第4十刃が異世界へ渡るそうですよ? 【ブラック・ブレット編】 作:安全第一
何とか最新話書き上げました。
や、やっと更新出来ますぜ……!(汗
相当考えて書くのに時間が掛かりすぎたので、ぐちゃぐちゃになっているのかも知れないです(ぇ
後、作者の英語は壊滅的です。
英語の翻訳とかはGoogle先生任せなので英文や読みが間違っていても指摘しないでね(汗
英語が得意な人で「こっちの英文の方が正しい!」と仰る読者様がいればご意見下さい。
ではどーぞー
彼女は真っ直ぐその道を見据える。
この残酷な世界に負けぬ様に、彼女は笑顔を絶やさない。
その笑顔は絶望を浄化する。
子供達を笑顔に変える。
彼女は『光』だ。
彼女は『希望』だ。
だが、その『光』は自分自身には決して降り注がない。
その笑顔は紛い物だから。
偽りの笑顔だから。
“本物”を犠牲にしたから。
だから救われない。
───悲しい、少女。
△▼△▼△▼△▼△▼
△▼△▼△▼△▼△▼
朝宮柚菜は無垢の世代であり呪われた子どもたちだ。
呪われた子どもたちは必ずと言って良い程、迫害される。ガストレアショックを受け、精神状態が不安定且つ悪い方向に精神年齢が低くなってしまった大多数の大人達がそうするからだ。
少女、朝宮柚菜も迫害された一人であり、外周区に追われた彼女は他の呪われた子どもたちと同様に苦しい生活を余儀無くされていた。
しかし、朝宮柚菜はその苦しい生活を強いられていても尚、笑顔を振りまき続けた。
まずはそのきっかけを話して行くとしよう。
呪われた子どもたちの過去は悲惨なものばかりだ。大抵の呪われた子どもたちは笑顔を失い、人間不信に陥っている。柚菜もまた、両親に迫害され暴力による虐待を受けており、笑顔を失いかけた時期があった。そして笑顔を失うのを恐れた柚菜は堪らず家を飛び出し、外周区に逃れたのだ。
だが、その外周区に住んでいる呪われた子どもたちの表情を見た柚菜は絶句した。
笑顔が、全く無い。
恐らくは柚菜よりも残酷な扱いを受けた子ども達なのだろう。その表情は無表情であり、目は死んでいた。
柚菜は恐怖した。
何で誰も笑っていないのか。
何で心を壊されている子供達ばかりなのか。
自分も彼女達の様に、いずれ笑わなくなってしまうのか。
そう頭に過った瞬間、身体中が震えてしまった。自分もこうなってしまうのか、笑顔が失われてしまうのかと。柚菜の思考が徐々にマイナスの方向へと働いてしまう。
嫌だ。
嫌だ。
嫌だ。
彼女は抵抗した。そんな風にならない、そんな風になりたくない。そう否定した。
だが柚菜はどうそれに抗うのか方法を見出せなかった。呪われた子ども達の大半もその方法を見出せず心を失ってしまったのだろう。
だから彼女は笑う事にした。
笑顔を絶やさない様にした。
そうしなければ、壊れてしまうから。
柚菜の取った唯一の方法。しかしそれは明確なものではなく、その場しのぎの不明瞭なもの。それもいつどうなるのかすら解らない苦し紛れ。
壊れかけの
だからこそ、子ども達はそれに惹かれた。理由など無く、ただその存在に無意識に魅せられた。
完全なものなど存在しない。物事は何かが欠けている事が必然。柚菜の拵えた不完全は何よりも壊れかけで美しかった。
完全より不完全。
新品よりも中古品。
完成品よりも欠陥品。
不完全であればそうである程それは脆くなり、儚くなり、その存在はより魅力的に際立つのだ。
その笑顔が虚偽であるのは柚菜自身百も承知だ。ツギハギだらけの仮面で出来る事など高が知れているし、それが子ども達を救えるなど微塵も思っていない。それにこの虚偽は自分自身を守る為の措置にしか過ぎない。
所詮は紛い物、されど紛い物。偽物とは本物よりも本物でなければならない。そうでなければそれは偽物とは到底呼べない。
本物以上の
そうしていく内に、いつしか柚菜の周りの負の連鎖は断ち切られていた。
偽物だからこそ起こせた奇跡。本物では起こせなかった結果。奪われた世代からは疎まれるだけのもの。
それで構わない。
本物の私を犠牲にしたこの
負の連鎖が断ち切られた事に気付いたその日から、彼女は常に笑顔という名の仮面を被る様になる───
△▼△▼△▼△▼△▼
───とある孤児院にて
「また来てくれたんだね。いつもありがとう、柚菜ちゃん」
「ううん、だいじょーぶだよ! またお手伝いしたいって思ってたから!」
少女、柚菜はいつもの様に孤児院へとやって来ていた。それを暖かく迎え入れた優男の青年は柚菜の笑顔につられて微笑みを浮かべる。まるで近所の子どもが親しい人の所に遊びに来た光景だった。
しかし柚菜は決して孤児院へと遊びに来た訳では無い。
話は遡る。
朝宮柚菜は呪われた子ども達の一人だ。当然、外周区を拠点として過ごしている。だが外周区にて過ごす呪われた子ども達は例外無く苦しい生活を強いられているのが現状である。まして一日分の食料を確保するのにも苦労する上に下手をすれば確保することすら出来ない日もある。それ故に呪われた子ども達の中には東京エリアの街中にやって来ては食料品を盗んだりしている子どもすら存在するのだ。
そんな中、柚菜は日々の糧を得る為になんとかお金を稼ごうと頑張っていた。
『働かざる者食うべからず』
ロシアの革命家、レーニンが社会主義を実践する上で守らなければならない掟として使った言葉だ。とある友人からその言葉を聞いた彼女は感動を覚え、その友人と別れた今でもその言葉を忘れずに生きている。
なのだが、これには特に感動するストーリーが有る訳では無いし、ドラマチックなものでもない。
まあ簡単に会話のみで回想するとこうだ。
『はたらかざるものくーべからず?』
『はい、幾ら私達が呪われた子どもだと言っても人間です。日々の糧を得るにも是等の事を心得なければ唯の犯罪者同然ですからね』
『なにそれカッコイイ!!!』
『え?』
『カッコイイじゃん! はたらかざるものくーべからず! はたらかざるものくーべからず!』
『……あの、柚菜さん』
『なーに?』
『働かざる者食うべからずの意味を知っているのですか?』
『え? 働いてるおさるさんがバナナ食べられないってことだよね?』
『………』
回想、終了。
働いているのに食べる事が出来ないとかどれだけブラック企業なんですか、とツッコミを入れてしまいそうだった友人がそこにいたと言う。因みに友人が正しい意味を教えると柚菜は目が点になっていたと言う。
そんなエピソード(?)もあって、稼ぎ先を探し回った柚菜はようやくこの孤児院を探し当てる事が出来た。まあ孤児院を見つけることが出来たのは紛れもない偶然なのだが。
それは別として、その孤児院は少し特殊でガストレアに殺された子どもから呪われた子ども達まで分け隔て無く保護している孤児院だった。
それもその筈、その孤児院を営んでいる青年は“奪われた世代”であるにも関わらず、呪われた子ども達を擁護する側の人間だった。そんな彼が日々の糧を得る為に稼ぎ先をあちこちと探していた柚菜を助けたのは当然だと言えた。
ガストレア戦争直後に生まれた柚菜は呪われた子ども達の中で最も年上である。柚菜の事情を知り、彼女の歳を聞き出した彼は主に年下の呪われた子ども達を相手にさせた。勿論適当に担当させた訳ではなく、柚菜は真っ直ぐな性格故に面倒見が良いと判断したからである。それに光に満ちた表情をしている彼女を助けたいという気持ちは紛れもない本心だと言うこともあった。
その後だが、柚菜は面倒見が良くなんと呪われた子ども達に懐かれていた。それ程までに柚菜の笑顔は眩しく、同じ子ども達には無かったものだったから感化されたのだろう。これまで色々な子ども達を孤児院で世話して来た彼ですら驚いた程だった。
そしてその日の夕暮れ時。彼は柚菜にお手伝いのお礼として金が入った封筒を手渡していた。封筒の中の金は多過ぎず少な過ぎずと言ったものだが。
「はい、柚菜ちゃん。大事に使ってね」
「ありがとー!」
「ううん、お礼を言うのはこちらの方だよ。君の笑顔のお陰でまさかここに居る皆が笑顔になれるなんて思いもしなかった」
「えへへ、だって笑顔が一番だもん!」
「……そうだね。笑顔こそがこの世界を光で照らすには一番必要なのかも知れないね。
また来たければいつでもおいで。みんな待ってるから」
「うん!」
その日以降、柚菜はそこの孤児院へ顔を出す様になり、今に至ると言う訳だ。
そして現在、青年と挨拶を交わした柚菜は孤児院の中に入るや否や、子ども達の姿を見て満面の笑みを見せた。
「みんなー! また来たよー!」
その声が響き渡り中の子ども達の様子が一変し、皆が明るい笑顔になる。
「あ! 柚菜おねえちゃん!」
「また来てくれたんだぁ!」
「前に遊んでくれた続きやってー!」
最近ではいつもの事だが、柚菜が来ると孤児院の子ども達がみんな喜ぶ事もありその日は子ども達から笑顔が絶えない日となった。
その中で、本物の笑顔を犠牲にした柚菜と本物の笑顔を取り戻しつつある子ども達。
笑顔を取り戻せる希望に満ちている子ども達と、笑顔を取り戻せない絶望に苛まれる柚菜。
己を犠牲に貼り付けた仮面はもう剥がれないし剥がせない。
皮肉と呼ぶには十分だった。
△▼△▼△▼△▼△▼
「〜♪」
柚菜は帰りの中、夜に染まった路地裏を鼻歌交じりでスキップしていた。金が入った封筒を大事そうに持ちながら帰ったら夏世に見せびらかそうなどと考えていた。
だが、それは急に終わりを見せる。
「居たぜぇ、ゴキブリがよぉ!」
「ガッ……!?」
柚菜の背中に鈍痛が響き渡る。余りにも急な出来事に柚菜はそのまま倒れ込んでしまう。
柚菜を襲った衝撃の方向を見ると、何人かの男達のグループがそこに居た。どうやら不良の類の様だった。その中の一人が柚菜を見下したまま近寄る。
「おいおい、何でこんな所にガストレアがいやがるんだぁ? それも金なんてモンを持ちやがってよぉ」
「ごふっ……!」
男はそう吐き捨てると同時に柚菜の身体を蹴り飛ばす。柚菜の身体はボールの様に軽く吹き飛ばされ、その拍子に封筒も手放してしまった。
「ヒヒヒッ、安い金だろうがガストレア如きが持つようなモンじゃねえなぁ」
「あっ……」
ひらひらと落ちた封筒を男が拾い上げ、そのままポケットへと突っ込む。それを見た柚菜はどうにか取り返そうと手を伸ばした。
それを別の男が踏み付ける。
「あああああッ!」
「チッ、勝手に触ろうとしてんじゃねえよこのバケモノが」
「うぐうぅうぅうッ!」
腕を踏まれ悲鳴を上げる柚菜だが、封筒を奪った男が更に追い打ちを掛けるように柚菜の頭を踏み付ける。その目には嫌悪感が込められていた。見下ろした男の視線が柚菜の目を捉える。その目は此方を恨んでも、憎んでもいなかった。
それが男の怒りを助長させた。
「……何だその目はよぉ、あ"あ!?」
「あぐッ!」
柚菜の目を見た男が怒鳴りもう一度踏み付ける。幾ら超人的な身体能力を持っている呪われた子どもとはいえ、痛覚は人間と同じであり痛みに耐え切れる程の精神的強さは無い。その表情は苦痛に満ちていた。
「バケモノがそんな顔してんじゃねえ!!」
「がはッ!」
男が罵倒と共に柚菜の鳩尾を蹴り付ける。ボキリ、と鈍い音が響き柚菜の口から血が溢れ出る。
満身創痍になりながら柚菜は何故こんな目に遭っているのか分からず、思考がぐちゃぐちゃになっていた。
「んん〜? 何が何だか分かってねぇ顔だなぁ。所詮はゴキブリ同然のガストレアか」
男はニヤニヤと嗤いながら罵倒を続ける。そして柚菜を襲った訳を喋り始める。
「テメェがバケモノ共を匿っている孤児院に邪魔しているこたぁ分かっていた。だが俺達が不快に思っているのはそこじゃねぇ」
「……?」
自分が頻繁に孤児院に来ている事を知りながら目に付けているのはそこでは無い事に訝しむ柚菜。
そして、柚菜はその話の先を聞いてはならなかった。それは柚菜の
「俺達が一番不快に思ってるのはテメェのそのツラだよ」
「……え?」
「テメェのその薄気味悪い笑顔が不快だって言ってんだよこのクソガキが」
「……ぁ」
理解出来なかった。
この男が言っている事が分からなかった。
いや、分かりたくなかった。
分かろうとしなかった。
それは自分の、柚菜自身の存在意義を全否定しているから。
「別に俺達だけがそう思っているんじゃねぇ」
「この周辺の大人共は皆が皆、テメェのツラに不快感を感じてたんだっつうの」
「つまりは近所迷惑ってワケ」
「だからこうして俺達がゴキブリ駆除の為に出張ったのさ」
「ついでにゴキブリが持ってる金も回収しなきゃなあ。ゴキブリが持っていても結局ゴキブリに真珠っていう諺にしかならねぇしなぁ!」
ピシリ、と仮面に亀裂が入る。
「テメェは害悪にしかならねぇ」
メキメキ、と亀裂が広がる。
「テメェの存在自体が目障りなのさ。だから此処で殺してやるよ」
バキン、と仮面が壊れ始める。
「ぃ……ゃ……」
壊れてしまう。剥がされてしまう。抵抗など出来はしない。
見られてしまう。晒されてしまう。それを隠す事は出来ない。
傷付いてしまう。傷を負ってしまう。それも無理矢理ナイフで刺されて。
柚菜は無理矢理剥がされた仮面の下を晒してしまう。ぼろぼろと止め処もなく仮面の破片が散り、ぼろぼろと涙が零れ落ちてしまう。
身体はガタガタと震え上がり、脚もガタガタと震えてしまう。陵辱の様な感覚を感じ、その全身は恐怖に囚われてしまっていた。
「嫌、嫌あぁあぁぁ……」
私を否定しないで。
私を嫌いにならないで。
私を見捨てないで。
私を無視しないで。
私を殺さないで。
殺さないで。
殺さないで。
殺さないで……
「死ぬのは嫌……」
まだ死にたくない。
死にたくない。
此処で死にたくない。
死にたくない。
だけど身体が動かない、動かせない。己の仮面が壊れてしまったそのショックで心は崩壊寸前の風前の灯となっていたからだ。
「死ぬのは、嫌……」
外傷による痛みが麻痺して来た。心が身体が崩壊する事を防ぐ為に自らの機能を一時停止させようとしているから。
意識が混濁として来た。
「し、ぬのは、いや……」
朦朧とする意識の中、これで意識のが落ちれば二度と戻って来れなくなるという本能による予感が頭をよぎる。
最早自分ではどうすることも出来ない。抵抗も反撃も何も出来ない。
だから求めた。
「たす、けて……」
「……其処で何をしている、塵共」
助けは、来た。
「……ぁ」
その声を聴くと同時に、柚菜はその意識を手放した。
△▼△▼△▼△▼△▼
「……ここ、は?」
見知らぬ天井。そこで柚菜はうっすらと目を覚ました。
「……起きたか」
「!」
その近くから声が掛かり、柚菜ははっとなって横を見た。
そこには白の装束を身に包み、腰には刀を挿し、側頭部には骸骨の破片の様なものが付いている不思議な青年が居た。
「俺の名はウルキオラ・シファー。 ……お前の名は何だ?」
「柚菜はね、朝宮柚菜っていうの。 ……それで、柚菜を殺そうとしてたあの人達は?」
「……俺が直に始末した」
「……そっか」
柚菜の質問にそう淡々と答える青年、ウルキオラ。柚菜を殺そうとしていたあの男達は全員ウルキオラによって殺された事を理解した柚菜は短くそう返事をした。
「……お前に問いたい」
「……どうしたの?」
「何故、反撃しなかった?」
「!」
「お前は呪われた子どもだ。あの塵共を抹殺出来るだけの力が在った筈だ。だが何故、反撃しなかった?」
「そ、それは……」
ウルキオラからの衝撃的な質問に言い淀む柚菜。あの時、別に男達からの攻撃に対応出来なかった訳では無い。その気になれば対応など容易に出来れば、そのまま彼等を殺せる事も出来た筈なのだ。
だが柚菜はそれをしなかった。反撃も何もせず、ただ受け身となってそれを全て受けた。その果てに心を抉るナイフを突き刺され、貼り付けていた仮面は砕かれたのだ。
ウルキオラはその一部始終を見ていたのだ。柚菜の瞳から感じたのは強く、弱く、脆い意思。それに興味を持ったウルキオラはこうして柚菜を助け出した。
「……よく分かんない」
「……何だと?」
「よく分かんない! ……だけど、分かっちゃうんだ。あの人達を殺してしまったら、何かが終わってしまう様な気がして……」
「……そうか」
解らないのに解っている、何とも興味深い『心』だとウルキオラはそう思った。
「ならば何もせず、そのまま奪われ続けるつもりか」
「ッ! それは嫌ッ!! それだけは嫌なのッ!! もう奪われたくないのッ!!!
だから、あの時どうしようか必死に考えてたの。どう話したら逃がしてくれるのかって……」
「……」
もう奪われる事には耐えられない、何かを壊されるのも耐えられない。柚菜の強く放った声が、彼女の本心を如実に現していた。
(……何とも興味深く、不思議な奴だ。黒ウサギの様な奴が此処にも居たとはな……)
ウルキオラは内心でこの少女、朝宮柚菜の在り方に興味を抱く。まるで、あの自己犠牲の塊とも言えた箱庭の眷属と同じではないか。
自分の事ではなく、相手の事を第一に考えて動く。例え自分が犠牲になろうとも相手が助かればそれで良い。その様な自己犠牲と同じではないか、と。
(……面白い)
ウルキオラはある事を考えた。
そう、己のイニシエーターにしてしまおうと考えた。
だから、この少女を救おうと口が動く。
「……お前は馬鹿だ」
「ふぇ?」
「……所詮は馬鹿だ。馬鹿が頭を使っても良い案など出て来る筈がないだろう」
「え、えぇ〜!! そ、そんなぁー!? 柚菜だって一生懸命頑張って考えてるのにぃ〜!」
「馬鹿なお前が幾ら考えようと結果は同じだ。ならば馬鹿は馬鹿らしく、能天気に笑っていろ」
「……え?」
今、何と言ったのか。
『笑っていろ』とそう言った。
否定も拒否も拒絶も何もせず、彼はただそう言った。
「……馬鹿には笑顔だ。これは箱庭で百年間もの時を過ごして解った『答え』の一つだ。お前が笑う事しか出来ないのならば、それを精々貫いて行くが良い」
肯定してくれた。
彼は自分が被っていた虚偽の仮面をそう認めてくれた。朝宮柚菜という人間そのものを見てくれた。
「お前の付けている仮面が虚偽であろうとそれはお前自身だ。否定などしない、お前はお前らしく馬鹿になって笑っていれば良い。
そう、今まで通り能天気に笑え。生きる方法は俺が教えてやる」
ドクン、と彼女の胸が高鳴った。
始めて自分自身を見てくれたこの人が自分の傍に居てくれると、そう言った。
生まれてこの方、何も無く何も得る物も無く、ただ奪われ続けていた自分に何かを与えてくれた。
それは真実の仮面。今までの様な自己防衛の為だけのものでは無く、本当の笑顔になれる本当の自分がそこにいた。
頬に雫が流れ落ちる。
「あ、あれ? おかしいなぁ。 何でこんなに嬉しいんだろ? 分かんないや……」
涙が止まらない。
服の袖で拭っても拭っても溢れて来る。あの時の無理矢理仮面を剥がされたショックによる絶望によって溢れ出る涙では無く、希望を得た余りの嬉しさによって溢れ出る暖かい涙。柚菜が始めて流したその涙に柚菜は理解することが出来なかった。
「……今は解らなくても良い。後から解れば良いだけの事だ。
……胸を貸してやる。今だけは馬鹿らしく泣け」
ウルキオラの優しい、一言。
柚菜にはもうその涙を止めることは出来なかった。
「うぅっ……、うあぁっ、あぁっ、うわああぁあぁぁあああぁあぁあああぁあぁぁぁあぁあああああぁあぁぁあああぁあぁぁああんッッッ!!!」
ウルキオラの胸に飛びつき、泣きじゃくる。今までの苦しみを全て吐き出すかの様に。
柚菜が泣きじゃくっている中、ウルキオラは心中でため息を吐いていた。
(……俺も随分と甘くなったものだ。井上織姫の時と言い、この馬鹿の時と言い。……これも『心』による影響なのか──……)
昔の自分では想像もつかなかった事だ。
だが、此れもまた悪くないとそう何処かで納得してしまっている自分がいた気がしてならなかった。
△▼△▼△▼△▼△▼
ウルキオラが井上民間警備会社に所属してから凡そ一年半が経った。
その中で変わらぬ日常を過ごしているウルキオラは今、井上民間警備会社にて紅茶を啜りながら報告書に関する書類を整理していた。
「………」
今日も何も変わらない日常。昨日も一昨日も、それは同じだった。
別段、つまらないという訳では無い。確かにどちらかと問われればつまらない日常の連続だろう。だがウルキオラにとっては何も無くつまらない日常という訳で無かった。
「ウッルキッオラーーー!」
突如として事務所の中に木霊す可憐な声。その声は織姫である可能性が有ったがその声には幼さが有り、その声の主も織姫では無かった。
少女の髪はアホ毛が特徴である黄色のセミロングに金色の瞳、その整った容姿は正に美少女であり服装はワンピースとラフな格好をしていた。
そして彼女は帰宅するや否や、ウルキオラの姿をその目で捉えると脇目も振らずに彼へと飛び掛かった。
「………」
しかしウルキオラはその様子を一瞥することも無く首を傾けるだけで回避した。しかも器用に紅茶を啜りながら。
「へぶっ!?」
そのウルキオラの行動のお陰(?)で彼への抱擁に失敗した彼女はその勢いのまま顔面から壁に激突した。とても痛そうである。
見事なまでに壁への激突を果たした彼女は鼻を摩りながら涙目でウルキオラに抗議した。
「む〜、何でよけるのー!」
「……お前が馬鹿正直に突っ込むからだろう」
「ひ、ひどーい!」
しかしその抗議は軽くあしらわれてしまい、軽くショックを受ける少女。いささかオーバーリアクション気味だが、余り気にしてはいない様子だ。
「じゃあどうやって抱きつけばいいの?」
「……一々飛び付かず普通にすれば良いだろうが」
「えー! それじゃダメなのー!」
「………」
お前は態々飛んで抱きつかないと気が収まらないのか、と思いながらウルキオラは内心で嘆息しながら報告書の整理を終えた。
(……おっ!)
その様子を見た少女は良い事を思いついたのか、ウルキオラを伝ってよじ登り、向かい合う形で彼の膝に座った。それもキラキラとした眼差しで。
「じゃあこれで良いよね!」
「……勝手にしろ」
「やったー♪ うれしー♡」
ウルキオラの半ば投げやりの了承を得た少女は向日葵の様な笑顔を咲かせ、ウルキオラに抱き付いた。この少女はウルキオラの事になれば梃子でも動かないので、此方が早々と諦めないと余計に疲れるのだ。
「ねぇウルキオラー」
「……何だ?」
「えへへー、だーいすき!」
「………」
少女はそう言うとにへらと笑い、ウルキオラを強く抱き締める。思わず「むぎゅー」等という効果音が出て来そうだ。
「柚菜」
「ん? なーにー?」
ウルキオラの呼びかけに、柚菜と呼ばれた少女は少し顔を話して小首を傾げる。
「……あいつらはどうした? お前だけ先に帰って来たのか?」
「うん! 咲希ちゃんと綾歌ちゃんはお買い物の当番だから織姫おねーちゃんと一緒にスーパーに行ってるよ!
で、柚菜は天誅ガールズの録画当番だからこうして帰って来たの!」
「……そうか」
柚菜は何故かドヤ顔でそう言うと再びウルキオラに抱き付いた。すりすりと頬ずりまでしており、ウルキオラにどれ程懐いているのかが伺える。ウルキオラも柚菜のこれは日常茶飯事なので抵抗することはとっくの前に諦めている。
(……このガキは本当に良く懐きやがる)
純粋に自分に好意を抱いているこの少女にウルキオラはそう思いながら呆れていた。
この少女は純粋故に素直で天然且つ少々抜けている所がある。馬鹿と言っても良いだろう。それ程までにこの少女は愚直だ。
(……まぁ、何時もの事か──……)
そう思ってウルキオラは目を静かに閉じる。
先程まで啜っていた紅茶はすっかり温くなっていたのだった。
あひぃー(汗
とゆー事でウルキオラのイニシエーターの一人目、朝宮柚菜ちゃんのお披露目です!
まあ後二人残ってるんだけどね!(錯乱
安全第一のひとりごと
昨日、アニメで『結城友奈は勇者である』を見て「これはまた面白そうなのが出たなぁ」と思っている私こと安全第一。
なんでも『タカヒロIVプロジェクト』の第4弾だとか。
女の子達もみんな可愛くて仲が良いし戦闘シーンも一人ひとりの強い意志がある、これは良作になりそうな予感。
なのですが……企画と原案があのタカヒロさんなんだぜ!?
『アカメが斬る!』で敵味方両方のキャラを普通に殺せるドSさんですぜ!?
『真剣で私に恋しなさい!』のほうはわからないけど、『アカメが斬る!』で死亡フラグ満載の内容見てたらこっちのSAN値が直葬された事も有るんですよ!?
そう考えると死亡フラグとかありそうで安心して見れねぇよぉ!!?
あと、書いてて自分ギャグとかコミカルな描写出来ねぇわ、と思ってしまいました。
この話もシリアス展開ですもん!
最近なんてごちうさに超シリアスぶち込んでほのぼの要素ゼロにしてみようかなー、とかゲスい事思い付いてたりするんですよ!?
あー、これは末期ですね(白目