召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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三百六十六話~side 雨水~

前回のあらすじ

 

試合を終えたヴィヴィオ達と合流→チームザンクトヒルデの第三回戦は散々らしい→イクスがリオちゃんに説得されている間コロナちゃんに色々聞く→どうやらまた俺の知らないところで面倒事が起こっていた事が分かった

 

リオちゃんが押し切る様にイクスに約束を取り付けた後は、それぞれ試合の疲れもあったのか直ぐに帰ろうと言う話になった

 

 

「お帰りなさい。ってあれ?」

 

 

誰もいないと思っていたんだが、局服の上からエプロンを羽織ったキャロが出迎えた

 

 

「おう、ただいま」

 

「秋春一人?」

 

「ヴィヴィオは高町一尉の家に行くって言ってたな、怪しいけど。で、イクスはリオちゃんの家に行った」

 

「なるほど」

 

 

腕を組んでちょっと困った様に笑う。もしかして夕食出来上がってたか、そう言えば連絡するのを忘れていたな

 

 

「ごめん、連絡忘れてた」

 

「・・・あ、いえいえ、夕食はいまからですから大丈夫ですよ」

 

「ん? じゃあ、何で困った。って顔なんだ?」

 

「そんな顔してました? あれですよ、料理は出来てませんけど、材料がですねぇ。使い切りたいモノがあったんです」

 

 

なるほど

 

 

「ま、仕方ない・・・さ、秋春。今日はヴィヴィオもイクスもいませんし」

 

 

キャロは科を作り上目遣いで見詰めてくる

 

 

「ご飯にします? お風呂にします? それとも、私にしますか?」

 

「・・・。」

 

「どうしました?」

 

 

真剣な表情を作り、無言で近づくとキャロは一度だけ首を傾げて慌て出す、そして背筋をピンと張って二歩ほど下がった。俺が更に近づくと体を強張らせたまま目を瞑る

 

その姿は、幼さは残るものの十分に魅力的だった

 

 

「フェイトさんに似てきたけど、やっぱりまだキャロだな」

 

 

間を置いて口を開いたところで、ようやく冗談だと気付いたキャロは恥ずかしそうに顔を赤くして睨んできた

 

 

「当たり前です、ばか」

 

「最近キャロにはこの手の悪戯でも負けてたからな。いやぁ良かった」

 

「良くないです・・・それより、ずいぶんと女の扱いになれてるようで・・・それとも、女の子の扱いになれているようでって言い直した方が良いですか? 雨水先生」

 

 

うおっ、キャロにそう呼ばれると心にくるものがあるなぁ

 

 

「慣れてないって」

 

「そんなこと言ったって誰も信じてくれませんよ。雨水先生を慕う女の子は大勢いますからね」

 

「女の子だけじゃないはずなんだけどなぁ」

 

「ま、あの年頃は実は女の子の方が積極的ですからね」

 

 

押し倒されないで下さいよ。と、変な忠告を残して夕食を作る為にリビングに戻っていくキャロ

 

そのまま俺もリビングに行こうと思ったのだが、夕食が出来上がるまで時間もあるだろうし、手持ち無沙汰になって居心地悪くなるのも難なので、一度着替える為に二階に上がった

 

着替えを終えてリビングに降りると、カセットコンロと土鍋が準備されており、キャロが丁度食器などを準備し終えたところだった

 

 

「鍋?」

 

「少しでも食材を使い切りたいですから」

 

「それでちょっと多めなのか」

 

 

まぁ俺もキャロも少食って訳じゃないから食べきれるとは思うけどさ

 

 

「そう言えば先程の、ヴィヴィオの外泊先について変な言い回しでしたね」

 

「ん? ああ、ヴィヴィオが高町一尉のところに泊まるって言った時の高町一尉の反応がね。初めて聞いた、みたいな反応をしてたから・・・それに次の試合相手はアインハルトちゃんだし、何かあってもおかしくないと思ってるだけだよ」

 

 

むしろアインハルトちゃんとの試合に、いままで通り何の準備も無しに挑むって選択肢の方が考えられない

 

 

「良いんですか」

 

「何が?」

 

「最近のヴィヴィオを見ている限り、余り単独行動を許して良い結果になるとは思えませんよ」

 

「・・・やっぱり?」

 

「はい。前から情緒不安定なところはありましたけど、少なくとも人前では制御できてました。それが、最近のヴィヴィオを見ると人前でも取り乱す事が多いように思えます」

 

 

キャロの言う事は最もなんだよなぁ。前までのヴィヴィオだったら、高町一尉に裏の一面を見せる事は絶対になかった。でも、最近誰の前でも元気で良い子のヴィヴィオが崩れてきているように感じる

 

使い分けを止めたってだけなら良いんだけど、制御が効かなくてそうなってきているなら、かなり危険な兆候だと思われる

 

 

「オリヴィエとの折り合いがつけれなくなってきてるのかもな」

 

「それは・・・聖王との記憶の区別がつかなくなっているって事ですか?」

 

「ん~、感情の区別がつかないって感じだろう。ヴィヴィオの中で、アインハルトちゃんに抱く好意とクラウス殿下に抱く好意が混同し始めてるって言えば分かりやすいか」

 

 

アインハルトちゃんに対する、自分の中にある好きって感情は全て自分のモノと思いたいだろうしな。オリヴィエの記憶なんて関係ないと思うヴィヴィオなら当然の思考だろう

 

 

「急成長の弊害ですね」

 

「それも、あるだろうね。ヴィヴィオはイクスと違ってJS事件の際に、精神年齢を無理やり成長させてるからな」

 

 

だからかも知れないが、ヴィヴィオは精神の幅がかなり極端だ。子供らしい一面と成熟した少女の一面、傍から見れば二重人格に近いレベルで差が有ると思う

 

むしろ二重人格だった方がキチンと線引きが出来ていると言う点においては良かっただろう

 

 

「このまま変な方向に走って大事になる前に諭して置いた方が良いんじゃないですか?」

 

「どうだろう? はぐらかされるのがオチだと思うけど」

 

 

高町一尉が聞けば早急に解決しようとするだろうか。あの人の事だろうから、愚策で挑もうと如何にか解決まで引っ張っていけそうだけど

 

それを思えば、もう全て任せてしまった方が適切なのかも知れない

 

 

「それでもですよ。父親なんですから、秋春のするべきことです」

 

「・・・代わってみない?」

 

「嫌です。と言うか無理です」

 

「無理か」

 

「はい、無理です」

 

 

嫌なら如何にかなるが、無理なら如何し様も無い。流石に頼めないか・・・変な地雷とか踏み抜いて悪化させてしまいそうな気もするが仕方ない

 

 

「ま、話だけでもしてみるよ」

 

「はい」

 

「・・・あきパパは自分の心配をするべきだと思う。とか言われそうだな」

 

「・・・一理あるから返答に困りますよね」

 

 

ヴィヴィオの話が一段落ついた後は、ウルから聞いた検査報告と今後の予定などを話しながら箸を進めた。その際に三回ほど、面倒だから手術しなくて良くね。とぼやいたら三回とも全てにとても耳が痛くなる説教を頂いた


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