召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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九話~side フェイト~

キャロ・ル・ルシエ。私があの子を見掛けたのは二ヶ月くらい前の事だった

 

あの子は週の終わりに訓練所に顔を出し迷惑そうな大人に何度も頭を下げて場所を借りていた

 

何でそこまでするのかとても気になって訓練の様子を少し見せて貰う事にした

 

あの子の目はとても真剣で何か一つの目標に向かって走っているような、昔の自分と被るような気がしてならなかった

 

そして訓練後に見せる寂しい気な顔がとても印象に残った

 

だから私は悪いとは思いながらあの子の経歴を調べさせて貰った

 

小さな村の出身で村を追放された所を自然保護隊に保護されミッドで局員試験を受けて見事合格 現在保護責任者無しの孤児扱い 住んでいる場所は×××部署の男性用独身寮

 

「ん?」

 

何で男性用の独身寮に?

 

まぁ流石に小さい子一人で生活はって事で多分保護隊の方の多い寮に居るんだろう

 

私は何度も見掛ける内に声を掛けたくなった

 

力になりたいって思った

 

だから保護責任者を名乗り出た

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

あの日から丁度一週間。多分今日もあの子は訓練の為にやってくる

 

 

「テスタロッサ執務官! おはようございます!」

 

「おはよう・・・えとキャロって呼んでも良いかな?」

 

「あ、はい! もちろんです! ・・・そのわたしもフェイト執務官って呼んでも良いですか?」

 

「もちろんだよ!」

 

 

キャロは嬉しそうに笑うと訓練所の中に入る

 

そして真剣な目をして独自の訓練メニューを見ながら訓練を開始する

 

ん、どんなメニューでしてるんだろ?

 

 

「え、えとキャロ?」

 

「ふぇ?! フェイトさ・・・じゃなくてフェイト執務官?!」

 

「さんで良いよ」

 

 

キャロのすぐ隣に展開されているモニターのメニューを読んでみる

 

・・・凄い

 

かなり考えて作ってある。模範的なメニューじゃなくてキャロの為だけのメニューって感じ

 

 

「これ、キャロが?」

 

「い、いえいえ! これは雨水さんが」

 

「雨水さん?」

 

 

何処かで聞いたような

 

とっても最近だったような

 

 

「前にはなした旅仲間です」

 

「あー前も思ったけど旅仲間って?」

 

「わたしが村をでてすぐに出会ったひと?」

 

「自然保護隊の人?」

 

「ううん、わたしとおなじで帰るところがないって言ってた」

 

 

それからも少し話しを聞いていたが段々キャロも「あれ?」と首を傾げる事が多かった

 

今度会って見ようかな

 

 

「あ! そうだ! フェイトさん!」

 

「あ、はい、なに?」

 

「こ、この間のはなし!」

 

 

ドキリと緊張する

 

もし断られたら如何しよう

 

 

「わたしを! フェイトさんの家族にしてください!」

 

「・・・良かったぁー」

 

 

キャロは少し安心して気が抜けた私を心配そうな目で見ている

 

 

「だ、だいじょうぶですか?」

 

「うん、大丈夫、嬉しくて。ちょっとね」

 

「よかったです」

 

 

今日にでも手続きしないと

 

あ、それに雨水さんにもやっぱり会わないとな~

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

キャロの正式な保護責任者になったのは申請を通した次の日で実際の所は何か変わった訳ではないので少し現実的な実感には欠けます

 

だけどいまの私の緊張の度合いは稀に見る度合いです

 

恐る恐るインターホンを押す指が震えます

 

 

「ふぁ~ヒューズか? こんな朝っぱらから」

 

 

キャロの住んでいる住所から出てきたのは私と同じくらいの年の男性

 

多分、雨水さんだ!

 

 

「あ、あの! 初めまして! フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです! この度はキャロ・ル・ルシエさんの保護責任者にならせて頂きました!」

 

「・・・あん?」

 

 

雨水さんは目を細めて目を擦る

 

そして私の顔をジックリ見ると一旦扉を閉めた

 

 

「あう」

 

 

もしかして嫌われた?!

 

そう思っていたが中から何か楽しそうな声が

 

 

「キャロ! なんかお前の母親? 居るぞ!」

 

「フェイトさんはお姉さんです!」

 

「ってか来るなら言えよ! 何も準備してねぇって! あの人は執務官なんだから、失礼したらすぐ首飛ぶって!」

 

「あははっ! フェイトさんはそんな事しませんよぉー」

 

「嘘だ!」

 

「・・・フリード」

 

 

静かになった・・・歓迎はされてるよね?

 

 

「おはようございます! フェイトさん! いま雨水さん起きたばかりでシャワー浴びてますから入ってゆっくりしてください」

 

 

キャロが笑顔で扉を開けて出てきた

 

それは良いんだけど何時もキャロと一緒に居る、子竜のフリードが何か咥えてお風呂場らしき所に連れて行っていたのは見なかった方が良いのかな?




主人公の組織的地位は最下層付近なのでエースで執務官なフェイトには頭が上がらなかったりします

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