プロローグ ~新たな始まり~
……もうこの感覚を体験するのは何回目だろうか……。
条件を満たせず、またこの『体験』をしている……。一体いつになったら僕は抜け出す事ができるのだろうか……。
……ああ、見えてきた……。また……、始まるのか……。
今度こそ……、今度こそ、僕は…………!
そして、光に包まれる……。
バカとテストと召喚獣~新たな始まり~
「……井、聞いているのか、吉井!」
「…………え?」
誰かの僕を呼ぶ声に、ハッとする。気が付くと、僕は文月学園の正門の前にいた。目の前にはいつものように、西村先生が立っている。やっぱり、ここからか……。
「まったくお前は……。今何時だと思っとるのだ……」
「……西村……先生……?」
「何をボーっとしている?何か言う事があるんじゃないのか?」
「…………すみません」
今度は果たしてどのような結果になるのか……。流石に今回は『捨て回』にはしたくない。まぁ、なるようにしかならないのだろうけど……。
「新学期早々に遅刻とはな……。まあいい、これを受け取れ」
そう言うと西村先生は箱から封筒を取り出し、僕に渡してくる。その封筒には『吉井明久』と書かれていた。
「どうした?開けないのか?」
「まあ……。テストの結果からFクラスだろうと思ってますから……」
実際、そこは何度繰り返しても、変わらない。僕が、『Fクラス』という事だけは……。尤も、Fクラス以外と言われても戸惑ってしまうくらいには、愛着もある。そんな事を考えていると、西村先生は溜息をつく。
「……わかっているならこれからはもう少し悔い改めるんだな」
「……はい」
この人にはいつも迷惑をかけているからな……。今回は出来るだけ、迷惑が掛からないように出来ればいいんだけど……。それは難しい、か……。実際に上手く立ち回っていくには、絶対にこの人の協力は必要になる。今回も捨て回にしようと思えば話は別だけどね……。
「……どうした吉井?先程から変だぞ?」
「いえ……じゃあ教室に向かいますので……失礼します」
おっと、いけない。去年までの僕とは違和感があったかな……。これ以上ここにいたら、どんなボロを出すかわからないので、とりあえずこの場を離れる事にする。
「おい、吉井!?ハア……まあいい」
諦めたように溜息をついている西村先生の気配を感じながら、僕は再びFクラスの教室に向かう。果たして、今回はどんな物語になるのだろうか……。今の僕に出来る事は、無事にこの繰り返しの運命から逃れる事ができるよう、祈るだけなのだろう……。こうして、今回の僕の新たな物語が、ここから始まるのだ……。
追記:時間が出来次第、3点リーダ等の部分を訂正していく予定です。