召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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三百七十四話~side ヴィヴィオ~

第三試合

 

期せずしてアインハルトさんとの勝負。もっと遅くなる予定だったらから、準備が万端とも言えないけど、出来る限りの手は打ってあった

 

だけど、それも一ラウンド目で早くも壊れつつある

 

 

「蓄積されたダメージは完全に回復してますが。大丈夫ですか?」

 

「はい、大丈夫です」

 

 

タオルとスポーツドリンクを受け取りながら、会場スタッフの方に返事をする。本当なら、いつもセコンドは教会の人にしてもらうんだけど、色々と邪魔されたくなかったから、その辺を歩いていた会場スタッフの方に代わりをしてもらっている

 

ちなみにアインハルトさんはチンクがセコンドを勤めてるみたい

 

 

「さ、二ラウンド目が始まります」

 

「クリス。まだちょっと聖王の鎧を使いたいから、ロストロギアの制御にシステムを割いて。あと、リミッターの解除申請も送っておいて・・・あきパパはたぶん手術だから、一時的になのはママが権限を所持してるはず」

 

 

なのはママなら、あともう二段くらいは解除できるかな

 

アインハルトさんは、やっぱり大人モードは使わずにバリアジャケットだけ展開する。もしかしてわたしの計画に気づいてるのかも知れない

 

 

「アインハルトさん。どうして、大人モードになってくれないんですか?」

 

「この姿が、本来の私の姿だからです。ヴィヴィオさん、貴方の相手は私です」

 

「そんなの・・・」

 

「いいえ、分かっていません」

 

 

わたしの戦う相手がアインハルトさんだなんて、そんなの分かっている。分かってなかったら、こんなに本気になってない

 

踏み込みから、断空がくる事が分かったので、両腕をクロスさせて後ろに跳びながら衝撃を受け止める

 

 

「でも・・・その姿だと。全力、出せませんよね?」

 

 

アインハルトさんの覇王流は記憶を基いて継承されている。当然、想定されているのは当時のクラウスの身長だったりする訳で、ある程度の調整は利くだろうけど、それでも本来想定された丈で戦った方が戦い易いはず

 

 

「心配はいりません。覇王流正統後継者、アインハルト・ストラトスとしての全力ならば、むしろこの姿の方が正しく発揮できます・・・ですので、はやくヴィヴィオさんも、ヴィヴィオさんとして、私の前に立ってください」

 

「・・・なにを」

 

 

言ってるの?

 

アインハルトさんの目は真剣だった

 

交わされる拳が嘘じゃないって教えてくれる。前に比べたら、本当に成長してる・・・クラウス程じゃないけど

 

 

「まぁ私もこの試合には色々と賭けてますから。新兵器を出させてもらいます」

 

「新兵器?」

 

「はい。これが、いまの私の覇王流」

 

 

肩に何かを咥えたティオが現れて、アインハルトさんに渡すと直ぐに戻っていく

 

 

「カートリッジ?」

 

 

でも、アスティオンにカートリッジシステムは組み込まれていない。確かにベルカで発展した技術だけどシステムが存在しない以上は使えないはず

 

 

「・・・カートリッジロード」

 

「ッ!」

 

 

薬莢が空気に溶ける様に無くなった瞬間に、アインハルトさんの魔力量が爆発的に跳ね上がる

 

 

「覇王断空拳」

 

 

上体を無理やり捻って、胸辺りを狙っていたアインハルトさんの掌打をかわす

 

 

「うそ。ホントにカートリッジシステム」

 

 

聖王の鎧が削られてる

 

だけど、いまの一撃で気づけた事がある。このカートリッジに蓄えられている魔力は、アインハルトさんの魔力じゃない

 

 

「粒子が桜色だった・・・なのは、ママ?」

 

「正解です」

 

 

続けてカートリッジを使ったアインハルトさんが視界から完全に消える

 

 

「クリス! 出力上げて!」

 

 

さっきはカートリッジの魔力を断空に振り分けていた。でも、わたしが目で終えない速度って事は、贅沢に身体強化にでもフルで振り分けれると言う事なのかも知れない

 

ジャリッと地面を削る音に反応した時には、遅く。完全にアインハルトさんに懐まで潜り込まれていた

 

 

「断空拳」

 

「ッ~!」

 

 

大きく吹き飛ばされながらも、どうにか場外に出されるのだけは防ぐ。今度は珍しい金色の粒子だったの

 

 

「フェイトさんだね」

 

「ようやく、バリアジャケットに傷が入りました」

 

「もぉ滅茶苦茶なの」

 

 

これはもうクラウスの戦闘スタイルとは掛け離れている。アインハルトさんが、ここまで誰かを頼るとは思わなかった

 

わたしの密やかな計画は完全に前提から覆された事になる

 

この試合でわたしは、オリヴィエとクラウスの決着を付ける気でいた。限りなく過去に近い状況を作って、再現し、お互いの記憶を共鳴させる・・・そしてわたしは負けるつもりだった

 

それが、ヴィヴィオとアインハルトさんが気兼ねなく付き合える方法だと思ったんだもん

 

 

「・・・ヴィヴィオ、さん?」

 

 

だめだめなの

 

 

いけない事だけど、その場に蹲ってしまう。思考が落ちる。そして運も悪く追い討ちをかけるように、オリヴィエの記憶と感情は、容赦なくわたしに襲い掛かってきた

 

 

「あいたいよ、クラウス」


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