バカとテストと召喚獣~新たな始まり~   作:時斗

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問題(保健体育)
以下の問いに答えなさい
「女性は( )を迎えることで第二次性徴期となり、特有の体つきになり始める」


姫路瑞希の答え
「初潮」

教師のコメント
正解です。


吉井明久の答え
「天敵」

教師のコメント
……天敵に会ったからといって女性は変わりません。


土屋康太の答え
「初潮と呼ばれる、生まれて初めての生理。医学用語では、生理のことを月経、初潮のことを初経という。初潮年齢は……(省略)……などに影響される」

教師のコメント
……詳しすぎです。



第20話 開幕!エキシビションゲーム! (番外1)

 ――Aクラスの教室にて。

 昨日よりAクラスの教室内を、エキシビジョンゲームの、試合会場に改装されていた。昨日一日でここまでに仕上げたのだ……。本当は明久の観察処分者の仕事でもあるのだが、試合に出るという事と、最近きちんと責務をこなしている事が認められて、免除とされたのである。

 

 ……余談ではあるが、代わりに教師と、一部のクラスの生徒が大変な目にあったのは言うまでもない……。今日は教師もこのイベントにかかりきりとなる為、急遽授業も自習扱いで免除されると決まる事になり、学年を問わず見学の生徒が多数集まっている。

 

 ……普通ならばA対Fの試合なんて結果が解りきっていて、見る価値もないのだ。だが、今回はFクラスが怒涛の勢いでDクラスBクラスを点数差を覆すように破り、話題が広がっているせいでもあるのだろう……。過去最強のFクラス、とも噂になっているらしい……。そうでなければ、プロモーションビデオなどまわす事もないし、ここまで人も集まるわけがない……。

 

 

「これより、2年AクラスVS2年Fクラスのエキシビジョンゲームを始めます。両者、準備は宜しいでしょうか?」

「……大丈夫です」

「こちらも、問題ない」

 

 

 立会人であり司会でもある学年主任の高橋先生の下、進行が進められる。試合形式、ルール、勝敗決定などが説明される中、皆試合が始まるのを固唾を呑んで見守っていた……。

 Aクラス、Fクラスはぞれぞれ宛がわれた場所にて待機し、そして試合に臨むメンバーがそれぞれ横一列で並んでいる。

 

 

 並んでいる順番がそのまま試合順になる為、それぞれ、

 

 

第一試合 Aクラス 木下優子 VS 木下秀吉 Fクラス

第二試合 Aクラス 佐藤美穂 VS 吉井明久 Fクラス

第三試合 Aクラス 工藤愛子 VS 土屋康太 Fクラス

第四試合 Aクラス 久保利光 VS 姫路瑞希 Fクラス

最終試合 Aクラス 霧島翔子 VS 坂本雄二 Fクラス

 

 

 という流れでおこなわれる事となった。

 

 

 

 そんな中、Fクラスの待機している中に一人、不機嫌な様子を隠しきれていない者がいる。……このFクラスの待機場所の中で、唯一の女子である島田美波だ……。彼女は昨日、代表である坂本雄二に或る事を訴えていた。

 

 

 

 

 

 

 ――昨日某時刻、Fクラス教室にて。

 

 

「ちょっと、坂本!なんでウチを、明日の大会に出さないのよ!?」

 

 

 坂本雄二が一人明日の為に自習をする中、明日のメンバーの件で島田美波が詰め寄っていた。

 

 

「……それは簡単な事だ。お前ではとても相手にならないからだ」

「なんでよ!?ウチは数学なら瑞希には負けるけど、吉井や木下よりは高いのよ!?」

 

 

 代表である坂本や、総合得点の高い姫路瑞希、一教科においてその点数よりも上回る土屋康太がエントリーされているのはわかる……。だが島田としては吉井明久や木下秀吉が自分を差し置いて、大会にエントリーされているのがどうしても納得できなかった。

 

 

「……島田。たしかにお前の数学の点数は、Fクラスの貴重な戦力だ。それは間違いない……」

「だったら……」

「だがな島田……。お前の点数はBクラス並……。明日の相手はAクラス。……一体、どうやって勝つつもりだ……?」

 

 

 それは彼女にもわかっていた。確かにいくら得点が高いと言っても、せいぜいBクラスに勝てるくらい……。それを上回るAクラスには通じないかもしれない……。でも……。

 

 

「うっ……!で、でもそれを言うなら木下や吉井だって……!!」

「……悪いが、島田。お前と秀吉じゃあ戦力が違いすぎる……。アイツは今やFクラスの立派なエース候補なんだぞ……?アイツならAクラスとも戦える」

 

 

 それに彼女は知らないだろうが、秀吉は試召戦争を仕掛けた日より、自分がクラスの役に立てるように必死で努力している。今日もうまく隠していたが、目元に薄く隈を作っている事を坂本雄二は気づいていた。

 

 

「だ……だったら吉井はどうなのよ!!アイツなんて、早々に帰っちゃったじゃない!!……だからアイツには明日お仕置きをして……!」

「……明久は名実とともにウチの切り札にして、エースだ。アイツのBクラス戦での戦いぶりが学年を超えて噂にまでなっているのを知らない訳じゃないだろう……?」

 

 

 ……明日の試合がエキシビジョンゲームとなり、こちらの要求が通ったのは吉井明久がいたからと言っても過言ではない。……普通FクラスがAクラスに挑んでも笑い話になるだけだが、D・Bクラス戦での点数差を無視して戦えている『過去最強のFクラス』という噂が、もしかしたら……、という興味を煽っているのだろう。

 

 

「で……でも……」

「……頭を冷やせ、島田……。出来れば、あの模擬試召戦争で、お前にも操作感を体得して貰いたかったが、今となっては過ぎた話だ……。俺はもう、メンバーを変えるつもりはない……」

「ちょっ、ちょっと坂本……!」

 

 

 

 

 あとはいくら話しても坂本は取り合わず、結果、今日ここでFクラス唯一の女子として応援する事になったのである……。よってそのフラストレーションが溜まり、その矛先がある生徒へと向いてしまうのである……。

 

 

(吉井……、あとで覚えておきなさいよ……!)

 

 

 

 

 そうしてルール説明も終わり、第一試合を戦う2人の生徒が試合に臨むべく会場にのぼる。互いの相手を見やり、Aクラスの選手にしてFクラスの選手の姉である木下優子が、弟の木下秀吉に話しかけた。

 

 

「……試合科目の選択権はアンタにあげるわ。秀吉……」

「よいのか?姉上……?」

「アタシもアンタがここのところ頑張っているのを見ているからね……。その科目で来なさいよ……?」

「……了解じゃ。では高橋教諭、科目は『古典』で頼む……」

「『古典』ですね、わかりました」

 

 

 この言葉を聞き、高橋教諭が設定科目を打ち込む。そしてマイクを入れると、

 

 

「お待たせ致しました。それでは第一試合、Aクラス木下優子VSFクラス木下秀吉。教科は『古典』。――開始してください」

「「試獣召喚(サモン)!!」」

 

 

 こうして、文月学園の後世に残すこととなる、FクラスとAクラスの試合が切って落とされるのであった。

 

 

 

 




とある時の明久の体験(1)


 ……空には夕焼けがかかり、川辺の傍に座っている。


「…………そろそろなのか?」
「……うん、経験上ここまでになるのは『限界』が近い時だね……。まあ……、あと5分くらい、ってところかな……」


 そう言って、僕は自分の腕に着けられた紅く輝く腕輪を見る。……それは気味が悪いくらいに紅く、どこか嫌な輝きを放っていた……。


(もうすぐ、『繰り返す』事になる……)


 今までに何度も経験してきた事なので、わかっている。ただ、残りの時間を目の前にいる雄二と一緒にただ佇んでいたかった……。


「どうせお前の事だから、いつも辛気臭い事ばかり考えていたんじゃないか?」
「……そうだね、……もう、会えないんだろうしさ……」


 僕の言葉を聞き、再び沈黙が訪れる……。そこに、雄二が雰囲気を変えようと話しかけてきた。


「……なら、こう考えてみろよ?お前は意識、体験は持っていけるんだろ?だったら目的をもっていけばいい……。それならお前はその目的の為に頑張れるじゃないか」
「……目的を……持っていく……?」


 雄二の言葉の意味が分からず、僕はそう聞き返す。


「お前に解るように説明するとなると……、そうだな……じゃあ、一つ頼まれてくれないか?」
「…………えっ?」


 こんな時に何を言ってるんだろうと、僕は雄二を見る。すると、雄二は……、


「…………翔子の事、頼む……」
「……あ……」
「……俺は……アイツを傷つけちまった……。俺がアイツを避け続けちまった事で……」


 雄二がその事を後悔している事は知っていた。そしてその想いも……。この先……、雄二と彼女の道が二度と交わらないだろう事も……。


「……お前には少なくとも、もう一度その時に戻れるんだ。俺みたいに後悔をしないように、自分の行動をやり直せるチャンスがある。そう思う事にしろ!その為に……、『目的』を持って行け!ただ『やり直し』になるんじゃなく『やり直す』為の『目的』をな!……そしてそれを現実にしろ。大丈夫、お前なら出来るさ……」


 ……『目的』、か……。


「で……でも、僕だってどうしたらいいか……!」
「お前はお前らしくしてればいい……。ただ、もし気にかけてくれるなら……ウジウジしている俺を引っぱたいてくれ。……今の翔子みたいにさせないように……」
「雄二……。うん、わかったよ……。もし……、また繰り返して、雄二に出会って……、彼女の事で悩んでいたら……。その時は、雄二の背中を押すよ……!後悔しないように行動してもらえるように……、できる限りの事をするよ!……『約束』する。それが……、今まで僕を支えてくれた君への恩返しになるのなら……!」
「よせよ……、恩返しなんて。柄でもねぇ……!」


 少し照れながら、そう返す雄二。その時、腕輪がより一層輝きを増した……。『繰り返し』の時は近い……。


「……今までありがとう、雄二。僕は、『今回』の事は決して忘れない……!」
「じゃあせめて、『今回』だけでも、気持ちよく向こうに行けよ。俺も辛気臭いのはやだぜ?」


 そう言ってにいっと口の端を吊り上げ、笑う雄二に僕も笑みを向ける。


「……こっちはこっちでうまくやるさ。……だからお前も、乗り越えてみせろ。……お前は俺が認めた、唯一の男なんだ」
「……うん、僕は忘れない……。君の事を……、『約束』を……!」
「へっ、俺もだ……!」


 そして、僕達は笑顔でハイタッチをし、最後にお互いに声を掛けた。



『じゃあね(またな)、親友!』



 次の瞬間、僕は激しい光に包まれ、目の前が真っ暗になる。

 ―――こうして、僕はまたあの時を『繰り返す』……。



とある時の明久の体験(1) 終

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