インフィニットストラトス 〜IF Ghost〜 作:地雷上等兵
それとエカーボンのモデルは各自の想像で。
トラックが赤い荒野を走っていた。木々は疎らでちらほらと野生動物が見える。空気は乾燥していて、照りつける太陽が更に空気を干上がらせていた。
トラックは中型の帆付きで、男性のが2人運転席に乗っていた。荷台部分の帆は前後に開いており、運転席から後ろの窓を通して中が見えた。荷台の左右には木箱が有りそれを椅子代わりに使用出来た。
荷台には男が3人女が1人いる。1人の男性は30代前半の白人で、木箱に座り瞳を閉じていて、熟睡しているのかただ目を閉じているのかわからず、トラックに合わせ揺れるだけであった。別の男性は20代前半の黒人で床に寝そべっていて同じく瞳を閉じていたが時折寝返りを打っては、暑い暑いとぼやいていた。もう1人の男性は30代後半の東洋系で木箱に座り雑誌を読んでいるが、ページの送り速度が早く頭に入っているか怪しいものだった。そしてその男の太ももを枕に唯一の女性が横になっていた。女性は20代後半の白人であり、体つきは女性らしい丸みがあったものの至る所の筋肉が隆起していた。全員が全員砂埃を被っていて、浅黒く焼けていた。そして全員兵隊らしかった。
全員タクティカルベストをはじめとする戦闘服を着用しており、近くにバックパックがあり。そして小銃が置いてあった。だがバックパックも小銃も1つだけ多かった。
「たくなんで俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ」
トラックの助手席に座っている男がそう言った。
「仕事なんだ文句言うな」
トラックの運転手が言った。
「でも彼奴らもいるなんて。絶対今回は何か起こる、それも良くないことが」
助手席の男は迫る様に言った後、直ぐに思い詰めた様な表情になった。
「彼奴らが悪いわけじゃ無いだろ。悪いのは低脳な黒んぼ達だ。それに彼奴らと一緒に居て帰ってきた奴だっていただろ」
「そうだけど。でも今回は絶対に何か起こる。周りをみてくださいよ」
「そうだな。俺も同意見だ」
助手席の男は運転手が同意したことに喜んだのか、あからさまに機嫌が良くなった。
「やっぱりそうだよな。やっぱり彼奴らが悪いんだ」
「お前は俺はそんなこと言って無いぞ。いい加減その辺にしておけ」
「なんでだ。俺は事実を言ってるだけだ。それとも何か、彼奴らをあんた庇ってるのか?そんな必要は無い。彼奴ら死神共にー」
助手席の男が死神と言った瞬間、男がいた場所の屋根が上から強く叩かれた。
「ひぃ!」
「丸聞こえだったらしいな」
運転手は怯える男に向かって続ける。
「死神に睨まれちゃあお前の運命は決まったな」
「やめてくれ、縁起でもない」
「先にジンクスを気にしたのはお前だろ?まあ骨は拾ってやるよ」
運転手はそう言い、ちらりと助手席を見た。男の顔は引きつっていて、顔を見られたことを知るとすぐに窓の外を見た。それ以降助手席の男は何も話さなかった。
実は運転手も何か起こると思っていた。死神と一緒にいるからでは無い。
運転手はミラーなどを使い周りを見た。
自分達のトラックの他に3両、中型トラックがあり中には武装した男達がいた。その人数は優に40は超えている。他にも強化装甲が施されたハンヴィーが4両おり。それはガトリングを載せていて、市街地での奇襲に備えて仰角取るためやや高めに付けてあった。装輪装甲車が2両いて砲塔に機関砲を2門搭載していた。さらに格子状のゲージ装甲を備えていて、機関砲が対空兵器だけでは無い事を示していた。
それらとは別に小型のトラックがいた。武装はしていた無かったが、重装甲を施されており防御力だけなら装輪装甲車並みだった。今回の任務は恐らくはこの小型のトラック2両の護衛である。
これらの車両がハンヴィー2両、トラック2両、装甲車、重装トラック2両、装甲車、トラック2両、ハンヴィー2両の順で2列に並んで走行していた。
「一体何が有るのやら」
運転手が誰にも聞こえ無いほど小さく呟いた。だがそれは本心では無かった。気にならないといえば嘘だが、この業界長く生きるには最低必要限以上を知るべきでは無いから。
「暑い。暑い」
トラックの荷台。床に寝ていた男がそう嘆いていた。
「うるさいぞシェフ」
雑誌を読んでいた男が言った。
シェフと呼ばれた男は上半身を起こした。
「でも暑く無いんですか?おやっさん」
おやっさんと呼ばれた男は、丁度読み終わったのかそれとも元々読んで無かったのか雑誌を閉じた。
「もう慣れたよ、お前以外はな」
「そんなこと無いでしょ。ねぇアルジャン暑いでしょ?」
シェフは座っている男の方を向いた。アルジャンと呼ばれた男は眉1つ動かさない。
「ねぇカーニャ暑いでしょ?」
シェフはおやっさんの太ももを枕にしている女の方を見た。カーニャと呼ばれた女は黙って中指を突き立てた。
「チッ、いいですよどうせ俺は貧弱ですよ」
シェフは拗ねて横になろうとした。
「シェフ、暑いならこっちこいよ。風が当たって涼しいぞ」
何処からとも無く声がした。声の主は男性でまだ若く10代前半だと思われる。
「いいよチビ助。危ないし日差しが辛い」
シェフは横になった。
チビ助と呼ばれた声の主は荷台でも運転席でも無く、トラックのボディーの上にいた。ケープを羽織り照りつける日差しから身を守り、帆の骨組みロープを括り付けその端を身体に結び落下を防いでいた。
チビ助は周りを景色を目に焼き付ける様にじっと見ていた。そして時折空を眺めていた。空にはハゲタカが餌を探して飛んでいた。いやもう見つけていて餌に成るのを待っているのかもしれない。ハゲタカの更に上空にチビ助は見た。無人機が4機飛んでいる。プロペラ機なのだが、チビ助が前に見た奴よりも音がずっと静かだった。
ここはエカーボン。アフリカの西部に位置しており、第二次世界大戦後植民地を買い取る形でとある民族達によって独立した国。アフリカの西沿岸部に細長く存在し豊富な地下資源や一大港町などで発展し、消滅した国。そこにチビ助と呼ばれ、いずれ丹陽と呼ばれIS学園に入学する男は間違いなくそこにいた。
「しっかし変じゃありません、今回の仕事?」
シェフが5分と経たず話し出した。
「何が変だって言うんだ?装甲車も要人の警護に用いられたりするだろう」
おやっさんがまた雑誌に目を通し始めた。
「そうなんですけど。でも俺たちがいる時点で変じゃありませんか?」
「あまり世間様に言えないようなものを護送してるんだろうな」
「それだけじゃあ有りませんよ。実は俺見ちゃったんですよ」
「何をだ?」
シェフの言葉におやっさんが初めて顔を上げシェフを見た。シェフも横たわったままおやっさんを見た。
「その前にチビ助。何か変わった物を見なかったか?」
聞こえなくてもおかしくは無い音量だったがチビ助は返事をした。
「爆装した無人機が4機。さっきから上空を飛んでる。音でわからなかったのは、形を見る限りだと新型みたいだ」
「ビンゴ!やっぱりだ!」
シェフは嬉しそうに言った。
「確かに無人機が4機ってのは物騒だな。しかもチビ助が知らない新型」
おやっさんはそう言った。しかし興味が失せたのか雑誌をまた見始めた。
「ちょっとおやっさん!話はこれからなんだから!実はー」
「知ってる。装甲トラックの中にIS操縦者がいるんだろ。俺も見た。航空宇宙軍の制服を着た、華奢な女がトラックに乗り込のをさ」
エカーボンではISは戦闘機の延長の存在として空軍の管轄下で運用されている。他の国では陸軍の管轄だったりする。理由は単純でISを持っている方が予算を多く貰えるので一時期は世界中の軍隊が国の壁を超え、空軍は空軍同士で海軍は海軍同士で陸軍は陸軍同士で手を取り合い、ISの所属を主張し合っていた。結局は国ごとに違う様になった。
「おいあんた!それは本当か?」
助手席の男が突然話に割り込んできた。しかし頭をはじめ上半身はトラックの左方に向けている。
「ああ本当だ」
おやっさんは特に何も気にせずに答えた。
「どっちのトラックに?」
「こっちから見て右側のトラックに。なんでそんなこと聞くんだ?」
「サインが欲しくてねえ」
結局。助手席の男は顔を1度も向けなかった。
「話を続けましょう。でもISを軍事利用って禁止されてませんでした。ばれなきゃいんですかね」
シェフが言った。
「知ってるか?ISは軍事利用可能になる状況があるんだ」
「なんすかそれ?」
「テロリストがISを使用した場合に又は、敵対勢力がISを所有している可能性が有る場合の時。ISを使用しての防戦を許可するってなあ」
「フムン」
シェフが理由したのかしてないのか不明な返事をした。
「理解してるか?」
「わかってますって」
シェフはにこりと笑って続けた。
「要するに、戦争とかした時に諜報機関がもっともらしいこと言ってISが有るって事実を作って本国を守る為の緩衝地帯を作る為の防戦にISを使う為の権限でしょ。もしくは敵対勢力をテロリストとして扱いISを使用したりする為のもんでしょ。後謎の地下組織がISのテロ活動に使用するかもしれないから防戦の為にISの研究が正しいって証明してるってことですよね?」
酷く皮肉めいた言い方だが、おやっさんがこの条約の一文に対する感想と大体同じだった。このような事はISに限ったことでは無いが。
シェフは理解はしているが深読みし過ぎている。おやっさんはそう思った。恐らくシェフは相手は特殊部隊かなんかだと思っているだろうが、今回のは単純にISが相手になるだろうとおやっさんは予想していた。理由は歩兵だけでは、例えISを抜きにしたってこの戦力に勝てないからである。先ず対人に特化したであろう装甲車が2両。正面から戦うのでは分が悪すぎる。この先にゴーストタウンが有るとはいえそ、奇襲を仕掛けるのは上空から監視している無人機が居るので不可能に近い。しかも近くに空軍基地が有り、10分ぐらいで航空機が飛んでくる。つまりは10分以内で無人機から隠れられら程の少数でこれだけの戦力を殲滅することが出来ること兵器、ISが相手に居る可能性が有るということである。
「貧乏くじは何時も俺たち」
おやっさんは1人そう嘆いた。
「大丈夫だよおやっさん」
話に入って来てはいなかったチビ助が突然おやっさんに言った。
「この5人が力を合わせればどんな困難も乗り越えられる、でしょ」
チビ助の言葉にシェフにカーニャ、アルジャンは吹き出した。おやっさんは雑誌を顔に被せ腕を組んだ。
「そう…フフッ…チビ助。俺もそう思うぞフフッ。なあおやっさん」
初めてアルジャンが喋った。
「いいぞチビ助!よく言った」
今度はシェフ。
「おやっさん、ああ言ってるよ。なんか言ってやりなさいよ」
カーニャが仰向けになり、下からおやっさんの顔を見上げながら言った。口元はニヤニヤが止まらない。
「zzz」
おやっさんがわざとらしい寝息を立てた。
さっきのチビ助の台詞。最初に言ったのは実はおやっさんで、この5人が初めて仕事を終えた時に柄にも無くそう言った。その結果3人は笑い、1人は感銘を受け事有る毎にそう言うのであった。本気で言って居るので注意出来ず、おやっさんも本気でそう思っているのでどうすればいいのかと困っていた。実は残りの3人も満更でもないのだが。
おやっさんはむずかゆい気持ちをページとページの間に挟み誰にも悟られまいとした。手遅れだろうが。
「やっと来たか!」
赤い荒野の真ん中。女性が1人立っていた。カーゴパンツにTシャツ姿でマントを羽織っている。
衛星電話を取り出し何処かに連絡を入れた。
「スコール聞こえてるか」
『ええ聞こえてるわよ』
向こうからも女性の声がする。
スコールと呼ばれた女性が言った。
『オータム、ターゲットが来たの?』
「ああそうだ」
オータムと呼ばれた女性は返事をした。
『じゃあ予定通りに。油断禁物よ』
スコールが通信を切ろうとした。
「待て切るな、スコール」
『なにかしら?』
オータムは周りを見渡した。鬱陶しく照りつける太陽。ただ広いだけの大地。オータムの不快係数が上昇するばかりの所だった。
「俺はこんな所で何日も待っされたんだぞ。この落とし前はどうつけてくれる?」
仲が悪いとしか思えない言い方だが、実は逆だったりする。
『何がいい?』
「1日俺の言うことを聞くってのは?」
電話の向こうから笑い声が聞こえた。
『ええいいわよ』
「約束だからな」
オータムは電話を切ると、目標を見た。
「前日祭だ。派手な花火上げてやる!」
目標はチビ助達が護衛する、重装トラック。
オリキャラの数を数えてみましたが、かなりの人数になってしまいました。しかもエカーボン関連に至っては原作キャラ2、3人しか関わりがありませんがご了承してください。
誤字脱字、表情ミス、誤字脱字お願いします。