麦わらの一味の一人「一夏」   作:un

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 更新遅くなりすみませんでした!!

 今回の話は、投稿するかどうか悩み時間がかかりました。
 ちなみに、今回はとあるキャラが出ます。



三十五話 少女の見た夢

 この話は、一夏が海賊になるより前の話であったーー

 

「ひぐっ…なんで、なんで…」

 

 幼く青髪をした少女が、海辺の傍で一人泣いていた。

 

 彼女は、とある日本の特殊な家系の生まれのため、幼い頃から満足に友達と遊ぶことや好きな事をする自由がなく、さらに、家の決まりで当主になるものは自身の名前とは別の名を継ぐ事となり、周りの者は彼女を継いだ名でしか呼ばなくなっていた。

 

(私だけ…なんで、自由がないの? おかしいよ…)

 

 妹と違い、自分はただ家のために武術や勉学ばかりをやる人生。例え、好きな人ができても家の都合で勝手に相手を選ばれ、さらにやるべき事も全て決められて、そんな不自由な自身の生まれを毎日憎み、ついに少女は家を飛び出した。だが、彼女の家は特殊なため、すぐに追跡者が来て家に連れ戻されるのは分かっていた。

 

(…ごく)

 

 少女は涙をぬぐい、夕陽に照らされて輝く海を見る。もし、海に落ちれば嫌な事を全て忘れて自由になれるかもしれない。そんな事を考え、少女は足を動かし一歩踏み出せば深い海に落ちる所まで近づき、風に青髪が揺れる。

 

「…っ、やっぱり、いや…」 

 

 死ぬのが怖くなり、来た道を引き返そうとする少女。だが、突風が吹き。少女は体のバランスを崩し、海に落ちた。

 

「ぷは!? げほっ、げほっ!! え? な、なんで!?」

 

  幸いにも泳ぎの鍛錬もしていたおかげで溺れずに済んだのだが、空を見た少女は困惑していた。さっきまで夕陽が登っていたはずなのに、何故か太陽が真上にあり。しかも辺りにはさっきまであった陸がなかったのだ。

 

「ど…どうなってるの…さっきまで夕陽が!?」

 

 少女が何かに気づく。目の前に巨大な何かが海から出現し少女を見ていた。それは、サメよりも何倍の体を持ち、その海を航海する者なら誰もが知っている生物。海王類と呼ばれる生き物だった。

 

 海王類は、怯える少女を見て口を開き襲いかかる。そして、少女は目を閉じる。

 

(いや!! 死にたくない!! 誰か、助けて!!)

 

 少女は死ぬ間際にずっと昔から憧れていた、自分を助けてくれるヒーローを思い出す。いつしか、自分にも来てくれると思っていたが、家の教育と社会の人間の汚さを知りいつしか忘れていた思いを心の中で願う中。海王類に食われそうになる瞬間――

 

「あらあら、どうしたんだ? 嬢ちゃん?」

 

 そんな声が聞こえ、少女が恐る恐る目を開けると。海上なのに自転車に乗った白いコートを羽織った長身の男がおり、その背後には、何故か口を大きく開けたまま氷った海王類がいた。

 

 少女は、何が起こったのか混乱していると。長時間泳いでいたのと、未知なる生き物に襲われた疲労で気を失うのであったーー

  

「んっ…」

 

 少女が目を覚ますと、目の前に焚き火が見えた。あたりは暗くなっていつの間にか夜になっており。少女は白いコートがかけられていた事に気づく。疲労の中なんとか起き上がり何とか記憶をたどる。

 

「そうだ。私、海に落ちたんだ…ここは、どこなの…?」

 

「やっと起きたか」

 

 と、少女が慌てて振り向くと。気を失う前に見た長身の男が果物などを持って少女に近づく。

 

「それにしてもおまえさん。どうして、こんな偉大なる航路(グランドライン)の、しかも凪の帯(カームベルト)に近い所にいたんだ?」

 

 長身の男が、少女の前に果物を置き質問をした。少女は、男が言う偉大なる航路(グランドライン)と言う、初めて聞く単語を聞いて戸惑ったが、お腹の虫がなり。少女は顔を赤くしたまま、目の前の果物に手をつけた。

 

 その後、少女が落ち着くのを待ち、少女は、答えられる事だけ伝える。自身は、家の家業が嫌になり、家を飛び出し。気づいたらあそこで化物に襲われた事を。

 

「家出ね…で、まぁ俺も軍の仕事が面倒だから黙って散歩してた所だし。ふぁ~~」

 

 男はその場であくびをして、のんきに横になる。男のふてぶてしい態度に、少女はどう言っていいのかわからず困惑するしかなかった。

 

「ところで、おまえさん。名前は?」

 

「わ、私は…更識。更識楯無よ…ところで、あなたは…」

 

「あぁ、俺か…俺は、そうだな~~周りからは大将やら、青キジとも言われてるが、まぁ好きに呼べよ」

 

 二人は焚き火を挟み、いつしかお互いの事を話すようになっており、楯無の顔にはいつしか笑顔が見えていたーー

 

 

 

 「ん…」

 

 学園の寮にある自室にて、楯無が目を覚ましベッドから起き上がる。

 

「…随分昔の夢を見てたわね…」

 

 寝巻きのまま起き上がり、机の引き出しの中から、一枚のカモメのマークがついたバンダナを取り出す。

 

「また、会えるわよね…青キジ…」

 

 懐かしい夢を見て微笑むが、今日はとある用事があるため、楯無はバンダナをそっと引き出しに戻し、支度をするのであったーー

 


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