双槍銃士   作:トマトしるこ

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phase 16 新システム

 

 第二層はたったの十日で走破された。

 

 まだ一度も起きていないイベントだってあるだろうし、妖精の溜まり場(フェアリー・スポット)も見つからないままだ。フィールドの端にでも行けば宝箱がゴロゴロと転がっているだろう。

 

 しかし、それには目もくれずに前線で戦い続けるプレイヤーは階段を駆け上った。一日でも早く攻略する為に。そして、強力かつレアなアイテムを見つけるために。全層を端から端まで探索して、全クエストを起動させてクリアするまで上がらないなんてことは時間の無駄だ。

 

 俺とキリト、アスナの三人パーティに新たに加わったシノンとフィリアも交えて、狩りに徹してレベルを上げ、装備を整えた上で迷宮区に挑んだ。そしてボス討伐。二層についてすぐに三日ほど《体術》習得に費やしたにもかかわらず、寄り道込みで二層突破なのだから驚きだ。加えて、俺とキリトはまだまだトップレベル帯に位置している。周りが遅いわけじゃない、初日のネペント狩りや効率の良いスポットを知っている分稼ぎが良いに過ぎない。

 

 鍛冶職プレイヤーによる詐欺など、早速色々な問題が起きたりもしたっけ。かなり面倒だったが解決したし、当事者の彼のおかげで無事に攻略できたので、結果オーライとも言えなくもない。まぁ、会うことはないだろうな。

 

 そしてそこから数ヵ月後。

 

 俺達(プレイヤー)は二十層まで到達していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 三層序盤からようやくギルド結成クエストに挑戦できるようになるわけだが、それをスルーしてただのパーティを組んで二十層、かなりの遅れがあったシノンとフィリアもいつの間にかアスナに並ぶほどにレベル差を詰めていた。それでいて俺とキリトにしっかりついてくる。ハイレベルプレイヤーとして恥ずかしくない実力を身につけた。

 

 最低限の戦闘スキルを揃えた奴から、空いた時間をつぶせる程度の生産系や職人系スキルを身につけるようになり、裁縫だったり料理だったり錬金だったり等々、全員が好みに走った。武器はダブってもここは全くのバラバラだったので、五人という平均的なパーティでありながらかなり豊富なスキルと知識を持つようになり、最前線では俺達の噂が広まっている。

 

 曰く、SAO最強のパーティだ。

 

 曰く、ビーターの群れに違いない。

 

 曰く…………美少女を侍らせるクソ野郎。

 

 ………誰がこんなことを言いだしたのだろうか? 見つけたら殴ってやる、と熱くキリトと誓った。

 

 フレンドの近況も最近はよく入る。攻略が難航していることもあって、時間が増えたことが原因だろう。俺達以外にも別の職を見つけて気分転換するのは珍しいことじゃない。

 

 クラインはギルド《風林火山》を結成して、最前線攻略ギルドとして名を上げている。以前少しだけ話したカタナスキルをプレイヤーで初めて習得し、条件を公開してちょっと有名人になったりもした。曲刀使いから転職した連中は、クラインを慕っているとかなんとか………。まぁ、頼りになる大人ではあるよ、あいつ。

 

 コペルはディアベルの後を継いだ一人のリンドのサポートを続けていた。ビーターではなく、βテスターであると明かした上でアインクラッドのプレイヤーから認められている。他にも困ったプレイヤーのレベリングを手伝ったり、レクチャーしたりと忙しそうだ。レベルと技量共々最前線で戦えるものの、本人自らの意志で後進の育成に励んでいる。

 

 エギルもやはりこの二十層で詰まったクチで、片手間に始めてみた商売にド嵌まりして小さな店を持つようになった。といっても、持ち運び可能なストレージ機能を持つカーペットなんだが、わりと気にいっているし商売も上手くいっているのでちょくちょく足を運んでいる。安くしてくれるし。レベル上げも怠っていないので、ボス戦皆勤賞は継続中だ。

 

 それなりによろしくやっているようだ。

 

 そして………

 

「アーたん」

「おう、鼠じゃないか」

「アルゴだって言ってるだロ」

「鼠のアルゴだもんなー」

 

 数少ないフレンドの一人であるこの女は、突然後ろから現れた。相変わらず神出鬼没だな。

 

 鼠のアルゴという名前は既にアインクラッド中に響いており、知らないプレイヤーはもういない。誰もが彼女を頼り、金を巻き上げられている。正確な情報と素早さ、何よりも幅広さはどんな情報屋も敵わない。

 

 しかし空気は読んでくれない。久しぶりのデートであってもコイツは平然と割りこむ。だからこその神出鬼没だろう。

 

「………誰?」

「あれ、まだ会ったこと無かったのか? アルゴだよ、鼠のアルゴ」

「ああ、情報屋の?」

「始めましてだナ。《氷の華》」

「ちょっと止めてよ……それ嫌いなんだけど」

「じゃあ《猫かぶり姫(シンデレラ)》カ?」

「………シノンよ」

 

 なんか合わなさそうだなーとか思ってたけど、ホントに噛みあわないな。

 

「しかし、《氷の華》に《猫かぶり姫》か……シノンも名が売れたな」

「ユウまで止めてよ、もう……」

 

 名前が知られると、異名というか、称号というか……そんな類のものを周囲から付けられるのは何処でもあることだ。現実で挟み聞きしたことがあるのは……《頬笑みの貴公子》とかだな。俺達にも付けられた。

 

 見る人にクールな印象を与える上に水色の装備や防具を好んで装備したり、ツンケンしてまるで取りつく島も無い癖にデレデレすることから、《氷の華》とか《猫かぶり姫》なんて呼ばれる羽目に。

 まだ《氷の華》と呼ばれていた時期に、とある男性プレイヤーから告白された事があるそうだが、「私、もう結婚する相手いるから。耳が汚れるから失せなさい」とごめんなさいの一言をかけるどころか追い打ちするという辛辣な返しを見せた。俺と二人で出かけているところを見た誰かが、普段とは大違いなシノンの様子にしばらく放心状態に陥ったとかなんとか。そして猫を被っているようだからと《猫かぶり姫(シンデレラ)》とも言われ始めた。

 

 シノンは嫌っている様子を見せるが、心のどこかではちょっぴり嬉しそうにしている。

 

 因みに、俺は《戦神》《天速》。キリトは《黒の剣士》。アスナは《閃光》。フィリアは《ハンター》《青金(あおがね)の風》……だったか。

 

 俺は文字通り、神の如き強さと戦いぶりに天を駆けるほどの速度を称えて。

 

 キリトは全身黒の装備な上に、武器の片手剣まで黒っぽさが目立つときた。

 

 アスナの剣速は残像すら残さないレベルに達しつつあり、ソートスキルの発光の軌跡だけを残す様になった。最速の攻撃と素早さ、恐ろしさが詰まっている。

 

 フィリアのスキルは特殊なものが多く、その一つ《解錠》は宝箱やダンジョンのトラップも回避、解除できる。それだけでなく仕掛けもする上に実力も相当なことから《トレジャーハンター》を名乗る本人を無視して《ハンター》と呼ばれ、その素早さから《青金の風》とも例えられた。当のフィリアはわりと気に入っていたりする。

 

 いつの間にか有名人だった俺達だった。

 

「それで、今日はどうした? またどっかの誰かが交渉でも持ちかけてきたか?」

「そんなの日常茶飯事だナ。むしろ、アーたん達絡みの話は途絶えそうになイ。まったくもって面倒なフレンドを持っちまっタ」

「それを俺に言われても困る」

「それもそうカ。……じつは、お前等にピッタリのクエスト情報を掴んだんだが、幾らで買ウ?」

「それってどんなクエストなの?」

「SAOに新たなシステムを追加するクエストらしいゾ。内容がぶっ飛びすぎてとても仕事仲間程度の連中じゃクリアできずに放棄しちまうほどのナ」

「ってことは、一回きりか。新システムはなんなのか分かるのか?」

「勿論だとも! アルゴ様を舐めて貰っちゃ困ル」

 

 にやりと口角を上げていい笑顔を見せるアルゴ。

 

 コイツがこういう顔をするときは決まって良いか悪いかの二択だ。ぞわっと背筋を悪寒が駆けめぐる。

 

「新システム、それは――――《結婚》ダ」

 

 

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 

 

 今日は溜まりに溜まった疲れやストレスを発散する為に、宿を取った後に自由行動にした。だからこそ俺とシノンはデートしているわけだし、アスナはキリトを落とそうと街中を連れ回して逆に振り回されている。フィリアは狩りで集めた素材で錬金レシピ作りに励んでいるだろう。何時か絶対にマスターキーを作ってNPCが持つ宝箱をかたっぱしから開けてやると息巻いていた。

 

 だからこそ、わざわざ皆を集めてクエストに挑戦するのは気が引けたし、アルゴの忠告を聞く限りでは大人数で行くほど成功率が落ちるそうだ。素直に二人で行くことにした。

 

 場所は十二層主街区から南へ数キロほど下ったところにある古民家らしい。ここいらの敵は何故か比較的弱く、下手をすれば三層程度のステータスしかないと言われた。そのくせ身入りは十二層で新たに現れた敵と殆ど変らない為に、良い狩場として知られている。

 

 今日もたくさんだ。

 

「懐かしいわね……ここで乱獲してたのが」

「そうだな。誰が一番多く狩れるかを競って負けたら驕りとかしてたな」

 

 ここの旨みはレベリング効率の良さにある。ザコなくせに経験値が多めに手に入るわけだが、それを更にブーストしたのがMobの出現率の高さにあった。

 

 一定のエリアごとに、現れるMobの数は決められている。どこかでやられた瞬間に全く別の場所でやられた分だけ湧く。過不足無く、常に一定数のアバターをフィールドに配置しようとするらしい。

 

 低レベルには受けが良いし、ハイレベルにはもっと受けが良い。特に最前線攻略をしているプレイヤーには腕が鈍ることを除いてかなり好まれた。なにせただの一撃を入れるだけで倒せるのだから。

 

 そこでキリトが言いだしたのが「誰が多く狩れるか勝負しようぜ」。負けたら主街区で一番上手い料理を全員分驕るという負けられない罰ゲームが控える中で、全員がマナーそっちのけで狩りまくった。乱入しては横取りし、湧いた瞬間に貫いて、時には面倒な敵にぶつけて時間を稼がせたりとかなり本気だったと思う。

 

 負けたのはこの中では敏捷値が低めのキリトだった。筋力値による重く威力の高い剣を振って重い一撃を入れるタイプのキリトは、反射神経や剣速はともかく移動速度が遅い部類に入る。短剣を使うフィリアは速い上に現実での経験もあるし、シノンは《軽業》を習得している、アスナは手数で攻める細剣使いのために敏捷値はトップクラス、俺は槍と移動速度の高さでノンストップで敵を屠り続けた。

 

 どう考えてもキリトの負けしか見えないゲームだった。

 

 タダで上手い飯を食った俺達はいい思いをして終わったものの、その場にいたプレイヤーからすればとんでもなく迷惑な連中だった。かき乱して横取りされるのだから堪ったものじゃない。

 

 その日以来、各地の狩場にはルールが設けられるようになったという………。

 

 そんなわけで、ここには(キリトを除いた俺達にとって)いい思い出が残っていた。

 

「おい」

「あ、あれは……」

「《永遠の二人(エンゲージ・リング)》じゃねえか!?」

 

 そんな恥ずかしい名前で呼ぶんじゃない……。

 

「もう、気の早い連中ね。もう結婚してるだなんて」

 

 トリップすな。

 

 モーゼのごとく人垣が割れる中を歩く。ひそひそとささやき声が左右から聞こえる。妬む声もあれば、羨ましがる声もあり、キャッキャと騒ぐ声もあれば………

 

「うおおおおおおお!! シノンちゃーーーん!!」

「きゃあああああ! アイン様よーーーーーー!」

 

 俺達の知らないどこかで生まれてきたキチガイ共(ファンクラブ)のノイズも聞こえた。というかそれしか聞こえない。よく見れば殆どの奴がおんなじ鉢巻を巻いている。おい、さっきまで普通の兜とかアクセサリーだっただろうが。フィールドで防具変えるな。

 

「なんなんだこいつらは………」

「流石に面倒ね……」

 

 さっきとは一転してシノンも面倒くさそうだった。

 

 地獄の人垣を越えて更に歩くと、アルゴから聞いていた特徴と一致する古民家を見つけた。

 

 白い塗装に、青い屋根。向かって右端に煙突が経ち、ドアの隣には窓が二つ。隣には馬小屋と倉庫が並んで建ち、敷地は木製の手作り柵で仕切られていた。ポストまで手作りである。

 

 ノックを三回してしばし待つ。

 

「どなたー?」

 

 現れたのは長い耳を持ち、さらさら揺れると長い金髪を垂らした魅力的な女性と、これまた同じく長い耳に、肩まである銀髪をうなじで纏めた肌の黒い男性が中から現れた。

 

「え、エルフ!?」

「おや、僕たちの仲間と会ったことがあるのかい?」

 

 現れたのはエルフとダークエルフの男女だった。二人の左手の薬指には、まったく同じ意匠の指輪がはめられている。

 

 夫婦、なのか?

 

 ファンタジーにおけるエルフは森の妖精で長寿だと描かれることが多い。それと同時に、正反対の位置にダークエルフが存在することもまた多い。SAOにエルフがいるというのは聞いていたし、目にしたこともあるが、仲はよろしくなかったと思う。

 

 なぜ?

 

「ユウ?」

 

 一人でもんもんと考えていると、エルフの夫婦は中に引っ込んでしまい、シノンは追うように家へ入ろうとしていた。声を掛けられて気付き、俺も家にお邪魔する。

 

 中は至って普通の民家だ。人間臭さ溢れる物ばかりで、種族の紋章や武具、装飾品の類は一切見られない。

 

「まぁ、そこのテーブルにでも座って待ってくれ。お茶を持ってくるよ」

 

 銀髪のダークエルフはそう言うと台所と思われる場所に行ってしまった。先に入って行った金髪のエルフの手伝いだろう。

 

 言われた通りにテーブルについて、隣にシノンが座る。

 

「エルフ……なつかしいわね」

「ああ、彼女か」

 

 βテストで俺とキリトが会うきっかけにもなった三層から始まる長期クエストは、エルフ達を中心としたストーリーになっている。正式サービスである今回も勿論クリアした。大分長い上に、他にも話が舞い込むものだから手間が掛かるが、得られるモノは大きい。

 

 何と言っても《ギルド》設立システムの開放だろう。このクエストの途中で手に入る報酬がそれなのだ。大半はそこで止めるし、一応の区切りもつくので先があると気付かない場合が多い。俺達も貰った。

 

 そんなわけで、エルフはわりと身近にいた種族だ。動揺も感動もない。

 

 ただし、疑問は残る。

 

「どうしてエルフとダークエルフが一緒にいるのか、よね?」

「ああ。シノンはどう思う?」

「仲が悪いのは確かなことよ。だから、あの人達がエルフの常識から外れているんじゃない?」

「そうなるな……左手、見たか?」

「ええ。指輪してたわね」

 

 指輪をすること自体は、さして珍しい事じゃない。というか、指輪タイプのアクセサリーもあるし、防具としての機能を持つものも少なくない。HP等のステータスを底上げしたり、ソードスキル熟練度を上げやすくしてくれたりと、プレイヤーにはよく好まれる装備の一つだ。普通にお洒落にも使える。

 

 装備する指も選べるが、指輪は何処の指につけるかなどで風水的な意味合いが変わるなど、暗示の意味を含んでいたりする。それと同時に、左手の薬指と言えば結婚指輪をはめることで知られていることから、誰も付けたりはしない。

 

 まぁ要するに、誰一人として左手の薬指に指輪をはめないのだ。

 

 だからこそ、夫婦のそれは新鮮に見えるし、大きなヒントでもある。この二人がクエストに関わっているのは間違いなさそうだ。

 

「………」

「どうした?」

「私達の指輪、どうしようかしら?」

 

 大分先のことで悩んでいた………。

 

「お待たせ」

「熱いのは平気?」

 

 そんなこんなでお茶とお菓子を持ってきてくれた二人は俺達の対面に並んで座った。やっぱり違和感が半端じゃない。だが、不自然さが微塵もない。

 

「私は《グレース》。こっちは夫の《シバ》よ」

「アインだ。こっちはシノン。よろしく」

「こちらこそ」

 

 握手は省いて、挨拶を交わす。二人ともにっこりと笑っており、突然押し掛けた俺達を心から歓迎してくれているようだ。ゲームのNPCにそんなことを言っても仕方が無いのだが、いきなり無視したり話しかけたり、矢鱈滅多な理由をつけて会話を始めようとする事に比べれば何倍もマシだった。

 

「さて、何の用で来たのかしら? 察しはつくけどね」

「えーっと……」

 

 俺達がこのクエストを知ったのはアルゴの紹介があったからだ。そしてアルゴ曰く、このクエスト報酬は《結婚》という新たなシステムの導入らしい。なんとなく新システムと聞いて黙っていられずに来たが、俺達の目的はその結婚そのものにある。システムの正体がなんなのか、何をもたらすのかは二の次だ。

 

 おそらく、正しい答え方はこうだろう。

 

「俺達、結婚したいんです」

「もう、ユウったら……」

 

 まさかこの年でこんなことを言う羽目になるとは思っていなかった。相手は詩乃の家族でもなければ関係者でもないただのアバターだし。しかし全く嘘のない本心だ、誤魔化すことなく正直に告げた。

 

「はい、よくできました。ところで、結婚するってどういうことなのかは分かる?」

「……共有?」

「あらあら……なんだか説明の手間が省けて助かるのに、複雑な気分」

 

 なんだろうかと考えていると、シノンが口を開いた。

 

 共有、か。

 

 お互いの時間を共有するとか、そんなところだろう。俺達の場合は罪や過去すら重ねている。

 

「はっきり言えば、コレと言った明確な言葉はないわ。それこそカップルの数だけ言葉があるのよ」

「な、なるほど……」

「とにかく、あなた達の場合、もっと言えばシノンちゃんに限っては共有することが結婚だと思っている。としようかしら」

「さて、君たちはお互いのことを何処まで許せる?」

「「全部」」

「これはこれは……」

 

 シバの問いかけに俺とシノンは即答で同じ答えを出す。戸惑わせようと質問を吹っ掛けたシバが逆にうろたえる結果となった。

 

 今になって隠し事なんて必要ないだろ。逆にこれ以上何を隠せばいいんだ?

 

「素晴らしいな。まるで淀みが無い」

「うふふ、期待できそうね。なら、そこまで言うだけのものを見せてもらえないかしら? 上手くいけば、あなた達のゴールインの手助けぐらいならできるから」

 

 クエストランプがようやく点灯する。よし、ここからだ。

 

 何でもかかってきやがれとやる気をみなぎらせる俺を滑らせるには十分な言葉が、このあとグレースの口から聞こえてきた。

 

「ズバリ――愛を見せて」

 


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