インフィニットストラトス 〜IF Ghost〜 作:地雷上等兵
次も投稿が遅れることはありますが、一応最後までやるつもりです
クラス対抗戦の前日。
いつも通りの一夏は丹陽の様子が気になっていた。何か思い詰めてる様子だった。午前は何かに気を取られて壁に激突し。昼休みはうどんに七輪を誤って入れて食べてしまい唸っていた。午後、授業に遅れそうになり走り、また何かに気を取られて鈴に激突。 明らかにおかしい。一夏はそう思い、いつ切り出そうかと2人っきりになるタイミングを探していた。が何故か違うクラスの簪が必ず邪魔に入る。なぜだろう?
「以上が前回の代表決定戦の映像だ。これを参考にISにお前達にはもっと学びを深めてもらいたい」
千冬はクラス対抗戦の前日とあって一夏のことを思ってか本日最後の授業内容を急遽変更した。ついでにまだ一夏は丹陽に切り出せずにいた。
黒板のスクリーンに投影された映像には前回の戦いが写しだられていた。
「1人の機体についておさらいするぞ。先ずはセシリアのブルーティアーズ、遠距離型の第3世代試作機だ。次は丹陽のラファールリヴァイヴ、汎用型の第2世代量産機。最後は一夏の白式、近接特化の第3世代専用機だ」
千冬は一通りクラスを見渡し話を続けた。一夏は丹陽が気になってしょうがなかった。なぜなら、丹陽は天井を見て完全に上の空。このままでは出席簿の餌食に。
「セシリアの動きに注目してみろ。何か気づくことがある奴はいるか?」
女子生徒の1人が手を挙げた。
「はい、先生。一定距離を保ち、なおかつ相手よりも上に居続けなど射撃戦のお手本のようでした。しかも、まだ戦術が確立されていないブルーティアーズを手探り感は否めませんが上手に扱っていると見えます」
一夏は丹陽の意識を呼び戻す為、後ろから背中を小突いた。しかし丹陽は気づかず、相変わらず意識は何処かに行ってしまっている。
千冬がちらりと丹陽を見て、すぐに手を挙げた女子生徒に向き直った。
「そうだ。さらに付け加えるなら、丹陽戦と一夏戦とでは戦術に差異があった。インターセプトの使い方だ。丹陽戦で露顕した欠点をすぐに補うなどの柔軟性もあった。流石は代表候補生だ」
千冬は出席簿を丸めて手に持ちはじめた。
「次は丹陽の動きだ。こいつのは癖が強い。2丁銃はFCS次第で誰にでも出来る、今は無いがエカーボンの軍用機はできた」
千冬はゆっくりと丹陽に近く。一夏は慌てるが丹陽は相変わらず天井眺めている。
「丹陽はISの性質を利用した戦いをした。そうだろう丹陽?」
千冬の出席簿が火を吹くと、一夏は目を覆った。しかし
「はい。IS本体は硬くラファール・リヴァイヴでは火力不足なので、駆動系や火器を狙って戦闘をしました」
「え?」
出席簿は振り下ろされること無く千冬の手に握られていた。丹陽は実は授業の内容をしっかりと聞いていた。
「丹陽がほとんど言ってしまったが、ISというのは本体は高度に守られているがそれ以外の部分は装甲だよりで意外と脆い。慣性制御が有るとはいえ、スラスター無しで戦うのは攻めるにしても守るにしても遅過ぎる。パワーアシストが有るとはいえ素手で戦うのは野蛮だ。つまるところはシールドエネルギーを切らさなくともISを無効か出来るというわけだ」
千冬は一歩大股で踏み込み、出席簿を振り下ろす。
「そしてお前は集中しろ!」
「痛ぇ!」
出席簿は一夏に振り下ろされた。
「さっきから見ていれば」
「俺を見てたのか」
「そうだ。ずっと丹陽を見てると思えば、ちょっかいまでだすとは…貴様私が家を留守にしてる間にその…目覚めたのか?」
「目覚めてない!目覚めてません千冬先生」
焦る一夏は助けを求めるため丹陽に視線に移した。丹陽は相変わらず天井を眺めていた。やっぱりおかしい。
放課後、一夏は丹陽を捕まえた。のほほんさんの話によれば簪は明日の最終調整の為、整備場で缶詰めらしい。邪魔は無いと、寮の前にいる丹陽を捕まえた。
「丹陽ちょっと話があるんだが」
「なんだ明日に向けてのアドバイスか?それなら1つ鈴には気を付けろ、爆発するぞ」
「しねぇよ!」
目的を忘れそうななったが気を取り直す。
「丹陽さぁ、今日1日なんかずっと、上手くは言えないけど何か気にしてたからさぁ」
「そうか、お前の気持ちは分かった」
「言葉足らずで悪いな。なんか丹陽が急に居なくなる様な気がして」
「そっちもだが」
何故か丹陽は後ろに1歩下がった。
「俺を1日中観察してるってことは、こっちか」
左手を指先までピンと伸ばし右頬に手の甲があたる仕草をした。オカマを意味するあのジェスチャー。
「じゃねぇよ!」
また叫んでしまった。
「丹陽!俺はただ」
「分かってるよ。ちょっとからかっただけ」
丹陽は一夏の手を取り寮に向かった。
「実は気が抜けてたのは確かだ。なんせ放課後楽しめでしょうがなくて」
「何が?」
「今日ブルーレイがやっと発売されたんだ。日本男子ならこれでわかるだろう?」
「いやわかんねぇよ!」
丹陽が立ち止まり振り返る。心底信じられない顔をして。
「お前…日本人辞めろよ」
「そこまで…のやつってなに?」
丹陽は手を握ったまま駆け出した。扉を開けて食堂に入る。
「あれ?ここ食堂じゃ無かったっけ」
「模様替えしたの」
食堂はテーブルなどは全て運び出されていて、代わりに家電や家具などが置かれリビングの様になっていた。リビングの真ん中、絨毯がひかれその上にソファとテレビが向かい合って置いあり、その間にテーブルがある。テーブルの上には件のブルーレイがあった。発売日は知らなかったがその映画には見覚えがあった。
「これ…去年劇場公開されたやつじゃんか。友人と俺見たわ」
「なんだ知ってたか。流石は日本男子だ」
「内容は、突如太平洋の底で次元の裂け目が発生。そこからカイジュウが次々と現れて。それに人類は追い詰められる。それに対抗する為、巨大化能力を得た第10世代、あっ第9世代もいたな。第10世代ISで戦うって話だったな」
「そうだ。んなわけで見ようぜ」
「いやでも俺…」
明日に備え無ければと言おうとした。
「まあまあ座って座って、飲み物なに飲む?オレンジジュースと烏龍茶が有るけど」
「えっとじゃあ烏龍茶で」
一夏は四人は座れそうソファの1番端に座った。
丹陽は烏龍茶とオレンジジュースが入ったコップを2つ持ってきてテーブルに置いた。
「どうぞ」
「頂きます」
丹陽はテレビの電源を入れ、映画を見始めた。
「あの丹陽…」
丹陽はちょうどコップを傾け中身を飲んでいた。その時一夏は丹陽がいつも着けてる手袋が無いことに気付く。そしてもう一つ。
「ん?」
「右手の中指…なんで皮膚の色が違うんだ」
丹陽の中指は付け根から色が違い、中指全体は日焼けをしておらず少し白っぽかった。一夏の記憶が正しければ人工皮膚での治療をした時こうなる。
「あれ、分かっちゃった」
一夏は思わず言ったが後悔した。手袋がその傷を隠すためのものなら触れて欲しく無い物の筈だ。
「これに気付くとは…大した奴だ」
「なんかごめん」
「いいよ、気にしなくて。これだってただの事故だよ事故」
丹陽はそう言って隣に座った。
それから数分、お互い何も言わず黙って映画を見た。一夏にとっては気まずい空気。しかし数分で丹陽が吹っ飛ばした。映画の内容に丹陽が歓声を上げて興奮しはじめた。その興奮はラストのカイジュウを倒しても冷めず、エンディングロールも飛ばさず見ていた。
「いい映画だった、特にラストの戦闘。武器が無くなった主人機が加速装置を利用して突撃、肉弾戦するのが良かった」
「そうか、丹陽。俺も好きだぜのシーン」
お互い飲み物も無くなり感想を語り合っていた。
「そう言えば一夏?」
ふと丹陽が切り出した。
「なに?」
「オルコットと篠ノ之となんか無いのか?明日対抗戦だし」
突然白式からのメッセージ。
[オルコット様カラコアネットワークヲ通ジテ連絡ガ来テオリマス]
一夏は蒼白になり立ち上がる。
「悪い用事を思い出した」
そして走って行った。
「さて」
1人には広いリビングの中、丹陽はソファで横になる。
「思い残す事も無いかな」
「以上の情報から察するに、盗聴器などが置かれた場所が有ると思われます。そこを私を含めた数人が取り押さえましょう」
IS学園の地下、作戦室の様な場所で轡木、楯無、衆生の3人がいた。それぞれ簡易イスに腰掛け手前には簡易机がある。
「分かった。用務員の中から2人つけよう」
轡木が衆生を向いた。
「衆生君、君の泉君関連の任を解こう」
「なぜですか?」
「後は直接本人に聞くからだ」
「捕まえられると?」
「戦闘員が2人にISが1機、過剰なぐらいじゃないか」
「そうですか」
衆生は一切感情を含めずに淡々と質問をしていた。
衆生はメモ帳を取り出した。そしてページをめくり目的のページを見つけるとそれを破り取り折り畳む。立ち上がり轡木の元に向かった。
「轡木さん、例の件の続報です」
轡木は目を開き驚くと、震える手でそのメモの切れ端を受け取る。
「更識君、席を外してくれないかね」
「どうしてですか?」
わけのわからない楯無は食らいつく。しかし轡木はおどおどと答えた。
「これはその…個人的な事なんだ…つまりはあまり人には知られたくない事なんだ…無論家内にも」
「…わかりました…しかし泉の件は了承して頂けますか?」
「もちろんだ」
楯無は渋々部屋を出て行った。
「衆生君これは本当かね?」
「ええ」
轡木は改めてメモを見た。もう切れてしまったと思っていた細い線がまた切られてしまった。轡木は顔を伏せ机に突っ伏す。
「10年前の中東での独立戦争の後、隊の人達は1人を除き全滅。自らの足で墓や遺体の確認もした筈です」
「ああした」
「今回の情報は前の上司からの直々の情報です。貰えた理由は上司もどうやらクビにされたらしく、簡単に貰えました。流石に国防に関係しないと判断したのでしょう。ちなみに直々に遭ったらしく、隊の話も聞いたようでその筋からも情報の精度は保証できます」
「そうか」
轡木は動こうとはしなかった。
「1人にしてくれ」
衆生は何も言わず黙って出て行った。
「後一歩のところで…及ばず」
轡木の探していた人物は10年前より消息を絶っていたがついに1年半前にどこにいたのか分かったらしい。その人物はそこで外人部隊として働いていた。その国は。
「エカーボン」
去年の夏に核によって崩壊した国。
クラス対抗戦の朝。
一夏は自分の寮の前にいた。
「良し頑張るか!」
頬を自分で平手打ち。気合いを入れて試合に挑む。
同じ朝。
丹陽は自分寮の前にいた。
「良し頑張るか!」
頬を自分で平手打ち。気合いを入れて。
逃亡を謀る。
次回はワンサマーサイドの話です。オリ主サイドはだいぶ先になります。
誤字脱字、表現ミスありましたら、御指摘お願いします。