召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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三百六十五話~side イクス~

原因はつい数十分前の約束で、私は現在余り好ましくない状況に陥っていました

 

目の前には風情があると言える立派な家が建っている

 

振り向けば、既に小さくなって見える黒いスポーツカー。速度の割りには車内は結構安定していましたね、あれは車の性能なのかフェイトさんの運転技術なのか、少し気になるところです

 

 

「ここがあたしの家です!」

 

 

深い理由はありませんが、私はヴィヴィオの友人の家に来てしまいました

 

 

「貴方の話を聞かない姿勢は私の理解の範疇を大きく超えています」

 

「喜んでもらえてなによりです!」

 

 

喜んでませんよ

 

この子は馬鹿なんでしょうか。その馬鹿に言われるがまま付いて来てしまった訳ですが、お父様に行っておいでと優しく言われなければ・・・いえ、お父様に先手を打って話しかけたこの子が悪いです

 

根回しの良さだけは、流石はヴィヴィオの友達と言えますね

 

 

「帰っていいですか?」

 

 

交通手段はバスしか無さそうですね

 

車に乗っていた時間から計算して、自宅に帰るには時間を要しそうですが、他人の家で寝泊りするくらいならそちらの方が断然マシでしょう

 

 

「なに言ってるんですか! これからじゃないですかぁ~。それに、折角一日貰えたんですから。一回別れてからだと勿体無いじゃないですか!」

 

「明日一日との約束では」

 

「明日の朝一で特訓したいので!」

 

 

時間指定してくれれば朝が早くとも私は約束通り行くつもりだったんですが、時間に疎い方だとおもわれているのでしょうか

 

 

「いまさらですが、私は余り人に教えるのは得意ではありませんよ?」

 

「知ってます」

 

「なら」

 

「知ってすけど、あたしはイクス先輩に教えてほしいんです!」

 

「・・・私なんかの何処が良いのか」

 

 

理解に苦しみます

 

 

「なんかじゃありません! あたしとコロナを助けてくれたイクス先輩は、とってもとっても格好良い先輩なんです!」

 

 

・・・助けた?

 

まったく記憶にありませんね

 

 

「覚えてません」

 

「あたしが覚えてますからオッケーです」

 

 

徐に私の手を握り、瞳の奥を凝視する。この目は何だかヴィヴィオに似ていて困ります・・・純粋に憧れている目です

 

この子は私に憧れ、目標にしてくれている

 

それが感じ取れてしまうから、たぶんこの手を振りほどけないのでしょうね。いつからそうなっていたのかは知りませんけど、私自身の姉体質には困ったモノです

 

 

「・・・はぁ、いつまでも人の家の前で騒ぐのは迷惑ですよね。お父様に叱られてしまいます」

 

「へ?」

 

「案内して下さい。私を、招いてくれるのでしょう?」

 

 

ヴィヴィオから腹黒を抜いたらきっとこんな感じなのでしょう

 

リオ・ウェズリー

 

覚えやすい名前で助かりますね

 

嬉しそうにはにかむリオに引かれて、私は他人の家に泊まると言う初めての体験を行う破目になってしまいました


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