雨水秋春は謎の多い人物だ
まず注目すべき点は管理局員で有りながら個人情報が極端に少ない事だろう
誰かが意図的に操作した形跡まである
・・・まぁ恐らくそこまでは普通に調べても気付く
しかし雨水秋春を追いかける内に、ボクは最もおかしいと思われる事柄を発見した
それは雨水秋春の過去である
彼には過去が無い
正確には局入りする以前の経歴が一切無い
勿論データの上では存在していたが、本人が居たと言う形跡が如何しても見つけられない
「ククッ何度考えても不思議だ」
出身は海鳴市
しかも元六課隊長陣と同じ学校に通っていたと言うでは無いか
それなのに彼らと出会ったのはミッドらしい
「そもそも、故郷の地球に一度も帰った事が無いと言うのはおかしいと思わないのだろうか?」
「わんっ! ブツブツ言ってないで手を動かさないと焦げるよ!」
「ブツブツとは、キミの主の話では無いか」
しかしこの家は素体の宝庫だね
魔狼、しかも突然変異なんて珍しすぎて改造しては駄目なのか聞いてみたくなるよ
「んー・・・まっ! そんなに変なら、今度の家族旅行は地球で決定だね~」
「キミに決定権があるかい?」
「んっ? 意見を出したら意外と通るよ? 皆、遊ぶ場所とか知らないから」
「ふぅーん、確かに遊びを知ってそうなメンバーでは無いね」
各言うボクも遊びには疎いのだがね
「うーい、シロ~手伝いに来たぞー」
「あ、アギトおかえりっ」
「やぁ純正古代ベルカの融合騎士のアギト君」
「げっ・・・ぷっ、なんだその似合わねぇ格好は」
純正古代ベルカは数が圧倒的に少ないから未解明な部分が多い
ぜひ機会があれば調べてみたいね
ボクの移植ベルカの質が上がるかも知れない・・・ああ、局では違法ベルカと呼ばれているんだった
「これはボクの趣味では無いよ」
「ん? って事はアキハルの趣味?」
「いいや、これはこれが正装でね」
フリフリだとか、ヒラヒラだとか、ボクも似合わないとは思うのだが、母上の指示なので仕方ないと甘んじている
「ほへぇ、で? なんでアンタが手伝いなんかを?」
「もちろんこれも学習の一環だよ。入局を控えている身なので、余り長い期間は出来ないが、一人暮らしが可能なレベルまで上げるように言われていてね」
「アキハルから?」
「そうだよ、ボクのご主人様から」
それにしても、このアギト君は良く魔力効率の悪いフルサイズを維持していられる
それは魔狼のシロ君にも言える事なのだが
本来、人化もフルサイズも一時的な手段に過ぎないはず
こんな生活に馴染む程の維持が出来るような魔法ではない
前例はあるが、その場合は優れた魔法の才と豊富な魔力が前提にあった
そしてご主人様の魔法や魔力は言うまでもない
「ご主人様ねぇ。しかし、そのメイドキャラは合わな過ぎだと思うぞ?」
「そう言われてもね、此処にに滞在する間のボクはコレで通すつもりだよ」
「ギャップでも狙ってんのか?」
「ククッキミの言う事が少し分からなくなってきたよ。これは傅く者として当然の格好だよ? そこに浅い理由も深い理由も存在しない」
ただ、そうなだけさ
「ふぅん、色々考えてんだな」
「受け取りが軽いよ」
返事の調子から察するにが殆ど如何でも良さそうだね
「ウル~上手に出来てるか?」
ようやくボクのご主人様の登場
「如何したんだい? ご主人様。心配で見に来てくれたのなら、それはそれで嬉しいが、必要の無い事だよ」
「うんうん、やっぱりシロに任せたのは正解かな」
常に最良の選択を持って教え子を育てる
ふむ、それが報告通りなら・・・いや、既に成果は出ているから信用できる情報だね
しかし常に最良とはどんな思考を持っていれば可能なのか
ある意味でレアスキルに相当する技能だよ
「レシピさえあれば一人でも可能だったとボクは思うのだけどね」
「ははっ、それは上等。だけど家庭の味って言うのは、レシピ通りにはいかないもんだからな・・・っと言う訳でお前には雨水家の味をマスターしてもらうつもりでいる!」
「自炊を出来るようになる、と言う当初の目標は何処にいったんだい?」
やれやれ、如何やら学ぶべき事は多いようだね
シロやアギトは割りと受け入れています