召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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百四十九話~side イクス~

母親が欲しいか

 

そう秋春様から聞かれた時に、ズキリッと前に経験した胸の痛みが起こった

 

 

「よしっ! 夕食が出来るまでに少し仕事をしておくか」

 

 

秋春様は私を膝の上から下ろす

 

・・・考え事のせいでジックリ堪能出来なかった

 

 

「イクスは先にリビングに行ってて良いよ」

 

「はい」

 

 

本当は一緒に居たいと言いたいところですけど、秋春様の邪魔をして良いほど私の気持ちは優先するべき事でも有りません

 

 

「夕食が出来たら遠慮せずに呼んで良いから」

 

「では、その時にまた来ますね」

 

 

少し暇が出来てしまった

 

夕食の手伝いをするのも良いかも知れないが、流石にもう十分な人数が台所に立っているだろうから止めておこう

 

 

「・・・なにしよう」

 

 

何時もならテレビを見て時間を潰す

 

だけど、今はそんな気分でも無い

 

 

「取り合えず部屋に戻りますか」

 

 

私の部屋は秋春様から貰った物以外は特に置いてない

 

なので、他のヴィヴィオやルシエさんの部屋に比べると質素で女の子らしさは欠けていると思う

 

 

「・・・ぁれ?」

 

 

ベットに倒れこむように寝転がろうとした

 

・・・だけど自分の思っていたより、かなり端の方だった

 

もっと中央のつもりだったんだけど

 

 

「なんでしょう?」

 

 

体に小さな違和感を感じる

 

・・・まぁ体調でも悪いのでしょうかね

 

 

「母親」

 

 

どんな感じなんでしょう?

 

私は、反対もしない。と暗に賛成していない事を言ってしまいましたけど・・・

 

 

「なんて意地悪な子なんだろう」

 

 

ヴィヴィオみたいに正直に言えたら良いのに

 

ハッキリ言って、私がヴィヴィオを嫌いな理由にヴィヴィオが悪い所は含まれて居ない

 

単に羨ましいだけ

 

 

「嫉妬・・・私は嫉妬してばかり・・・ルシエさんにもヴィヴィオにもシロにだって」

 

 

もしかしたら融合騎にも戦闘機人にも召喚士にだって嫉妬しているのかも知れない

 

 

「秋春様が知ったら嫌いになるかも」

 

 

それは嫌だ

 

絶対避けないといけない

 

 

「・・・やっぱりテレビ見よう」

 

 

暗い気持ちで夕食の席に行って秋春様に勘付かれたら駄目だから

 

 

「・・・ん?」

 

 

リモコンを取ろうとした手が空を切る

 

視覚情報が可笑しい

 

 

「・・・。」

 

 

心配させない様に早めに治さないといけない

 

視覚情報との誤差は数センチ

 

これに気を付ければ日常生活に支障は出ないと思う

 

 

「戦闘行為が問題ですがマリアージュがあるので問題無いですね」

 

 

可笑しいのが距離感だけか確かめないと

 

左右のズレもある可能性が有る

 

 

「イクスおねぇ~ちゃん、ゴハンできたよー」

 

 

素早く手を伸ばしリモコンを掴むとナイフ投げの要領で相手の顔面を狙う

 

 

「にゃっ?!!」

 

 

右にズレて当たっている

 

 

「え? え? ヴィヴィオわるいことした?」

 

「テレビが良い所だったんです」

 

「ぅぅごめんなさい」

 

 

ヴィヴィオは悪くない・・・たぶん・・・強いて言うなら運が悪かった

 

 

「夕食ですね」

 

「そうだよ~」

 

「お父様には言いましたか?」

 

「あっいまからいってくるね!」

 

 

良かった

 

秋春様には私から伝えると言って置きましたからね

 

 

「私が行くのでヴィヴィオは先に下で待っていて下さい」

 

「いいの?」

 

「ええ」

 

「ありがとっ! じゃまってるね!」

 

 

天真爛漫

 

子供らしくて、お父様もヴィヴィオが娘だったら・・・

 

 

「らしくもない」

 

 

私が秋春様の娘だ

 

自信を持って胸を張って

 

何を否定しても、それだけは否定しない

 

 

「ん? お、イクスが扉の前に居るって事は夕食の準備が出来たのか」

 

「え? あ、はい。秋春様も仕事が終わったのですか?」

 

「そうそう、終わったって言うか区切りが付いてね。下の様子を見ようかと思ってたんだよ」

 

「では行きましょうか」

 

「そうだな」

 

 

手を繋いで歩きたい

 

 

「我が侭ですね」

 

「ん? 何か言った?」

 

「いえ」

 

 

しかし、抱かれた状態で撫でて欲しいと言えたのです

 

なので今後の課題は親子らしい行為のおんぶにしましょう




イクスの理想がヴィヴィオでヴィヴィオの理想がイクス

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