あれから、バルディッシュを持って突貫した訳なんだけど
意外にも、決着は私が介入するまでも無く魔力切れと言う形で収束する事になる
格闘家のヴィヴィオとアインハルトちゃんは続行するつもりだったみたいだけど、流石に魔力切れの二人なら事も無く説得する事ができた
「それで、えとね。これは一体何が原因だったのかな?」
アインハルトちゃんは、魔力はもちろん体力も限界だったようでヴィヴィオの肩を借りて眠っている。ちなみに魔女の子はそんなヴィヴィオの膝を借りて同じく眠っている
「ん~なんだろうね。一応この子がキャロを攫ったのが原因かな。フェイトさんは、どうするの? クロを連れてく?」
「まだ連れては行かないよ」
「良かった。返事によっては今度はフェイトさんと一戦する事になってたよ。ね、アインハルトさん」
「・・・はい」
びっくりした
あれだけ力を使い切っていたのに、既に周囲を警戒できるまで回復してる・・・でも、余裕があるようには見えないから安静にしてなくちゃいけないのは変わらないね
アインハルトちゃんは起きてるのがバレたのが居心地悪かったのか、ヴィヴィオの肩から離れようと体を動かしたけど、ヴィヴィオが頬を膨らましてダメだと言うと素直に元の位置に戻った
「にゃはは、あきパパにまた心配かけちゃったな」
「ッ!」
私が三人の間に入る前のことを思い出す
ヴィヴィオはそんな私の反応を見て不思議そうに首を傾げる
「どうしたの?」
「あ、えと、なんでもないよ?」
「分かった! また、あきパパが何か言ったんでしょ~? いいよ、娘のヴィヴィオが聞いてあげるのです。たぶん誤解だから解いてみるよ」
誤解なのかなぁ
言っていいのか。暫く迷ったあと、このまま雨水さんと会うと気まずい雰囲気になりそうだったので、喋ってしまった
「ふむふむ」
分かり易く大きく頷いたヴィヴィオはにっこりと笑う
「なるほど! つまりフェイトさんは、なんであきパパがヴィヴィオを心配しなかったのか、が気掛かりなんだね!」
「うん」
「それはね、怒ってたからだよ」
「怒ってた?」
「そう。はぁ、パパが無関心を装うのは結構怒ってる時だからなぁ・・・むぅ、オリヴィエに頼らないって言ったそばからアインハルトさんと戦う為に頼ったのが悪かったよね」
「ちょっと待って。え、なんで無関心がそうなるの?」
怒っている。ヴィヴィオが悪い事をした時に叱るなら分かるのだけど、それで無関心になってしまうのは酷い事だと思う・・・何だってキチンと向き合うべきだと、私は昔になのはに教わったのだから
「ん~? ヴィヴィオ達に一番効果的だから?」
「でも! お父さんやお母さんに関心されないのは、とっても悲しい事で・・・」
「普通の家庭はそうだね」
その一言は凄く重いものに感じた
「にゃはは、だいじょうぶ」
戸惑う私に大丈夫という言葉がじんわりと染み込んでくる
「ヴィヴィオの場合はなのはママがベッタリだから、それでバランスが良いの。お姉ちゃんはキャロだったりフェイトさんだったり、まぁヴィヴィオだったりで調整してるみたいだけどね」
「バランス」
「そう、バランスバランス。だから、フェイトさんの考えは悪い訳じゃない。でも、今回で言えばあきパパの対処はヴィヴィオにぴったりの手法だったってだけ」
・・・話し合おう
雨水さんならきっと別の方法も取れたはず。自然と私はそう思ってしまっているから、どうしても認められないでいる気がする
だから、雨水さんとゆっくり話そう。そして色んな事を教えてもらおう
「えへへ、そっかぁ、っていうことは。いまのあきパパはお姉ちゃんじゃなくて、ヴィヴィオのことでいっぱいかなぁ~」
悲しむと思っていたヴィヴィオがこんなにも嬉しそうに笑っている
色々思うところはあるけど、それだけは間違いなく良い事のはずだから
「あ、フェイトさん。まだクロは起きないみたいだから、抱えるの手伝ってもらっていいかな?」
「うん、もちろん!」
そうして、これから私は知ることになる
小屋の中への扉を潜った先で、いままでの事をちょっと忘れてしまえるくらいの大きな事件が進んで居たことを