麦わらの一味の一人「一夏」   作:un

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二十四話 ワールド・パージ 1

「秋人...」 

 

「本当に、早く帰ってきて欲しいね?」

 

学生寮にある食堂の席にて、ぼーっとする鈴と、その姿を見て苦笑するシャル。とある戦闘により学園にかなりの被害が出てしまったが、幸いにも寮等の一部の施設はすぐに使用ができていた。現在では復興作業が大分進み、ISの実技の授業も行われている。

 

「秋人の事やっぱり心配?」

 

「まぁね、秋人って戦闘訓練とかしたこと無いしさ、それに私達のISも結構ガタがきてたから修理中だし」

 

鈴が腕につけているブレスレット。甲龍(こうりゅう)の待機状態を見る。実は鈴だけでなくシャルや箒達も同様に現在ISが使えない状態だった。

 

秋人のISも整備が必要と言う事で、学園の外にある倉持技研と言う施設まで行っており、今現在彼女達を守る力がない状態だった。 

 

「もし、またどこかの組織が襲撃してきたらまずいね...」

 

「大丈夫よ、何かあったら一夏が...」

 

鈴は一夏の名前を出してしまい慌てて口を閉じ、そこでシャルが前から疑問に思っていた事を口にする。

 

「ねぇ、その一夏って人…秋人のお兄さんだよね...?」

 

「やっぱり、分かってたんだ?」

 

シャルはもともと秋人のISのデータを盗むために男装までして秋人に近づていたため、当然秋人の個人情報も目を通していた。兄である一夏は既に亡くなっていた事も知っていたのだが、シャルもまさか生きていたとは思わず驚いていた。

 

鈴は目を一度閉じ、息を吐いてからシャルを見て話し始める。

 

「昔からの知り合いでね、よく子共の頃遊んだわ。なんで今はあんなISに乗っているのかは知らないけどね」

 

「そうなんだ、鈴はその人の事が...!?」

 

突然、明かりが全て消え、防御シャッターが降りる。ガラス窓が全てシャッターに覆われたせいで辺りが真っ暗になり、暗闇が生まれて数秒が経つが一行に予備の電源が入らない。 

「...一体どうなってるの?」

 

シャルと鈴はISにあるセンサ一とレーダー機能を使用し、辺りの様子を見ていると突然通信が入り、相手はラウラとセシリアだった。

それぞれの状況を報告し、これからどうするか話していると、そこで新たな通信が入る。

 

「皆さん、大丈夫ですか!?」

 

その声はシャルやラウラのクラスの福担任である麻耶だった。麻耶は皆の安否を確認し安堵の息を出した後、一年の専用機持ち達をある場所まで誘導するのだったーー

 

 

 

「ふぅ~~ここが倉持技研...」

 

額の汗をぬぐい、目の前にある施設を見る秋人。IS学園に再び何かが起こっている事も知らず、ドアの前で立ち尽くす秋人に魔の手が迫っていた。

 

「いらっしゃ~~い!!」

 

 ぎゅ!!

 

「うひゃ!!」

 

突然尻を触れられ、慌てて後ろを向くとサングラスをかけISスーツを着た女性がにやにやして秋人を見ていた。しかも何故か水浸しになっており、手にモリと魚を持ち、さらにISスーツの胸元には「かかりび」と名札があった。

        

「ふふふ、お姉さんといいことしようか?」

 

と、こんな発言をする女性を見て秋人は大きなため息をつくのであったーー

 

 

 

「皆さん、集まりましたね?」

 

箒・セシリア・鈴・シャル・ラウラの五人にさらに楯無と簪までおり、皆の前に麻耶が立ち、傍では千冬が静かに壁に体を預け立っていた。

今現在彼女達がいるのは学園の内部にある地下施設で、一般では知られていない場所だった。初めて足を踏み入れた事で多少は緊張する中、麻耶が本題に入る。

 

「現在、IS学園ではシステムが何者かにハッキングを受けています。今のところ敵の目的はわかりませんが、システムを戻すため皆さんにはこれよりアクセスルームに入りISコア経由で電脳ダイブをしていただきます」

 

「で、電脳ダイブって...」

 

「確か、個人の意識をISと同調させ電脳世界に入るって言う...」

 

これまでにない体験に少女達が困惑していると、先ほどから静かに見守っていた千冬が箒達を見て

 

「この作戦は電脳ダイブが必須となる、嫌なら辞退しろ」

 

と冷たく言い睨まれた彼女達は渋々了解し部屋を移動する。後に残った楯無に千冬が「後の事は頼んだぞ」と短く伝え、楯無も「了解しました」と微笑み部屋を出て行く。千冬も楯無が出た後部屋から出るが、千冬の目には生気がなく誰も彼女が精神的にも肉体的にも疲労している事に気づかない。

 

   

一方でアクセスルームと呼ばれる幾つか機械のベッドが置かれた部屋に入った箒達。そして簪の指示の元ベッドに横になった彼女達はやがて意識が遠くなり電脳世界に入るのだったーー

 

 

 

「さてさて、彼は来てくれるのかしらね?」

 

廊下を歩きながら一人呟く楯無。扇子には再会と文字が書かれており、いつも神出鬼没なとある人物を思い出し、口元を緩める。

 

 ドン!!

 

目の前で突然爆発が起こり、壁に大穴ができたそこから特殊装備をした侵入者達を睨みつけ、楯無が指を鳴らし爆発を起こすのであった。

  

 

 


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