召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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三百九十四話~side アインハルト~

雨水先生のご結婚が公表されて三日ばかり経った現在、ザンクトヒルデ魔法学院は未曾有の混乱の中に陥っていました

 

学級崩壊はギリギリ食い止められていますが、殆どの方が勉強どころでは無いように見えます。リオさんやコロナさんに聞いたところ、初等科でも同じ状態らしいので、雨水先生の影響力が思い知らされます

 

 

「皆さん。本日も勉強を始める前に雨水先生が退職される件について、改めて説明したいと思います」

 

 

最近の授業の始まりは、いつもこの話から入っている気がします。いまだに一部では事実を受け入れられない生徒がいるそうで、陰謀説を唱えて学院に反旗をと言う話も耳にしました

 

 

「ねぇねぇアインハルトさん」

 

「はい、えぇと」

 

「あははっ、あんまり話した事なかったよね。クラス委員のユミナ・アンクレイヴだよ、よろしくね」

 

「よろしくお願いします。ユミナさん、と呼んでも?」

 

「もちろんおっけ~だよ!」

 

 

とても明るい方です

 

私は、その、人付き合いがあまり得意な方では無いので、こうやって気軽に話しかけてもらえると助かります

 

 

「ところで、先程何か言いかけていましたけど」

 

「あ、そうそう、アインハルトさんって雨水先生の娘さんと仲が良いってホント?」

 

「はい、ヴィヴィオさんとは古くからの付き合いです。雨水先生とは、多少訓練を見てもらった縁と言ったところです」

 

「訓練? そっか! アインハルトさんってインターミドルの選手だもんね! 私、見る方だけと格闘技が好きでアインハルトさんの試合も見たよ!」

 

「ありがとうございます」

 

 

なるほど、試合映像を見ていたのならチームザンクトの事も知っているでしょうし、私がヴィヴィオさん達と知り合いなのも知っていますか

 

 

「それでね。高町さんに伝えたい事があって」

 

「ヴィヴィオさんにですか? すみません、恐らくまだ休学してると思います」

 

「休学・・・そっか、なら安全だね」

 

「安全?」

 

 

まるで、安全では無い事態が迫っていたかのような口ぶり

 

 

「どう言う事ですか?」

 

「アイン、ハルトさん? わっわっ、漏れてる。魔力が漏れてるよ」

 

「失礼」

 

 

近づけてしまっていた体を引いて魔力は深呼吸と共に収める

 

 

「実は昨日の放課後なんだけどね。ほら、噂であるでしょ? 学院の陰謀説・・・雨水先生に感化された生徒が多すぎて学院を乗っ取られる事を恐れたから辞めさせるってやつ」

 

「小耳に挟んだ程度ですが」

 

「あれを信じちゃった人達が集まって話してるのを聞いちゃったんだ。なんでもね、ここザンクトヒルデは聖王教会の系列でしょ? だから、聖王家に縁のある家系の生まれって噂の高町さんを人質に取れば、学院と交渉できると思ってるんだよ」

 

「また誘拐騒動とは・・・クロの件が解決したばかりなのに」

 

「クロの件?」

 

「いえ、なんでも」

 

 

この事はイクスさんには言えませんね

 

ヴィヴィオさんから聞いた話ですが、過去に聖王の威光を使おうとした教会の関係者を一人で壊滅させたらしいですし

 

 

「ほんとうはお姉さんのイクス様に教えた方が良いんだろうけど、今日はお休みだし」

 

「大丈夫です。私が頼れる筋に相談してみますので、その話はここだけと言う事でお願いします」

 

「ん~アインハルトさんが言うなら信じる」

 

「ありがとうございます」

 

 

密会は放課後に行われているみたいですから今日すぐにでも片付けましょう

 

なるべく穏便に済めば良いのですけど

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

さっそく放課後。試しに初等科の教室に訪れてみたのですが、いきなり当たりを引いてしまったみたいです

 

しかも密会の参加者は優秀な生徒が集まるザンクトヒルデの中でも上位の方々でした

 

 

「初めまして。私は覇王の名を告ぐ者です、貴方達も授業で習ったと思いますが私にとっては聖王女は大切な存在なのです・・・故に、害すると言うのなら手加減はできませんよ?」

 

「わたし達にも引けない理由があるの」

 

「そうですか」

 

 

教室内の空気からみて結界魔法を発動されてしまっていますね

 

まぁ元より私一人だけなので、あまり意味はありませんが・・・それでも勝手に伏兵を警戒されているなら教える必要はありません

 

 

「貴方は雨水先生に会った事はある?」

 

「はい、訓練をみてもらった程度ですが」

 

「そっか・・・なら、分からないかな? あの人の近くは居心地が良かったでしょ?」

 

「居心地、ですか」

 

「うん。ここに居る皆はね、その居心地の良さに救われた子達なんだ。だからね、学院を潰してでも取り戻す!」

 

「陰謀説なんて嘘ですよ。と言っても通じなさそうですね」

 

 

しかし、古代ベルカ式の方ばかりですか。いちおう古代ベルカは珍しく使い手の少ない魔法形態なのですけど

 

初等科とは思えない踏み込みで槍先が迫る

 

まだ御方打ちを警戒した動き、きちんと囲んではいるところから一対多の動きは心得ているみたいですね

 

 

「悪くない」

 

 

けれど覇王流には届かない

 

断空による一撃で迫る槍を砕く

 

 

「うそ」

 

「周りの見てる方も、遠慮なく攻撃を仕掛けてもらって結構ですよ・・・天地に覇をもって、和を成す、そうですね、久しぶりに名乗りましょう。覇王流正統後継ハイディ・アインハルト・ストラトス・イングヴァルトが皆さんのお相手をさせて頂きます」

 

 

肌に纏わり付く戦場の熱がクラウスの記憶を振るわせる

 

彼女達から見れば不謹慎なのかも知れませんが、ヴィヴィオさんの為に磨いた力を使える状況に戒めていたはずの笑みが漏れそうになっていた

 

 

「私を倒すには一騎当千では足りませんよ?」

 

 

ようやく本気で私を打ち倒す気になったのでしょう、様々な色の魔力が立ち巡り。結界がなければ恐らくは何かしらの被害を出していたはずの量だと思われる

 

勘だけで目の前の空を叩く。すると、極小の魔力弾が弾けるように霧散した。そして、それを皮切りにそれぞれに顕現した武具を持って私へと襲い掛かってきました


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