前回のあらすじ
色々あってキャロと結婚した→以上
いや、本当にヴィヴィオの一件から休む暇の無い毎日だった気がする。心配性の娘二名が俺が家でごろごろするのを良しとせず、資料片手にあちこち巡っていた
そして気がつけば結婚式当日になってるし、驚いたのはヴィヴィオが紫天一家まで呼んでいた事だね。皆、それなりに年を重ねたみたいで、前にあった時より随分と成長していた。やはりフェイトさんを模範しただけあって一番の成長株はレヴィのようだったが
ともあれヒューズや自然保護隊。関係者は片っ端から呼んでいたみたいで、おかげで披露宴は酷い騒ぎになってしまった・・・まぁ楽しかったけどな
「もう一週間か」
「クロ、ちょっと運ぶの手伝って下さい」
「うん」
ここ最近の一週間は激動の一ヶ月間が嘘のように静かになっている
居候のクロが雨水家に加わったので、それで少し問題もあったけどヴィヴィオの旧知である事とクロが何だかペット枠で収まった事からすぐに解決していた
「ん? それ、教会からですか?」
クロと一緒に昼食を持ってきたキャロは俺が見ていた手紙を覗き込み呆れるように溜息を吐く
「ああ、ザンクトヒルデで教師を続けて欲しいって話」
「受ければいいじゃないですか。秋春はいまでも教え上手だと思いますよ」
「まぁでも、昔ほどじゃないからね」
意外な事に。なのかは分からないが、レアスキルが無くなった後もいままでの経験が活きて教育に関して一定の成果は出せるようになっていた
俺の感覚的にはだいぶ能力が落ちたと思うのだが、ヴィヴィオが判断するには十分凄いらしい。むしろ、いままでの急成長具合が無くなって丁度良いくらいとまで言っていた
「私は考えすぎって思うけどなぁ。だいたい、学院に一度は戻るんでしょ?」
「まぁね。生徒との約束もあるし、流石に引継無しで辞めるのは色々困るだろうからな」
特に俺が相談を受けていた生徒の中には秘匿性の強いレアスキルも存在する。なので、伝える相手はよく厳選しないと何に利用されるか分かったモノでは無い
「一部では、秋春恋しさに暴動が起きるかも。なんて話も聞こえてきてましたし、いままで通り在籍したら良いじゃないですか、変に真面目ですね」
ヴィヴィオからも似たような事を言われたな
キャロは向かい側にクロはその隣に座って手を合わせる
「おいしい」
「ありがとう、クロ」
「いただきます」
「はい、めしあが・・・ん?」
虹色の魔法陣
キャロが使う召喚魔法の陣に似ているけれど、あれはきっと転移魔法だろう。虹色の魔力光なんてヴィヴィオくらいだろうし、家の中に直接転移をしてくるのもヴィヴィオくらいだ
イクスは結構玄関からきちんと入る事に拘る性格だからね
「たっだいまー!」
「やっぱりヴィヴィオか・・・いま、まだ学院の途中だろ。よくて、お昼休み時間か?」
まさかサボってないだろうな
ヴィヴィオは俺が疑ってるのに気付いたのか大きく手を振って否定する
「サボりじゃないから! クロ、キャロママ、ただいま」
「ヴィヴィさま、おかえりなさい」
「おかえり、ヴィヴィオ」
「えぇとね、あきパパに良い話と悪い話を持ってきたの!」
笑顔で隣に座ったヴィヴィオはまだ昼食を食べてない事に気付いたみたいだけど、よほどその良い話と悪い話を続けたいのか顔を近づけて選択を迫る
「悪い話から聞こう」
「おっけ~! じゃあ、悪い話からね」
ヴィヴィオの笑顔からは全然悪い感じが伝わってこないのだけど、わざわざ悪いと言うくらいなのだから覚悟くらいはしておいた方が良いかも知れない
「今月通算三回目のイクスお姉ちゃんのマジギレが発生しましたー! ぱちぱち」
「ぱちぱち」
「クロ、合わせなくて良いよ」
はぁーイクスが一緒じゃないから予想はしていたけど・・・またか
「一応聞くけど、誰に」
「もちろんなのはママに。今日はベビー用品を買ってるなのはママを見てキレてたよ?」
いや、ヴィヴィオと同じで今日は学院にいるはずのイクスが、なんで買い物をしている高町一尉と遭遇があったのかが謎過ぎる
まさか、いまもまだ続いてるなんて事は。と考えていると、キャロが曇った表情で優しく自分の下腹部を撫でるとヴィヴィオを見詰める
「イクス、私と秋春の間に子供が出来たの、やっぱり反対だったのかな?」
キャロの妊娠。それを俺が知ったのは一週間前で、より具体的に言うと結婚式で明かされた・・・あれは正に人生最大のサプライズだったよ
もちろん、その場は騒然となりキャロの綺麗なドヤ顔がいまでも思い出せるくらい印象的に残っている
「ん? それは無いよ、キャロママ。ただ、お姉ちゃんからしたら他人のなのはママが盛り上がってるのが気に入らないだけ。ヴィヴィオは一緒にお祝いして欲しいと思ってるけどね」
正確には見ず知らずとまで思ってる高町一尉からの好意が理解できずに困ってる。って感じだけどな
それにしたって・・・とは思うけど、いまだに誰ですか。と純粋に言えるイクスの高町一尉嫌いは相当だと思う。俺もあの人の事を部分的に苦手だと思ってるからイクスに大きく言えてないけど
「俺から謝っておく。教えてくれてありがとう、ヴィヴィオ」
「えっへん」
「ただ、次からは危ない場面に出くわしたらイクスを止めてね」
「・・・え? なんで」
いや、なんでって
ヴィヴィオはどうにも高町一尉にイクスを嗾けて自分への愛情が揺らがないか計っている気がする。好きな子はいじめたいタイプのヴィヴィオの悪い癖だ
俺もアインハルトちゃんも、ヴィヴィオのこの手の癖に靡かないからリアクションの大きい高町一尉で遊んでいるのだろうか
「それで、良い事は?」
決して悪い事を流すを訳では無い
きっと、そのイクスが暴れた事も既に解決しているはずだから、深く追求しない方がお互いの為と言うか。俺が入ると更に余計な事になりそうなので、本人達で解決して欲しいと思っているだけで・・・
「ふふん、これはスゴイよぉ」
「ほぉ」
「あぁ! でも、どうしようっかなー」
わざとらしく立ち上がりながら、器用に椅子を傾けてバランスの悪い格好になっている。たぶん特に格好に意味は無い
「それが言いたくて、まだ学院が終わってないのに帰ってきたんじゃないのか? あと、椅子の上は危ないから降りなさい」
「そぉだけどぉー・・・ふふっ、知りたい? ねぇねぇ知りたい?」
「えいや」
「きゃ」
そろそろ危なそうだったので脇から持ち上げて抱える
「ほら、クロもキャロも気になってるぞ」
「はい、とっても気になりますね」
「ヴィヴィさま、たのしそう」
「おっほん、二人がそう言うなら。えっとね~今度ね、なんと! あきパパを題材にした映画が製作されるのです!」
俺に話しがきてないんだが
いったいいつからそんな計画が立っていたのやら
「ほら、なのはママ達も子供時代が海鳴で映画になってたでしょ? あんな感じで、あきパパの活躍を纏めた映画を作る事になったんだ」
「そ、それは良い話か?」
「そう!」
まったく嬉しくないんだが、それならまだ六課の皆さんの活躍を纏めた方が見栄えも良いし、役にも立つだろうに
「タイトルも決定済みなんだからね。いまあきパパが駄目って言っても遅いからね」
「・・・タイトルも決まってるのか」
「あきパパが局入りしたのが高等科の頃なんでしょ? だから高等科の躍進劇。だって」
「いや、まぁ確かに俺が局入りしたのは高校生の時だけどな。だからってもっと」
「こうこうせい?」
「ん? ああ、ミッドでは学院が主流だもんな」
むむぅ、とヴィヴィオが悩むように頭を抱えて唸り始めた
「だったら、高校生にしないとだよね」
「え、いや、気にしなくても良いぞ?」
「・・・高校生の躍進・・・ん~固すぎる気がするの・・・なのはママ達のがリリカルマジカルだし、高校生のリリカルマジカル?」
「ないないない」
「・・・高校生のリリカルやく・・・躍進、はしる・・・あー!」
いらいらが限界に達したようにヴィヴィオはうがーと雄たけびをあげるとビシッと指した
「高校生のリリカル爆走にする!」
すっきりとしたヴィヴィオの笑顔に俺もつられて笑った
これにて一旦、召喚少女のリリカルな毎日は終わりとさせて頂きます。(所謂、俺達の冒険はこれからだ!ENDになるのでしょうか)
およそ5年くらいかかってようやくの完結ですが、途中から更新が月一になってしまったのは本当に申しわけありません
恐らく番外編を書いたりで、あと少しだけ続くかも知れませんが、新作でも書こうかと思ってる次第です。流行のオーバーロードとか名作のゼロの使い魔とか・・・悩みますね
では、ここまでのご愛読、本当に本当に有難う御座いました!