召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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三百七十一話~side ヴィヴィオ~

禁忌兵器によって荒らされた草原

 

以前は季節の花々が咲き誇り、森の魔女が楽しそうに走り回っていた。目を閉じればいまでも思い起こせるのに、この短期間で何もかも変わってしまった

 

 

「オリヴィエ! 待ってください! 他に方法は幾らでもあるはずです!」

 

「・・・。」

 

 

私は彼を安心させる為に微笑む

 

 

「僕が強くなります! それで、この戦乱を・・・」

 

「いまじゃないと、駄目なんです」

 

「だからって、何故オリヴィエが。なんで今更! 私は認めません! 力尽くでも、貴方を皆の下に連れて帰ります!」

 

 

強情ですね

 

ゆりかごに乗れば、もう二度と会えない・・・それでも、彼の様な優しい人を守れるなら、それも良いと思えます

 

力強く放たれた掌打を緩やかに逸らし、眠りの魔法を直接打ち込んだ

 

 

「・・・オリヴィエ」

 

 

私も女の子ですから最後は笑顔が良いです

 

込み上げる熱い感情を必死に押し殺して、精一杯の笑顔を彼に向けた

 

 

「さようなら、クラウス」

 

 

大好きでしたよ

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

涼しげな風が吹いた気がした

 

 

「にゃあぁ」

 

 

またオリヴィエの夢

 

最近頻度が多くなってきてる気がするなぁ

 

えぇと。昼休み時間に天気が良かったから、庭園でお昼を食べようと思ったんだっけ・・・横になって休んで・・・そのまま寝てしまってたみたい

 

 

「んむぅ」

 

 

体を動かしてその場に座ると、ひらりとわたしの体から布が滑り落ちる

 

 

「ん?」

 

 

タオルケットだ

 

流石にタオルケットまで準備して横になった記憶なんて無いから、誰かが掛けてくれたんだと思う。誰だろう?

 

周囲を見渡すと、ゆっくりとした歩調で近づいてくる人影が見えた

 

 

「アインハルト、さん?」

 

「・・・ヴィヴィオさん。お飲み物は如何ですか?」

 

「あ、はい。頂きます」

 

 

差し出された二本の紙パックの内のリンゴジュースの方を受け取る

 

 

「汗を拭かないと。風邪引いてしまいます」

 

 

ジュースを飲んでいたわたしに近寄ったアインハルトさんは、懐からハンカチを取り出して優しくわたしの頬を伝う汗を拭う

 

 

「ッ! ケホッ! ア、アインハルトさん?! 何を突然!」

 

「ですから、風邪を引いてしまいます。そして、出来れば動かないで下さい」

 

「すみません」

 

 

頬から額。そしてハンカチを裏返して畳んで、わたしの制服のボタンを外して首元などを拭っていく・・・とにかく近いの!

 

 

「悪い夢でも見ていたのですか?」

 

「え、えーと。忘れちゃいました、何か大事な夢だった気がするんですけど」

 

「そうですか」

 

 

本当は覚えているけど、いまは言わない方がいい気がした

 

 

「な、中は自分で拭きます!」

 

「・・・動くのが辛そうに見えたのですけど」

 

「だいじょーぶです! アインハルトさんが持ってきてくれたジュースで元気百倍です!」

 

「はぁ、それなら、良いんですが」

 

 

危ない危ない。アインハルトさんは善意と好意でしてくれようとしたんだろうけど、いまのヴィヴィオが何処まで自制できるかなんて自分でも分からない

 

 

「あ、すみません! ハンカチ汚しちゃって!」

 

「ん? これくらい構いません」

 

 

こてん、と不思議そうに首を傾げたアインハルトさんは、わたしの隣に座ってジュースを飲み始める

 

 

「きょ、今日は良い天気ですよね」

 

「そうですね。明日の試合も、晴天に恵まれると良いのですが・・・」

 

「予報では晴れでしたから大丈夫だと思います!」

 

「それなら安心です」

 

「はい!」

 

 

明日の試合は絶対に負けられない。歴史を再現する為にも、余力を残しての勝利が最低条件になる

 

アインハルトさんには悪いけど、それ自体は不可能な事じゃない・・・能力的な差を考えれば、まだわたしとアインハルトさんの間には大きな差がある

 

わたしの思い描く未来は、かなりの確立で現実として向かい入れれるはずなの

 

 

「・・・。」

 

 

いまのところ不安要素は殆ど無い。唯一あるのは、読みきれない・・・と言うか意図的に読んでないアインハルトさんの思考や行動だけ

 

 

「あ、あの」

 

「はい」

 

 

たったそれだけなのに、なんだか不安が拭えない

 

 

「・・・やっぱり。なんでも、ないです」

 

 

そんなわたしの心情が表に出ていたのかも知れない。アインハルトさんは黙って、昼休みが終わるまでわたしの頭に手を置いていた


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