召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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三百三十六話~side 雨水~

前回のあらすじ

 

仮眠を摂っていると襲撃に会う→ヴィヴィオの成長を染み染み実感→アインハルトちゃんにバラした事を許す条件として帰る事に→イクスが思いのほか寂しがっているらしい

 

 

「お疲れ様です。お父様」

 

 

家に着いた俺を出迎えてくれたのは、いつも通りの何てこと無い様子のイクスだった

 

 

「・・・。」

 

「どうされました?」

 

 

こうして見ると、まったく分からないな

 

ヴィヴィオが映像を見せてくれなければ気付かなかったと思う

 

 

「えと、お父様?」

 

「イクス」

 

「はい」

 

「えと、少しお腹減ってな。夜食になりそうなもの、何でも良いから何か作ってくれない?」

 

 

俺のお願いに驚いた顔をしたイクスは、少し戸惑いながら頷いて小走りでリビングに向かっていく。勘違いかも知れないが、心成しか嬉しそうに見えた

 

 

「埋め合わせになるとは思えないけど」

 

 

ヴィヴィオにイクスのして欲しい事とか聞いておけば良かった

 

 

「ま、自分で考えないと意味が無いとか言いそうだな」

 

 

色々考えながら、着替えを済ませてリビングに向かう。扉を開けてまずテーブルに顔を伏せている人物に気が付かなった訳では無いのだが、面倒なのでソファーに座る

 

 

「えと、手で持って食べれる物にしてみました」

 

 

エプロンを嵌めたイクスは料理を手に俺の隣に座り、サンドイッチのような物を渡してきた

 

パン、白飯、パン

 

 

「随分と白々したサンドイッチだな」

 

「ライスサンドです」

 

 

意味が違う

 

自信を持って言えるが、俺の知っているライスサンドはコレでは無い

 

 

「いつもと違って、今日のは自信作です。失敗はありません」

 

 

胸を張って言うイクスは大変可愛い

 

可愛いが・・・まぁ今日は言わないであげよう

 

 

「いただきます」

 

 

白飯に味付けがされている・・・塩で

 

 

「美味しい、ですか?」

 

「え? ああ、味付けをもう少し考えたら大丈夫かな」

 

「なるほど」

 

 

直ぐにメモ帳を取り出して、味付けと書き込んでいた

 

イクスってよくメモを取っているけど、活用されているんだろうか

 

 

「そのメモ帳ってどんな事が書いてあるんだ?」

 

「え? あ、これは、その」

 

 

何故かイクスはメモ帳を恥ずかしそうに胸に隠す

 

 

「料理の時によく使ってるよね」

 

「はい。その時の失敗や成功、アドバイスや感想などを書いています」

 

「見てもいい?」

 

「・・・お、お父様が見たいとおっしゃるのなら」

 

 

渡されたメモ帳に目を通していく

 

最初の方は何を書けば良いのかが分からなかったのだろう。何だか如何でも良い事も書いてある

 

後の方になってくると、ポイントをきちんと抑えて書けてきていた

 

 

「・・・。」

 

 

なんでこんなに良いメモが取れているのに、料理が残念な形になっているんだろうか

 

中々に不思議だ

 

 

「ルシエさんから教えてもらった事も結構書いてあると思いますが、ヴィヴィオからのも少なからずあるんですよ?」

 

「へぇ、そうかそうか」

 

「妹に教わる姉なんて情けないですよね」

 

「ん? そんな事は無いよ。姉妹なんだから、そうやって不得意な所を補っていくのは当たり前だよ。そんなに気にしない」

 

「でも、あの子に不得意など」

 

「模擬戦相手はイクスが一番みたいだよ」

 

 

ヴィヴィオは他の子とはレベルが合わないからな

 

アインハルトちゃん相手でも悪くは無いんだけど、やっぱり全力を出せる相手となると、イクスを置いて他には居ない

 

暫らくして、読み終わる頃にはライスサンドは無くなっていた

 

 

「結構長かったな」

 

「えと、ごめんなさい」

 

「別に謝る事じゃないよ。逆に褒められる事だよ。勉強熱心で偉い」

 

「あ、ありがとうございます・・・えへへ」

 

 

頭を撫でると、あどけない子供のような笑みを浮かべた

 

・・・少しは元気になってくれたかな


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