麦わらの一味の一人「一夏」   作:un

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二十三話 新たな黒騎士

 

倒れているナターシャの上空では二体のISが戦っていた。

一つは弾幕を張り距離を取る福音と、黒剣を振るい迫り来る弾丸を切り捨てる黒い機体。

 

「いくら新型と言え剣しか使えない貴様など!!」

 

これまでの戦いで一夏が剣しか使わない事を知りエレンは距離に注意しながら戦うが、一夏は斬撃を放ち福音の翼が一部切り落される。

 

「な!?」

 

「忘れたのか? そこも俺の射程距離だって前にも言ったぞ」

 

以前海の上で初めて戦った際も、斬撃で翼を切られた事を思い出すエレン。近づけば切られ、距離を取れば斬撃で切られる。しかも、先ほどからエレンも攻撃しているのに一夏には一発すら当てる事ができないでいた。

 

(ちっ!! 同士達は!?)

 

エレンは地上の方を向き、ISを装着している革命軍兵を見るが彼女達は動かない。いや、一夏が現れてから何故か福音以外の機体がまるで金縛りにあったように動けないでいた。

 

IS学園の楯無との戦いの映像で見た黒騎士の能力かと最初は思ったのだが、黒騎士から不気味な煙が出ていない。なら何故? とエレンが再び一夏を見る。

 

「悪いんだけどさ、それ降りてくんないか?」

 

不意に一夏から声をかけられ福音から降りろと言われた事に怒り出して「ふざけるな!!」と一夏に向かって叫んだ。

 

「俺だって切りたくないもんはあるんだよ。それ降りたらさっさと仲間と一緒に帰っていいからさ」

 

「どこまでも、馬鹿にして!!」

 

腹を立てたエレンの様子に「言い方まずかったかな?」と呟く一夏。そして、再び砲撃を始めた彼女を見て、一夏は装備を変える。

左手にまるで熊の手の形をした部品が装備され、熊の手が飛んできたエネルギー弾を弾く。

 

「え!?」

 

はじかれた弾丸に慌てて回避し距離をとるエレン。攻撃がはじかれた事もだが、黒騎士が剣以外の装備をした事に驚いていると、突然衝撃が襲いかかった。

 

「がぁ...」

 

体に痛みが走り落下して行くエレン。気づけば機体の胴体に肉球のような形が作られている。

 

「この!! 私は、私は負けるわけにはいかない!!」

 

落下する機体をどうにか操作し態勢を整える。反撃にエネルギー弾を放とうとするが、機体の残りエネルギーが危険を知らすアラームが鳴りエレンは舌打ちした。

 

「エレン様!! もう機体のエネルギーが!!」

 

「クソ!! 動け!!」

 

 エレンが危険なことに仲間たちが叫び、一夏は指から出た糸を解除した。

 

突然、機体が動くようになり黒騎士にライフル弾やミサイルなど全弾打ち尽くす攻撃がくるが、一夏は右手にも熊の手を装備し、つっぱりをするように手を動かし大気を弾く。

ミサイルは爆発し弾丸が弾かれ、強烈な見えない攻撃により兵士達に見えない衝撃が襲いかかった。

 

「さっさとここから離れろ!!」

 

一夏が叫び、次次と衝撃が生み出されて行く。一方的に攻撃され、指揮官であるエレンは

 

「ちっ!! 撤退だ!!」

 

「その前に、そいつを返してもらうぞ」

 

兵士達に叫ぷエレンに向け、一夏が近づき福音に小さな機械を取り付け、電気が流れると福音が待機状態になり一夏は福音を取り上げ空中で落ちそうになるエレンを捕まえた。

 

「き、貴様!!」

 

「暴れるな、落ちるぞ」

 

エレンをそっと地面に降ろす一夏。兵達はエレンの機体を取り戻そうと攻撃をしてくるが、再び大気の弾丸を兵達に当てないように攻撃し、兵達はエレンを連れ撤退していく。 

「やっと行ったか...それじゃ、こいつは返すぞ?」

 

「あ、あなた...」

 

一夏は黙ったまま待機状態の福音を倒れているナターシャの前に置いた。

黒騎士のレーダーが何かが近づいている事を知らせ、何体かのISが近づいていた。恐らく軍の増援だろうか、一夏はその場から離れる。

 

「ま、まって!!」

 

ナターシャが声をかけるが、既に飛びたった黒騎士を止める事ができず、目の前に置かれた福音を胸に抱き「ありがとう」とつぶやき彼女の目から涙が流れて福音に落ちた。

 

一ーー

 

 

 

 数時間後。

 

「ただいま戻りました」

 

「おっかえり~~」

 

秘密基地に戻った一夏を束が笑顔で出迎える。「上手くいったね」と束が聞き一夏も「束さんが用意してくれたおかげですよ」と笑顔で答える。

 

「リパームでしたっけ? あれ、用意するの大変だったでしょ?」

 

「ううん、別に~~あんなの、束さんにかかれば十個でも百個でもすぐに用意できちゃうよ」

 

「いや、そこまでは...」

 

IS操縦者からISを切り離す機械がそんなに作られたらかなり驚異だな…と内心呟く一夏。一応、彼も覇気でISと戦う事はできるため問題はないのだが。

  

「さてさて、今日は疲れたでしょ? お風呂にする? ごはんにする? あ、それとも...」

 

束が一旦黙まり、怪しい目で一夏を見る。一夏は嫌な予感がするが、先に束が着ている服を脱ぎ、裸エプロンになる。

 

「私がいいかな~~!!」

 

「ちょ、束さん!?」

 

再び抱きつく束を引き離そうとするが、彼女の怪力で離れる事ができず、暫らくの間、基地の中では一夏の叫びと束の笑い声が響くのだった。

 

 ーーちなみに

 

「撮影良好」

 

束の補佐でもあるクロエが一部始終を影で撮影している事に一夏は気づくこともなかったのだった。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

  

 

    

 

 

 

 

 

 


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