麦わらの一味の一人「一夏」   作:un

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 三ヶ月以上更新遅れてすみませんでした!!

 


三十八話 学園の日常 1

 「う~~終わった!!」

 

 この日の最後の授業が終わりニ組にて、席に座り背伸びする鈴。鈴は荷物を手に取り、いつものように隣の一組に入り秋人を中心にして集まっている箒やセシリア達に声をかけた。

 

「秋人、行くわよ」

 

「分かった。皆行こう」

 

 秋人達は教室から出て行こうとしたがクラス女子達に「どこに行くの?」と声をかけられ秋人は先生に呼ばれてと 適当な事を言い皆と共に教室から出る。

 

「それにしても、こう毎日打ち合わせばかりで大変だな…」

 

「仕方ないですわよ秋人さん。これは委員会からの命令ですので…」

 

「それに、この件には我が軍だけでなくあらゆる戦力が動いている。それほど今回の任務は重要と言うことだ」

 

 ため息をつく秋人にセシリアとラウラが仕方がないと言った感じで答えた。

 

「けど、まぁ私達候補生っていろいろ訓練してるからいいけど」

 

「秋人や箒はこういう任務って始めてみたいだからね…」

 

 歩きながら話す鈴とシャル。

 

 彼女達の話す任務とは近々IS委員会本部で開催されるサミット(世界会議)の護衛任務の事だった。

 

 近年動きが活発している革命軍、裏で暗躍する亡霊。さらに世界初の二人の男性操縦者の発見と白騎士を思わせる「黒騎士」の登場など様々な問題について対策を講じる場であるのだが、委員会の幹部や各国の首脳など重役を一箇所に集めれば当然狙われる。

 

 そのため、今までにない警備と護衛を会場に敷くため委員会からIS学園の専用機を持つ生徒全員に護衛を命令し、そのために秋人達は放課後になると会議室に集まりサミット当日のスケジュールや配置などを話しあっていた。

 

「しかし敵は来るのか? いくら奴らでも今回は手出しはできんだろう?」

 

「箒…」

 

 箒は頭の中で当日の警備状況を思い出していた。会議に参加する国の軍を総動員するだけでなく学園にもあるISを総動員させた馬鹿げた戦力を前に果たして戦いを挑む者などいるのであろうか?

 

 箒の言うとうり、この戦力に向って行くなど自殺行為に等しいのだが、秋人は納得できない顔をしていた。

 

「例えそうだとしても、敵は普通じゃないんだ」

 

 まっすぐな目をしてつぶやく秋人。秋人は胸の中にある不安と、今までの敵の事を思い出し自分の中ではっきりとした答えが出ていた。敵は必ず来る と。

 そして、自分や皆が敵に倒されてしまった時は、黒の切り札が最後の希望になる。

 

 「ん?」

 

 秋人はふと、考えるのをやめ窓の外を観た。整えられた中庭の木々が見え、そこから何かの視線を感じたのだが、鈴達に声をかけられ慌てて秋人は会議室に入って行く。

 

「…やっぱりあいつは見聞色よりか…」

 

 木の枝に乗っていた一夏がつぶやいていた。

 

「さて、これからどうしたもんかな、っと」

 

 六式の月歩と剃を使い木の上を移動する一夏。ふと視界の端で何か動き足を止めて身を潜めた。

 

 見ると庭の端で土の入っている袋をもった初老の男性がおり、男性は額に汗を流しながら土入りの袋を持って歩く。しかし数歩歩いたところで体のバランスが崩れ男性が倒れそうになり、一夏が剃で駆け寄り男性の体を支えると。

 

「なぁ、これどこに持っていけばいい?」

 

「え?」

 

「面倒だろ、一気に持って行くよ」

 

 呆然とする男性から袋を取り一夏はさらに地面に置かれていた他の袋を全て持ちあげた。男性は一夏に戸惑うが、礼を言って花壇の方を指指し一夏は袋を運ぶ。

 

「なんだか頼んでしまってすみません」

 

「いいよ、すぐに片付けるから」

 

 一夏が言うとうりに、たった数秒で全ての袋を花壇まで運び終えてしまい。男性はお礼にと缶コーヒーを奢り、二人は花壇の傍で腰かけた。

 

「いやぁ、どうもありがとうございました。私は轡木十蔵(くつわぎじゅうぞう)と言う者で、この学園で用務員をしている者です」

 

「ふぅん」

 

 頭を下げる十蔵を見て一夏は、庭の整えられた草木を見る。

 

「これ全部一人で?」

 

「お恥かしい話し、この歳になりますと余り趣味が少ないもので…それと、こう言ってはなんですが、他の生徒達に見つかる前に早く行かれた方がいいと思いますよ…織斑一夏君?」

 

「あぁ、やっぱり知ってたか…」

 

「それは世界的に有名ですからね、それで今日は一体何の御用でこちらに? 織斑先生でしたらまだ病室ですが」

 

「そっちは後で行くけど、まずは弟の様子を見たくてね。」

 

 一夏はいつ見つかって通報されるか分から無い状態と言うのに男性に何も隠さず話してからコーヒーの礼を言って庭から離れようと立ちあがる。すると十蔵が声をかけた。

 

 「あなたにあったらお礼を言いたいと思ってました。何度も生徒達を守っていただいてありがとうございました。これからも、この学園の生徒達を守ってください」

 

 「って、なんであんたが頭下げるんだよ?」

 

 十蔵は深々と一夏に頭を下げ礼を言う。実は、この男性こそがこの学園の理事長であるのだが一夏はその事を知らない。十蔵は顔を上げ、真剣な目で一夏を見つめる。

 

「こんな質問は失礼かと思いますが。あなたは誰の味方なのですか? 秋人君や織斑先生がいるからこの学園を守ってくれたのですか?」

 

 「俺か? 俺は海賊だ。自由気ままにやるだけ、だから誰かの味方とかじゃない」

 

 一夏はそれだけを言いその場から立ち去る。そして残った十蔵は笑を浮かべ

 

「海賊ですか…ふふふ、面白い少年だ」

 

 とつぶやくのであったーー

 


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