インフィニットストラトス 〜IF Ghost〜   作:地雷上等兵

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ここから駆け足気味になります。正直、今回の話は2話に跨いだ方が絶対に良かったと思います。


第29話

ゆっくりと瞼を上げた。すると見慣れた自室の天井が広がっている。

「私はいったい?」

簪は身を起こす。まだ冴えない頭で記憶を辿り、現状を把握しようとした。

どうやら自室のベッドで横になっていたようで、誰かに寝衣に着替えさせられていた。ベッド脇のナイトテーブルに

愛用の眼鏡と学年別トーナメントに関する用紙が。

簪はベッドから抜け出した。そしてクローゼットの前に立ち着替え始める。空腹を感じ食堂に出ていくために。

自分が何故ここで寝ていたのか。それを考えたくはなかった。

ノックがした。

「お姉ちゃん?あの…私は大丈夫だから…。着替えてるから待ってて」

楯無が迎えに来たと思ったが、返答がない。疑問に感じ、ドア開け確かめようとした。だがドアが開かない。鍵は外してある。つまり外から押さえつけて開かないようにしている。

「うん?お姉ちゃんじゃあないの?」

ドアを隔てて今現在最も簪にとってセンシティブな彼が声を張った。

「そうです!ですから開けないでください、簪さん!今度こそ会長に屠られる」

「あっごめん、すぐに着替えるから!」

慌てて部屋の奥に引っ込む。それは丹陽から逃げるためではなく、いち早く着替えるために。

「簪さん」

「なんで、さん付け?」

「じゃあ、お嬢…女王さ…」

「いつもの呼び方でいいから!」

ゴンとドアから押される音。そしてずるずるとする音。丹陽がドアにもたれかかりそのまま腰を下ろしたようだ。

「簪」

改まって名前を呼ばれた。

「なんて言うか…、謝りたくて。さっきはごめん。助けて貰ったのに」

簪も同じく謝りたくてたまらなかった。だが言葉を発する前に丹陽が続けた。

「情けないな」

「そんなことないよ!」

簪は自分でも驚くほどの声で叫んだ。

「悪かった…」

ずるずるとドアを擦る音が。丹陽が立ち上がっている。

沈黙が流れ気まずい空気に包まれる前に、丹陽が言葉を発した。

「図々しいと思うんだが、頼みたいことがあるんだ」

「頼み事って?」

「学年別トーナメントでタッグを組んでくれないか?」

「え?タッグ?」

急ぎ学年別トーナメントに関する用紙を確認する。

それによれば、確かに今度のトーナメントはタッグを組んで出場とのこと。

「いいの私で?」

「ああ。代表候補生なんだから自信持てよ」

丹陽は肯定した。

「じゃあ、俺はもう寝るから。おやすみ」

「寝るって、まだ早いけど…」

カーテンの裾から外灯の灯りが漏れている。陽は落ちたが、寝るには早すぎる。

「色々あって疲れてな」

外出に戦闘に瀕死に口論に水没。

「そう…うん、わかった。じゃあまた明日」

足音が遠退き、丹陽の気配がなくなった。

簪はベットに腰を据え、胸に手を当てた。喉に魚の骨が刺さったかのような、焦れったい痛みが染みる。その痛みの原因はしばらく先まで分からなかった。

 

 

早朝。大型トレーラーがIS学園に到着した。

それを目を擦り、欠伸を隠しきれない整備班が出迎えた。

「なんでこんな急に…」

トレーラーで運ばれてきたのは未完のIS、モンテ ビアンコ。丹陽の専用機。

 

 

「明日の試合には間に合うか?」

「100パーセントは無理」

「なんだと…それでも整備班か!」

「だったら半壊させた自分を恨んでくださいね」

学園のISハンガー。

翌日に大会を控え、ハンガー内は喧騒に包まれていた。それは主に整備班にトーナメント出場者が使用するISの最終確認など行っていたのだが。

ここに一組、少し事情の違う組み合わせがいた。

睨みつける隻眼銀髪のラウラと、それを軽く流す整備班、班長。そしてクレーンで宙吊りのIS、シュヴァルツェア レーゲン。レーゲンには両手が無い。一夏に切り落とされたのだ。

「その恨みを晴らすためにも、頼んでいるのだ」

レーゲンは一夏によって半壊させられ、事実上の機能停止をしていた。壊れたならば修理すれば良いのだが、昨今のやり取りの通り、ことは順調ではない。

「頼んでるねぇ。私達はティータイムを惜しんで労力を費やすけど、そもそも予備パーツも無いのにどうやって復元しろと?錬金術?」

「予備パーツなら、本国から支給されていただろ」

「それ、口伝えで使用しないように口酸っぱく言われてるんだけど」

「だからどうした、構わん使え」

代表候補生に命令されれば突っ撥ねる権限は班長には無い。だが。

不満を隠さず顔に出し、声にも出す。

「代表候補生にもかかわらず、専用機も無ければ何も出来ないの?怖いの?」

「馬鹿を言うな!泉や一夏など練習機で十分だ」

「じゃあどうして?」

「ふん。我がドイツ軍の情報部によると、泉はどうやら専用機を持っている可能性がある。ならばこちらも万全を期す。彼我の技量差の問題では無い」

「うーん。オッケー。じゃあ早速取り掛かるね」

あっさりと承諾した班長は袖を捲り、リモコンを操作。レーゲンを降ろし始めた。

それを確認したラウラは、ハンガーから退出しようとした。自身もこれから特訓に取り組むために。

「そうそう、ドイツ娘ちゃん」

「ラウラ ボーデヴィッヒだ!」

「基本性能は100パーセント出せるけど、AICは諦めてね」

「馬鹿にする気か貴様!」

速足で詰め寄るラウラを、班長は人差し指を立てて御した。

「さっき言っていた予備パーツ。試しに使ったけど、キャパシティを何かに食われてAICが発動しなくなっちゃうの。その何か、プロテクターが掛かっていて解析、排斥出来なくて」

「それをどうにかしろ。これでは専用機を使う泉に!」

「ああ、それなら心配ご無用。丹陽の専用機は第1世代機だから」

「何故知ってる…」

班長は人差し指を倒しラウラの後ろを指した。指先には、パレットに載せられ、たった今ワンボーで運び込まれた初見のISがいた。

「モンテ ビアンコよ。もともとのコードネームはメタルフロッグ。今急ピッチで調整中。今朝届いたの。そうそう、ただの第1世代じゃないわよ。トライアルで敗れて倉庫で埃を被っていた可哀想なお友達。あれ?第3世代機でトライアルで勝ってバリバリ稼働中のシュヴァルツェアレーゲンとはなんだかお友達になれそうね。うん、そうよ」

やられた。 ラウラはそう思った。こいつは初めっから全て知っていた。その上でこちらに言わせたかった。技量では勝っていると。ISの性能差が雲泥の差ならば、今度の敗北は正真正銘、私の実力による敗北になる。

「IS性能差は全くないし、うんうん、全然勝ってる。だから大丈夫。ドイツ娘ちゃんなら勝てるよ」

そして、こいつは私が勝つとは微塵も思っていない。私の方が弱いと。例え世代間格差があるISがあっても。

「じゃあ頑張ってね。ドイツ娘ちゃん。応援してるから」

堪えきれない怒りに任せて殴りたい衝動。だが、昨日の光景が脳裏をよぎった。拳を握り締め、何も言わず班長に背を向けた。

冷静さが失われた為か、それとも丹陽に特別な出自があると思いたくないのか。ラウラは丹陽が生命同調型のISを装備している可能性を、無意識のうちに排除していた。

「もう2つ」

ラウラは背を向けたまま歩みを止めない。班長は構わず続ける。

「ワイヤーブレードは予備パーツと一緒に編んでおいたから。だからもう簡単には切れないわよ。レールカノンも、弾頭をより質量のある通常の徹甲弾にして、弾速も調整したから。だから威力は落ちたし速度も落ちたけど、蒸発することは無いから。って行っちゃった」

班長は1人淡々と作業を進めた。

突然、堪えきれずに噴き出す。

「全く、怖いなら怖いって言えばいいのに。それに目の下にクマ作っちゃって、昨日は眠れなかったのね。迷って悩んで苛立って、恩師に相談できず。その矛先を丹陽に向ける。全く可愛いんだから」

 

 

トーナメント前日、学校はトーナメントのために休校。そのため殆どの生徒はアリーナに集まり、練習機の順番待ちをしていた。

専用機を持っていない丹陽は当然順番待ちに加わる。待っている間は、シュミレータでビアンコの慣熟訓練とシュミレーターにインプットしたアガルマトとの模擬戦。または整備班にビアンコ組み立ての進捗状況確認という名の催促。練習機の順番が回ってくれば、練習機であるラファールに乗り込み、明日に向けて簪と模擬戦。時間が来れば、ラファールを次の人に渡し、休憩。そしてシュミレータ、ハンガー。またラファール。

そんなこんなで時は流れて昼飯時に。

「丹陽」

「うん?」

昼食は食堂では無く、ハンガーにて。理由は、ハンガーで飯時も惜しんで作業を続ける整備班に、サンドイッチを送り、その次いでに自分達の昼食も済ませようとした。

丹陽はツナサンドを咥えたまま返事をした。慌ててツナサンドを胃に押し込む。

「ラウラのこと」

「ラウラ?」

「死にかけたこと」

ああ、と腑抜けた声が丹陽の口から漏れた。

「ああって」

「気にするなよ。今は生きてるんだし。彼奴だって理由があるだろうし…」

それに戦う理由が無いのに出しゃばった俺が悪いと続けようとした。が丹陽の視界の中、簪が表情が強張り始めた。

「気にするなって!理由があるからって!」

簪の大声に驚き、ハンガー内の整備班がピタリと手を止めた。

丹陽は簪の憤慨などなんのそのと、次のカツサンドに手を伸ばしていた。

「だからって後ろから撃ったらあれだろ」

「でも……」

「まぁ、トーナメントで借りは利子も付けて返すさ」

「そうだね……」

簪もデザートサンドを頬張った。

「ところで今日の俺。変か?」

丹陽の物言いに、簪はビクッと強張った。

「そっそんなこと無いよ。ただ一日中一緒だなんて、なんだか久々だなって」

「そうだな。しょっちゅう外出してたからな」

丹陽は一気に残りのサンドイッチを平らげ、水筒のコーヒーを飲み干す。

「それじゃあ、アリーナが空いている内にもう1戦するか」

「うん」

なんとか誤魔化せた。簪はそっと胸を撫で下ろす。

今日の丹陽からは違和感を覚えた。何処と問えば、答えられないが。

昨日同様の感じた焦れったい痛みが、また胸に。

 

 

一夏とシャルロットは、アリーナにてトーナメントに向けた教練に励んでいた。

鈴やセシリアとは違い、病気も怪我も無く快調。丹陽とは違い、専用機が与えられている2人は場所と気力が許す限りは特訓を継続していた。

日が暮れ、シャルロットも疲労の色を見せはじめたので、帰寮することに。

アリーナを出た所。ばったりと会ってしまった。

「ラウラっ!」

ラウラが居た。帰寮する生徒とは逆にアリーナに向かっている。一夏は距離を開けたまま、大声で呼び止めた

「何の用だ?」

ラウラも一夏達を認識したのか、かったるく応答する。

「なんでここに居るんだ」

「IS学園の生徒として、教練の為にアリーナに向かっている。そうは見えんか?」

一夏は黙ってラウラを睨めつけた。

「一夏…止めよう」

シャルルが腕を掴み、一夏を諭した。

「そうだなシャルル」

一夏は落ち着く。ここで乱闘騒ぎを起こせば、それこそ千冬に迷惑を掛ける。決着は正式な試合で付けるべきだ。

「用が無いなら呼び止めるな」

ラウラは一夏達の脇を抜け、アリーナに向かった。ラウラの姿が消えるまで、一夏はその背中に視線を送り続けた。

「一夏…あんまり怒っちゃだめだよ」

シャルルは不安を隠し切れずにいた。

「分かってるよ、シャルル」

一夏は決意を改めて固めた。

それからは部屋に帰り、シャルルと連携プレイの相談。それも終わり、後は明日の為に早めの就寝。

[一夏様。再びですが、夜分宜しいでしょうか?]

「なんだ白式。質問か?」

「はい。何故、一夏様はボーデヴィッヒ様に敵意を持つのでしょう」

今度はとんでも無いことを言い始めた。

「当たり前だろ、ラウラはセシリアと鈴、それに丹陽を痛めつけたんだ。許せるか」

[実技実習の延長と捉えられますが]

「あそこまでやって実習の延長ってありえないだろ」

[つまり程度の問題と]

「どういう意味だ?」

[私達もセシリア様、鈴様、そして泉様を倒して来ました。マクロな視点で見れば同等かと]

「俺とラウラは違う!」

一夏の突然の怒声にシャルロットが飛び上がった。

「どっどうしたの一夏?」

一夏は慌てた誤魔化す。

「ごっごめん、寝違えて手首ひねっちゃって。明日には影響無いから」

それならいいけど、と言い。シャルロットはまあ床に就いた。

[一夏様の機嫌を損ねる言動。お詫びします]

一夏は何も言わなかった。ただ白式が、何故、このような思考に至ったのかが理解出来ずにいた。

[白式はボーデヴィッヒ様に、共感しました。ですから、ボーデヴィッヒ様を擁護したのです。夜分、ここまでお付き合いありがとうございます。お休みなさい]

共感という単語を一夏は見過ごせなかった。

「白式?」

[現在睡眠中]

白式は寝ていた。ISの癖に。

 

 

日が暮れ、特訓を終えた生徒達でアリーナの出入り口が混雑し始めた。

丹陽はハンガーにて整備士と談話していた。プログラム言語が違う黒騎士のOSや技術を移植したビアンコは、一応は起動可能の状況に持ってくることが出来たらしい。しかしながらも、問題が発生した。

「え? 嘘でしょ? 規格合うのあるでしょ?」

「うん。本当だよ。無理矢理合わせようとしたけど無理だった」

電灯の下、忙しなく整備士達が働く中。丹陽は愕然としていた。何故なら、このままでは丸腰になるからだ。

「長柄武器は一応は使えるけど、鈍器としてなら。超跳は諦めて足折れる。あと補助運動器も骨格が保たないかも」

訂正。射撃しか取り柄がないのに、射撃武器が搭載不可と言われた。

「そうじゃなくて、なんでユニバーサル規格の射撃武器も使えないんだよ」

整備士がビアンコの腕を指差す。

「3本指だから」

「はぁ?」

確かにビアンコの指は、華奢な5本指から図太い3本指に変わっていた。

「どっかのメーカーの出したやつだろ。違うのか?」

「それがハンドメイドらしく」

ハンドメイド。つまり、あの短時間の間に作っていたのか。俺の要望通りに。

「ラファール使えば?」

至極真っ当な提言だった。正直、コア干渉も解決出来てない状態でビアンコを使用するなど、勝つ気がないと言われても仕方ない。

でも、人間賢くは生きられない。あいつは短期間でここまで仕上げてくれたんだ。

「いや、いいよ。このままで」

「えぇぇぇ……だってこの機体仕様書によれば、まともに……飛行型パワードスーツなのにあれだよ? いいの? 本当に?」

「いいんだ。タッグ戦だ、欠点は簪がどうにかしてくれる。それにだいたい好きじゃないんだよ。人型で飛ぶの」

丹陽は整備士に別れを告げ、帰った。簪のいる寮に。

帰る途中。携帯端末に着信が来た。

 

 

「…あれ…お姉ちゃん?」

真夜中。簪は自室で物音に反応して目を覚ました。

「あっ、起こしちゃった。ごめん簪ちゃん」

すると、姉の楯無がベッド脇で直立していた。この時間にもかかわらず、出掛けるようだ。

「どうしたの?」

「いや、ちょっと明日の為の準備があってね。すぐに終わるわ。だから簪ちゃんはそのまま寝てて」

そう言い残し、そそくさと外出した。

簪は疑問に思いながらも睡魔に勝てずに瞼を下ろした。

それからどれだけの時間が流れたのかわからないが。ノックがした。

睡眠を邪魔され、ムカムカしながらもベッドから這い出た。わざわざノックするのだから楯無では無い。あまり気の強い方ではない簪がドアノブを回り、ノックの主を文句を言おうとした。

ドアノブを回した途端、向こうからドアが開けられた。そして半端強引に入室してきた人物達に簪は声を張った。

「丹陽……お姉ちゃん!」

「シッ。疲れて寝てるんだ静かに」

丹陽は簪を抱えたまま、人差し指を口元で立てた。

「悪い、こんな感じで強引に入室するのは……いろいろと男性としてアウトだけど。会長のベッドはどっち?」

簪の脇を抜け、丹陽は部屋の奥に進んだ。

「窓側だけど…。どうして丹陽がお姉ちゃんを抱えてるの?確かに、明日の……もう今日か。トーナメントの準備があるって出て行ったけど」

「ああそれなんだけど。突然手を貸せって、他の子には迷惑をかけられないからってね。全く迷惑だよね。それで作業終わって疲れてそのまま居眠り。よいしょっと」

楯無をベットに寝かせつけた。

「あと会長に。重いって伝言お願い」

「丹陽、それ女の子に言っちゃいけないと思うよ」

丹陽は言葉通りなのか、強張った筋肉をほぐす為のストレッチをした。それを簪はジト目で見つめる。

丹陽は歯に衣着せぬ物言いが多い。いや、精神逆撫でするような物言いだろ。本当に治して欲しい。

「そうそう。ごめん、起こして」

でも、率直は性格はこのままで。

「ううん、私こそお姉ちゃんをありがとう。お姉ちゃんには伝えておく」

「重いってね」

「一言多いよ」

「そうだな。会長を目覚めさせない内に退散するよ。じゃあ」

丹陽はドアを開き、灯のない暗い廊下に入っていく。意図せずに丹陽を呼び止めていた。

「あっ、丹陽」

丹陽が振り返る。

「ん?」

部屋は暗く廊下の電灯の逆光で丹陽の表情が見えない。

「あっ明日…じゃなかった。今日のタッグトーナメント頑張ろう。優勝み出来なくても、1勝くらいは…」

丹陽が声を殺して笑った。

「言ったな。俺がまだ模擬戦で0勝のこと弄るなんて」

丹陽はタイムリミットの制約のせいで滅多に模擬戦をしない。今の所、セシリア、一夏、簪の3人としか模擬戦をしていない。つまり全敗。

「あっごめん…」

「いいよ。その代わり、今日で俺の全敗記録にピリオドを打とう」

丹陽が完全に部屋から出て行った。

「頼りにしてる」

丹陽の言葉に裏は感じなかった。嘘はないだろう。

だけど、胸騒ぎがする。

そもそも、この時間にいきなりトーナメントの準備とは。そして、何故普段は声を掛けられない丹陽にお呼びがかかったのだ?

簪はうとうとしながらも寝付けなかった。それも気の遠くなるような長い時間。

不安が簪の起き上がらせた。簪は迷わずに部屋を出て、丹陽の元に向かおうとした。

扉を開け、廊下に出たところ。簪は異変に気付く。

そこは廊下では無かった。電灯で照らされた廊下ではなく、暗く鬱蒼と生い茂った木々や草花が眼前に広がっていた。慌てて振り返り、たった今潜った扉を探した。が、消えていた。前に向き直すと、木々は無くなっている。変わりに大きな大穴が出来ていた。穴のサイズは丸々1人が入る深さと、半径は数メートルといったところ。穴は上から強い圧力を受けて開けられたというよりは掘り返されて出来たのか、断面には整った地層や綺麗な断面を見せる木の根が確認出来た。

その穴の中心にそれは居た。月明かりだけが頼りな上、それは頭からつま先まで黒いためはっきりと全容は掴めなかったが、人型なのは分かる。

ふっと気がつくとそれは目の前いた。いや、自分が目の前に移動していた。

間近に迫り、それの異形さがまざまざと認識した。

それは大きく2メートルはゆうに超えていて、肩幅も広くがっしりとした体躯。体色はただひたすらに黒いが、皮膚は無く筋組織が剥き出しだった。腕は2対あり。外側の太い腕は、長さもそれなりで地面に掌が着いている。内側の腕は、人間と同じ大きさで、それ故に相対的に細く感じる。足は外側の腕と比べれば短いが、爪先から先が地面埋まり、隠れていた。そして頭部は、(頭部と呼称して良いのか?)鰻のように細長く、先端には目や口などはなく、のっぺらぼうだった。

簪は言葉を失い悲鳴も上げられず、じっとそれに目が釘付けになった。目を背けた瞬間になにが起こるかを怖れて。

それが動いた。爪を立て、頭部の先端を引っ掻く。先端は横一文字に切り裂かれ、傷口からどくどくと黒い液体が溢れ出ていた。傷口はどんどん裂かれ広がる。傷が広がり、先端が2つに割れたころ、傷口から牙が生える。それも無数に。舌はないが、傷口は牙を生やし口に変異した。口からは未だに黒い体液が溢れ出ている。黒い体液は滴り落ちることはなく、首をつたい、ある時をもって筋組織と同化し消えた。それはまだ物足りないのか、背中を掻き毟る。爪を備えた手により、無数にの引っ掻き傷を背中に刻み込まれた。傷からはまたどくどくと黒い液体が溢れ出てくる。今度はその傷口から歯茎が現れる。傷は大小様々だか、例外はない。歯は白く歯茎は人間のそれで、今は全て歯を食いしばっている。それはもう充分なのか、背中に掻き毟るのを止めた。その背中には無数の口が乱雑している。その背中の口がそれぞれ開口し始めた。吸気している。それとは反対に、頭部の口はきっちりと閉じられた。肩は盛り上がり、首は所々で膨張と収縮を繰り返していた。体内に大量の空気を溜めているようだ。

頭部が上空に向けられる。自分を抱きしめるように内側の腕を組み、閉じられた口が開く。同時に充血した瞳が開眼する。

『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああああああああ」

簪は絶叫しながら跳ね起きる。全身の汗腺という汗腺から脂汗が染み出させ、ぜいぜいと息を切らしていた。

恐る恐る辺りを見渡すと、自室だった。カーテンの隙間から、か細い光が漏れている。夜明けらしい。

「夢…?」

簪の隣、楯無がもぞもぞと目を擦りながら起きた。

「どうしたの?またあの人の夢でも………ってぇ!」

挙動不審に辺り見渡し、開口一番に。

「丹陽はどこ!」

直後に楯無の懐の携帯端末からブザーが鳴り響く。

地震速報に似たそれは、簪の動悸を跳ね上げた

「こんな時に…! ごめん私行くね」

唖然としている簪を置いて、楯無は速足で退室した。

しばらくして我に返った簪は丹陽に電話を掛けた。 出ない。自室のドアノブに手を掛けた。そこで、夢の光景が蘇る。未だにコールが続く。瞳を閉じ、簪は扉を開いた。ゆっくりと瞳を開けると、そこは何時も目にする廊下だった。どうやら現実らしい。その真実が尚のこと、簪を不安を煽る。コールが続く間、簪は丹陽の部屋を目指して走っていた。部屋に着く頃には留守番センターに繋がっていた。もう一度コール。するとドアの向こうから着信音。夢中でドアを叩いた。しかし、ドアを叩く音と着信音しか無い。ドアノブを捻る。鍵は開いており、入室できた。部屋には未だ着信音を鳴らす携帯端末が無造作にベットに置いてあった。その持ち主が着信音に反応することは無いだろう。

持ち主の丹陽がいない。

 

 

行事が行われる度に、当然裏方の用務員は激務にさらされる。 今回も例年通り、疲労の色が用務員寮の外壁にまで醸し出していた。誰1人として追い打ちが来るとは想像していなかった。

夜明け前の静寂の中、寮に非常事態を報せるブザーが鳴り響いた。

 

 

「本当に大丈夫か、IS学園に侵入するなんて?」

「賊とは人聞きが悪い。その他多くに漏れず偵察に行くのだ。偵察に」

「暇つぶしに、な」

「事態を坂までは持ってきた。後はどう転がるか」

一時停車中。林太郎は車のハンドルに寄りかかり、不機嫌そうにしていた。

今回の任務であるIS学園への送迎が原因の1つだ。

「なんで悪の秘密結社が白昼堂々となんてさぁ…」

「ふふふ」

後部座席のシュランクがくすぐったげに笑った。

シュランクは黒いスーツ姿で、1人で後部座席を占めていた。

「悪の秘密結社かぁ。そうだな」

「はぁ…ところでさあ、このままじゃあ遅刻するんだけど。車から降りて1人だけでも向かった方がいいじゃないか?」

林太郎を苛立たせたもう1つの要因が、今林太郎達が捕まっている渋滞だ。

都会の街道ならある程度は覚悟していたが、もうすでに数時間は動いていない。幾ら何でも長過ぎる。

「停電が起こったらしいな。心配するな。渋滞を考慮してIS学園からはトーナメントの開催を遅れさせるとの通達が出てる」

慌てて携帯端末からネットに繋ぎ、IS学園の公式サイトを閲覧した。

「なんだよ。なら早く言えよ。焦ってたのは俺だけかよ」

そう言って林太郎は大きく伸びをしてから背もたれに寄りかかった。もう不機嫌さはどこにも感じられない。

 

 

今では滅多にしない背広姿に轡木はなっていた。

現役時代はよく着用していたが、出処してからは着流しばかりで、ここに勤めてからは作業着ばかり。

だが、作業着姿で来賓の対応するのは相応しくはない。だからタンスの奥にしまわれ滅多に使われることのない背広に袖を通した。

「これで一息つけるか」

最後の来賓を貴賓室への案内終え、廊下の休憩所にて腰を下ろしていた。

早朝、政府から緊急出撃要請が発令された。しかしその数分後、待機を要請された。あらゆる事態を想定しての迎撃態勢を整えよ、と。そのため、疲労で熟睡中の用務員を総動員するはめになった。そればかりか、外敵が現れぬまま数時間が経ち、そこでやっと警戒態勢を解除を政府が認めてくれた。本土側でどのような事態が起きていたか、一切の情報の通達はなく。追い打ちを掛けるように新たな問題次々と起きていた。

正直、停電が起きなければトーナメントの準備が間に合わなかった。

天野、カイ、丹陽、インフィニットストラトス、亡国機構、 束博士。そしてエカーボン消失。これらの単語が頭の中を渦巻くが見事に溶解して合わさってくれない。裏舞台で大きな畝りを感じる。だがそれが何なのかまるでわからない。

「やっぱ趣味悪いよ」

「はぁ? めっちゃ美人だろ」

「確かに美人だけどさぁ。なんつうか、作り物」

「整形してるって言うのか?」

「そうじゃなくて……」

四角の向こうから用務員の気配がしたが、姿を見せる前に突然止まった。

「あっ! 失礼」

「いやいいんだ。影が人より薄いもんでね。ところで、待合室はどこかね?どうにも土地勘も無くて」

来賓が道に迷っていたらしい。轡木は失礼がないよう襟本を正し立ち上がった。

その時、懐の携帯電話が振動した。心当たりがある。緊急出撃要請があった現場に用務員を派遣していた。その連絡だろう。

電話に出るかどうかで迷っていた時、来賓が横切った。

轡木は頭を下げて一礼をした。老けた来賓の男は、白いハットを持ち上げ轡木に応えた。そしてまるで轡木の事情を知っているかのように歩を速めた。

轡木は何度もコールを繰り返す電話にやっと出た。

「もしもし」

『もしもし、轡木さん』

「ああ、どうだった」

『やっぱり、IS同士の戦闘があったようですね。幸い山奥なんで、人的被害はほとんどはないですが。唯一の近隣住民に話を聞くと、日の出前くらいに、騒音が聞こえたと思ったら、カーテンで締め切った部屋が明るくなるくらいの光に照らされて。そして…』

「そして?」

『この世のものとは考えたくないような咆哮が鼓膜を揺さぶったそうです。屋内にもかかわらず。その後は何度も地鳴りが響いて、この住人。ビビって布団に隠れて震えていたらしく、俺たちがチャイムが鳴らすときには寝落ちしたらいしです。なので警察も呼んでないそうですが。現場には無人ISの残骸が恐らく4機。恐らくなのは、ISコアが4つ見つかったからです。フレームの方は原型を留めてなくて。噛み砕いて吐き出したみたいで』

「了解した。そろそろ警察も動く、ISコアと可能な限りISのフレームを回収して撤収してくれ」

『それと地図って何処の役所が作ってるんですか?』

「国土地理院だが…どうした?」

『呼んだ方がいいかもしれませんね。それとあと身元確認が必要なんですが、恐らく例の人物の遺体が。頭無しで見つかりました』

「……そうか、回収してくれ」

『これ……丹陽が?』

「さあな。確かめようがない。もう本人は何処にも居らんからな」

『確かに。では切ります』

電話をしまい、時間を確認した。もうすぐ第一回戦だ。

轡木はため息をついた。時間切れだ。丹陽。お前はどれだけ引っ搔き回せば気がすむんだ。

今回のトーナメント、非専用機持ちへの配慮から序盤から専用機持ち同士が当たるようになっていた。その結果、トーナメントの一回の組み合わせは。篠ノ之箒、ラウラ ボーデヴィッヒのペア対、更識簪、泉丹陽のペアだった。丹陽は行方不明のため更識にペアの変更を勧めたが、本人は頑なにそれを拒絶した。必ず丹陽は来ると。

しかし、今更きてももう時間切れだ。

また電話が着信した。宛名は電話帳には登録されてなく、番号だけが表示されていた。

通話ボタン押した轡木は次の瞬間、驚きのあまり顎が外れていた。

 

 

出番はまだ先なので、一夏とシャルルの2人は観客席にて出番まで観客することにしていた。その隣に鈴とセシリアが並ぶ。

白式は昨日のことが夢のことのように、何事も無かったかのように一夏に接していた。一夏もそれに合わせた。

スタンドは隣の話し声が否応無しに耳に入るほどに窮屈していた。遠くの特別観覧席が嫉ましく思える。

「お客さん、随分と多いな」

遠くに見える特別観覧席は、スタンドの上部に設けられていた。一面ガラス張りの特別観覧席は、幾分かのソファが間隔を置かれて設置しており。ソファは一席を除き全て埋まっていた。

「見知った顔があるね。3年にはスカウト、2年には1年間の成果確認。IS関連の企業の重役や国の役人がそれぞれ来訪してるみたいだね」

隣のシャルロットが応えた。

一夏は、深い意味もなく特別観覧席の面々を端から眺めてみた。

途中で視線が止まった。理由は格好が1人浮いていたからだ。

その老人は純白のスーツを纏っていた。周りが茶や黒の地味な色合いなのだから、余計に目立っていた。

だが、目が止まったのはそれだけではない気がした。

純白の老人が何か反応したかのように、下げた首がゆっくりと動き始めた。それに連れ目線が徐々に上がりはじめた。もう数cmで一夏の目が合う。

「結局来なかったのね……」

鈴の失意に満ちた嘆きに、呼び醒まされた。

アリーナを見渡すと、試合開始直前だった。老人はそれに反応したのだろう。

専用機持ちばかりを優位にしない為に、専用機持ち同士が早くから対戦するようにトーナメントは組まれていた。一夏とシャルロットのペアは、一夏の成績と両者専用機持ちであることを考慮されてか、第1シード枠だった。第1試合の勝者と当たることになる。

アリーナのスクリーンに第1試合の対戦カードが表示されていた。 抽選で選ばれたラウラと箒のタッグ対、簪と丹陽のタッグ。アリーナの砂地の片翼には、打鉄を装備した箒とシュヴァルツェア レーゲンを装備したラウラが。もう片翼には打鉄弍式を装備した簪だけが。丹陽の姿形は無かった。

数十分前。一夏は控え室で、トーナメントの組み合わせを確認していた。箒はタッグが居らず、またタッグが決まっていない生徒は抽選でタッグが決められると聴いていたが。箒がよりにもよってラウラとタッグになったと知った時には驚いた。さらには1回戦の組み合わせを見てさらに驚いた。丹陽が行方不明だと聞いてさらにさらに驚いた。

手分けして探そうとクラスメイトらに提案したのだが、もうすでに教員が捜索活動を開始しているらしい。

そして、丹陽不在のまま試合は開始してしまった。

「丹陽……馬鹿野郎が……」

 

 

控え室で簪は1人佇んでいた。部屋は簪だけしかいない。他の生徒は、試合に臨む前準備としてピットや格納庫でウォーミングアップを始めている。

簪は早朝から続けている自問自答を繰り返していた。

丹陽は何処へ消えたのか? 何故消えたのか? 何1つ分からなかった。

答えの出ない自問自答を繰り返すうちに、自問が変わっていった。

丹陽はそもそも試合に出るつもりなんて無かったのでわないか。

致命的な欠陥を抱えた飛行型パワードスーツに、難易度が無茶苦茶設定のシュミレーター。連携訓練も十分とは言えない。トーナメント制では絶望的なコア干渉。

疑念や不安が簪の中で渦巻く。

何の前触れもなく自動ドアがスライドした。

「丹陽!」

簪は相手を見ずにそう叫んだ。

「ご…ごめん」

しかし扉の前に居たのは丹陽ではなく、布仏だった。布仏は普段は見せない困惑していた。

「私こそごめん」

簪は居た堪れなくなったのと布仏の意図を察して立ち上がった。

「もう試合なのね、本音」

「うん」

簪はずるずると足を引きずる様にピットに向かう。

「ねぇ、かんちゃん」

布仏が急に口を開いた。

「なに?」

簪の口調はどこかぶっきら棒だ。

「ニャンニャンを信じてあげて」

ニャンニャンとは丹陽のことだ。

「私も信じたいけど……でも……」

丹陽は今何処にもいない。なにも言わずに消えてしまった。

試合前に何度もペアの交代を勧められた。それが事の重大性を物語ってた。

「ニャンニャンって信頼ないね」

「丹陽に問題が有るんじゃなくて」

何故かここで反論してしまった。

「近くに居たかんちゃんは信じてるのに、周りは誰も信じてないなんて」

「え?」

「だって、かんちゃんはペアの交代を断ってるってことは信じてるんでしょう。周りは不安を煽ってばかりで酷いよね」

さっきの反論も思えば、私が丹陽を信じているからだ。

「信じたいならさ最後まで信じてあげて」

布仏がいつもどおりの柔らかい笑顔で笑いかけた。

「きっと今頃、上げ底靴を新調してるところ」

簪は吹き出してしまった。

「うそ、本音知ってるの?丹陽がいつもシークレットブーツを履いてること」

「口に出さないだけで、結構な人数気付いてるよ」

可哀想に。

「本人には言っちゃダメだからね。私以外には知られてないと思ってるから」

「馬鹿だね〜」

「馬鹿だよね〜」

かれこれしいてる間にピットに着いた。

「ありがとうね、本音」

「いいってことよ。かんちゃん」

簪と別れた布仏は、途端に表情を曇らせた。

無責任な事口走ってしまった。丹陽は間違いなく来ないのに。私はただ悲しむ彼女を見たくないがために。

 

 

布仏はハンガー入り口に来ていた。 簪を呼ぶ前に、来るようにと通知が来ていた。

中の作業音が外に漏れない様に、防音措置が施されたスライドドアが開く。

「「「うぉぉぉぉぉぉ!!」」」

「ひぃっ!」

頭蓋骨を震わす雄叫びに布仏は怯えて身が縮こまる。

ハンガー内は、整備士が所狭しと詰め寄っていて。皆が拳を振り上げ「スイーツ! スイーツ!」と叫んでいた。

群衆の真ん中、扇動者とおぼしき班長が、操作盤を足がかりに大仰な手振りと共に演説を繰り広げていた。

「皆の者、ついに約束の時は来た! 苦節数ヶ月。耐えに耐えた。苦しかっただろう。私も皆も同じ気持ち。だからこそ……だからこそ! 」

「もう耐えなくていいの?」

「ええ!」

「お財布の心配は?」

「保証しょう………丹陽が………」

喝采が上がる。

「本当に、本当にいいのね!」

「ええ、だがその前にほんの少しだけ働いてもらう。簡単なことだ。ビアンコをアサルトポットに入れて、飛鯨に乗せる。ただそれだけよ。それだけ」

班長は無駄にゆっくりとした動作で人差し指を伸ばした。

「ゆけぇぇぇ!」

班長の合図を受け、群衆は直感で割り振りを決め作業を開始した。直感にもかかわらず、口を開かずに見事な連携だ。みるみるうちに、主なきビアンコはポットに包まれる。そしてワンボーに運ばれていった。

布仏はそれをただ唖然と見ていた。

「なにボケーとしてるのよ」

「あっ先輩」

「まだビアンコの最終調整があるから、飛鯨まで付いて来て」

手際良く作業している中、立ちんぼの布仏は目立ったのか、班長が話しかけた。

「あの、なにが起きてるんですか」

「見ての通りよ」

「これからなにが起きてるんですか?」

「すばらしいことだ」

「木星が恒星に……」

「古い!」

「でもダブルオーでも……」

「それも古い!」




続々オリキャラが増えてく……。
あとオリ主の相方の機体を先行登場。多分、出番は当分先になる。
簪の夢に出てきた理屈は考えてない。

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