前回のあらすじ
イクス達がお見舞いに来る→二人ともキャロから容態を聞き、大きく動揺している様子→とりあえず気になっていたヴィヴィオの試合を聞く事に→やはり問題は起きていた→解決はしなかったけれど、多少発散させる事である程度は落ち着いたように思える
それほど眠気は無かった気もするが話をしている内に何故か自然と眠ってしまっていて、目を覚ました頃には完全に朝になっていた
「いま何時だ?」
傍に置いてあった端末を見ると、普段なら学院で仕事をしている時間になっている
「はぁまったく、反省しているんだか・・・」
静かに寝息を立てるヴィヴィオの髪を撫でる
学院は休んだのだろう。きちんと届けを出しているかは怪しいが、まぁザンクトヒルデは特殊な子も多いので大抵の事は大きく受け入れている。って事で、後から事情を話せば問題は無いな
「ふぅ」
観察眼
・・・やっぱり発動しないな
少しくらい何か残っていてくれれば儲けだったが、やはりそう上手くはいかないらしい。前より魔力の通りは実感できたけど発動の兆しは無い
「にゃぁ、魔力? おはよぉーあきパパ」
「おはよ、随分とお寝坊さんだな」
「たまにはねぇ」
にゃはは、とヴィヴィオは軽く笑って抱きついてくる
「ん~やっぱり魔力だ。魔法を使おうとしたの?」
「いいや、レアスキルをね。あれだけ長く結合していたんだし、名残くらい無いかなって期待したんだよ」
「そう。むぎゅー、あきパパはもう何もしなくて大丈夫だよぉー。仕事しなくてもヴィヴィオが養ってあげれるしぃー」
「それは親としても大人しても嫌だな」
「えぇ~じゃあ主夫って事で」
レアスキルが無くなったいま、以前のように学院で働くのは難しいだろう・・・管理局の方でも割と頼りにしながら動いていたので、同じく厳しいといえる
いっそヴィヴィオの言う選択も無しじゃない。が、それは本当に最後の手段にしたい
「はぁ」
先行きを考えて溜息を吐くとビクリと震えたヴィヴィオの笑顔が一転して不安そうになった
「大丈夫? まだ何処か変だったりするの? それならウルをもっと使って・・・」
「そこまで心配しなくても大丈夫だよ」
「むぐぅ、心配だよぉ」
顔を埋まるように抱きしめると可愛い抗議のパンチが胸板を叩く
「ま、確かに雨水家は稼ぎの割りに浪費をしないからな。現状では俺が働いてなくても問題は無いだろうし、気楽に考えるよ」
「ぷはぁ、そうだよぉ~・・・えへへ」
「それより、だ。ヴィヴィオ、学院に休みますって届出を出してるだろうな?」
「うん、そこはバッチリです。昨日の内から体調悪くなる予定ですってメッセージを教会に送ってるから、適当に合わせてくれているはずなの」
相変わらず権力を惜しみなく使っているようだ
「ま、いっか」
「ねぇねぇあきパパ」
「なんだ」
「散歩に行こう? ジッとしてるは体に悪いと思うの」
少し強引な物言いのヴィヴィオに言われるがまま、鈍った体を解して部屋を出る
・・・暫して受付まで歩くと、遠くからでも分かる綺麗な金色の髪の女性が受付の人と言い合いをしていた
「あ、フェイトさんだぁ」
「あの人が言い合ってる姿って珍しいな」
「だねぇ」
よほど大事なのか、フェイトさんはかなり距離を縮めても俺達に気付く気配が無い。それを見てヴィヴィオが悪戯っ子の様な笑みを浮かべると、そろりと背中に這い寄った
「わっ!」
「きゃうっ」
「にゃっはは! 成功!」
「ヴィヴィオ?! あ、雨水さんは!」
「ん~?」
あっち。とヴィヴィオは俺を指し、すぐにフェイトさんが駆け寄る。驚かしたことへのリアクションが無かった事からか、ヴィヴィオは少し残念そうにしている
「雨水さん、大変なんです!」
「は、はぁ」
「キャロが」
「フェイトさん近すぎぃ!」
手を握って詰めていたフェイトさんと俺との間にヴィヴィオが割って入った
「あ、ごめんね。ちょっと焦ってて・・・えと、いま大丈夫ですか?」
「大丈夫ですけど、ここで立ち話は他の方の迷惑でしょうから、病室で話しましょうか。個室ですし、教会の配慮で内緒話にも適した部屋になってますから」
「にしても、キャロが何かの事件に巻き込まれた訳ですか」
「はい、いまも連絡が付いていない状態です」
結局ヴィヴィオの提案した散歩は受付までと言う短い距離で終わり、フェイトさんを連れて病室に戻るといま起こっているシュトゥラの森の魔女を名乗る少女の事件を聞いた