インフィニットストラトス 〜IF Ghost〜   作:地雷上等兵

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全然ストックが無いのにやってしまって、無計画な自分に呆れています。


第4話

「体調は大丈夫か?丹陽」

「今日は隕石でも降って来るのか」

ガン!

「人の親切には誠意を持って答えろ馬鹿者」

試合前、丹陽と千冬はピットでそのなやりとりをしていた。

 

 

「一夏よく見とけよ」

「わかった、お前の戦い方参考にさせてもらう」

「俺のもいいが、それよりオルコットの方をよく見とけよ。お前が戦うのはオルコットの方だ。」

『丹陽君、時間です。先程も説明しましたが、セシリアさんの専用機 ブルーティアーズ は恐らく狙撃を主体とした遠距離型。第3世代なので他にもどんな装備があるか、気をつけてください』

セシリアはもうすでにアリーナにいる。

丹陽はセシリアの方を見て言う。

「了解。いやあ楽しみだ」

丹陽発進しながら言う。

「ハリアーと出るかドラムと出るか?」

 

 

飛べない?

なんとか無事に地面に着地したものの、丹陽は焦っていた。

「フフフ、空も飛べないなのてなんて無様ですの。さあこれ以上醜態を晒す前に倒して差し上げますわ」

「チッ」

セシリアは自分の身体以上はありそうなスターライトを構えすかさず引き金を引く。3発放った。

丹陽は横に跳んで避けようとするが反応が遅れて2発当たる。

反応も鈍い。丹陽は悪態をついた。

丹陽はアサルトライフルを展開する。

「ほう。てっきり武器も展開出来ず終わると思っていましたわ」

やり返しなのか、いつもどうりなのかよく喋る。

丹陽はアサルトライフルで黙らせようとするが、違和感を感じた。

四肢の長さが違う。つまり生身での構えていたやり方が出来ない。仕方なく、ストックが宙ぶらりんのまま撃つ。

3点バーストで撃つ丹陽。しかし、距離が空き過ぎているため、簡単に避けられる。

距離を詰めようにも飛べないのでは話にならない。

「おほほほ。そんな弾当たりませんわ」

そう言いながら次々と撃ってくる。

跳んで走り時には身体を捻りなんとか回避するが、丹陽に反撃する隙が出来ない。

「丹陽」

「なにをやっている」

ピットにいる人の声が聞こえてきたが、頭に入らない。

回避回避被弾その繰り返し。もうすでにシールドエネルギーは半分を切った。

なにやってるんだ俺は。また負けるのか?悔しくは無いのか?また踏みにじられるのか?苦しく無いのか?思い出せ初戦はもっとまともに戦えただろ。

「これでおしまいですわ」

セシリアが今までよりも強力な一撃を放った。

あの時俺が見ていたのは、灼熱の業火と見えぬ汚染に彩られた故郷でも、ずっと見上げていたあの空でも無い。あの女だ。あいつだ。あいつのことを見ていたんだ。

ズドン!

轟音をあげ砂煙が舞う。

「他愛も有りませんわ」

セシリアがピットに戻ろうとするが、気づく。

何故勝利判定がでないのか?

恐る恐る砂煙を見る。

「オルコット悪いな。完全に偏見だか」

何事もなかったかのように浮いている。

「オルコット、お前のことが嫌いだわ」

丹陽はそう言いながら、左手だけでアサルトライフルを持ちスナイパーライフルを展開右手で保持した。

「やっと飛べるようなりましたの。でも幾ら飛べるからといって、弾を当てられなければ意味が有りませんわ」

「初めて気が合ったな」

丹陽がセシリア目掛けてアサルトライフルを連射する。丹陽はさっき撃って気がついた。生身で撃つ寄りも銃が軽くそれでいて精確。つまり片手でフルオートで撃っても当たる。

「そんな弾当たりませんわ」

セシリアがそう言いながらライフルの弾を回避したはず、だが。なにかに被弾。よろめき速度が落ちた、すかさずアサルトライフルが追い打ちをかける。

セシリアは体制を立て直し丹陽を見る。両手に構えたライフルをこちらに向けニヤリと笑う。

「当たったぜ」

セシリアがアサルトライフルを回避したあと被弾したのはスナイパーライフルが放った弾丸だった。回避したと思い油断したセシリアはアサルトライフルものとは比べものにならない弾速に被弾した。

「まだまだですわ」

お互いにスラスターを吹かし飛翔する。

セシリアが速度を保ちながら射撃、丹陽はそれに応戦する。

先程の面影もない均衡とれった試合だった。 だかそれもすぐ崩れる。

おかしい。セシリアはそう思い出していた。

セシリアはたとえ被弾しても、速度を落とさず撃ち続けている。このような場合の訓練もした。だから命中精度は異常なほど落ちることは無い。

一方丹陽はスナイパーライフルを撃つため止まったり、撃ったときの反動を受け流すため体制が崩れたりした。だか、丹陽はほとんど被弾せず、セシリアは、スナイパーライフル限定だかほとんど被弾していた。

誘導されている。アサルトライフルの弾で誘い、スナイパーライフルで黙らせる。

このままじゃ負ける。そう思ったセシリアが手を打つ。

「さあ行きなさいブルーティアーズ」

セシリアがそう叫ぶ。

ブルーティアーズ本体に接続されていた、四機のピットが分離。丹陽に四方から接近する。

「やっと英国らしいのが出てきた」

丹陽は楽しそうに笑った。

1機目が正面から足を止めるために撃ち、残りが止まったところを同時に射撃。少しずつずれたところに撃てば、エネルギーを少しは削れる。そう思いセシリアはそれを実行する。

このときセシリアは気がついていなかった。だんだん消極的に無言になっていく自分に。

位置についたブルーティアーズが命令を実行する。

1機目が丹陽の手前にビームを放つ。それを丹陽は回避するため減速。間も無くビームが3発放たれた。

丹陽は判断した。ラファールの速度では、避けられない。だから逆に利用した、ブルーティアーズがビームを拡散して撃ったことを。

丹陽は 身体を驚くほどに柔軟に曲げ、少しずつずれて放たれたことによって生まれた隙間に身体をねじ込む。

「ISのハイパーセンサーって便利だな。見なくてもわかる」

紙一重で避けた、丹陽はスラスターを吹かし急降下する。それをブルーティアーズは追撃した。

急降下したときの速度を殺すことなく地面を這うように丹陽は飛んだ。アリーナの壁を目前に突然アサルトライフルを上に放り投げた。そして、進行方向に対して左前に地面を蹴り跳ぶ。今度は壁を這うように上昇する。この動作に対応するためすべてのブルーティアーズをセシリアは上昇させた、させてしまった。

ブルーティアーズの動きを確認した丹陽が後ろ向きになりった。間髪入れずスラスターを逆噴射、膝を曲げ股の間から左手を出し足と左手で地面に食らいついた。腰膝スラスターすべてを使い壁に対して、垂直に加速した。

まさか!セシリアは丹陽の意図、つまりブルーティアーズを振り切り本体を仕留めることに気がつき距離を取ろうする。しかしそれは丹陽の考えではなかった。

丹陽はブルーティアーズに弾丸を放った。セシリアは反応出来ずブルーティアーズが撃墜される。そしてその射線上に2機のブルーティアーズが重なっていた。紙切れのようなブルーティアーズを撃ち抜いた弾丸は威力を落とすことなくさらなる目標を撃ち抜く。3機目のブルーティアーズを撃ち抜くころに、丹陽が空中で止まり左手を上げた。クルクルと回り先程投げたアサルトライフルが綺麗に手に収まった。アサルトライフルを乱射、残りのブルーティアーズを仕留めた。

4日前、セシリアはなんとも言えない不安を感じていた。それが現実になろうとしていた。

 

ピット内は唖然としていた。

地面に落ちるた時は、ひやひやしてきたが。だが今は一方的な展開に唖然としいた。

「今の動き、ブルーティアーズはさそいこまれたんですか?」

「恐らくはな。ブルーティアーズの行動範囲を制限するため、地面や壁を這っていたんだろう自分の行動範囲を狭めても。もっとも」

山田先生が訊き、千冬が答え、

「あんな賭博のような戦い方褒められるものでは無いがな」

そう付け加えた。

ディスプレイに映った丹陽を見る。本当に楽しそうな顔をしていた。

丹陽自身にも、自覚があるのだろう。

 

 

セシリアは迷っていた。

あとブルーティアーズは2機ある。だが使ったところで勝てる気がしない。でも使わなければこのまま負ける。

早く決断しなければ、相手は待ってくれない。

だが丹陽は予想外の行動に出る。

両手のライフルを収納し、代わりに実体剣を2本出す。全体的に鋭角なそれを両手に持ち、刃先をセシリアに向けた。丹陽は飛んだ。

近接攻撃をしてくるなら、カウンターでブルーティアーズを使い仕留める。もっとも、近接攻撃をしてくると思い込ませたいだけなのかもしれないが、もうそう信じるしかない。セシリアはスターライトを構えた。

セシリアを中心に丹陽は円を描くように飛んだ。

先程とは違い、セシリアは射撃に専念出来たが丹陽も回避に専念出来たのでまるで当たらない。

タイミングを見て丹陽が一気にセシリアに接近する。

実体剣の届く距離まであと3秒という距離でセシリアはブルーティアーズを使った。

「ブルーティアーズはまだありましてよ!」

先程の4機のブルーティアーズとは違い、長細い筒のようなブルーティアーズから2発のミサイルが放たれる。

「だったらどうした!」

ミサイルを避けのではなくむしろ丹陽は速度を上げ、突っ込んだ。ミサイルに当たる直前、身体を曲げミサイルを回避した。丹陽は通り過ぎたミサイル、近接信管が作動爆発。しかし、相対速度が早過ぎて丹陽の後方での爆発だったのでシールドエネルギーは削りきれずむしろ加速度を与えてしまった。

セシリアは丹陽に素早く照準を合わせた。ブルーティアーズが当たるとは思っていなかった。だからスターライトを使って仕留めるつもりだった。 胴体ほぼ中央に照準を素早く合わせ、撃った。

放たれたビームは丹陽に伸びて行く。当たる直前、丹陽の左手の実体剣がピタリと射線に入った。

ビームが実体剣に当たり火花を飛び散らせる。刃物としての機能を果たせなくなるほど、破壊された実体剣を丹陽は捨てた。

丹陽は 次弾が撃たれる前に素早くセシリアに接近、すくい上げるようにスターライトを切った。そのままの勢いで上昇、左手でセシリアの肩を掴みセシリアに乗るような形になった。残ったブルーティアーズとスラスターすべてを切り裂く。

そしてセシリアを踏み台に高く舞った。

踏み台にされたセシリアは地面すれすれで止まれた。スラスターを破壊されたのでPIC制御だけではすぐには止まれなかった。

負けた。ほんの一瞬でほとんどすべての武装を破壊されたセシリアに勝機はなかった。残りの武装も格闘用のインターセプト。スラスターを破壊され機動力で劣る今近接戦闘で勝てるはずがない。しかも相手はまだライフルを持っている。

「諦めるか?オルコット」

「誰が諦めるものですか」

セシリアはインターセプトを展開する。いつも通り展開に時間がかかった。

丹陽を見る。実体剣を両手に構えこちらを見ていた。セシリアがインターセプトを構えるまで待っていてくれたようだ。そしてセシリアに向かって急降下する。

丹陽が近づく間、セシリアは動けずにいた。

刃と刃が交わらんとする。

 

 

WINER セシリア ウォルコット

突如としてそうアリーナのディスプレイいっぱいにそう表示される。

なにが起こったのかわからずセシリアは周りを見た後丹陽を見た。

全身にエラーの文字を表示し、至る所から煙を吐く丹陽のIS。明らかに慌てている丹陽。制御不能らしい。急降下した勢いのまま地面に激突する。

「ガッアガっイダッダッだ」

間抜けな声を出しながら、転がる丹陽。壁にぶつかりやっと止まる。

「んなバカな」

そうつぶやく。

ぶつかった所為で壁には亀裂が入り、今にも崩れそうだった。

丹陽が立った。立った所為で壁の一部が崩れ、落ちた。

ガン!

それが丹陽の頭を直撃した。

「隕石?」

 




次回はセシリア・一夏戦です。


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