バカとテストと召喚獣~新たな始まり~   作:時斗

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文章表現、訂正致しました。(2017.12.5)


第34話 AクラスVSCクラス (番外4-3)

「……それではこれより、Aクラス対Cクラスの模擬試召戦争を始めます」

 

 

 高橋先生以下、4人の教師に立ち合いをお願いし、Aクラスの教室前に集まって貰う……。両クラス生徒もそこに集まり、始まりの時を静かに待っていた……。そして……、

 

 

「……はじめ!!」

 

 

 今、Cクラスとの模擬試召戦争が切って落とされる……!

 

 

「みんな!各個撃破していって!」

「……一対一では勝てません!それぞれで、多対一の状況を作り出してください!」

 

 

 私と神崎さんの指示が飛び交う……。

 

 

 

【英語】

Aクラス-栗本 雷太  (223点)

VS

Cクラス-黒崎 トオル (136点)

 

 

 

【数学】

Aクラス-横田 奈々 (243点)

VS

Cクラス-榎田 克彦 (131点)

Cクラス-新沼 京子 (116点)

 

 

 

【総合科目】

Aクラス-時任 正浩 (2621点)

VS

Cクラス-神戸 慎  (1363点)

Cクラス-吉岡 創路 (1401点)

Cクラス-新山 猛  (1339点)

 

 

 

 ……状況は五分五分、やや多対一の構図が出来上がっている、と言ったところかしら……。操作性を学ぶ……。それでも補えない点数差を各々の連携で補おうというのが相手の考えなのだろう。私は出来る限り各個撃破すべく、一対一の状況で戦いつつ、周りの状況を把握する。

 

 

「木下さん、覚悟ッ!!」

「……甘いわよっ!」

 

 

 隙を突いたカタチで、相手が武器を手に突撃してくる。私はそれをランスで受け流し、すれ違い様に相手の急所へと武器を突き出した。

 

 

 

【英語】

Aクラス-木下 優子(382点)

VS

Cクラス-大野 透(0点)

 

 

 

「戦死者は補習だ」

「模擬試召戦争なのに!?」

 

 

 

 ……目の前の相手を戦死させ、西村先生が来たところで、改めて状況を見てみる。代表には一応後方に控えてもらい、近衛部隊を配備している……。一応、愛子にも居て貰ってるから大丈夫だろう……。後は……、

 

 

 ブォンッ!!

 

 

 その時、風を切るような音がしてその方向を見ると、

 

 

 

【現代国語】

Aクラス-久保 利光 (321点)

VS

Cクラス-野口 一心 (11点)

Cクラス-高田 光彦 (0点)

Cクラス-野々村 充 (0点)

 

 

 

 利光君が複数のCクラス生徒相手に立ち回り、殆どを戦死させていた。恐らくは『腕輪』の力を使ったんだろう……。

 

 

(利光君の現代国語は確か400点を越えていた筈だしね……)

 

 

 そして戦死した生徒と交代で、参戦してきた人物がいた……。

 

 

「それが久保の『腕輪』か……」

「君は……、高橋君かい……」

「やはり、『腕輪』の力はすごいな……。じゃあ久保、次は俺と戦ってもらう!一心もそのまま手伝ってくれ!」

「わかったぜ!」

「……ならば受けて立とう……。科目はこのままかい?」

「いや……、高橋先生、『物理』に変更して下さい」

「……物理でいいんですね?……わかりました。承認します」

 

 

 ……?高橋先生が一瞬口籠ったような……?それに確か、彼って『腕輪』を持っているって言ってなかったかしら……!?

 

 

試獣召喚(サモン)!」

 

 

 

【物理】

Aクラス-久保 利光(336点)

VS

Cクラス-高橋 勇人(221点)

Cクラス-野口 一心(124点)

 

 

 

「……また、随分と高い点数だね……」

「……ああ、お前に比べれば低い点数だが……、さて、いくぞ……!」

「クッ……!」

 

 

 さすがに利光君も多対一、それも一人はAクラス並に点数が高い人……。同時に相手にするのは厳しいだろう……。私も援護に行きたいけど……。

 

 

「木下さん!今度は私が……!」

「……ッ、ダメね……!誰か、利光君の援護を!」

 

 

 余裕がある人に彼の援護に行かせるように指示を出す……!私も、早く終わらせないと……!

 

 

「久保君!私が……!」

 

 

 そこへ、相手を蹴散らした姫路さんが援護へ向かったようだ……。しかし……、

 

 

「……姫路さん、ここから先へは行かせませんよ……!」

「ッ!通して下さいっ!!」

 

 

 

【物理】

Aクラス-姫路 瑞希(372点)

VS

Cクラス-神崎 真琴(483点)

Cクラス-村田 奈々(99点)

 

 

 

 よ、400点越え……!?一体Cクラスは何人、高得点者がいるの……!?

 

 

「……相手は姫路さんですし……、ここは使わせて貰います……」

「えっ!?」

 

 

 神崎さんの召喚獣の腕輪が光ったかと思うと、眩いばかりの閃光が迸る……!これは……、目晦まし……!?

 

 

「きゃっ……!?」

「姫路さんっ!?」

「……余所見とは余裕だな……、久保……っ!」

「しまっ……!?」

 

 

 

【物理】

Aクラス-久保 利光(207点)

Aクラス-姫路 瑞希(71点)

VS

Cクラス-高橋 勇人(201点)

Cクラス-神崎 真琴(433点)

Cクラス-野口 一心(75点)

Cクラス-村田 奈々(99点)

 

 

 

 そちらを見てみると、利光君の援護には行けたものの姫路さんの点数は大幅に削られていた……!あの『腕輪』の能力か、または目を晦まされた時にその隙を突かれたのだろう……。戦死しなかったのは咄嗟に急所は避けた為か……。

 

 

「……流石ですね……。あそこで避けられるとは……。私の操作が未熟だった事もあるのでしょうが……」

「そこは、姫路だからだろう……。昨日まではFクラスにいて、人一倍召喚獣の操作に慣れている筈だからな……」

「……大丈夫かい?姫路さん……」

「は、はい……。大分、点数を削られてしまいましたけど……」

 

 

 ……このままだと2人をみすみす戦死させてしまう事になる……。

 

 

「……悪いけど、もう終わらせてもらうわ……」

「え?きゃあ!?」

 

 

 

【数学】

Aクラス-木下 優子(313点)

VS

Cクラス-岡島 久美(0点)

 

 

 

 私は攻撃を繰り出し相手を戦死させる……。多少強引だったせいか、こちらも点数を削られてしまったがそんな事もいってられない。戦闘を終わらせると、そのまま利光君達の援護に入る……!

 

 

「大丈夫!?利光君、姫路さん!」

「……なんとかね……、このままだと厳しいが……」

「……木下も来たか……。Aクラスのトップ10が3人、ね……」

「……どうするんですか、勇人……。『変更』するんですか……?」

「そうだな……、高橋先生、『化学』に変更できますか?」

 

 

 通常、私が利光君達のフィールドに援護に来た以上、科目の変更権は向こうにある……。有利に進んでいる以上、科目を変更する事にメリットなど無い筈だ……。それなのに……、

 

 

「……ここで『化学』ですか……。わかりました、承認します」

 

 

 ……自分達に有利な科目なのに、わざわざ変更するなんて……。

 

 

「……折角点数を削ってたのにいいの?」

「……さっきも言ったが、今回は召喚獣の操作に慣れるといった目的がある……。それにこの教科は……俺の得意科目だ」

 

 

 

【化学】

Aクラス-木下 優子(374点)

Aクラス-久保 利光(327点)

Aクラス-姫路 瑞希(408点)

VS

Cクラス-高橋 勇人(421点)

Cクラス-神崎 真琴(179点)

Cクラス-野口 一心(114点)

Cクラス-村田 奈々(125点)

 

 

 

 ……もう、驚かないわよ……。さっき、彼は自分で『腕輪』を持っている科目があると言っていた事だし、ね……。

 

 

「さて……、じゃあ俺も使わせてもらうかな……」

 

 

 高橋君がそう言った瞬間、召喚獣の腕輪が光り……、周りに薄暗い霧のようなものが発生する。

 

 

「こ、これは……!?」

「……点数の消耗が激しいみたいだからな……。さっさと終わらせてもらうぞ……!」

 

 

 そして、彼の召喚獣が消え……!?えっ!?消えたの!?

 

 

「……!?優子さんっ、あぶないっ!!」

「えっ!?きゃっ!」

 

 

 利光君の召喚獣が私を庇うと……、

 

 

 

Aクラス-久保 利光(0点)

 

 

 

 切り裂くような音がしたかと思うと、私を庇った利光君の点数がなくなり戦死してしまう……。一体、何が……。

 

 

「利光君……、ごめんなさい……」

「……すまない、僕はここまでのようだ……。優子さん、彼の召喚獣は周囲に溶け込んでくる。気を付けるんだ……」

 

 

 ちょうど西村先生が来て、補習室に向かう利光君……。

 

 

「……木下の代わりに久保が戦死か……」

「高橋君……。今のは……」

「……俺の召喚獣は周囲を闇に包む事が出来るらしい……。点数の消耗が激しいからあまり使えないが、他にどんな事が出来るかを模索しているところだ……」

 

 

 

Cクラス-高橋 勇人(284点)

 

 

 

 彼の姿が実体化して点数が表示される。……確かに彼の点数も大分減ってはいるが、能力は脅威すぎる……。あんなカタチで攻撃されたら回避のしようがない。これが……『腕輪』の力なの……?

 

 

「久保君……。今度はこちらの番ですっ!!」

 

 

 そう言って姫路さんの召喚獣が前に出ると、その『腕輪』が輝き出す……!そうか……、彼女も腕輪を……!

 

 

「何がくる……!?」

「……勇人ッ!!」

 

 

 次の瞬間、キュボッという音と共に、彼らに向けて放たれたレーザービームのような熱線が襲う!……様子見をしていたCクラスのメンバー諸共、その熱線が降りかかろうとした時、神崎さんが高橋君の召喚獣を庇うかのように突き飛ばし、その攻撃範囲から外させた。

 

 

 

「うわあ!!」

「きゃあぁぁーっ!!」

「……ッ!ここまでのようですね……!」

 

 

 

Cクラス-神崎 真琴(0点)

Cクラス-野口 一心(0点)

Cクラス-村田 奈々(0点)

 

 

 

 逃げ遅れた彼女らの召喚獣が炎に包まれ戦死した……。す……凄い……。これは命中したら点数がいくらあっても戦死するんじゃ……。

 

 

「真琴ッ!!すまない……、仇は討つ……!」

 

 

 そして再び闇を発生させると……、

 

 

「ッ……!」

「姫路さんっ!!」

 

 

 

Aクラス-姫路 瑞希(0点)

 

 

 

 高橋君の攻撃を受け、姫路さんも戦死してしまう……。

 

 

「木下さん……、ごめんなさい。後はお願いします……」

「限界、か……。上手く調整しないと実用は難しいみたいだな……」

 

 

 

Aクラス-木下 優子(293点)

VS

Cクラス-高橋 勇人(99点)

 

 

 

 能力の影響か、高橋君の点数も大幅に削られていた……。まあ、あれだけの力、副作用がないと使えないだろうけど……。

 

 

「さて、じゃあそろそろ終わらせるか……。おかげで、こちらも大分使い勝手がわかってきたしな……」

「……わかったわ……」

 

 

 点数はこちらが上だけど、それだけでは決まらない……。それが今までの経験で嫌というわかってる……。慎重に相手を窺い、そして……!

 

 

 バシュッ!!

 

 

 

Aクラス-木下 優子(172点)

VS

Cクラス-高橋 勇人(0点)

 

 

 

 こちらのランスで貫いた時に、私も彼の一撃を貰い、点数を減らす……。なんとか倒す事が出来たけれど……、これは、痛み分けといったところだろう……。

 

 

「……負けたか……」

「もし貴方に点数があったら……。結果は逆だったかもしれないけどね……」

「……召喚獣の能力は最初の点数で決まる……。点数が上だった俺をキッチリ戦死させてるんだから、それはお前の実力だよ、木下……」

「……有難う。……そう言った方がいいのかしら……?」

「ああ、褒めたつもりだからな。……尤も、俺がこんな召喚獣うんぬんに興味を持つとは思わなかったが……」

 

 

 最後に彼は頭を掻きながらそんな事を言いつつ、補習室の方へ向かう。……それは私も同じかもね……。そう思った時、Cクラスの代表である小山さんから声がかかった……。

 

 

「木下さん……、次は私と戦ってもらえるかしら?」

「……いいの?貴女がやられたら、模擬試召戦争も終わっちゃうわよ?」

「まあ、そろそろ頃合いだし……、いいと思うわよ……?」

 

 

 そう言う小山さんを見てみると、彼女に付き添っている筈の近衛部隊もいない状態であった……。

 

 

「……Cクラス(ウチ)の主力がやられた上に、もうそんなに人がいるわけでもないからね……。そろそろ潮時だと思うから……」

「……わかったわ」

 

 

 確かにもうCクラスの人達は数えるほどしかいない……。だけどAクラスも大分やられてしまったようだ……。この辺で決着をつけるべきなのだろう……。

 

 

「科目は……このままでいい?」

「意外ね……。もう大分点数が残っていないのに……。それとも余裕、なのかしら?」

「まさか……。ただ、さっき高橋君達と戦った時も向こうが有利なのに科目を変更してくれたしね……」

「そう……、まあいいわ。……試獣召喚(サモン)!」

 

 

 

【化学】

Aクラス-木下 優子(172点)

VS

Cクラス-小山 友香(168点)

 

 

 

 点数上は互角……。ただ、召喚獣の能力は元の点数が高い私の方が上……。それがわかっているのか、小山さんも慎重になっている。

 

 

「ただ……、このまま手をこまねいていてもね……」

「それには同感……。どうかしら?この際一気に決めない?」

「そうね……。アタシも賛成、かな?」

 

 

 そう答えると、私は召喚獣にランスを構えさせ、突撃するスタイルに入る……。対する小山さんも両手で剣を構えさせ迎え撃つようだ……。攻めきれなければ、負けるだろう……。

 

 

「行くわよっ!!」

「……来なさいっ!!」

 

 

 その言葉とともに、私は攻撃を受け流そうとしている小山さんに向けてランスを突き付けていった……。そして……、

 

 

 

【化学】

Aクラス-木下 優子(0点)

VS

Cクラス-小山 友香(0点)

 

 

 

 小山さんの召喚獣を討ち取れたものの、私も反撃を受け、点数が無くなってしまっていた……。

 

 

「両者戦闘不能ですね……。ただ代表である小山さんが戦死したため、この模擬試召戦争はAクラスの勝利となります!」

 

 

 Aクラスの勝利となり、勝鬨があがる……。代表や愛子たちもCクラス人達を上手く撃退できていたようだった。愛子が私の方を見てウインクしながら手を振っていた。……ん?何か口が動いてる……、何々……?

 

 

(ガ・ン・バ・ッ・テ・ネ)

 

 

 …………。そう言う事ね……。

 

 

「小山さんと木下さんは点数が無くなったので、一度補習室の方へ行ってください」

「「わかりました…」」

 

 

 ……私も戦死しちゃったから地獄の補習が待っていたわね……。模擬試召戦争も終わった以上、補習というより点数回復ができればすぐに補習室からは出られるだろうけど……。

 

 

「さすが木下さんね……。私は受け流せると思ってたんだけど……」

「……そうかしら?でも小山さん、試召戦争で召喚獣を動かしたのは初めてよね?それで相打ちにされるとは思わなかったんだけど……」

 

 

 ……でも、昨日の試合といい、ここのところ相打ちが多いわね……。それにしても、『腕輪』か……。私もあと少しではあるのだけど、まだ400点を越える科目はない……。それに明久君の事もあるし……、

 

 

(アタシも400点に近い科目を集中して勉強しようかしら……)

 

 

 そう思いつつ、小山さんと話しながら補習室へ向かった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――……所変わって、補習室……。

 

 

「……大丈夫かいな、吉井……」

「うん……、まあ、慣れてるし……」

 

 

 次々と戦死した生徒が送られてきており、そこで地獄の、いや特別講義が行われていた……。E・Fとの試召戦争の他に、A・Cも模擬試召戦争が行われていた為、ひっきりなしに西村先生は出たり入ったりしていたが……。

 

 

「ちゅーても、あん人はホンマ人間か……?」

「どうだろうね……」

 

 

 僕も週に7回以上は思ってたりするんだけど……、それに関しては未だに答えが出ない……。

 

 

「……自分、剣道やってた事はあるんか……?」

「……うん。『前』にちょっとね……」

 

 

 ……そう……、『前』に君と、ね……。

 

 

「吉井……、お前、あの構えをとらんかったら、そんなフィードバックを負う事もなくワイを倒せたんちゃうか……?」

「……どうしてそう思うの?」

「剣道やっとったんならわかるやろ?……あの構えは『火の構え』や……。攻撃に優れているが、守りには向かん……。自分ほど召喚獣操れるんやったら、そんな事せんでも勝てるんちゃうんか?」

 

 

 ……そうだね。あの構えを取らなかったら、多分攻撃を喰らう事なく倒す事が出来ただろう……。でも……、

 

 

「あの『構え』には、思い入れがあるんだ……。それに君とは……、どうしてもあの『構え』で戦いたかった……」

 

 

 彼との思い出の中にある勝負……、そのいずれの時でも使った、あの『構え』で……!その答えに納得してくれたのか、片岡君が話しかけてくる。

 

 

「ほんまか……。ほな自分、その怪我なおったら剣道部に入らんか?」

「うーん……。部活動はあんまり出来ないと思うな……。やらなきゃならない事があるからね……」

「なら暇な時だけ顔を出すだけでええ……。ワイは自分が気に入ったわ。なんか話しやす思うし、それに……なんや、自分といるとこう……、前からずっと一緒だったように感じる事もあるねん……。上手くは言えんけどな……」

 

 

 ……僕も、あの時は君とずっと一緒だったからね……。何を考えているかもお互いに分かるくらいに……。

 

 

「……時々顔を出すくらいしか出来ないと思うよ……」

「それでもええ。あと……、これから自分の事は『明久』呼ぶ事にするわ。自分もワイの事は『浩平』でええ」

「……うん。わかった。『浩平』……。これからも……、よろしくね?」

「おう!!『明久』、こちらこそよろしゅう頼むわ!!」

 

 

 ……一瞬あの時の事が頭をよぎった……。

 

 

 

 

『ほんまか。ほなこれから自分の事を『明久』呼ぶわ。自分もワイの事は「浩平」でええ』

『うん、わかったよ「浩平」。これから……、よろしくね!』

『おう、そりゃこっちの台詞や、「明久」!』

 

 

 

 

 また、こうして彼と一緒にやっていけるのか……。だとしたら……、こんなに嬉しい事はない……!また、『彼』と関われる……、その奇跡のような事に……!。

 

 

「……補習室で友情を育む奴らがいるとはな……。まあいい、吉井、片岡!とりあえず、これを全部こなせ!!」

「……これはまた殺生な……」

「うん……、でも頑張ろう……。そろそろ試召戦争も終わるころだと思うしね……」

 

 

 その後、利光君や姫路さん、優子さん、そして高橋君達も補習室にやってくる中で、試召戦争に決着が着いたと報告が入る……。

 どうやら雄二が決めて、Eクラスとの戦いを制したようだ……。一応、3ヶ月試召戦争を起こさないという事で設備交換無しの和平交渉を結んだらしい……。

 そして……、これは事実上、2年の全クラスにおいて一学期の間に試召戦争を体験したという事を意味していたのだった……。

 

 

 

 

 




とある時の明久の体験(4) 『~文月の剣聖~3』


 ――PM7時、文月学園剣道場にて。
 暗くなった部屋に2人の生徒がお互い防具を身に付けて対峙している……。一人は僕……、そして、もう一人は……。


「明久……、一本勝負や……」


 ……僕の親友にして、ライバルの片山浩平……。『文月の剣聖』と呼ばれるその人だった。


「一本勝負……」
「そうや……。もう、ワイ達の間に言葉はいらへん……。その剣で……、見せてみいや……!」


 そう言って、浩平は剣を構える……。一本勝負……。あの、はじめて会った時と同じ、一本勝負か……。
 僕も浩平に向けて剣を構えた。……構えると……、色々思い出す事があった……。始めて会った時の事、一緒に剣を学んだ日々、それぞれのプライベートを共有し……、そして剣道部の強化合宿……。
 走馬灯のように浮かんでは消えていく……。まるで、死ぬ間際であるかのように……。尤も……、数分後にはそれは真実になるだろう……。


(だったら……!)


 僕は今までの全てを込めるかのように構えを上段に変える……。


「火の構え……、か……」
「……あの時と、同じでしょう……?」
「あの時……?ああ……、あの時か……」


 浩平も思い出したのだろうか、彼も上段の構えに直す……。防具に隠れて見えないが、どこか笑っているような印象も受ける……。


「自分とはじめて会うた時もそうやったな……」
「……あの時は勝てなかった……。だから……、あの時と同じ構えで……、今度は君を倒す……!」
「はん……、10年早いわ……!」


 お互い防御を捨てて、この一撃に全てを込めようという構え……。自分の全てをかけて……。相手に対する最大の敬意をもってそれに答える……!
 ……静まり返る剣道場……。あの時と、同じ状況……。その中で僕の腕に付けた『腕輪』のみが輝き続ける……。
 そして、その輝きが一際大きくなったその時、僕と浩平は同時に動いた……!



 バシィィッ!!!








「……勝てなかったか……」
「……『引き分け』といて何、贅沢言うとんのや……」


 お互いが互いの面に竹刀を打っていた……。尤も、僕の剣は彼に比べると浅かったから引き分けかと言われるとアレだけど……。


「浩平……」
「胸を張れや、明久……。自分は仮にも『文月の剣聖』と呼ばれたワイと引き分けたんやで……?」
「浩平……、僕は……」


 彼は僕が話そうとしたところを制するようにし……、


「明久、ええんや……。自分の話、最初に聞いた時は、確かにショックやったわ……。何でもっとはよう言うてくれんかったんや思うてな……」
「…………浩平……」
「せやけど自分には『目的』があったんやな……。あの日、あの時から……」


 そう言われ、また始めて会った時を思い出す……。そして浩平との日々も……。


「自分はワイについてきた……。言わへんかったけど、嬉しかったんやで?……他の奴らは……、ある意味ワイに遠慮しておったしな……。アイツは天才や、特別や言うてな……。せやけど自分は……、自分だけは最後までワイについてきてくれた……」
「浩平……」
「そのお前の決めた事や……。自分の覚悟……、『剣士』の覚悟にケチをつける訳にはいかん……」


 ……今回の事は、西村先生にも伝えてはいない……。『繰り返す』覚悟でやっていた事だからだ……。余計な事を言って、苦しむ人を増やしたくなかった……。学園長にだけは簡単に事情を伝え、大きな変化がおこった時のみ教えてもらってはいたが……。
 そう……。本当は他に誰にも伝えるつもりはなかったんだ……。彼とも……、ここまで仲良くなるとは思ってもいなかった……。
 そして……、『繰り返す』前兆がおこり、腕輪が一段と輝き出した……。


「……そろそろ時間か……?」
「…………うん……」
「……泣くなや、明久……。剣士は涙を見せたらアカン……」
「な、泣いてないよ……!それに、なんだよソレ……!」


 不覚にも涙が出そうになってきたのを隠し、彼の言った事の意味を聞く……。


「泣く時は……、全て終わってからや……。自分は……、まだこれからやろ……?」
「…………」
「……だから、その時まで、涙はとっておくんや……」
「浩平……」
「フン……、ワイまで、つられてきそうになるやないか……」


 もう……、彼とここまで関わる事はないだろう……。それに……、こんな風に僕から剣道部に向かわなければ、浩平と話をするという事もないだろう……。自然な流れに逆らい、下手に交流を持とうとしたら、その分『繰り返す』可能性も高くなるだろうから……。


「こんな……、思いを、君に……!」
「それを言うなや……。それに……、ワイは後悔しておらへん……。自分と……、『明久』と会うと事はな……」
「……ッ!」
「……自分といたこの1年とちょっと……、悪くなかったわ……」


 その言葉と同時に、いつもの時のように僕は激しい光に包まれる……。


「絶対に乗り越えるんや、明久!!乗り越えて……、そのあとワイにも教えてくれや……。そん時は……、最後まで『剣道』をやるんやでっ!!」
「うんっ、わかったよ……、浩平!……今まで、ありがとうっ!!」



 ――そして目の前が真っ暗になり……、僕は『繰り返し』た……。








 それからはやはり浩平と普通に話す事はなくなった……。でも……、いつか……、何時の日か、また彼と一緒に話せるように……!そう思いつつ、僕は歩き続ける……。そして…………、




「EクラスがFクラスに試召戦争を仕掛けてきたのじゃ!!」


 秀吉からの連絡を受けて、僕は急ぎ臨時のFクラスとなっている場所へ向かう……。もしかしたら、と……。今までは『試召戦争』に関わる事のなかった『彼』が来るかもしれない……!そう思って、怪我をしているのも忘れ、僕はFクラスの教室へと走っていく……。


 そして……、僕と『浩平』の道が、再び交差する……。



とある時の明久の体験(4) 『~文月の剣聖~3』 終

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