麦わらの一味の一人「一夏」   作:un

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二十一話 奇襲前

IS学園にある地下施設にて一人の女性が検査機器を操作していた。その女性はあくびを何回もし、目をこすりながらも徹夜の眠気と戦い作業を進めていた。

 

女性は、秋人のクラスで副担任をしている山田麻耶であった。麻耶は目の前の部屋に置かれた一夏の機体。楯無との戦闘後に回収されたバラバラの黒騎士を検査しその結果に驚きの声をあげる。

 

「そんな、この機体は...」

 

 機体に使われていた部品等が今の第二、第三世代のISが使っている物より古いタイプのが使われており、これらのデータから黒騎士が第一世代の旧型だと結果が出た。

 

「第一世代の...IS」

 

一機の旧式機体だけで、専用機持ち達と互角に戦闘を行っていた事に驚き、麻耶は呆然と保管されている漆黒の剣を見つめるのだったーー 

 

 

 

 場所が変わり、とある病室でーー

 

「隊長、お元気そうで安心しました」

 

手に花束を持ち、軍服を着込み眼帯をした女性がラウラに向かって綺麗な敬礼をし、ベッドに横になっている病院着姿のラウラは突然の来客に驚きながらも敬礼し返す。

 

「クラリッサ...どうして...?」

 

「隊長が負傷したと聞き、急いで駆けつけました...ご無事そうで、本当に良かったです」

 

 クラリッサは安心したように笑みを浮かべてラウラを見つめる。一方で、自分の身を心配してくれた彼女に視線を合わせず、うつむきながらーー

 

「す、すまなかった...心配を、かけた...」

 

小声で告げ、恥ずかしかったのかすぐに咳払いをし、ラウラは顔を上げクラリッサを見る。

 

「と、ところで、なぜクラリッサがここにいるのだ? それに、部隊は今どこに?」

 

彼女はドイツの特殊部隊に所属する人間であり、いくら隊長が負傷したと言え軍人が勝手に本国を離れ日本に来る事などできるはずはない。ならどうしてここに彼女がいるのだろうか?

 

疑問に思っていると、クラリッサが廊下を見て誰もいない事を確認し小声で話し始める。

  

「...我々は今、IS委員会よりある任務を受けており、こうして来られたのです...」

 

「ある任務?」

 

「はい、現在部下達がIS学園に向かっており私もすぐに向かわなくてはなりません...私は部隊を代表してお見舞いに来ました」

 

今この部屋には二人しかいないのだが、注意深く周りを警戒し会話を続ける。

 

「詳しい事はあまり分かってはいないのですが...何やら重要物を運び出す…と噂されています」

 

 「重要...物...?」

 

任務の内容を聞き、この時ラウラの脳裏に浮かんだのは。漆黒の剣を振るうあの機体だった。

 

 

 

 視点が変わり、病院の屋上にてーー

 

柵に体を預け、青空を見つめる秋人がいた。まるで上の空と言った感じで、呆然としてるとーー

 

「そんな所にいたら、取材とかでまたうるさくなるわよ?」

 

秋人の隣りまで歩き、鈴は空を見つめる。秋人は小さく「ご、ごめん...」と謝りうつむく。

 

実は秋人だけでなく鈴・ラウラ・セシリア・箒達も同じ病院にいた。ここは楯無のいる病院と違い普通の大きな病院であった。

 

事件の事で連日、取材者等が駆け込み一時期混乱があったため外に出る事ができず、秋人達は現在も病院に軟禁状態だった。

 

「...あいつ、生きてるわよね...」

 

鈴がペンダントを取り出し、自分と秋人、さらに一夏が映った写真を見つめ、秋人も鈴の持つペンダント見る。

 

「...生きてるよ...必ず」

 

「そうよ...生きてなかったら...殴れないじゃないの」 

 

鈴が拳を空に向けて、秋人は苦笑しつつ手の平を太陽に向け握りしめる。秋人は鈴に声をかけ

 

「もっと・・・もっと、強くならなくちゃ」

 

「...うん!!」

 

決意を口にし、心地の良い風が吹き二人を包むのだった。

 

 

  

数時間後…日が暮れ、空に満月が登った頃。今だ修復中のIS学園に複数のISが警備を行っていた。その中にはもちろん、眼帯をした女性、クラリッサも自身のISを装着し辺りを警戒しつつ学園の倉庫から出されたコンテナを作業班がワイヤーを使いヘリにつなぎ始める。

 

「...」

 

ヘリの近くで金髪の女性が、どこか遠くを見つめていた。この警備にあたっている女性の名はナターシャと言い、革命軍に奪われた機体「銀の福音」のテストパイロットであった。

愛着を持っていた機体を奪われた事によりショックを受け塞ぎこんでいたのだが、委員会の任務で仕方なくこの場にいるのだった。

 

 (どうして、あの子が...)

 

何度も、何度も大きなため息をつくナターシャは、今から飛びたつヘリを呆然と見る。隣にいるイーリスが心配そうにナターシャを心配そうに見るのだった。

 

やがて、飛び立ったヘリを囲むようにIS部隊が飛ぶ。誰もがドイツ・アメリカなど他国の実力者が警護するこの状態を襲うの者がいるのであろうか? と疑問に思いつつも任務に集中し空を移動する。

 

「動いたか...そんじゃ、忘れ物を取りに行くか」

 

満月に照らされたヘリとISを見つめる一つの人影が呟く。剣を腰に携えた彼は、その場から消え、ヘリを追いかけるのだったーー

 

  

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

    




 誤字・脱字気をつけてますが、何かあったらすみません...

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