召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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三百九十九話~side ルネッサ~

時空管理局本局 提督執務室

 

本来ならば、よほどの事が無ければ縁のない所ですが、最近の私はその一室に足繁く通っています

 

 

「ごめんね、本当は私がそっちに行ければ良かったんだけど」

 

「いえ、これも執務官補佐として当然の職務ですので」

 

「ルネは真面目だね」

 

 

フェイト・テスタロッサ・ハラオウン提督

 

私が補佐するキャロ・ル・ルシエ執務官の保護責任者にあたる方で、様々な活躍により二等陸海空佐とスピード出世をしており管理局内では超の付く有名人

 

陰では、お付き合いしたい人ランキングで常に上位を保っているとも聞いている

 

 

「えと、では」

 

「うん。いつもの話だよね。あ、でも形式だけでいいからね? 上が色々言ってるけど、私もキャロの味方だし、結婚の事は当人の問題だと思うんだ」

 

「ありがとうございます」

 

 

いつもの話とは、私も急に知らされたルシエ執務官の結婚問題です

 

より正確に言いますと、結婚式場の予定と雨水一士の今後の所属なのですが。正直に言って何を話し合えばいいのか分からず適当に濁している状況ですね

 

 

「それでは、ルシエ執務官の昔話を話しましょう」

 

「私はいいけど・・・え? 本当にそれで良いの? 真面目な話とかしないの?」

 

「私は可愛いのが好きなのです」

 

「ん? 知ってるけど」

 

 

知られていましたか

 

隠しているつもりはありませんでしたが、これでもテスタロッサ提督の前ではきちんとしていたはずなのですが

 

 

「できれば、テスタロッサ提督がお持ちの秘蔵などがあれば嬉しいですね」

 

「あ、あるけど」

 

「あるのですね!」

 

「・・・見せてもいいのかな?」

 

「良いに決まってます! 私は補佐として知っておかなければいけません!」

 

「いけません。って強く言うけどさぁ」

 

 

デバイスを卓上に置いてモニターを展開した

 

幼い頃のルシエ執務官ですね。やはり、出会った頃に比べて更に幼い容姿をしています・・・可愛いです、すっごく可愛いです

 

 

「これは私と出会った頃のキャロでね。少し服が汚れてるでしょ? キャロは出会った頃、毎日訓練所に通ってて、強くなろうって頑張ってる凄い子だったんだ」

 

「ルシエ執務官は生まれた時から真竜の祝福を受けていたとデータバンクにはありましたが・・・」

 

「それは間違ってないよ。でも、まだ幼かったキャロに真竜クラスは余りにも大きな力で、とてもじゃないけど、扱いきれるモノじゃなかったんだよ」

 

 

いまでこそ空を多い尽くす程の竜を使役し、一人で旅団や上手く運用すれば師団をも相手に出来るのではと噂される力も、映像を見る限りだと片鱗も無い

 

 

「雨水一士とはこの頃から?」

 

「雨水さんとは局入りする前から一緒だったみたいだよ。この頃は男性寮で一緒に住んでたりもしてたし」

 

「あそこは独身寮では」

 

「まぁキャロは子供だったし。特例じゃないかな」

 

「特例。レアスキル持ちで登録されてもいますし、そのくらいの融通は利きますか」

 

 

この頃のルシエ執務官はぬいぐるみを抱えて召喚魔法を使っている

 

流石にいまはもう持っていませんが、いまのルシエ執務官がぬいぐるみを抱えて竜に跨る姿を思い浮かべてみると、それはそれで有りな気がしてきました

 

 

「実はレアスキル持ちって珍しいけど、少ないって程じゃないんだけどね」

 

「・・・そうなのですか?」

 

「うん、近年では雨水さんとかなのはが結構紹介してくれてるからね。あの二人は何かそう言う子に会い易いんだって」

 

「なるほど、何と無く納得しました」

 

「特に凄いなって思ったのは、雨水さんが連れてきた古代ベルカの子だね。無機物に擬似的な生命を与える事が出来るって言う子が居てね。その子を保護するのには私も協力させてもらったんだけど・・・あ、写真あるからちょっと待って」

 

 

モニターが焦げ茶色の髪で翠の瞳を持った小さな少女が雨水一士とテスタロッサ提督と手を繋いだ映像に変わる

 

微笑ましい一枚ですが、後ろの絶賛炎上中の研究所に突っ込みを入れても良いでしょうか

 

 

「いまはこの子は?」

 

「教会が保護して見習いシスターをしてるよ。他には刃物を通さない子も居たっけ・・・いま考えれば雨水さんが出会うレアスキル保持者はベルカ系が多い気がする。なのははその逆だから似てる職の二人だけど決定的な何かが違うのかな」

 

「単純に活動領域が違うのでは? 雨水一士は教会の意向で動いて居るので、ベルカ系に偏り。高町一尉は局の意向で動くのでミッド系になる。実際は分かりませんが、恐らくそうなのでは無いかと思われます」

 

「あ、そっか。確かに言われてみればその通りだ」

 

 

納得したと朗らかに微笑むテスタロッサ提督の笑顔に同姓ながらドキリと胸が高鳴ってしまった

 

これは何故悪い虫がテスタロッサ提督に付かないのかが不思議でなりません

 

 

「あ、通信だ」

 

「私の事はお気になさらず」

 

「ごめんね。はい、フェイトです。イクス! どうしたの。え、いま、大丈夫だよ?」

 

 

モニターにはイクスちゃんが戦闘装束で映っている

 

背後の風景は・・・少なくともミッドでは無さそうですが、通信にノイズもありませんし遠く離れた地と言う事は無いでしょう

 

 

「場所が決まった? ホント! 良かったね! うんうん、え、管理外世界? だったら申請は私がしようか?」

 

 

聞こえてくる会話を汲み取ると、どうやら式場は管理外世界に決まったようです。ひとまず教会との衝突は無さそうなので、管理局に所属する人間としては一安心です

 

嬉しそうに聞いていたテスタロッサ提督でしたが、次第に表情が曇り始めて最後には考え込むように顔を伏せた

 

 

「本気? 考えなおさない?」

 

「テスタロッサ提督?」

 

「・・・ん、あ、ごめん。ルネッサ執務官補は少し席を外してもらってもいいかな」

 

「了解です」

 

 

気にならないと言えば嘘になりますが、上官命令なので即座に退室します

 

外に出て端末を取り出し時間を確認してみると、まだ終わる予定の時間にはなっていない。さて、何をして過ごしましょう

 

ひとまずルシエ執務官が戻ってきているかの確認を行う為に執務官室へと足を進めた


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