召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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三百三十三話~side ヴィヴィオ~

アインハルトさんとの訓練のあと

 

仕事中のなのはママの端末にメッセージを残して、イクスお姉ちゃんに見付からないようにしてシャワーを浴びてます

 

 

「はぁー・・・やばい、どうしよぉ」

 

 

通りすがりに覗いたリビングに、お姉ちゃんが作ったご飯が置いてあったんだよね

 

・・・うん、絶対あきパパの為だよ

 

やばいやばいやばい

 

帰ってくるの遅いって知ったら怒る・・・ううん、おしおきされる

 

 

「うぅー」

 

 

こうなったら、あきパパに如何にか連絡繋いで直接言ってもらえば

 

 

「それが出来たら苦労しないか」

 

 

そもそも、あきパパも忙しいから確実に連絡の付くヴィヴィオに連絡した

 

何か良い方法を考えないといけないの

 

思い付いては自己シュミレーション。そして即却下の繰り返し

 

 

「にゃ~~! 知るかー!」

 

 

知恵熱でパニックになって壁を殴ってると、脱衣所とお風呂場を仕切っているドアが無造作に開けられる

 

 

「うるさい」

 

 

イクスお姉ちゃんの登場です

 

 

「ッ!」

 

「・・・慌て過ぎですよ。それより、帰っていたのなら、まず言う事があるでしょう?」

 

「た、ただいま」

 

 

良し。と頷いたイクスお姉ちゃんは、お風呂場の中をくるりと一周見渡して首を傾げる

 

 

「で? なにを騒いでいたのですか?」

 

 

あ、お姉ちゃんはおかえりって言ってくれないんだ・・・別に良いけど

 

 

「えと、その、ね?」

 

「・・・。」

 

 

イクスお姉ちゃんはわたしが悩んでいるのを見ると、無言で服が濡れるのも気にせずに入ってくる

 

 

「うっ」

 

 

迫力に壁へ壁へと追いやられていく

 

 

「服、服! 濡れてるよ!」

 

「・・・私に対して妙に慌てている時は、決まってお父様が絡んでいます」

 

「そ、そんな事ないよー」

 

 

ジーッと。まるで心を見透かすみたいに、お姉ちゃんはわたしの瞳を睨んで、そして頬に手を添えてきた

 

 

「まったく・・・怒られるのが怖い。そんな所ですか、怒らないから言ってみなさい」

 

 

困惑と慈愛の混ざった声色

 

えと、簡単に言うとやれやれって感じなの

 

 

「・・・怒らない?」

 

「はい」

 

「本当に? 本当の本当に、怒らない?」

 

「はい。私は嘘は付きませんよ」

 

 

お姉ちゃんの場合は嘘を付かないとかじゃなくて、付けないって言った方が近いような気がするの

 

嘘下手だし

 

わたしみたいに嘘付きな子じゃないもん

 

 

「あのね。今日のお昼くらいなんだけど、あきパパから連絡があってね・・・その、遅くなるんだって・・・帰り」

 

「そうですか」

 

「にゃはは」

 

 

言い終えると、お姉ちゃんは満足そうにふんわりと笑い、わたしは恥ずかしげに笑う・・・そして、激痛が襲ってきた

 

 

「痛ッ! いッふぁーい! 痛い痛い!」

 

 

頬千切れる!

 

 

「最初から、素直にそう言ってくれれば、服が濡れずに済んだものを・・・まったく、貴方はいつまで経っても怖がりですね」

 

「痛い痛い! 話す前に放そうよ! ヴィヴィオのほっぺは伸びないの!」

 

 

まるで許した後みたいに話していますけど、お姉ちゃんの指は確りと私の頬を抓っています

 

 

「ん?」

 

 

なんで首傾げるの?!

 

 

「ああ、つい」

 

「つい?!」

 

「貴方に非があるのですから別に良いでしょう」

 

「怒らないって言ったよね!」

 

「言いましたね」

 

 

あっさり認めたお姉ちゃんは、引っ張るに飽き足らず捻り出しました

 

 

「うにゃ~!!」

 

「ふふっ」

 

「にゃにがおもしろい!」

 

 

本当に何が面白いのか、お姉ちゃんは笑顔でぐにぐにとわたしの頬を弄る

 

う~痛いよぉ

 

 

「許しますよ。正直に話した良い子を叱る訳にはいきませんからね。お父様なら、きっとそうします」

 

「なら放せぇー」

 

「ふふっ、そうですね」

 

「・・・もう、ようやくなの」

 

 

手を離したお姉ちゃんは服を濡らしたまま、脱衣所に向かって歩き出す

 

 

「ちょっ! お姉ちゃん着替えとか・・・」

 

「ああ、それなら貴方のを使うので、大丈夫ですよ」

 

「そうなんだ」

 

「はい」

 

 

では。と言って脱衣所に出たお姉ちゃんの影が無くなるのを確認して、わたしは予想より怖い目に合わなかった安心から、その場にへたり込んでしまった

 

 

「良かったぁ」

 

 

昔のお姉ちゃんなら、ぜったい斬りかかってきてもおかしくない内容だったもんね

 

 

「はぁー、あんまり長いとのぼせちゃうから、わたしも上がろう」

 

 

・・・あれ?

 

お姉ちゃんが、わたしの服を着て出てったって事は、わたしは何を着ればいいのかな?

 

慌てて脱衣所への扉を開ける。当然と言えば当然なんですが、籠の中ににわたしの服は無い

 

 

「い、イクスお姉ちゃ~~ん!!」

 

 

思わず叫んでしまったけど、お姉ちゃんからの返事はありませんでした


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