バカとテストと召喚獣~新たな始まり~   作:時斗

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第48話 清涼祭、開催!

 

 

 清涼祭初日の早朝。

 晴天にも恵まれ、各教室で出し物の準備が行なわれる中で……、

 

「あーあ……、なんで俺達が手伝いなんか……」

「……全くだ」

 

 僕はFクラスである横溝君と福村君と共に、召喚大会並びに一年生による召喚獣の模擬戦の受付……の準備をしていた。もう既に召喚大会の出場者は決まっている為、早朝という事もあり、人もほとんど訪れない。いかにもやる気の無さそうな面々に溜息をつく。

 

「……やっぱり、まだ喫茶店の方が良かったんじゃないか?そうすればこんな朝早くから、誰も来ねえ受付なんてさせられずにすんだのに……」

「そうだよな……、こんな召喚大会やらのサポートなんかにされる前に決めとけばよかったんだよ……。そうすれば……」

「あー……、横溝君たち?……もう少しやる気を出したらどうだい?」

 

 こんな気分のままで彼らとこうしているのは僕も苦痛でしかないので、話を振ってみる事にする。

 

「でもな、吉井……。正直、こんな事やってらんねえよ……」

「ああ……。何が悲しくて、野郎3人で待機してなきゃなんねえのか……」

「……忘れたの?僕達は大会の管理だけじゃなく……、サポート管理を任されているんだよ?」

 

 どうも横溝君たちはそこまで頭が回っていないようだけど……。

 

「だから……何なんだよ、吉井?」

「つまり……、一年生が召喚獣の模擬戦の為にやって来るんだよ……」

「それはわかってるよ……、だからこうして……」

「当然、女子も……」

「「詳しく聞かせろっ!?」」

 

 異常に食い付く2人。……というより、何でわかってなかったんだ……?

 

「詳しくも何も……、大会の出場者はもう決まってる訳だからさ……。来るとしたら一年生だけでしょ……?今は、自分の教室の準備で忙しいだろうからこんな状態だけど……」

「そ……そうか!一年生の女子か……!」

「ああ……、他のクラスの女子に会いにも行けず、面倒な事をさせられるって思っていたが……、どうしてその事に気付かなかったのか……!」

 

 ……2人とも。やる気を出させる為に女子の事を話したけれど、男子の方もいるんだからね……?まあ、いっか。やる気になったみたいだし……。

 

「それに……、サポートという事で、先生達を手伝うだけじゃない……。場合によっては僕達に指導も任されるかも……」

「こ……こうしちゃいられねえ!!」

「ああ!場合によっては手取り足取り指導できるって事だろ!?こいつは盲点だった!!」

 

 盲点も何もないだろうに……。それに、ここでは言わなかったけど、女子のサポートは基本的に先生方や秀吉……、そしてFクラス唯一の女子である島田さんの役目であって……、君達にその役は回ってこないとは思うけど……。

 

「よし!ここは任せろ、吉井!!」

「ああ……!この場は俺達できちんと勤めてやる!お前は召喚大会等で忙しいだろうし、行ってもいいぞ?」

 

 むしろ行け……、そんな目で僕を見てくる2人……。要するに、僕が邪魔って事ね……。

 

「そう……?じゃあ、任せてもいい?」

「ああ!何時間でもかまわない!」

「むしろ1年の女子の模擬戦が終わるまで、離れて貰ってかまわねえぜ?」

 

 ……まあ若干不安だけど、ちょうど良かった。やる気になったみたいだし、ここは横溝君たちに任せるか……。

 

「わかった……、それじゃあ、お願いするね?」

「ここは俺達にまかせておけ!」

 

 福村君にもそう言われ、僕はFクラスの教室を出る……。折角だし、他のクラスをまわってみるとするかな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう、明久やないか!」

「やあ……、Eクラスは随分と活気があるね……」

 

 Fクラスを出て、すぐ隣にある教室、Eクラス……。体育会系のイベントが多いここで、僕は見知った顔を見つけて話しかける。

 

「浩平は……と、何々……?君は彼を倒せるか……?」

「ああ……、クラスの奴らな?一回二百円で賞金イベントなんて起こしよってな……。まあ、早い話……、この竹刀で3振り以内にワイに当てる事が出来たら、キャリーオーバーの賞金が手に入るゆう訳や……」

 

 成程ね……、あの資金が溜まっているのがそうか……。何でもクラスで一人ひとりが千円ずつ出しているようなので、相当数の金額がプールされているらしい……。そのお金に釣られてやってくるお客さんを対象にって事か……。

 

「浩平なら……、誰が挑戦しても当てられないでしょ?その条件だったら……」

「そらあ……相手の動きで大体わかるでな……。ワイも竹刀つこうて防ぐんはアリやし……。ただ、ワイは今日行かなならん所もあるんやがな……」

「ん……?何かあったの?」

「いや?大した事やない……。それに、その時はちょっと抜けさせてもらうでな……」

 

 浩平はそう言って肩をすくめる……。うーん、本当に大丈夫かな……?

 

「まあ……、何かあったら言って?僕に出来る事なら手伝うからさ……」

「おおきに……。さーて、ワイもそろそろ配置につくか……。ほな、明久。またな」

 

 僕の肩をポンと叩くと、彼は身体を動かしながら奥へと戻っていく……。もし、時間があったら、後で顔を出してみるかな……。

 

「あら?貴方、吉井じゃない?」

 

 浩平の事を考えていた矢先に、女生徒の声がして僕はそちらを見てみると、

 

「えっと……、Eクラス代表の……中林さん?」

「ええ、そうよ。この間の試召戦争ではお世話になったわね」

 

 まあ……お世話になったのはこちらもだけど……。おかげでまた浩平とも、こうして知り合えた訳だし……。中林さんの隣にいる黒髪の女生徒もペコりと僕に頭を下げてくる。

 

「私は三上美子といいます。はじめまして、吉井君……。貴方達のおかげで……、私たちEクラスも試召戦争を味わえたばかりでなく、負けたのに設備交換まで免除して貰って……」

「はじめまして、三上さん……。その件については雄二に言って貰えるかな?正直、僕にそんな権限はないし……」

「でも、吉井が私たちの宣戦布告を受けなかったら、Eクラスは試召戦争は出来なかったわ……。坂本君も、吉井の意見で開戦に踏み切ったみたいだったし……」

 

 ……そうだったかな?でも、悪い気はしない……。

 

「で、どうしたの?Eクラスの出し物に興味があるの?」

 

 結構、好意的に接してくれている中林さんがそう僕に聞いてきたので、

 

「うん、Eクラスは凄いね……。設備に関しては、他の上位クラスと比べてハンデもあるのに、こういった感じのイベントで補うなんてさ……。これだったら問題なく対応できるだろうし……」

 

 Fクラスよりはマシといっても、Eクラスの設備はDクラスのそれと比べても色々と酷いと思う。言い方はわるいが、山奥の……、それも数人しかいないような閉鎖的な教室ってカンジがする……。その設備で、これだけのイベントを企画して実行に移すっていうのは凄い。

 

「そう言って貰えるのは嬉しいわね……。でも、一番は彼の存在かな……?」

「ああ……。あれは、確かに……」

 

 そして僕達は奥にいる浩平を見る……。浩平ならば、普通の人相手に不覚は取らないだろうし、強い人が来たとしても3振りで彼を捉える事は出来ないだろう……。伊達に『文月学園の剣聖』なんて呼ばれてはいない……。それに、こんなお祭りのようなイベントで、1回二百円ならば、遊びもかねて挑戦する人も多いし……、見せ金に釣られる人も来るに違いない。

 

「普段、あまりクラスに興味が無い片岡君が協力してくれたって言うのは大きいわね……」

「それに……、他の子たちもそれぞれ自分の特技を生かして、皆、頑張ってくれてるんです……」

「そうなんだ……」

 

 今回、学園長は清涼祭の収益で、設備の向上をしてもいいと認めている。通常は試召戦争の結果のみでしか変わらない設備が改善できるといった事も、各クラス、特に下位のクラスがやる気になっている要因のひとつなのだろう……。そういった意味ではEクラスは勿論だが、人気の喫茶店を出張させるというDクラスも完全に勝ちにきているのかもしれない……。

 

「でも……、Fクラスは大変ね……。何でも、強制的に今回の召喚大会の手伝いをさせられるとか……」

 

 折角設備向上のチャンスなのに……。言外にそう匂わせる中林さんに、僕は、

 

「うん……。でも別にいいさ……。Fクラスは身体が丈夫な奴ばかりだから風邪も引かないだろうし……。僕としてもそんなに設備には興味ないし……」

「あ……、でも、よかったの?本当に、設備交換は……?」

「ほえ?」

 

 あれ?どういう事だろう……?

 

「さっきも言ったけど……、設備は入れ替えた方が良かったんじゃない?吉井はそう言ってくれてるけど……、試召戦争である以上、設備の交換は校則のようなものだから……。それに、今回は私たちから宣戦布告してるって事もあるし……」

「……今回は代表が、というよりも、クラスの雰囲気で開戦を決めたって事もあったので、もし負けて設備が落ちてもかまわないって話だったんです。それで、負けてしまったというのに、それを免除してもらったから……」

 

 結構、気にしてくれているのかな……。

 

「だから……、今回のEクラスの売り上げは、Fクラスの改善にまわそうって事で皆納得してくれているのよ」

「ちょっと待って……。それは、いくら何でも……!僕達は受け取れないよ!」

「でも……、Fクラスは今回、出し物は召喚大会のサポートです……。設備の改善も望めないですよ……?」

「それなら……確か雄二が、今回の件が上手くいったら、設備の改善を学園長が約束してくれたって言ってたような気がする……」

 

 ……うん、確かに言っていたような気がする……。それに、万が一設備がこのままでも、僕は一向にかまわないし……。

 

「そうなの?でも、皆の意見はそれで一致してるから……」

「じゃあ……、Eクラスには、僕達が困った時、一回助けて貰いたい……。雄二も目的は果たしたから、もう試召戦争を仕掛けるって事も無いだろうけど、これからどんな事が起こるかわからないし……。だから、その売り上げはEクラスの改善に使って?雄二も多分、同じことを言うと思うから……」

 

 Fクラスの他の連中ならともかく……、雄二たちが他のクラスの売り上げを貰って設備を向上しようなんて考えてもいないだろう……。そんな事をするくらいなら、今僕が言ったような事を提案するに違いない……。

 

「……本当に、それでいいの?」

「……というよりも、雄二は他のクラスの売り上げを受け取らないと思うよ……?」

 

 雄二の性格ならよくわかっている。これは恐らく、間違いない。

 

「……貴方達には借りばかり出来ちゃったわね……。まあ、いいわ……。何か困ったら、私たちEクラスも協力してあげる……。まぁ、役に立てるかはわからないけど……それでいい?」

「うん……、有難う。中林さん、三上さん……」

 

 さて、後で雄二に言っておかないとな……。それに、そろそろ召喚大会の会場に行かないといけないかもしれない……。

 

「じゃあ……、すみません、吉井君。時間をとらせて……」

「坂本君によろしくね」

「わかった……。中林さん達も、頑張って!」

 

 そう言って僕はEクラスを後にする。教室を出て、校庭にある特設会場に向かう途中、僕は考えていた。

 

(……『今回』は、すこぶる順調なのかな……)

 

 今まで何度も『繰り返し』てきたけれど……、こんなに色んな人に好意的に協力してくれた事なんて無かった気がする……。Aクラスだけでなく……、Cクラスの勇人達はもとより、浩平のいるEクラスまで協力してくれるなんて事は……。

 

(雄二達や先生方のお陰なんだろうけどね……)

 

 もう会場にいるであろう雄二達に心の中で感謝しつつ、僕は会場へ向かうべく駆け出していくのだった……。

 

 

 


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