バカとテストと召喚獣~新たな始まり~   作:時斗

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問題(化学)
以下の問いに答えなさい。
「ベンゼンの化学式を答えなさい」


姫路瑞希、高橋勇人の答え
「C6H6」

教師のコメント
正解です。簡単でしたか。


吉井明久の答え
「C6H5C2H5」

教師のコメント
それはエチルベンゼンの化学式の為、間違いです。ただ先生は君がこの化学式を知っていた事に驚いています。


土屋康太の答え
「ベン+ゼン=ベンゼン」

教師のコメント
君は化学を舐めていませんか。


須川亮の答え
「B-E-N-ZーE-N」

教師のコメント
後で土屋君と一緒に職員室に来るように。


第14話 Bクラス戦、開幕!

 学校に着くなり、雄二がBクラス相手に試召戦争をするという事で始まったBクラス戦……。前線は姫路さんと秀吉に任せており、僕は現在Fクラスにて待機中である。

 

 

「でも意外だね。てっきり僕には前線にあがるように言われると思ったけど……」

 

 

 Fクラスにて待機という事で、暇を持て余していた僕は、隣にいた雄二にそう話しかける。

 

 

「今回は高得点者である姫路でガンガン押すと同時に補佐を秀吉に任せてあるからな……。まあ昨日の練習を見る限りだと秀吉に問題はないだろう」

「そうだね……。秀吉がサポートしているなら問題ないと思うよ」

「一応、島田にも行ってもらったからな」

 

 

 …………あの直情的なところのある彼女に、大事な緒戦を任せて大丈夫だろうか、と僕が思ったのは内緒だ。その時、戦場の方から、轟音が響く。

 

 

「うん?今の音は……」

「……多分姫路さんだね。『腕輪』を使ったんじゃないかな?」

 

 

 あの音はおそらく姫路さんの特殊能力、『熱線』の音だろう。『腕輪』の力は非常に強力だ……。だけど、その分点数を大幅に消費するというリスクもある。だが、今回は敵の士気を挫くという意味もあるので、その点では姫路さんの能力はうってつけだろう。そんな時、バンッという音と共にFクラスの扉が開き、Fクラスの生徒ではない誰かが入ってくる。

 

 

「俺は、Bクラスの使者だ。Fクラスの代表はいるか?」

 

 

 Bクラスの使者と名乗る生徒がFクラスの教室の扉を勢いよく開きながら雄二を呼ぶ。

 

 

「俺がFクラス代表の坂本だが。Bクラスが何の用だ?」

「代表より提案がある。今回の試召戦争で4時までに決着がつかなかったら戦況をそのままにして、その続きを翌日9時に持ち越すという事でどうか、という提案だ」

 

 

 ……よくわからないけど、要は今日決着がつかなかったら、明日も続きから始まるって事、かな……?

 

 

「ほう……、だが、その提案を呑むとして……、その保障は誰がするんだ?」

「もしこの提案を呑むならば、教師立ち合いのもとで調印を結ぶ。あと、言い忘れていたが、この試召戦争の間はそれに関わる一切の行為を禁止とする」

 

 

 ……うーん、戦争中なんだから、それに関わる事を禁止って……、どういう意味だろう……?

 

 

「……よし。その提案を呑もう」

「それならば、そこにいるFクラスメンバーを連れて視聴覚室に来い。そこで協定を結ぶ」

「わかった、すぐに向かう」

「……待っているぞ」

 

 

 ……僕がわからない内に提案を受け入れる事で決定し……、そしてBクラスの使者は帰っていった。

 

 

「……ちなみに雄二、さっきのって……」

「…………今日の4時までに決着がつかなければ、明日の9時に再開する……。その間は試召戦争に関わる事、つまり他のクラスにその件で交渉したり、停戦中に補充テストは受けられないって事だ。理解したか?」

 

 

 成程ね……、そう言う事か……。

 

 

「……で?雄二、どうするつもりなの?さっきはその提案を受けていたようだけど……」

「ま、罠だろうな。根本はおそらくCクラスと同盟を結んでいるだろう。そのあたりを利用してくるんじゃないか?」

 

 

 軽い調子で答える雄二。まぁ、雄二が何も考えずに相手の提案を受けるとは考えにくい。

 

 

「……でも、行くんでしょ?」

「ああ……、このBクラス戦は、おそらく今日は決着はつかない。それならば翌日以降に持ち越せるというのは姫路がいるウチにとっては有難い提案だとも思う」

 

 

 まぁ、連続戦闘は身体の弱い姫路さんの事を考えたら……、そうなのかもしれない。ただ……、あの根本君がFクラスに有利な提案をする筈がない……。今回も、やはり何かを企んでいるに違いない……。

 

 

「……わかったよ。Fクラスの代表である、雄二の判断だしね……。だけど、調印に行くのは雄二と僕でいいと思う」

「……!?どういう事だ……、まさか、調印を結びに行く際に、教室を狙われるとでも……?」

「相手はあの根本君だからね……。用心にこした事はないと思う。雄二の護衛は僕がするから、残りのメンバーは教室に待機させておいた方がいい」

 

 

 おそらく教室を破壊でもするんじゃないかと踏んで、僕はそれに備えて提案する。雄二は考え込んでいるようだったが、

 

 

「…………わかった。俺と明久はこれより調印に向かう。横田、福村、武藤!!お前らは教室に待機だ!もしかしたら、襲撃があるかもしれんから、その時は死ぬ気で守れっ!!」

「「「了解!!」」」

 

 

 雄二はそう指示を出し、僕と2人で調印を結ぶ為に、視聴覚室へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

「……これで協定は成立だな。それでは、お互いに正々堂々と戦おうじゃないか、坂本?」

「……そうだな。それでは失礼する」

 

 

 視聴覚室にて、長谷川先生の立会いの下、無事協定に調印が完了し、Bクラスの代表である根本君は挑発するように雄二に話しかけてくる。彼に関わる気は微塵もない僕達は、返事もそこそこに、Fクラスへ戻ろうとすると、

 

 

「それにしても……、たった二人で来るとはな……。意外と度胸があるじゃないか、Fクラス代表さん?」

「…………何が言いたい?」

 

 

 表情を変えず、雄二はそう根本君に告げる。

 

 

「いや?こういった協定の場に連れてこれるのが『観察処分者』しかいないというのが、不憫だなと思ってね」

「…………そうか、まあお前はその『不憫なFクラス』にやられる『哀れな代表』になるんだけどな?」

 

 

 安い挑発を仕掛けてくる彼に、雄二は挑発で返す。

 

 

「口だけは達者だな?まあ、せいぜい頑張ってくれよ?ま、あのボロ教室でどこまでやれるか見せてもらうぜ」

「……ちょっと待って」

 

 

 そんな台詞を残して取り巻きと共に出て行こうとする根本君に、僕は声をかける。

 

 

「なんだ、学園の恥……?俺はお前みたいな屑に構っている時間はないんだが?」

「……根本君、これだけは言っておくよ……。戦争である以上、君が何をしてもその戦術にいちいち文句をつけるつもりはないけど……」

「ハッ!何を言い出すかと思えば……」

 

 

 ばかばかしい、そう言って出て行こうとする根本君の肩をつかむ。

 

 

「グッ……!?テメェ、何を……!」

「……君が起こしている事には、覚悟と責任を持てよ……?ましてや、君の行動のせいで、他人を巻き込んだ時は特にね……!!」

 

 

 威圧するように、僕は彼にそう忠告する。根本君は僕の手を振り払い、体裁を整えるようにして、

 

 

「ふ……ふんっ!テメェのような屑に言われる筋合いはねえよっ!!……いくぞ、お前ら!!」

 

 

 僕の言葉を受けて、いささか戸惑っているのかビビッているのかは分からないけど、そう捨て台詞を残してそのまま出て行った。暫く彼が去った後を見ていた僕達だったけど、

 

 

「……戻ろうか、雄二。教室が心配だよ」

「…………ああ、そうだな」

 

 

 その言葉を受け、僕と雄二は無言で視聴覚室を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、これはいったいどうしたのじゃ!?」

 

 

 ワシらが一度補給に戻ってきて目の当たりにしたのは、破壊尽くされた無残な教室じゃった。

 

 

「ああ、おかえり、秀吉。召喚獣の調子はどう?」

「それは問題ないのじゃが……明久よ、この教室の有様はなんじゃ!?」

 

 

 ワシの姿を認め、そう労ってくる明久に、ワシはこの現状の事を聞いてみる。

 

 

「……それは見ての通りだよ。僕と雄二がBクラスとの調印に行っている間にやられたみたいだね……。ご丁寧に、残してきた横溝君たちFクラスのメンバーは補習室送りにされたみたいだし……」

 

 

 溜息をつきながらそう答える明久。Bクラスとの調印?何故そのようなものを……?

 

 

「……俺たちはいいが、体力のない姫路にはキツイだろう?一時休戦にするという条件はFクラスにとっては有利だったのさ。姫路はこのBクラス戦での、ウチの主戦力だからな」

「それはまあ、確かにそうじゃが……、これじゃあ補給もうまくとれないんじゃないかのう?」

「そこはFクラスだからね……。元からボロい設備だったし、姫路さんはともかく、僕らにとっては、そんなにかわりないんじゃない?」

 

 

 ……まあ、確かに卓袱台と座布団を破壊されるぐらいでそこまでかわるもんじゃないかもしれんが……。そんな時、戦場に残してきた須川が血相を変えて教室の扉を開き、

 

 

「だ……誰かいないか!?」

 

 

 そう叫ぶ明らかに普通ではない様子に、代表である雄二がやってきた。

 

 

「須川か……。どうした、何があった?」

「さ、坂本!実はかなりマズイことが……」

「須川よ、落ち着くのじゃ!……戦場で一体何がおきたのじゃ?」

 

 

 かなり動転しておる須川を落ち着かせながら、ワシが聞いてみると、

 

 

「島田がBクラスに人質にとられた!!」

「なぬっ!?」

 

 

 島田が人質じゃと!?一体どうしたらそんな状況になる!?

 

 

「…………とりあえず現場に行ってみるよ。……須川君、案内してくれる?」

 

 

 その報告を聞き、動揺を隠せなかったワシにかわり、明久の現場に向かうと力強い言葉にワシは、

 

 

「吉井、助かる!こっちだ!!」

「明久、ワシも……」

 

 

 一緒に行く……、そう言いかけたワシを制止し、

 

 

「秀吉はここにいて?まだ補給も終わっていないし……、もしもの時は雄二をお願いするよ」

「明久……、わかったのじゃ……」

 

 

 確かに、かなり戦場で点数を削られてしまった以上、補給を受けなければならず、行っても足手纏いになるだけじゃろう。ワシはそう判断し、ここは明久に任せる事にする。

 

 

「ただ秀吉、一つだけ教えてくれる?秀吉が戦場を離れる時、部隊の指揮は誰に任せてきたの?」

「……島田じゃ……」

「……そうなんだ。わかった……。じゃ、行ってくる」

 

 

 そう言って須川と共に戦場に向かう明久を見送り、ワシは点数の補給を始めることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 須川君と一緒に戦場に来てみると、そこには二人のBクラスの生徒と捕まっている島田さんがいた。島田さんの召喚獣にはBクラス生徒の剣を当てられ、すぐさま戦死するような状況となっていた。さらに先を見てみると、フィールドを展開させている西村先生がいる。……あの表情を見ると、Bクラスのあまりといえばあんまりな彼らの戦術に、若干ウンザリしているようにも見えた。

 

 

「よ、吉井!」

「そこで止まれ!それ以上近付くならこの女を補習室送りにするぞ!!」

 

 

 そう言われて、僕は一旦踏み出そうとした脚を止める。

 

 

「人質なんてとる様な真似をして……、恥ずかしいとは思わないのか……?」

「う、うるせぇ!!これも戦術だ!引っかかる方がわるいのさッ!!」

 

 

 相手を非難するように僕がそう言うと、そんな言葉がかえってくる。

 

 

「ど……、どうする……吉井……?」

 

 

 隣にいる須川君もどうすればいいのかわからず、僕にその判断を求めてくる……。確かに対峙しているだけじゃ話は進まない。

 

 

「……とりあえず、どうしてこんな状況になったか知りたい。……島田さん、君は秀吉から部隊を任されていたはずだよね……?なんで島田さんがこんなところで捕まるような事になっちゃったの……?」

 

 

 この現状を打破する為にも、僕はとりあえず原因を聞いてみると……、

 

 

「そ、それは……」

「コイツはお前が怪我したって偽情報を流したら部隊から離れて一人で保健室に向かったんだよ!!」

 

 

 偽情報か……、しかしそれで部隊を離れるなんて……。ちょっと考えが足りないんじゃないか、そう思った僕は、

 

 

「……部隊から離れて?島田さん、それ本当なの?」

「そ……そうよ!アンタが瑞希のパンツを見て鼻血が止まらなくなったって聞いて、心配になったのよ!!だから……」

 

 

 部隊を離れた事を嗜めようとした矢先に、島田さんからそんな言葉が飛び出し、僕の思考を停止させる。…………は?そんな訳の解らない事の為に、皆の命を預かる部隊長の立場を放棄したというのか……?暫く放心していた僕だったが、戦闘中だった事を思い出し、まわりのFクラスのメンバーに指示を出す。

 

 

「…………全員、突撃準備」

「よ、吉井!?それでいいのか!?」

 

 

 僕の言葉を聞いて、須川を含め、残っているFクラスのメンバーも慌てだす。

 

 

「…………ゴメン、僕の言葉が足りなかった」

「じょ、冗談か、脅かすなよ……」

 

 

 ホッとしたかのような須川君の言葉を受けて僕は、

 

 

「……島田さんがやられてもかまわないから、あそこにいるBクラスの2人を倒す……。突撃準備」

 

 

 …………今度こそ周りが静まり返った。

 

 

「な、なんでよ!?どういう事よ!!」

「……島田さん、部隊を任されていながら、どうして現場を離れたのさ?……部隊を指揮する者がいなくなったらその部隊は全滅するしかない。そうは思わなかったの?」

 

 

 須川君をはじめ、他のFクラスの連中は、僕の下した決定に戸惑っていた。なんだかんだ言っても、Fクラスの男子は女子には甘い……。島田さんのせいで自分たちがやられそうになっていたのに、今更彼女の心配をするなんて……。

 

 

「そ、そんな事よりもウチはアンタを心配して……!」

「そんな事?……百歩譲って心配してくれたのが事実だったとしても……、鼻血が止まらなくなった……?そんな理由で心配したって仕方ないじゃないか……!」

「だ、だからお仕置きをする為に保健室に向かったんじゃない!!」

 

 

 …………語るに落ちるとはまさにこの事だと思う。僕は覚悟を決め、召喚獣を呼び出す。

 

 

「……試獣召喚(サモン)

 

 

 これ以上話していても時間の無駄だと判断した僕は、人質にとっているBクラスの2人に向かって飛びかかる。それに驚いたのか、島田さんに剣を当てていた生徒は条件反射でその召喚獣を斬りつける。島田さんの点数が0になったのにも構わずに、まず人質にとっていた生徒の心臓部分に木刀を突きつけて、逃げようとしたもう一人も後ろから斬りつけて戦死させた。

 

 

 

【英語】

Fクラス-吉井 明久(32点)

VS

Fクラス-島田 美波(0点)

Bクラス-鈴木 二郎(0点)

Bクラス-吉田 卓夫(0点)

 

 

 

 こうして、一瞬で3人がまとめて補習室送りになる。Bクラスの2人の断末魔と、島田さんの恨み言が聞こえてきたが、それを無視して僕は残っていたメンバーをまとめ、Fクラスに戻ることにした。

 

 

 




文章表現、訂正致しました。(2017.11.19)

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