前回のあらすじ
騎士カリムから説明→生徒相談役任命→遅れてシスターシャッハ登場→騎士カリムはまたもや言い付けを破って紅茶を飲んでいたらしい→しかも準備したのはイクス→ホントに騎士カリムは子供っぽい人だな
説明があった日の内に校舎内くらいは覚えておこうと見回っていたのだが想像以上に広かった
そして激しく何かがぶつかり合う音がしたので、そちらに向かってみると訓練場みたいな場所で実習が行われていた
「あれは・・・イクスだな」
初等科の生徒とは思えない動きで先生・・・この場合は教官? と、互角以上に渡り合っている
流石に魔力を封印しても技能が無くなった訳じゃないからな
「よく見ればあの教官・・・」
肩より少し伸ばした赤毛に同色の瞳・・・そして活発で無邪気な笑い顔
「カリーノちゃんじゃね?」
相変わらず身の丈に合わない大剣を使ってるんだな
「少し見ていくか」
そっと音を立てないように入り驚く生徒に小声で説明して隣に座る
「確か貴様は編入生だったな。とても場慣れした剣だが師でも居るのか?」
「居ません」
二人とも刃を潰した模擬刀で戦っているが最早あれでは当たれば怪我じゃ済まないよな
まぁ二人ともそんなヘマをするような使い手じゃないにしても・・・
「あの二人っていつもこんな感じ?」
取り合えず隣の子に話しかけてみる
すると一瞬警戒された気もするが普通に答えてくれた
「大体こんな感じです」
暫らく見ているとカリーノちゃんが大振りで追い詰められていたイクスの剣を弾き飛ばした
がその直後にイクスの鋭く指を張った手が真っ直ぐカリーノちゃんの心臓部位に向かっていた
あれは貫手か
「ストップ!!」
大声を出すとカリーノちゃんは二撃目を出す態勢で、イクスは手の先が僅かにカリーノちゃんに触っている状態で止まった
「・・・あの、此処一応関係者以外・・・ってあれ? 恩師じゃないですか」
脱力っぷりが目に見えて分かるな
「ちょっと話は後でね、カリーノちゃん」
「ちょっ恩師! 騎士になったらちゃん付けは止めると言ったじゃないですか!」
・・・あれ? そうだっけ?
まぁホントそれはともかく
「イクス生徒。少し良いかな」
イクスは生徒と付けて呼ばれた事で、少なからず俺が怒っていると判断したのか落ち込みながら素直にやってきた
「あ、あの・・・さっきのはつい」
「ついでも危ない技は使ったら駄目だろ? 何の為にリミッター嵌めて安全アピールしてると思ってるんだ」
「・・・はい」
「反省した?」
「反省しました・・・あの、お父様怒ってます?」
怒っていると言おうものなら、今すぐにでも泣き出せそうなイクスを見て怒っているとは言えずに無言で首を横に振った
「恩師~余り生徒を苛めないで下さいねー」
「あ、悪い」
「じゃっ皆に説明しておこうかな。何で居るのか分からないけど、この人は私の恩師で雨水秋春さんです。分からない事があったら聞いたら良いよ。教えるのだけは上手いから」
だけの部分が強調された
さっきのちゃん付けを根に持っているな
「あれ? ところで何で恩師が此処に居るんですか幼女漁りですか?」
「人聞きが悪いぞ! ほら若干引かれたじゃないか!」
親しい教官と見知らぬ男では信用度は一目瞭然
「いやぁー私の孤児院でも散々女の子に手を出したじゃないですか~」
「お前そんなに俺を陥れて楽しいか?!」
「いやぁー誰かさんの教えのおかげでスッカリ趣味になってしまいまして~。最近は団長のあの冷静沈着ぶりを如何に崩すかを目下捜索中です」
そう言えば風の噂で騎士団でも色々楽しげにやっていると聞いたな
リーデレ生徒は隠していたエロ本が見付かったと嘆いていた
「程々にしておけよ」
「は~い、恩師の言い付けはちゃんと守りますよ。・・・ゴホっ、そろそろ時間か」
時計を確認したカリーノちゃんは教官の顔に戻って皆に終了の言葉を掛けに行った
「あの・・・お父様とあの人は知り合いなのですか?」
「前にボランティアと言う名目で、手の付けられない子供が居るって有名な孤児院に行かされた事があってね・・・そこの手の付けられない子供がカリーノちゃんだったんだよ」
まぁ原因は孤児院の運営側にあったんだけどね
・・・いまにして思えばあれは潜入捜査だったのかな
まともに万全の状態で戦えばイクスが勝ちます