召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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三百六十九話~side 雨水~

前回のあらすじ

 

朝方に高町家にいるはずのヴィヴィオから奇襲を受ける→歯型が残るかと思った→聞くと、夜中俺とキャロが寝静まった時間帯に戻ってきていたらしい→そして久しぶりに明るく元気な子供の状態だったので、勘繰ると拗ねてしまった

 

幸い。その後に一緒にお風呂に入る事で許してくれたのか、朝食の時にはすっかり機嫌は直っていた。代わりにキャロには渋い顔をされたが

 

 

「さて、ヴィヴィオ。学院に行く準備は出来たか?」

 

「うん! わすれものはないよー」

 

 

やっぱり今日は明るく元気なヴィヴィオで通すつもりらしい

 

昔はオリヴィエの記憶に強く揺さぶられた日の後などに、こうなるのはあったけど・・・大会でアインハルトちゃんと戦う事になって久しぶりに昔の夢を見たのかも知れないな

 

 

「それにしても、確か大会に出場してる生徒は特別な時間割に変更してもらえるんじゃなかったか?」

 

「してもらえるけど・・・ヴィヴィオは別にそう言うので影響されたりしないし。あと、時間割が変更されるだけで無くなる訳じゃないからね。あとで居残り一週間とか嫌だよ」

 

「ああ、そう言う理由」

 

「そういう理由なの」

 

 

俺が車に乗り込むとヴィヴィオも同じく助手席に乗り込んでくる

 

 

「ん?」

 

「今日はリオもコロナも休みだと思うから、あきパパと一緒にいく」

 

「それは良いけど、こっちだと少し早く着くぞ?」

 

「ぜんぜんオッケー。アインハルトさん、わりと早めに登校するから、むしろ丁度良いくらい・・・だから一緒にいく」

 

 

アインハルトちゃんはヴィヴィオと同じで休まない方を選択しているのか

 

 

「分かった。シートベルトはきちんと嵌めておくように」

 

「ラジャー!」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

学院までの道中。丁度良い機会なので、コロナちゃんに聞いたイクスとヴィヴィオの隠し事について追求する事にした

 

 

「ヴィヴィオ」

 

「ん?」

 

「また、イクスの起こした揉め事を勝手に処理しただろ」

 

「ん~? なんのこと?」

 

「コロナちゃんとリオちゃんが変な輩に絡まれて、イクスが助けたそうだけど? まぁそれ自体は良い事なんだけど、そんな話は高町一尉からも聞いてないぞ」

 

 

ようやく思い出したのか。こてん、と首を傾げていたヴィヴィオは手を打って笑顔になる

 

 

「・・・あー、あれ!」

 

「思い出したか?」

 

「うん! でも、だって、イクスお姉ちゃん悪くないもん」

 

「悪いとは言ってないだろ」

 

「うん」

 

 

笑顔から一転して暗い表情になる。悪い事をしたと言う自覚はあったのか、反省しているのが一目で分かるほど落ち込んでいる

 

それにしても、ヴィヴィオは悪くない。って言うと思ったんだけどな

 

イクスを先に庇うなんて思わなかった

 

 

「悪くないから、過剰な対処をしたイクスが怒られるのを防いだのか?」

 

「うん」

 

 

間違った事はしてない。ヴィヴィオはそう言いたいのだろう、まぁ俺が問題にしているのは、何故それを報告しなかったのかと言う事なんだけど・・・

 

 

「多少イクスがやり過ぎたくらいじゃ怒らないよ。それより、後から聞かされるのは色々と心臓に悪いからな」

 

「パパが怒らなくても他の人までそうとは思えないよ。だから、あの事は無かったことにしたんだし、あの人達も・・・ね?」

 

 

さらっと怖いこと言いそうになったな

 

ヴィヴィオにはそれを実行できる能力があるから冗談じゃ済まされないんだよな

 

 

「ちなみにその絡んできた人はどうしたんだ?」

 

「騎士団の人に王家に弓を引いた人達だからって言った」

 

「管理局には渡してないんだな」

 

「もちろん」

 

 

子供に絡んだ奴らを庇う気は無いが、きちんと相応の罰になっているのかは確認が必要だ

 

庇う訳では無いが、それで逆恨みでもされたら元も子もない

 

 

「今度からは大人に対処してもらうように。俺でも高町一尉でも良いから」

 

「はぁい」

 

「よろしい。それじゃあ、この件は終わり」

 

「お姉ちゃんにも話すの?」

 

「ん? そうだね、一応ね」

 

「そっかぁ」

 

 

にこにこと笑っていたヴィヴィオは大きく俺の方に身を乗り出して耳元まで近づいてくる

 

 

「それは駄目だよ。あきパパ」

 

 

負の感情を連想させる様な冷え付いた声。一瞬だけだったが、確かにヴィヴィオの負の一面が垣間見えた

 

 

「ヴィヴィオ、運転中だからビックリさせるの禁止」

 

「あ、ごめん。このことは、お姉ちゃんは何も知らないよ。ヴィヴィオが・・・ううん、わたしが全部したことなんだから、パパに怒られるのはわたしだけでいいの・・・うん、わたしだけ」

 

「怒ってないって」

 

「・・・おねがい、駄目かな?」

 

 

これは単にお姉ちゃんを庇ってると見るべきなのか。態々、俺の前ではなるべく明るく元気な子供を振舞うヴィヴィオが、それを崩してまで止める事なのか

 

裏がある様な気がしてならないが、此処までヴィヴィオが見せるって事は梃子でも喋らせない気だな

 

 

「どうしてもか?」

 

「どうしても」

 

「・・・分かった。少なくとも、この件はイクスには話さない」

 

 

話さないと約束すると、ヴィヴィオは心の底から嬉しそうにはにかんだ

 

 

「ありがとう! あきパパ大好きなの!」

 

「ヴィヴィオ、運転中だから飛び付くの禁止」

 

「ぶぅ~そんなこと言うの嫌い」

 

 

とりあえず放課後に、騎士団の人に確認を取る事を忘れないようにしよう。団長にヴィヴィオを甘やかさないように再度言っておかなければならないからな


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