インフィニットストラトス 〜IF Ghost〜 作:地雷上等兵
織斑一夏は困っていた。今、教室で前の席に座っている男に対して。
別に一人じめできないとか、ライバルが増えたとかではなく、初めて入学式で見かけたときは、自分の居場所を見つけたみたいで嬉しかった。
だからこそ、困っていたのだ。
今の今まで一言も話せずにいたのだ。
見た目こそ、小柄で中性顏なのだが、入学式から今の今まで機嫌が悪いようで近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。
だが、そんな雰囲気をなんとも思わないものが現れた。
「ちょっと、よろしくて?」
話しかけたのは、金髪蒼眼の女性で、いかにもお嬢様という感じだった。
しかし、そんな女性に話しかけられたにもかかわらず、男は不機嫌だった。
「誰だ?」
「私のことも知らないなんて、この極東の地はどこまで田舎なんでしょう?」
「あんたの知名度がそれまでってことだろ」
「なんですって!」
女性は、怒り胸に手をあてながら続ける。
「イギリス代表候補生のセシリア・オルコットですわ」
「ああ、代表候補生か。」
「まあ、代表候補生を知っているだけで求第点としてあげましょう」
セシリアは、男の発言を聞き、あからさまに機嫌を良くした。
「代表候補生ってあれだろ、金のかかるモルモット。でも、お前を見てわかったよ。うるさいモルモットだって」
「なんですって!」
二度目の怒り状態に入ったセシリア。
「私は、唯一教官を倒しました。そんな私をモルモット呼ばわりするなんて」
「それなら俺も倒したぞ」
ついつい話しを聞いていた一夏が、思わず喋ってしまった。同時に二人が一夏の方向いた。
「そんなはずありませんわ。教官を倒したのは、私だけと聞きました」
セシリアがそう言いながら一夏に、歩み寄っていく。怒りの矛先を向けらそうになった、一夏は思わずギョとする。
「女性の中だけではってことだろ。そんな怒るなよ」
「そういうあなたは、倒したましたの?」
「いや」
あからさまに機嫌を良くしたセシリア。
「まあ、仕方ありませんわ。教官を倒せるのは、私のような代表候補生だけですわ。偶然もあるみたいですが」
そう言いながら、一瞬一夏のことを睨んだ。
「その代表候補生様に質問があるのですが?」
「なんでしょう?答えあげますわ」
一夏はやな予感をしていた。さっきから飴と鞭を彼は使っていた。だから次は鞭だと。
「私は、ここのの試験のとき教官と戦おうと思っていたのですが。そしたら織斑先生が"お前の実力なら戦う必要はない"とおっしゃったのですが、これはどうゆう意味なのでしょうか?教えてくださいオルコット先生」
周りを含めセシリアが一瞬黙った。
ISの世界大会総合優勝を果たし、ブリュンヒルデと呼ばれたあの織斑千冬に実力を認められている。その事実が周りを唖然とさせた。
「嘘ですわ。そんの嘘信じると思って。さあ正直に言いなさい。教官に負けたと」
セシリアが取り乱し、捲し立てるように言った。
男は言った。
「授業始まるぞ。席に戻れ。」
慌て時計を見たセシリアは、男に向き直り睨みつけた。そしてすぐに、顔を背け自分の席に戻っていった。もちろん、一夏のことも睨みつけた。
一夏はセシリアが自分に背を向けたのを確認してから、長いため息をついた。
「バカだなお前。黙って見てればいいものを」
男は突然、一夏に話しかけた。しかし一夏は、突然のことでろくな返事ができず、たじろいでしまう。
そんな一夏に構わず男は続ける。
「でも助かった。ありがとう。泉 丹陽(タニャン)だ、よろしく」
丹陽は、そう言いながら、付けていた手袋を外し握手を求めた。
「俺は、織斑一夏だ。こちらこそよろしく。」
なんで手袋なんか付けていたんだろ?でも口は悪いけどいい奴みたいだ。そう思いながら一夏は握手に応じた。
チャイムが鳴り授業が始まった。
早速、一人落とした一夏さん。第一級フラグ建設士はだてじゃありませんね。
誤字脱字表現ミス、ご指摘お願いします。