インフィニットストラトス 〜IF Ghost〜   作:地雷上等兵

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今回オリキャラが出てきます。


第9話

放課後、日が暮れた時間。一夏はアリーナで大の字で倒れていた。息が上がっており、激しく呼吸を繰り返していた。

クラス対抗戦に向けての特訓をしていたのだが、付き合ってもらっているセシリアと箒を同時に相手していたのだ。ちなみに2人はいつも通り態度で一夏に接していた。

「初心者には辛いぜ」

2人には先に帰ってもらい自分は息が整うまで横になっていた。

息が整いはじめた一夏が起き上がり、今は待機形態の白式を見る。

ここまで疲れきった理由は他にもある。白式がほとんど助けてくれなかったからだ。

「助けてくれよ白式?」

[学習行為、我不必要]

この回答で一夏は納得したが、別のことに不満を感じた。

「白式、カタカタ使うとかもっと解りやすい喋り方出来ないか?」

固まった。白式はいつも一夏の問いに、間を開けるとと無く応えるのに固まった。

永遠とも思えるほんの僅かな間の後白式から返答が表示された。

[言語機能上方更新許可求 応又否]

一夏は迷わず応を押す。押した途端、スクリーンにパーセントが表示され、一瞬で完了する。

[アップデート完了]

明らかに言語が変わっていることを確認するため一夏は質問をする。

「リンゴとかけまして、ラブコメの嘘と解きます。その心は?」

いきなりのなぞかけ。

[ドチラモ外真赤ノ中真白]

白式は間をおかず答えた。

「お見事!」

一夏は二重に感激した。疲れていなければ、拍手してやりたかった気分だった。

[喜ンデイタダキ白式ハ嬉シイデス]

一夏は寮に帰るため、着替えて更衣室を出た。出ると廊下で鈴が用務員と話していた。用務員は二十代前半の恐らく日本人男性、体型は長身細身。一夏自身も何度か見かけたことがある人なのだが。いつも名札をしておらず、名前を知らない。

用務員は手に鉛筆とメモ帳を持ち、恐らく会話の内容を書いていた。

一夏が見てから直ぐに会話が終わり、用務員は行ってしまった。その後一夏は鈴の下に行く。

「何話してたんだ、鈴?」

「あ、一夏。別にあんたは関係無いでしょ」

一夏の存在に気がついた鈴は少し怒った態度で顔を背ける。

「そうゆう関係なら詮索しないけど」

「違う!昨日丹陽と何があったか聞かれたのよ」

鈴は一夏に食いかかる勢いで顔を近づけた。

「別に隠すことでも無いだろ?幼馴染なんだし」

「違ーう!あんたってなんで本当そうなのよ!」

鈴は一夏に飛び掛かり、一夏を押し倒した。

「バカバカバカバカ!」

「いてぇ!やめてくれ鈴!」

鈴は馬乗りになり一夏を殴り続けた。

「はあはあはあ…」

とうとう疲れた鈴が息を荒く呼吸をしている。

「気が済んだか鈴?」

「何よ?」

鈴を太ももに乗せたまま、一夏は起き上がる。

「なんかお前、久しぶりあった時疲れてたな」

「私はいつでも絶好調よ」

一夏は鈴の頭に手を置くと話し出した。

「急に転校しちゃうし、一年間連絡無いし。何があったかはわからないけど、何かあったのかはわかるぜ」

「別に何も無いわよ」

鈴は一夏の目を見れなくなり下を向いた。

「相談なら聴くし、頼み事なら内容にもよるけどやるさ。俺じゃ頼りないなら千冬姉だっているし蘭や弾だっている。力に成れなくても、ずっと側にいるぜ」

一夏は笑かけた。だが内心は笑えてなかった。実はわかっていた、鈴に何かあったのか。中学校の時、何度か鈴の実家の中華料理店に行っていたのだが、その時必ずと言っていいほど、鈴の両親は一緒にいなかった。そして今の会話で確信した。

一夏に両親はいない。いるのは姉の千冬だけ。だから、両親が別れるというのは完全に別世界の話。まるで想像出来ない。だけど、自分が千冬姉に嫌いなられたことを想像することすらしたくは無い。だから笑ってやるしか無い。

「ねぇ一夏」

鈴は下を向いたまま一夏に訊く。

「なんだ鈴」

「側にいてくれるって本当?」

「日本にいる間だけな。日本語しか話せないから」

「中国語教えてあげれば中国にも来てくれる?」

鈴は顔を上げた。両頬紅く染まっていた。

「もちろん」

「一夏!何をしている?」

突然現れた箒が、叫んだ。

「帰りが遅いと思って来てみれば、さっきすれ違った用務員の言う通りだ。こんなところで2人で隠れてひっそりと…ぐぬぬ」

一夏は自分達の状況を見た。人気のない場所で、一夏の太ももの上に鈴が乗っている。誤解されかねない。

「しかも、…側にいるとはなんだ?」

「そりゃ友達として当然だろ」

一夏は本心からそんな言葉を出した。

「あんたってなんで本当にそうなのよ!」

鈴が飛び上がる。

「覚悟!」

「覚悟しなさい!」

「助けて白式!」

[今日モ平和]

 

 

鈴は一夏に向かって宣言する。

「今度のクラス対抗戦絶対勝つから。そして勝ったら、私の言うことを聞きなさい。わかった?」

廊下で伸びている 一夏に応える気力はなかった。

「それと…ありがとう…」

 

 

深夜、疲労と傷害であちこちが痛む一夏は自分の部屋で起こされた。起こし方は、起こされたとしか表現できず。なぜなら起こしのは白式だから。

「はあ〜ん。どうした白式?」

一夏は欠伸をし目を擦りながら、待機形態の白式を見た。

[今後ノコトデ、ゴ相談デス]

「なんだ?」

相談?一夏はまるで検討がつかなかった。

[一夏様ノ戦闘ヤ、ソノ他ノ活動ヲ、ヨリ円滑ニ行ウタメ学習プログラムヲ構築、執行サセテ下サイ]

「学習プログラム?具体的どんな感じ?」

一夏の質問に白式は天井から床までスクリーンを大きくして、文字を滝のごとく流した。

「うあああああ、わかったわかった。許可するよ白式」

突然のフラッシュに驚いた一夏は、思わず許可を出した。

[アリガトウゴサイマス。今後モ織斑一夏様ノ幸セヲ想イ白式ハ持テル全テヲ一夏様ノタメ使用スルコトヲ誓イマス。申シ訳ゴサイマセン、長クナリマシタ。オヤスミナサイマセ。一夏]

スクリーンが閉じた。それを確認して一夏は欠伸をして寝た。なんの不安も無く。

 

 

クラス対抗戦を明後日に控えた日。放課後丹陽は、自分達の寮の今まで使われてはいなかった食堂にいた。簪もいて、お互いに三角巾、マスク、割烹着、手袋を付け箒やハタキを手に掃除をしていた。

簪は丹陽と話ながら掃除をしており、床を半分まで掃いていた。

「それからね…電話?あれお姉ちゃんからだ。なんだろ?ちょっとごめん」

簪は出て行った。

すぐ帰って来た簪は何処か申し訳なさそうだった。

「ごめん用事が出来ちゃった。急に生徒会に呼ばれちゃって」

「あれ?簪生徒会所属だっけ?」

入学して一月もしていなく、しかも生徒会選挙など無かったのにいつの間に所属していたのか、丹陽は気になった。

「生徒会所属者は、お姉ちゃんが一任で決めてるんだけど。それで本音ちゃんが所属していて。それで…」

「それで?」

簪は渋った。

「本音ちゃんがいると仕事が増えるからって、私が」

丹陽は黙った。流石はのほほんさん。

「でも本音ちゃんのこと悪く言わないでね」

「わかってる。いつものこと」

のほほんさんに丹陽が付けられたあだ名が、ニャンニャンだったりするわけで、正直丹陽はのほほんさんが苦手だったが慣れていた。

「でも、代わりに用務員さんが一人来るって」

「わかった」

簪は出て行った。

数分して、用務員が一人やって来た。二十代前半、恐らく日本人男性。体型は長身細身。丹陽は見たこともない用務員で、ネームプレートも無い。

「代わりに手伝いに来た用務員か?」

丹陽は訊いた。

「そう」

男は早速箒をとり、床を掃き出した。

「名前は?」

丹陽は当たり前の質問をしたのだが。

「必要?」

「当たり前だ」

男はこちらを見ず答えた。

「ジョン ドゥ」

「お前は死体か?」

「土左衛門は?」

「訊くな!」

死体の通称を答えた男は渋々答えた。

「衆生 朱道」

「偽名?」

「いや本名」

丹陽は衆生を見た。こちらをちらりとも見ず、簪がやり残した、床半分を掃いている。恐らく偽名だろ。丹陽自身人の事は言えないが。

ネームプレートが無く今まで見たことの無い用務員。他の用務員が用務員兼警備員だったのに対して、衆生はそれらと性質が異なる職種についていると丹陽は思った。それに…。

無言で2人とも掃除をして、すぐ終わらせた。衆生は帰り、その後丹陽は席に座った。

「衆生 朱道」

丹陽呟いた。

ヤバイかもしれない。丹陽そう思った。急用で時間の無いはずの簪から聞いていたのかもしれないし、丹陽に訊かず床を見て判断したかもしれないが。衆生は簪がやり残したところを正確に掃除していた。

つまりは、ずっと見張られていたのかもしれない。

 

 

衆生は丹陽と別れた後、それまで行っていた監視を辞め、轡木と楯無のいる生徒会室に行った。

「何かわかったかね?」

入室早々轡木に衆生は訊かれた。轡木は丹陽を調べるよう衆生に頼んでいた。

「昨日の海上演習は関係が有ったみたいです」

衆生は胸ポケットに入れて有ったメモ帳を出す。

「凰鈴音に訊いたところ、あの海上演習は偶然の産物だそうです」

「関係有るって言ったじゃない?」

矛盾する発言に楯無は食らいついた。

「焦らないでください」

衆生はメモ帳を見て話し出す。

「中国側からの突然の転校の通告は知って通りで、その理由は凰の希望だそうです。そして、昨日こちらに来る手筈だったのですが。急な事もあり手違いが有ったらしく見知らぬ街に凰が一人放置される状態になったそうです」

「確かに昼頃には着くとのことだったな」

「途方に暮れた凰は大人しく、交番に行こうとしたのですが。偶然IS学園の制服を着た、男性。つまりは丹陽を見かけ、母国の所為で迷ったとは言えず丹陽の後を追ったそうです。そしたら丹陽を何処かで見失い迷ったそうです。昼頃にもなり、近くの飲食店で凰は食事をとったらしく、しばらくしてから店から出るとまた丹陽を見かけたらしく、追いかけたら、また見失いらしくしかもそこでチンピラに絡まれたそうです」

「ねえチンピラに絡まれた所って…」

楯無に構わず衆生は続けた。

「そこでチンピラを撃退すべくISを起動。チンピラを撃退出来たのですが、日本政府のISが出撃してきてこれと戦闘になったらしく。それが海上まで行き、そこで中国政府は凰から事情を聞き日本政府と和解。戦闘を海上で模擬戦として片付けたそうです」

衆生は言い終わると、楯無の質問答えた。

「お気付きの通り、凰が最後に丹陽を見かけのはネスト街の近くです」

轡木と楯無が黙った。

ネスト街は、移民政策を推し進めようとし、一時的に移民規制緩和する。が移民に某国との諜報機関との関係が発覚。犯罪率の上昇もあり、政府は急遽移民を規制し強制帰国処置を下す。しかし、移民街等に逃げ込み不法移民と化した。そして犯罪が激化、周りの日本人が逃げ出しその地域だけがまるで別世界とかし、犯罪の温床と化していた。犯罪組織が隠れるにはぴったりな場所でもある。

「服装もIS学園の制服では無かったそうです」

轡木がため息をついた。

「わかった。御苦労、衆生君。更織さん、君の言うとおり彼の部屋の調査を許可する」

「妹がいるので部屋の調査は私一人でやらせてください」

楯無が申し出るが衆生がそれを制する。

「更織さん落ち着いてください。水持って来ましょうか?」

「要らないわ。喉渇いていないから」

「大丈夫です。頭からぶっかけるためです」

「言ってくれるじゃない」

「ん?勿論天然水ですよ」

口論に発展しそうな2人を轡木は止めた。

「2人ともやめないか。更織君。君は明らかに冷静じゃない。衆生君。君を彼に近づかせるわけにはいかない。よってこの件は私がやる。わかったかね?」

「いいでしょ」

「わかりました」

衆生は真っ先に生徒会室を出て、しばらく散歩をした。理由は尾行をされてないかを確認するためで、されていないことを確認してから、速足にある場所に向かった。その場所の二階に足音を立てず登り、とある部屋の前に立ち音で中の様子を伺う。誰もいないことを確認してから入る。中には、レーザー盗聴器が置いてあり他にも様々な機器が置いてあった。

衆生はこの部屋の存在や丹陽が何をしていたのか知っていた。

衆生はレーザー盗聴器に接続されたパソコンを操作した。パスワードはかけておらず自由にいつでも中身を見ることが出来るようになっていた。いつかの丹陽と同じ様に必要な情報を手に入れ出て行った。




なんかオリ主がただの変態みたいになってしまったこのに今更気が付きました。


誤字脱字表現ミスおかしな描写、ありましたら御指摘お願いします。

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