を務まる奴がいないんだよ!責任持って、任務を完遂しろ!」

 

照れ臭そうに一誠は言う。

 

「うん、わかっているよ、イッセー君」

 

「さて」

 

ブゥゥゥゥン。

木場の全身から冷や汗が出てくる。恐る恐る音のする方を見てみると、ニッコリ微笑んでいるリアスの手が紅いオーラに包まれていた。

 

「祐斗、勝手なことをした罰よ。お尻叩き千回ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「今帰ったぞ。アザゼル」

 

白龍皇。ヴァーリはコカビエルを捕らえ引き渡したのち、

神の子を見張る者グリゴリのアザゼルの部屋にいた。

 

「おう、お疲れ。で?どうだったよ。赤龍帝殿は?」

 

アザゼルに聞かれたヴァーリは楽しそうに笑いながら答える。

 

「今はまだ弱いね。恐らく禁 手(バランスブレイカー)にならなくても倒せるだろう。だが、実に面白い赤龍帝だったよ」

 

「そうか、それなら俺も会ってみたいもんだ。今代の赤龍帝に・・・お、そうだ。いいことを考えたぞ?」

 

アザゼルは悪戯を思いついた子供のような笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

一方通行はフリードを引き渡した後、アザゼルの部屋には行かず、自室で電話をしていた。

 

『ふーん、じゃあコカビエルは死んだの?』

 

「いいや、ギリギリ息があったらしい。まァどォでもいいが」

 

電話の相手は先程グレモリー眷属の情報をくれた人物だ。

 

『え?身体貫かれたのにまだ息があったの?まさにゴキブリ並みの生命力ね・・・で?コカビエルはどうしたの?』

 

「さァな。今度軍法会議で決定するらしい。まァ、2度と光を見ることはねェと思うがな」

 

『ふーん、ま、どうでもいいけど。それより、私が教えたグレモリー眷属の情報、役に立ったの?』

 

「・・・ああ、まァな」

 

口ではそう言っているが、グレモリー眷属と特に何かあった訳でもないので、ぶっちゃけあまり役立っていなかった。

 

『(今少し言葉に詰まったわね)・・・まあいいわ。それじゃ、そろそろ私も仕事があるから切るわね』

 

「あァ、じゃあな。メリア」

 

『ええ、またね。一方通行』

 

メリアと呼んだ女性と通話を終えた一方通行は自室にあるベッドに寝転がる。

 

(そォいや、あの時の視線はなンだったンだ?)

 

一方通行が駒王学園に降り立った時、あの場にいる全員以外の視線を確かに感じた。今代の赤龍帝を探りに来たのか、別の目的なのか・・・

ここで考えてもしょうがないと判断した一方通行は目をつぶりそのまま眠りに入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白龍皇の勧誘には成功したか?」

 

「ああ、問題は無い。一方通行はすぐに転移してしまったから接触できなかったがな」

 

「どうせ監視していたことには気付いていたのだろうな」

 

「どうする?」

 

「白龍皇だけでもこちらに引き込めたのは大きな収穫だろう」

 

「だが今の・・一方通行はあの頃と違う。仮に接触できたとしても返り討ちにされるだろう」

 

「赤龍帝はどうだ?」

 

「ガードが硬い。魔王の妹の眷属だぞ?」

 

「それに弱い。引き込めたとしても戦力になるまで時間がかかるだろう」

 

「・・・その辺にしておけ。そろそろ本題に入ろうじゃないか」

 

「本題?」

 

「前に話しただろう。3代勢力のトップ会談についてだ・・・」

 




主人公の活躍の場はちゃんと作ります・・・!
頑張ります・・・!

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