召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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原作中(婚姻編)
三百九十一話~side なのは~


管理局に休暇届を申請して数日が経過した頃

 

ヴィヴィオの事をわかってあげられなかったショックから、それなりに立ち直って私は海鳴の実家からミッドチルダに戻ってきていました

 

 

「う~ん」

 

 

そして自然と足は雨水さんの家に向いたのですが、インターホンを鳴らす覚悟がどうしても出てこずにレイジングハートに励まされる事すでに五分くらい

 

 

「ヴィヴィオはきっと次の試合に勝ってるだろうから、おめでとうって言えば良いのかな? それとも試合に行けなくて、ごめんね。なのかな?」

 

 

暫くすると、デフォルメされたぬいぐるみの鷹が玄関先に留まる

 

えと、確かイクスちゃんのデバイスだよね・・・いつもノノとしか呼んでないから正式名称までは知らないんだけど

 

 

「あ、あの」

 

「ノノに話しかけても返答はありませんよ」

 

「そうなの? って、あ。イクスちゃん・・・久しぶりだね」

 

「・・・。」

 

 

扉の開閉する音は聞こえなかったけど、既にイクスちゃんは外に出ていて。私の方をジッと見詰めていた

 

 

「ヴィヴィオは、居るかな?」

 

「ん? ああ、そう言えば貴方に連絡が着かないと言っていましたね」

 

 

納得がいった様に頷くと踵を返して玄関に手を掛けた

 

 

「早い早い! ちょっと待ってなの!」

 

「なんですか? 留守を預かって居るので、私はなるべく家から出たくないのですが」

 

「えと、お留守番中なんだね。ヴィヴィオも一緒なのかな?」

 

「いえ、ヴィヴィオならお父様と一緒に管理外世界へ行っています」

 

「・・・まさか、海鳴に?」

 

「はい」

 

 

・・・入れ違い

 

完全なるニアミスになってしまった。いまから渡航許可の申請を出しても、また入れ違いになりそうだし、運が悪かったとしか言いようが無い感じだよ

 

 

「用件は以上ですか? なら、人の家の前から即座に居なくなって下さい。クロが貴方の事を気にして困っていたのです」

 

「ご、ごめん・・・クロ? え、クロって?」

 

 

何と無く猫っぽい名前なの

 

 

「クロはクロです。お母様に懐いたので、連れてくる事になってしまいました」

 

「シロじゃなくて?」

 

「は? なぜ、ここでシロさんの名前を出すのですか?」

 

 

ん~イクスちゃんのお母さんに懐いたかぁ

 

・・・いやいやいや、イクスちゃんのお母さん? え、お母さんが居るなんて雨水さんからもヴィヴィオからも聞いた事なかったんですけど!

 

 

「イクスちゃんのお母さん!?」

 

「それはどう言った問いですか?」

 

「あ、えと、イクスちゃんにお母さんが居るなんて初めて聞いたなぁって思って、ね?」

 

「まぁヴィヴィオの通信が繋がっていないのならば、知らなくて当然ですか・・・キャロ・ル・ルシエお母様です。式はまだなので正式にと言う訳ではありませんが、私もヴィヴィオもあの日から母と呼ぶようにしています」

 

「え」

 

 

ふぇえええ!!

 

キャロが?! 雨水さんと?! え、なんでそんな急に! いや、フェイトちゃんが保護する前から雨水さんとは知り合いだったし、今更って事じゃないんだろうけど

 

 

「いや、でも、ちょっと待って。それは急だと思うの!」

 

「別に貴方の許可が必要な訳では無いのですから、貴方の事情など知った事ではありませんが・・・それとも、反対する。そう言っているのですか?」

 

 

紫色をした魔力がゆらりとイクスちゃんから立ち上って右手に集まる

 

姿勢を変えた訳でも無いのに自然といつでも闘える状態に入ったと理解させられた

 

 

「反対とかじゃないよ! うん。でも、私もヴィヴィオのお母さんだし、その、教えて欲しかったなぁって」

 

「教えるも何も。貴方が通信の繋がらない地域に居たのではありませんか」

 

「あ、そっか」

 

 

私のバカぁ~!

 

落ち込んでいる間にトンでもない流れが出来上がってしまっていたらしいの

 

 

「今度こそ話は済みましたか? いい加減にクロを一人にするのは、と思い始めてきましたので戻りたいのですが」

 

「ごめんね、いつまでも外でする話じゃなかったね」

 

「はい」

 

「うん・・・入っていい?」

 

 

家の中で話を移すのかな。と思ったら一歩踏み出した私にイクスちゃんはとても不思議そうな目を見詰めていた

 

 

「招いていないのですが?」

 

「話を色々聞きたいなぁ~なんて・・・」

 

「招いていないのですが?」

 

 

全く同じ口調と表情でした

 

しかも嫌がっているとかじゃなくて、何で入ろうとしているの? って感じの純粋な瞳がとてもグサッと来るの

 

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

「おっそ~い!!」

 

「アルフ?!」

 

 

正面に見えていた私はそれ程でも無かったけど、玄関のすぐ目の前に立っていたイクスちゃんは突然後ろから大きな音を立てて開いたドアに結構驚いていた

 

あ、びっくりしたイクスちゃんかわいい

 

 

「アルフさん。フェイトさんと一緒にクロをお願いしたはずですが?」

 

「ったく、いつまで外で話してんのさ」

 

「いえ、ですからクロの面倒を」

 

「そのクロがイクス様って言い出したんだ」

 

 

アルフは困惑するイクスちゃんの首根っこを捕まえて引き摺るように家に入って行く

 

 

「なのはも。フェイトが来てるから、詳しい話はそっちに聞けば良いよ」

 

「うん!」

 

「あ~あとなのは」

 

「ん?」

 

「イクスには、こうガッといくのがコツだぞ」

 

 

私が表情を変えると、アルフは頭を搔いて私の答えを待たずに足を進めた

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「なのは!」

 

「フェイトちゃん!」

 

 

私の親友であるフェイトちゃんは、いつもなら雨水さんが座っていそうな所に座っていて私の姿を見るや直ぐに立ち上がって出迎えてくれた

 

 

「あれ? その子は?」

 

 

フェイトちゃんの後ろに隠れるようにして女の子がこちらを伺っている

 

なんだか、絵本から出てきた魔女みたい

 

 

「なのはは初めましてだよね。えと、私の親友で優しい人だから、ね? ファビアちゃん」

 

「・・・わかった」

 

 

ファビアちゃんはちらりとアルフに連れられたイクスちゃんに視線を送り、ゆっくりとフェイトちゃんの後ろから出てきた

 

 

「ごきげんよう。ファビア・クロゼルク、です」

 

「御機嫌よう。高町なのはです」

 

「高町?」

 

「そうそう、なのはね。ヴィヴィオのお母さんなの」

 

「ヴィヴィ様の」

 

 

ちょっと警戒していた瞳は完全に消えて、小さく隠すように笑った

 

 

「アルフさん、そろそろ放して下さい」

 

「フェイト~、イクスどうする?」

 

「え? えーと、私が抱っこしていた方が良いのかな?」

 

「そだな、途中でどっか行かれても困るし」

 

 

いつも怖い雰囲気を纏ってるイクスちゃんが嘘みたいにフェイトちゃんの腕の中に納まる

 

 

「あの、フェイトさん? クロの前で恥ずかしいのですが」

 

「フェイトお婆ちゃんって呼んで?」

 

「先程までの話は本気だったのですか」

 

「もちろん」

 

「流石にフェイトさんをお祖母様と呼ぶのは気が引けるのですが」

 

「えぇ~」

 

 

フェイトちゃんがお母さんがヴィヴィオとかにするみたいに頬ずりし始めた辺りで、ファビアちゃんが私の服を引っ張る

 

 

「ヴィヴィ様たちにはクロって呼ばれてる」

 

「あ、クロってファビアちゃんの事なんだ。確かに・・・クロって感じかも」

 

「そう? 貴方も呼んでいい」

 

「ありがとう」

 

 

ん? あれ、この子がクロって事は、さっきイクスちゃんがクロを一人にしてしまうって言葉はフェイトちゃんと一緒だったから嘘になるんじゃ・・・

 

ううん、そこで変に疑ったら駄目だよね。ヴィヴィオにもそうだけど、イクスちゃんは年下の子に物凄く優しい。だから、私と話している間に怪我とかしないか心配だっただけ

 

 

「クロ、ちゃんは。その、イクスちゃんとは仲良しなの?」

 

「イクス様と? 仲良くしてもらっている。貴方は?」

 

「うっ、微妙かな。ヴィヴィオのお姉ちゃんだし、仲良くしたいと思ってるんだけど・・・」

 

 

クロちゃんは不思議そうに首を傾げてイクスちゃんの方を見詰めて口を開く

 

 

「ɥɔslɐɟ ʇsı ɓunɥǝızǝᙠ」

 

「os ʇɥɔıu ʇsı sƎ」

 

「ん? え?」

 

 

たぶんベルカ語なんだと思うけど、ヴィヴィオが話している言葉と余りにも違って言葉として入ってこない

 

 

「ǝʇsǝq ǝıp ʇsı ʇnɓ ʇsı ɓunɥǝızǝᙠ ǝɹɐ̤ılıɯɐɟ ǝıᗡ」

 

「ǝılıɯɐℲ ǝuıǝ ʇɥɔıu uıq ɥɔı pun ɐɥouɐN」

 

「¿os sɐp ʇsI」

 

「uǝɥɔǝɹds uǝɯɯoʞ ɹǝpǝıʍ ɹǝɯɯı uoʌ pɹıʍ puı⋊ sɐᗡ」

 

「uǝʇɹɐʍ 'ʎɐʞO」

 

 

クロちゃんが納得した感じで頷くまで意味が分からず全然会話に参加できなかった

 

フェイトちゃんは何だか微笑ましくイクスちゃんの頭を撫でてるけど、分かるのかな? ちょっと念話で聞いてみよう

 

 

「フェイトちゃん、フェイトちゃん」

 

「なのは? どうしたの?」

 

「さっきのクロちゃんとイクスちゃんの会話、分かった? たぶんベルカだと思うんだけどヴィヴィオのと違くて」

 

「ベルカ語だよ。シュトゥラ地方の訛りじゃないかな? ヴィヴィオは綺麗な標準ベルカ語で話すから分かり易いけど、捜査の時に残ってる資料として多いのはファビアちゃんみたいに大抵訛ってるね」

 

「そっか、フェイトちゃんは事件捜査でベルカ関係も扱ってるもんね・・・で、さっきの何て言ってたのかな?」

 

「・・・ごめん。私も文字だと何とかって程度だから。あ、ただ、二人とも悪い事を言ってる表情じゃなかったし、良い事だよ!」

 

 

フェイトちゃんはそう言ってくれたけど、この会話のあとイクスちゃんと視線が合うことは一度もありませんでした

 

あ、でも、一緒に夜ご飯はできたし仲良くなってるよね! ね!




~作中に出てきた会話~

思い付きで出した反転文字のベルカ語ですが、元はこんな文になっています



「仲が悪いの」

「そうではありません」

「家族は仲が良いのが一番」

「高町なのはと私は家族では無いですよ」

「そうなの?」

「あの子が帰ってきてから話しますよ」

「分かった、待ってる」


再翻訳をすると大抵意味が変わってしまうので、ぎりぎり許容範囲かなって程度のモノを選びました

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