どうも、局勤め一年のキャロ・ル・ルシエです
何故か私が訓練所を破壊しているといまエースと名高い人の目に付いたそうです
本当に世の中不思議です
「始めまして」
「は、はじめ! まして!」
「リラックスして。ね?」
「は、はい!」
金色の長い髪の柔らかい笑みをしているこの人。確かフェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官って名乗ったはず
なんで執務官なんて偉い人がいまだ三等陸士の私に声を
「えっと確かキミは週に一回くらいのペースであそこで練習してるよね?」
「え、あ、はい。何時もすみません」
本当は毎日にでも行きたいけどあの迷惑そうに見る目がちょっと恐い
まぁ何時も訓練所を滅茶苦茶にしてるんだから迷惑そうにされるのは当たり前だけど
「あ、頑張ってる姿みてたよ」
「ありがとうございます」
「凄いね、その年で努力家だ」
「いえ、ぜんぜん成長してませんから・・・」
「そんな事ないよ、少しずつだけど確かに成長してる」
この人の言葉は嘘でもないし冗談でもないと自然と分かる。そんな感じの声色をしていた
何だかタイプは違うけど雨水さんを見ている気分になってきた
雨水さんもこんな風に包み込んでくれるタイプの人だ
「あ、あの、わたしに用があったんじゃ」
「そうだった」
ポンとうっかりしていたとした仕草は少し天然っぽくて可愛かった
雨水さんには合わせないようにしようっと
「もし、キミがよかったらで良いんだけど・・・」
「はい」
「家族に、なりたいんだ」
「はい?」
このひとはなんと?
かぞくになりたい、かぞく、かぞく?ファミリーの事だよね、うん
「えと、その、あ・・・はい?」
「ごめんね、混乱させちゃった」
「い、いえ」
「実は少しキミの事を調べさせてもらったんだけど保護責任者が登録されてなかったから力になれないかなって」
ごめんなさい。その理由だとイマイチ分かりません、私に保護責任者が居なかったとして何故貴方がその保護責任者を名乗り出ようと思ったのか
私を手に入れた時のメリットとか無いですよ?家事は得意ですけど
「な、なんで私なんですか?」
「え?」
「私いがいにも孤児なんてたくさん」
執務官は少し寂しそうにして笑った
「ただ、うん、そう。ただ此処で練習をしているキミが寂しそうだったから・・・それを放っておけるほど私が良く出来てないって感じかな? ただの自己満足だよ」
此処での私が寂しそう?
それはそうだ・・・だって此処には雨水さんが居ないんだもん
「そ、そうだんしてからでも良いですか?」
「そうだん?」
「旅仲間に」
「え?」
今更だけど私と雨水さんの関係を人に教える時、旅仲間くらいしか無いのに気が付いた
◇◇◇◇◇◇
私は雨水さんと一緒に住んでいる男性独身寮に帰るとすぐに今日の事を話す
「へーそんな物好きが居たんだな」
「ものずきですかっ?!」
「うん、ほら子供一人を育てるのって結構大変らしいし」
あれ?もしかして今日の雨水さんはちょっと真面目モード?
「んーそうか、訓練所の破壊を参考にって所が引っ掛かるな。アレか? 誘って来たのはテロリストか?」
「・・・フリード」
「ちょ! 止めろフリード! 俺は治癒魔法とかは無理なんだ・・・うわあああ!!」
あんな優しい人をテロリスト扱いなんて信じられません
そんな人はフリードの炎で丸焼きにするべきなんです
「さて、もういいですか?」
「あ、ああ、悪かった。テロリストでも人だもんな、きっと不良が猫を拾う感覚なんだろうよ」
「フリード」
「冗談! 冗談だって! 悪かったって、ふーん。テスタロッサ執務官って言えば近頃噂のエースかヒューズから聞いた」
ヒューズさんから? 最近私は雨水さんとは部署が違う場所になったからヒューズさんとも会ってないな
お菓子とかくれる良い人だったと思う
「別に良いんじゃないか? キャロが良いって思うなら」
「でもここは出て行くかもですよ?」
「局員同士だし会える時には会えるだろ・・・それに、今は平気でも後々保護者が居ないってのは不便だからな」
本当は雨水さんに家族になって貰いたいけど雨水さんは父親って感じじゃないですよね
お兄さんは近いかもですけど偶に私の方が年上なんじゃと思う時とかあるし
それに私の目標は雨水さんのお嫁さんですしテスタロッサ執務官の申し出は渡りに船では無いか?
戸籍登録上他人なら結婚年齢になれば可能です
「よし! 決めました!」
「おおー、で? 如何するんだ?」
「わたし! テスタロッサ執務官の子になります!」
「なら今度会った時に名前で呼ぶ許可を貰うんだな。名前で呼ぶってのは親しい証だからなキャロ」
「分かりました! 雨水さん!」
・・・あれ?私って雨水さんの事は苗字で呼んでません?
今更ながら苗字で呼んでいる事に気付くキャロでした