インフィニットストラトス 〜IF Ghost〜   作:地雷上等兵

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本当に申し訳ございません。悪いのは私だと分かっているいますが、忘れてください。


第6話

入学2日目の夜。

丹陽は自分と簪の部屋に居た。

丹陽は半袖ハーフパンツで、簪は制服のままだった。

約束通りにIS製造や整備について教わっていて、丹陽はパソコンの前に座り、簪は横に居た。

「今日はもう辞めようぜ、簪」

「ファーストネームで呼ばないで。別にいいけど、専用機作りたいのなら早く学んだ方がいいのでは?」

「なら更識。もう疲れた、無理にやっても足りないのと一緒だよ」

「苗字もやめて。別にいいけど、だったら私は作業があるから」

「じゃあ簪お嬢様。夜更かし?美容と目に悪いぞ」

「やめてそうゆうの合わないから。この眼鏡は視力矯正用じゃない」

「じゃあかんちゃん。矯正用じゃないなら外せば。その方が可愛いよ」

「無理やめて気持ち悪い」

簪は一括りにそう答えた。

丹陽は欠伸をすると自分の窓側のベッドに向かった。時刻はもうてっぺん近い。

「もう簪でいいよな」

そう言って丹陽は仰向けにベッドに飛び込んだ。

ベッドのスプリングに負担をかけ、数回身体を宙に浮かす。

「仲良くしようぜ簪。ルームメイトなんだし」

「ルームメイトだからなに?」

簪はカタカタと作業を始めていた。

「生活が密接になるのだから、助け合おうぜって言いたい

「私は他人に甘える程困っていない」

「いやだから、この寮2人だけだから何かあっても助けが来ないよ」

丹陽は何気無く言ったのだか、簪は別の意味で捉えた。

「キャーー」

簪は突然立とうとして、その拍子に足を絡ませ窓側に倒れた。

「どうした!大丈夫か?」

丹陽は起き上がり、簪の様子を見ようと近寄ったが。

「こっ来ないで!」

簪が倒れたまま後ずさりをして丹陽から逃れようとする。

「いやいやいや。何故?」

丹陽は簪の行動が理解出来なかった。何か言ったか?今日はかんちゃんぐらいしか失言はなかったはず。

後ずさりを続けていた簪はとうとう壁にぶつかる。 丹陽を睨む。

「初めっからこのつもりだったのね」

「どんなつもりだよ」

「とぼけないで。このケダモノが」

「わからないよ。ケダモノじゃいよ」

「おかしいと思った。男女が同じ部屋しかも周りから孤立した場所。どんな手を使ったかわからないけど私は絶対に許さない」

簪は上を向く。

「おばあちゃんごめんなさい。今から私はこの、汚らしく汚らわしいく汚れている狼に食われてしまいます。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」

簪は泣き出した。本気らしい。

「安心しろ。手は出さないから」

簪は目を丸くする。

「盗撮、盗聴?」

「してねーよ」

背中にドッと冷や汗がでた。

「同室が嫌だっていうんだったら。ここの寮部屋空いているしそっち使うよ」

丹陽は下手にボロを出す前に手を打とうとする。

楯無との約束が守れなくなるかもしれないが、このままの方が距離が開きそう、だから物理的な距離を置いてどうにかする。

「一人部屋で女の子を連れ込むの、恐喝して?」

また冷や汗がでた。

「お前はどうやっても俺を狼藉者にしたいらしいな」

確かに盗聴して恐喝をした。だがバレれてはいないはず。

「だいたいこの部屋構成は改竄されたもので、生徒会長っ」

「お姉ちゃん!」

丹陽は、生徒会長がいつか直してくれると言うつもりだったが。簪の声に邪魔せれる。

「お姉ちゃんが」

簪が呟く。

そうかお姉ちゃんがこの状況を仕組んだ。

『ケダモノ1人、扱えないなんて貴女は本当に無能ね』

これは姉からの挑戦状だ。なら受けて立つ。

「どうした。聞こえてますか?」

急に大声を出したかと思うとこの度は黙り込む簪に、丹陽は話しかけた。

顔を上げ、簪は立ち上がる。

「あっあの〜部屋は変えなくていいですから…」

簪は顔を背ける。

もじもじと何か言いたげだがなかなか言わない。

とうとう言う決心が付いたのか丹陽の目を見る。

「お願いがあるのですが」

「なんだ?」

理由はわからないが、狼藉者としての誤解が解けたようだ。

「首輪つけてもいいですか?」

その後、金曜日の夜までお互いに少しずつ距離が縮まっていった。もちろん付けていない。丹陽は少なくともそう思っていた。

金曜日の夜話しかけても返事をしなかった。前日何かあったわけでもない。

丹陽は簪のことを理解していたつもりだった。つもりでしかなかった。

臆病で内気なこの少女との付き合いは一週間も満たない。

残りの十数年間などまるでわからない。

でもだからこそ丹陽は簪を追いかけた。

丹陽には少しだけ簪のことがわかっていた。自分と同じで虚無主義者であることが。

 

 

簪を追いかけた丹陽は、すぐに追い付いた。

場所は自分たちの寮と先程いた寮との間。アリーナと校舎とは反対方向にあることや、一夏が今日模擬戦をやる為皆そちらに行っていて周りには誰も居ない。

「まて簪」

丹陽は簪の前に立つ。

簪はなにも言わず、丹陽を避けて歩く。 丹陽と簪が横になった時、丹陽が言った。

「お前の専用機が出来なかったのは、一夏のせいじゃないだろ」

驚き簪は振り向き、丹陽を見た。

「なんで…知ってるの…」

「倉持技研の人と知り合いだから」

丹陽もこちらを見た。ほとんど目線の高さは変わらない。だが、この小柄な体型には似つかわしくない程に能力を詰め込んでいる。姉のように。そう簪には思えた。

丹陽が続ける。

「お前が楯無にコンプレックスを抱いていることは知っている。確かにあいつは少しは出来がいいかもしれないが、欠点は幾つもある。それに俺に楯無を投影するな。俺はお前が思っている程、有能じゃない。だから」

「なんで。なんで私に構うのほっといてよ」

「お前の姉に頼まれた」

ゴン!

簪思わず殴っていた。しかも握り拳で。

丹陽はとくに驚かずにいたが、簪は自分が行ったことが信じられなかった。

「でも今は違う」

口の中が切れた。だが血を吸い誤魔化そうとする。丹陽は言った。

「イラつくんだよ。そうやって、自分が不幸であるみたいに自慢する奴が、助けを待っている奴が」

「私は別に助けて貰いたいわけじゃ」

始めて丹陽が怒ったのを見た。

「いや待っている。求めているんじゃなくて、待っている。不幸なら誰か助けて貰えると思っているのか?そんなんじゃ、一生姉貴にべったりだな。安心しろあいつはお前のことを大切にしているよ。ずっと甘えていられるぜ」

ガン!

また簪は殴った。

「何も知らないくせに」

「知ってるぜ、ろくに人と向き合ったことないだろ?」

簪は何も言わず走り去った。泣いていた。

簪が完全に居なくなってから丹陽はその場にあった石を、力一杯蹴った。

「クッソが!」

イラついていた。簪ではない、自分自身に。

昔から不器用だ。だからってあそこまで言う最低野郎になっているとは思わなかった。しかも、自分自身への言葉をそのまま簪に放ってしまった。昔の自分を見ているようでイラつくからって、言ってしまった。

「バカだろ、俺」

 

 

部屋に帰った簪は、鍵を掛けチェーンを掛けた。

丹陽が追って来る様子が無いのを見て、泣き崩れる。

好きになったかどうかはわからない。でも、一緒に居ていろいろと新鮮だった。初めて男性と密接な関係になったし、くだらない話もした、教師にもなった。一週間にも満たないのに、丹陽という存在は大きく感じられた。それは、姉のように高圧的ではなくむしろ自分自身の支えになってくれるそうゆう存在だった。クラスメイトに丹陽のことを訊かれたときは優越感に浸った時もあった。もしかしたら好きになっていたのかもしれない。でももうどうでもいい。

私が悪い。姉にコンプレックスを抱き、だからといって誰とも向き合わず過ごしてきた自分が。もしも姉のことや母のあの態度を吹っ切っていたらこうは、こんな結末ではなかっただろう。もう何もかもどうでもいい。

涙で歪んだ視界が、作業途中こパソコンを捉えた。

「どうでもいい何もかも」

パソコンの元に行くと、専用機のシステムデータを全て消した。

 

 

丹陽は自分の部屋とは別の部屋にいた。

以前、楯無に3階から叩き落とされた時楯無が隠れていた部屋で。まだ鍵は直っておらず、そこにいた。

パソコンの前で作業中で。時刻はすでに明日になり掛けていた。

「やっと終わった」

立ち上がり、伸びをした。

丹陽は携帯端末を取り出し、楯無に連絡を取ろうとする。

何回も楯無から電話がかかっていた。丹陽は気がつかなかった。

「もしもし楯無ここって天体観測部ある?」

『いきなりなに?こんな時間に』

明らかに不機嫌だ。

「あったら、借りたいものがある」

『そんなことより、どうゆうことよ!簪ちゃん泣かせるなんて』

「なんだ知っていたのか」

『貴方、約束忘れてる』

「仲良くするために、借りたいものがあるんだよ」

『わかったわ。部室棟の3階に天体観測部はあるわ。鍵は用務員さんに言えばいいから』

「いや〜ありがとう」

丹陽は礼を言うと、電話を切ろうとする。

『わかっているから。私が簪ちゃんを追い詰めていたって』

「どうした急に?」

『もう今更私達の関係は変わらない。でも、簪ちゃんには笑っていて欲しい』

「まあ任せろ」

『無理だったらどうしてくれる?』

「ハラキリをするさ」

電話を終え、 丹陽は行動を部屋をでた。

 

 

日曜の朝、簪は何かが窓を叩く音で目を覚ます。

ずっと泣き、いつの間にか寝ていたらしい。

簪は起き上がり時刻を確認した。 まだ5時前である。

何が窓を叩いているのか確認するため、カーテンを開けた。

「…え?」

「おはよう」

いたのは丹陽だった。

ロープを掴みぶら下がっていた。

「ここ開けてくれるか?」

「…なんで?なんでいるの」

正直嬉しかった、が簪の人格が喜ぶことを許さなかった。

「開けてくれ。いい加減握力が限界だからさあ」

「私のこと嫌いなんでしょ!なんでここにいるの?」

勝ってに次から次に口から言葉が開く。

「人助けだと思ってここを開けてくれ。お願いします本当限界なの」

「…わかった…」

簪は窓を開けた。

丹陽は中に入るとすぐに簪の手を取った。

「見せたいものがある来てくれ」

「ちょっと、待って。なんでぶら下がっていたの?」

「ああすれば中に入れて貰えると思って」

簪をドアの前まで引っ張り、丹陽はドアの鍵を外す。

「見せたいものがあるんだよ。一緒に来てくれ」

「…いや…行かない」

簪は踏ん張り丹陽に逆らう。

「まあ騙されたと思って。そんなに嫌なら、お姫様抱っこするよ」

「…行けばいいのね…」

お姫様抱っこをされないため、と自分に言い聞かせ簪は丹陽について行く。

丹陽は簪を連れて、どんどん階段を上がって行く。

屋上に着く前、最上階と屋上の間の踊場で意外なものを見つける。踊り場はは8畳ほどの広さしか無いが、2人用のテーブルに椅子が1つ。そのテーブルの上にトリップ式のコーヒーメーカーとフィルターが付いた双眼鏡があった。本棚もあり、IS関連の本から昆虫図鑑まで様々な種類で埋まっている。

丹陽は双眼鏡を取ったことから、丹陽が集めたものだと思われる。

「いつの間にこんなに置いたの?」

「いいからいいから来いよ」

屋上に出ると、恐らくさっき使ったロープが柵に結んであった。

「あった。簪あれ見ろよ」

丹陽は東の空を指差す。

簪はその方向を見ると、星が見えた。

朝方、太陽はまだ出ていなかったが空は薄暗い赤と青に彩られていて。それをバックに星が輝いていた。

「金星?」

「そうそう、それ。空気が汚いとかよく言われるけど、ここでもよく見える」

そう言うと、丹陽は携帯端末を取り出し時間を確認した。

「やっべ時間だ。フィルターは?大丈夫。対象は?見つけた!」

丹陽はいいながら、双眼鏡を使ってほとんど真上を見た。

「簪、ほれ」

双眼鏡を渡された簪は丹陽と同じところを見た。

「天徒!」

簪は双眼鏡を通して、人工衛星 天徒を見た。

天徒は、全長200m発電パネルを合わせればkmはくだらず、発電パネルの面積だけで1600000㎡はあり、高さは1km。重さ、赤道直下で4万t。

半分から下は、傘のような構造をしており。4本の平たい直方体、イオンエンジン兼アンテナが傘の骨のようになっていて、せれらの間を発電パネルを無制限と思わせるほどに広げている。その中心に、細長い円錐が地球に尖りをむけている。

半分から上は、細長い棒を中心に幾つものドーナッツ状のパーツが3本の柱で、中心の細長い棒に繋がっている。ドーナッツの1つ1つは全て1本以上の通路らしきものでしながっていて、ドーナッツの半分くらいはゆっくりと回っていた。

天徒。作られたのは十五年前で、完成したのは十年前。

当時、中東戦争による原油価格の高騰や核アレルギーによる脱原発、さらにジェルガスや天然ガスが某国が外交カードとして使用するため頼れず、日本はエネルギー危機に陥っており、それを解決するため建設された。原理は、宇宙で太陽エネルギーを取り地上に送るというもので電力の送受信の高効率化によって、実用化された。建設途中ISが実用化されて、もともと用途である宇宙服としての機能を発揮、建設時間の短縮に役立った。エネルギー施設としてだけではなく植物プラントなどがあり食料面でもに独立して活動でき宇宙開発の拠点としても活躍している。 今だ日本を支えるには発電量が足りないが日を追うごとに天徒は大きくなっていてさらに2基目の建設も計画されており日本本土のエネルギーを支えるのにそう時間はかからない。

天徒にはもう1つ、特徴がある。

ISは、全世界で最強の兵器であるが行動時間が短いという弱点がある。機体によって多少は変わるが50分程がISの稼働エネルギーの限界である。もっとも、通常兵器と戦う場合時間はそうかからないのだが。そのためISを防衛戦には敵しているが、侵攻戦など自国から離れた場所で戦闘する場合専用の大掛かりな補給部隊が必要で、その護衛ためにIS戦力を割かなければならず攻性の運用には敵していなかった。ただ日本だけは天徒の存在によって事情は変わる。

天徒から本土にエネルギーを送るように、ISにもエネルギーを送ることができるのである。今は無いが仲介する衛星を使えば全世界でISが稼働時間が理論上は半永久になる。もっとも、そんなことをすれば、本土へのエネルギー供給に支障が出るが。

そんな天徒が双眼鏡を通して見ることができた。

「こんな風に見れるなんて知らなかった」

丹陽はどこからともなく、カメラを出すと天徒を見た。

「あと5秒,5,4,3,2,1。よし来た!」

天徒の無数にある発電パネルから、中心にある円錐に向かって電流が流れ始めた。 円錐が青緑色を帯び始める。

円錐が突然光を失ったと思った途端、突然そこから薄い緑の光の柱が地表目掛けて降り注ぐ。が、地表に近付けば近づく程その光は見えなくなった。

天徒本体の周りを、青緑の薄い雲のようなものが漂い始めた。

「雲みたいなやつ、あれ宇宙塵で。よくエネルギーロスとか言われるけど、俺は好きだよ。だって」

青緑に光る宇宙塵の中にから、赤い点が現れたかと思うとデタラメに飛び散った。それも1つ2つじゃない、数え切れない程に飛び散っていた。さらには電流を帯電したのか、青白く放電していた。

まるで巨大な線香花火の様に、真っ暗な宇宙をバックに天徒は輝いていた。

「綺麗…」

「だろ」

簪の率直な感想に、丹陽は同意した。

丹陽はそれを何度もカメラに収めていた。

「こんな綺麗で、役に立つのに誰も見向きもしないなんて」

「私のことを言っている?」

丹陽の言葉に簪は少し引っかかった。

「そんなわけ無いだろ。これを見せたかったのは、1人で見るには勿体無いから。それに。お前はもっと輝いているよ」

思わぬ丹陽の言葉に簪は黙った。

「…そうやって…いつも女の子を…落としているの?」

「なんか言ったか?」

「なんでも無い!…馬鹿…」

「ん?」

簪は赤面し天徒を見た。

天徒のドーナッツの1つがシャッターが開き、中から2人程出てきた。

宇宙開発用のISを装着した人と、その人に抱えられるように宇宙服を着た人のペアで。女性だったら、ISを使うので男女のペアだと思われる。

たぶん私達のようにこの発光現象を見に来た人達だ。

簪はふと、前に見たテレビ番組を思い出す。 たしか、天徒の開発に関する企画だった。

「でも、簪。何も無いって訳じゃないんだ」

天徒開発チームのトップへのインタビューで、天徒は男女同数を常に配置していて。その理由を訊いていて、トップの人は意気揚々と答えた。

『だって地球ってまだ危ないじゃないですか?万が一何かあったら人類が全滅しちゃあ良く無い』

「謝りたくて、前に酷いこと言っちゃて。本当にごめんなさい」

『で、本当ーはハーレムでも良かったけどね、日本一夫一妻制だからペアにしたの』

ゴールデンタイムの生放送での発言である。

「お前には、他人を投影するなって言って置いて俺は投影していたんだ。お前に俺自身を」

気まずい空気が流れたが、その人は気にせず続ける。

『だから、採用面接の時。枕営業だけどいい?って訊くのさ。男性に訊いた時はセクハラです!って怒られたけどね。ペアを組ませるときだって、お互いにズッコンバッコン出来る?っのも訊いた』

おっさんぽいことを言うおばさんだと私はその時思った。

その後、女性アナウンサーが話しを変えたがおばさんのキャラは変わらなかった。

「俺も昔は、無気力になってな。何もかも投げ出そうとしたんだだけっ」

つまり、あのペアは!

まさか?そう思い簪は2人を改めて見直す。

2人はお互いに向き合っていた。

ISは、全身装甲型で表情が見えない。宇宙服もバイザーが黒くなっていて表情が見えない。だけど、どんな表情かわかった。

そして、お互いの顔が徐々に近づく。

ゴツン。

そう聞こえた気がした。お互いにその甲殻ぶつける程に近づこうとしていた。その状態のまま2人は固まった。

簪は2人から目を離せずにいた。

「っおい聞いているのか?」

「ん!うん、聞いていた。私こそごめん」

宇宙から地上に引き戻された、簪は返事をした。

テキトーに返事をした訳ではなく、謝りたいことはわかっていた。

天徒やあの2人を見ていると、なんだか自分の問題が小さく感じられ何年もの重りがあっさり浮いて無くなっていた。

でもたぶん、天徒や2人だけではなく。

ちらりと簪は丹陽は見た。

「簪!」

「はっはい!」

突然の大声に簪は驚く。

「天徒から手を振ってくれてるぜ!」

丹陽は興奮した様子で言った。

簪はもう一度天徒を見た。

手を振っていたのは、あの2人だ。

男性が女性の肩に手を回し、自分のもとに寄せながら2人は手を振っていた。

「ハイパーセンサーなら、こっちが見えてもおかしく無い。あーでも他にも何人か見ているのかも」

違う。あの人達は、私達が自分達と同じような関係だと思って手を振ってくれたのだ。つまり…

また丹陽は見た。

丹陽は自分で自分の意見を否定したにもかかわらず、興奮した様子で手を振っていた。

「丹陽?」

「どうした?」

簪はあることに気づく。

「目線が私より低い」

丹陽は体を一緒ビクッと震わせ、頭を下げる。

「シークレットブーツ?」

「それの何が悪い!」

丹陽が飛び跳ねるように顔を上げた。

「だいたい身長が高くて何かいいことでもあるのか?無いだろ!窮屈だし身体洗うの面倒だし何よりボールに当たる。あんなの見た目だけ。身長が無いと良いぞ。開放的だし身体洗うの楽だし何より、ボールに当たらない。 それがオセアニアじゃあ常識なんだ」

「なんか、ごめん」

どうやら、丹陽のスイッチらしい。 覚えておこう。

「もういいたくさんだ。俺は帰る」

丹陽は背中を向けて帰ろうとする。

「ヒーロー。って感じではないよね」

小さな背中を見つめた。

丹陽が立ち止まり、踵を返した。

「簪。忘れてたこれ」

丹陽は何かを渡した。

「中に何が入っているの?」

渡されたのは、パソコン用の外部メモリーで容量がかなりあるものだった。

「お前が消したISのソフト。完全に修復して置いた」

「いつの間に?」

「お前が寝ている間に。ケダモノって言われても仕方ないな」

丹陽は昨日の夜のうちに部屋に入っていた。

そう言ったが、簪は特に騒がずに外部メモリーを見つめていた。

「頑張ったんだろ?消すなんて勿体無いから直して置いた」

簪は意を決して丹陽に言う。

「あの…手伝って…くれ。手伝ってください。専用機を組めたてるのを」

あまり人に頼むのに慣れておらず簪は、噛んでしまう。

「良いよ。でも敬語は辞めてくれ」

「はい!」

簪は丹陽の手を取りはしる。

「手を繋ぐ?どっどこ行くんだ?徹夜だったから辛いんだけど」

「善は急げ。早速作業する始めよう。一緒に」

「分かったから、寝させてくれ。少しでいい」

ヒーローって感じでは無い。でも。

「初めてかも」

やっと日が登り、オレンジの光が簪達を照らす。簪は晴々と走っていた。

「1時間でいい、仮眠だ熟睡じゃない」




あんまり考えずに設定を作ったのですが、おかしなところが有っても目をつぶってください。お願いします。


誤字脱字表現ミス、おかしな描写有りましたらご指摘お願いします。

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