「まだ早いけど、今日はゆっくりって事で制服に着替えて降りてくる事。良い?」
「はい、分かりました」
何でも無い朝ですが、お父様に頭を撫でてもらう。そんな全てを幸福とさせる出来事の後に、言い付け通り学院の制服に着替える為にお父様の部屋を出ました
・・・頭の上に手を乗せると、まだお父様の温もりが残っている気がして口元がつい綻んでしまいそうです
それにしても先程から下が騒がしい
「ヴィヴィオの声のようですが」
あきパパの子供が欲しいとか思わないの?
ヴィヴィオの声で、昨晩の会話を思い出してしまった。お父様の前で思い出さなくて良かったです・・・曰く私は隠し事が上手では無いらしいですから
様子の違いで心配を掛けてしまうところでした
「それにしても煩いですね」
まったくあの妹は朝から無駄に元気なようですね
自室に戻ってクローゼットから制服を取り出す。これも始めの頃は着るのに少々苦労したりしました
「思えば、制服一つにしてもお父様に迷惑を掛けてしまっていますね。私は」
感慨に耽っていると、ノノが私に見える位置に留まる
そしてクリスからの映像通信がきている事を示す文字が、展開されていくモニターに映し出されていた
「用があるならあがって来なさいと送って下さい」
ノノは頷き、モニターを消すと視界の外に飛ぶ。しかし、二秒と経たずに再び私の視界に入る
急な用件。と取るべきなのでしょうね
「はぁ・・・繋いでください」
「お姉ちゃん! 知らない人が居る!」
「そうですか」
慌しく喧しい妹です
「で、その知らぬ人とは?」
「じゃっじゃーん!」
モニターにルシエさんのお母様が映っていた
記憶にある姿とは違う気もしますが、家族以外の他人に対する私の記憶能力など期待する程でも無いので間違い無いでしょう
「知らない? 忘れるほど久しく会ってない訳じゃないと思いますが・・・まぁ良いです。ルシエさんのお母様、お久しぶりです」
「あははっ、本当にヴィヴィオの言った通りだねっ! うんうん!」
やけに騒々しい印象の方ですね。以前出会った時は、物腰柔らかい落ち着いた雰囲気の持ち主だったと思うのですが
「にゃはは、んぅと、色々説明したいから、早く降りてきてね」
「説明?」
いったい何を。そんな事を思いましたが、着替えも終わりそうでしたので、一々問いはしませんでした
「もうすぐで終わります」
「うん、待ってるね」
「バイバーイ」
恐らくは、あの方がお父様の理想の女性なのですよね
だからルシエさんもその背中を追い求めている訳で、出来るならば私もそうしたいと願っている
「やはり人当たりが良いと言う点にお父様は惹かれるのでしょうか?」
先程映像に映っていた時も、騒々しいとは思いましたが決して嫌悪の感情が沸くことは無かった
「不思議な方です」
さて、準備完了です
ヴィヴィオが何かの説明をしてくれるそうなので、早々に降りるとしましょう
鞄を手に持ち、鏡の前で自身の姿を再度確かめる。そして、整った衣服を確認してノノを後ろから追従させ部屋を出ました