ミッド諜報部室
今日は珍しくも外での仕事が無いので、可愛い娘の入れたコーヒーの味を堪能していた
「雨水の奴、大丈夫かね~」
「え? どう言う事? パパ」
ちなみに雨水の古代ベルカ海底遺跡調査が、恐らく丁度中間くらいに差し掛かる時間であろうタイミング
可愛いエリシアちゃんが小さめに言った独り言に反応する
「あーほら、一応魔法が使える状態とは言え雨水の奴は魔法使用に当然慣れてないからな」
「先生なら大丈夫です! 私の先生なんですから!」
・・・エリシアちゃんが雨水に憧れや尊敬の念を抱いているのは知っているけど、今回に限っては余りその理由じゃあ、とてもじゃないけど大丈夫とは言えないよな
「まーそれなら良いけどー・・・エリシアちゃーん! 敬語は止めてー!」
「公私は分けるべきだと私は先生から教わりました」
教えた本人が公私を分けれてないと思うが・・・
「ところでパパ」
「ん? なに? エリシアちゃん」
「あの海底遺跡はどれくらいの危険性があるんですか?」
「え?」
エリシアちゃんは真剣な表情で詰めより座っている俺の横に置いてある松葉杖を取る
「そう言えば・・・もう一つ先生に教わりました」
「な、なにかな?」
「自分がこうだと決めたら、正々堂々だろうと不正堂々だろうと貫け。そこで卑怯と言われても負け犬の遠吠えと思え。らしいですよ?」
負け犬の遠吠え・・・確か雨水の出身地方の諺だったか
まぁ意味としては査察官からしたら理解できるんだけど・・・子供に教える事じゃねぇよ
「パパの杖は私の手の中にあります。そして私には家で帰りを待つシロちゃんの為に先生の事を知る権利があります・・・吐いてくれるよね? パパ」
家庭教師を雨水に選んだのは失敗だった?
「・・・一応聞いて置くけれども、何でエリシアちゃんはあの遺跡に危険性があると思ったのかな?」
「古代ベルカと言えば戦乱期、そんな時代の遺跡に危険物が無いなんてまず有り得ません。私の推測では大方戦術か戦略兵器ってところですね」
「うんうん、エリシアちゃんの読み通り。あそこに眠ってるのは冥府の炎王と恐れられた、イクスヴェリアと増殖兵器マリアージュだよ」
「はあ?! そんなの単独で調査する内容の任務じゃ」
「そうだね」
だけど、今回は単独で行ってもらわないといけない理由がある
もしかしたら次元犯罪者のジェイルスカリエッティの糸口かも知れないからね
俺の予想だと局の上の方は怪しい・・・小隊を組むには報告の義務がある
そこから情報が漏れて証拠隠滅されかねない
「先生を迎えに行ってきます」
だから、局内で最も信用に値する雨水でないと無理だ
「もう遅いと思うな。それにエリシアちゃんの魔法は確かに強力だけど、それはあくまで一定条件を揃えた自分のテリトリー内での話だよね」
「・・・この事はスクライア司書長は知っていたんですか?」
「知らない、査察官は自分が持つ情報をそう簡単に漏らさない。常識だよ? 見習いなら覚えておかないと」
はぁーエリシアちゃんのこんな悲しそうな顔は見たくないんだけどな
「・・・気分が悪いので早めに帰らせてもらいます。査察長官」
「許可する」
俺は家族の笑顔を守る為に査察官になったのに俺のせいで目の前の家族が傷付いてるなんて皮肉だな
ま、これも雨水を騙した罰
・・・いや、今回に限っては利用したって言い換えた方が正確か
冥府の炎王イクスヴェリア
ドラマCDで登場するキャラクターです(コミックにも姿は登場してますけどね)