「青い...炎?」
庭に広がる爆炎の中。青い炎をまとい平然と立つ一夏を見てセシリアが驚く。隣りにいる偽秋人も侵入者の異常な体を見て動揺したが、宙に両手を伸ばし歪んだ空間から二丁のサブマシンガンを取り出し一夏に向かって引き金を引く。
「クソ!! これで!!」
何十発もの弾丸が一夏の体を貫くが、その傷は蒼炎により再生されマシンガンの弾が切れ全弾打ち尽くしても体からは一滴の血も出ていない。
「どうなっている...あの体は!?」
「今のはかなり効いたぞ...うおぉぉ!!」
一夏が声を上げ蒼炎が全身を包みと青い鳥の姿に変化し飛び出す。接近してくる一夏に再び銃器を出し撃ち落とそうとする偽秋人。
だが、いくら攻撃しても不死鳥の再生力の前では無意味であったようで、すぐに目の前まで来た一夏の蹴りをまともにくらいその場で消えた。
「っ!? なんだ!?」
偽秋人を倒した瞬間。周りの風景がぶれ気づいたら一夏とセシリアが五つのドアの前にいた。周りに敵がいない事に安心して一夏は体から今も出る蒼炎を見つめ目を細める。
(この力...たしか。確か不死鳥の...)
一夏が思考に没頭していると、後ろからセシリアの悲鳴が聞こえて振り向くとーー頭を一筋のレーザーが貫通し再生の炎が激しく燃え上がる。
「ちょ!! おまえ!?」
「み、見ないでくださいまし!! 今、見たら打ちますわよ!?」
セシリアは身につけている薄いローブで必死に体を隠しながらピット兵器の銃口を一夏に向けるのだった。「いや、既に打っただろうが!!」と突っ込むが、セシリアは聞く耳を持たずレーザーを打ち続けて、その度蒼炎が辺りに飛び散る。
「うぉ!! 打つな!!」
レーザーの嵐から逃げるため一夏は扉を乱暴に開けて中に逃げた。
この時、一夏から飛び散った蒼炎がセシリアの体に入って行った事に誰も知らないままーー
「ふぅ...」
セシリアからの攻撃から逃げ延びた一夏はさっきとは違う大きな屋敷の前に立っており表札には織斑の名前が書かれていた。
「次はここか...」
さっきのセシリアがISを出した事を思いだし、黒騎士を呼び出そうとするが、何も変わらない。
どうやら、扉の内部の世界ではISや能力を使う事ができないらしいと理解したが、さっきの不死鳥の力はどうやって使う事ができたのだろうか?
「ん...出ないな...」
再び不死鳥の力を出そうと頭の中で、とある船の船員を思い出すが炎が全くでない。
仕方なく今度は別の人物を思い出す。その人物は船長の事を先輩と呼び慕っていた男であり、一夏の目の前に見えない壁が出現した。
「おぉ、出た出た!! 」
一夏はバリアの壁が出た事に喜び屋敷の二階の窓が空いている事に気づいて壁を使って階段を作り登って行く。
そして、二階から侵入するとーー
「ご、ご主人様...」
屋敷の主である秋人の命令で露出度の高い服を着たシャルが顔を赤くしながらベッドに横になってローブを着た秋人がベッドににじり寄る。
「シャル...随分と可愛いじゃないか...」
ローブを脱ぎ捨て下着一枚となった秋人が固唾を飲み込むと、大きく飛び上がりベッドにダイブする。
「シャル~~ぶげっ!!」
突然、秋人が変な声を上げ床に崩れ落ちる。鼻血を出し起き上がった秋人がシャルに抱きつこうとするが、目の前にある見えない壁のせいで指一本すらシャルに触れる事ができない。
「な、なんで!?」
「そりゃ、おまえが変態の風上にもおけないやつだからだな」
気がつけばシャルの後ろには一夏が両手の指を結んだ状態立ち秋人を見下ろしていた。部屋の窓が開いている事に気づいた秋人はすぐに警備を呼ぼうとするが体が何かに潰されて動けない。
「ぐ、がぁぁぁ!!」
「おまえ、いくら弟の偽物だろうが。俺が今まであってきた変態には、そんな事する奴はいなかったぞ!!」
一夏はこれまで会って来た変態達を、海パン一つの機械人間や敵でありながら男気があり、ハードボイルドなおしゃぶりとよだれかけを付けた男達を思いだし、彼らに失礼だぞと怒りを表す。
見えない壁で秋人を押しつぶし、偽秋人はシャルの名前を叫びながら粒子と化して消滅し、二人は五つの扉の前に着くのであった。
「バリアって便利だな」
この能力の便利さに感心し、傍にいたシャルの様子をみるが
「っ!? 君は!? て、きゃぁぁぁぁ!!」
自分の着ている物に気づいたシャルはISの銃器を一夏に向け放つが、強固なバリアにより弾丸が一夏には届く事はなかった。
「たく、次の奴は誰だ...? 箒か? 鈴か?」
攻撃に気にする事なく一枚のバリアだけ残し次の扉に入って行く一夏。そして、残されたシャルは外部にいる簪の操作で仮想空間から脱出しその際一夏が張っていたバリアも消えた。
「よ、嫁...これは、一体...」
「何って、エプロンだよ? 」
顔を赤くしたラウラがエプロン一枚だけの姿で秋人の前に立つ。秋人は笑いながらラウラをお姫様だっこしリビングのソファに横にして顔を近づける。
「よ、嫁、な、何を...」
「今度はラウラがおねだりする番だよ、ほら。何か言ってよ?」
秋人が「なんでもおねだり券」を取り出しラウラに見せつける。一瞬、目を大きく開けて何か叫ぼうとするが、ラウラは視線をそらし何かを呟く。
「...したい」
「ん。よく聞こえないな...? ほら、はっきり言わないと、やめちゃうよ?」
「!!っ わ、私は嫁と...」
ピンポーン と家の中でインターフォンが鳴り二人の動きが止まる。外から男の声がして、ラウラは秋人に待つよう伝えて静かにソファから降りテーブルの下に隠してある銃とナイフを取り出し玄関に近づく。
「どこの者だ? 階級と名を答えろ」
ラウラが玄関の向こうにいる人物に詰問すると「え? 階級? じゃ、大将で」と返事がきて、ドアに向け銃を撃つ。
「うおぉ!!」
「何者だ!!」
エプロン姿の少女がドアを蹴破り、打ち尽くした銃を捨てナイフを構えると、目の前にいたのは、両手を鎌に変化さて銃弾を防いでいた一夏がいたのだった。