麦わらの一味の一人「一夏」   作:un

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十七話 陰謀が走る学園祭

 夏休みが終わり数日後、生徒達が様々な機材等を運び三日後の祭に向け準備を行う。

 

 喫茶店をやるクラスもあれば、定番のお化け屋敷。さらに、ちょっとした射撃のゲームまで用意されていた。

 放課後から夜遅くまで残り、準備を進める中ーー

 

 「くっ!!」

 

 「よし、それじゃ、今日はここまでね」

 

 アリーナの地面に膝をつく白式。そして傍にはこの学園の長である更科楯無が立っていた。実は数日前、突如部屋に侵入してきた彼女に稽古をつけてやる と言われ最初は秋人も断るも受け入れられず、仕方なくISで試合をした。結果は秋人の敗北となり、楯無の訓練を毎日受ける事となった。

 

(...それにしても、この子、相手の動きに敏感、いやそれ以上に反応した動きだった...何かあるのかしら?)

 

「はぁ、はぁはぁ...」

 

 息を切らし、座りこむ秋人。そして彼の調査をもう一度しようと考える楯無の二人を遠くから見つめる簪。

 簪は秋人を見つめてからアリーナを出て、整備室へ入り機体の整備を入念に行う。既にクラスの準備はほとんどできており、時間に余裕があった。

 

「今度こそ、あなたに会いたい...」

 

 彼女が呟き、簪は黒騎士こと一夏と会える事を願いつつ、打鉄二式に耳を傾けるのだったーーーー

 

 とある高級ホテルにて

 

 二人の女性がワインを飲みながら、ソファにくつろぐ。金髪の女性が、目つきが鋭い女性に声をかける。

 

「オータム、作戦は例の通り、彼らが行動中に例のあれを」

 

「分かってるよ、スコール」

 

 目つきの鋭い方の女性。かつて、一夏と秋人の誘拐を行った一団にいたIS使いの女性だった。

 二人の傍にある小さな机には、書類が置かれておりーー表紙には竜の紋章が印刷されていた。

 

 

 場所が変わりとある町の定食屋ーー

 

 「あ、お兄!! 」

 

 「おう、蘭。ただいま」

 

 赤毛の男ーー五反田弾が何日かぶりに定食屋でもある実家に戻り蘭が出迎える。背にはリュックを背負い、家族には仲間とキャンプをしていたと言っていた。

 

「キャンプどうだった?」

 

「まぁまぁだな...飯がまずくて腹が」

 

 「全く」

 

 腹を抑える弾を見て、蘭が自然と苦笑する。一夏がいなくなった後、荒れた兄を心配していた蘭だが、今の様子をみて一安心した。

 そして、思い出したかのようにIS学園への招待状を見せた。

 

「これね、秋人さんが送ってくれたんだ!! お兄も一緒に行こうよ!!」

 

「...あぁ!! もちろんだ!! IS学園っていえば女子高だろ...だったら...」

 

 と鼻の下を伸ばし、チケットを受け取り自室に戻る弾。蘭は彼に「変態」と罵声を浴びせるが、彼は何も気にも止めていないようだった。

 そして、部屋に戻り荷物をおろし中身を取り出した。

 

 銃と弾薬。他にも、折りたたみ式で頑丈な十手や爆薬等まるで戦争を行う兵士のような装備を取り出し弾は携帯端末を操作した。

 

「三日後、例の組織と行動。13:10に内部へ...」

 

 弾の目はさっきまで妹と会話していたのと違い、何かを決意した目をし、自分の手を見つめ腕が黒く染まるのだったーー

 

 

「やっとできた!!」

 

「? 何がです?」

 

 ラボにて大きく手を上げる束。そして、黒騎士の傍にいた一夏が彼女に近寄る。

 

「黒騎士の能力だよ!! ブラックホールの制御が難しくて時間かかったけど、これで黒騎士はISの中で最強のISになったよ!!」

 

 一夏が不思議に思い、画面を見ると黒騎士の設計図にある一文字が大きく表示されており「ダークネス」と書かれていた。

 

  

 

 そして、あらゆる者が目的のため水面下で動き三日後ーー

 

 この日、IS学園にて世界を揺るがす事件が起こる。

 

 

                    ●

 

 11:00 

 

 次次と、来客が増え学園内が大きく賑わう中、入り口で弾と蘭がチケットを職員に見せ中に入ると執事姿の秋人が走って来る。

 

「弾!! 蘭!!」

 

「おう!! 久ぶりだな!! 秋人!!」

 

「お久ぶりです...秋人さん」

 

 弾は笑顔で手を振り、蘭は少し顔を赤くし下をみてうつむく。そこから、二人を案内し三人で回る事となって、とあるクラスに入るとーー

 

「いらっしゃいま...て、弾!!」

 

「うわっ!! 鈴か!? 久ぶりなぁ~~」

 

 チャイナドレスを着込んだ鈴が、突然の知り合いの出現に驚いていると、傍にいる蘭に気づき目を細める。

 蘭も若干、目をきつくし鈴の体を見て

 

「お似合いですよ? 鈴さん?」

 

「それは、どうも」

 

ぎこちない挨拶をする二人に秋人が戸惑っていると、弾が仕方ないといったように肩をすくめるのだったーー

 

 

「あぁ~~久しぶりの祭だな~~」

 

右手に、わたあめ・りんごあめ・アイスを、左手にフランクフルト・ポテト・唐揚げを持った麦わら帽子を被った一夏が廊下を歩く。

 一応、秋人と鈴に正体はバレているのだが、本人は「まぁ、何とかなるだろ~~」と考えるのをやめ、手に持つ食べ物をすぐさま食べ終えて祭を楽しむ。

 

 校舎を歩いていると、ある教室が目に入り足を止める。看板には「射撃場」と書かれており中に入ると、何人かの客がおもちゃのライフル銃で景品を撃ち落とそうと狙いをつけていた。

 生徒の一人が一夏に話しかけ、いかかですか? と銃を見せられ、一夏は代金を払い景品に向け銃口を向ける。

 

 商品の中に鹿? のような可愛いぬいぐるみを見て、何故か一味にいた船医を思い出し、一夏は絶対に手に入れようとし弾を全弾命中させるが棚から落ちない。

 

「仕方ねぇ...」

 

 一夏は新しい弾を用意してもらい、狙いを定める。周りにいた客も生徒も、どうせ無理だろ…という空気を出すが、一夏は無視し、手に持つ銃に覇気を込め

 

「うそ...」

 

 生徒の一人が、棚から落ちるぬいぐるみを見て驚くのだった。

 

 

 12:00

  

「さて、ここからどうするか...」

 

 一人になった弾が校内をウロウロし、どこか身を隠せそうな場所を探していると一人の女生徒が目に入る。

 

「っ!! 」

 

 大きな荷物を抱えた彼女が体のバランスを崩し、倒れそうになり弾が彼女を支える。

 

「え?」

 

「あの大丈夫、ですか?」

 

 眼鏡をかけた女性と、弾の目が合い互いに顔を赤くしたまま沈黙が起こりーーー

 

「あの、それ俺が持ちましょうか?」

 

 弾が彼女の持つ荷物を全て持ち、二人は歩く。

 

 

 11:30

   

「山田君。現状の報告を」

 

「今の所は異常なしです」

 

 学園内の秘密部屋。複数の画面が学園の内部を写し出し、警戒中だった。常に警備の者と連携をし連絡を取り合う等して徹底をしており、もし不審な者を見かけたらいつでも確保できるようにもなっていた。

 

「IS部隊、いつでも出られるよう待機しておけ。これ以上、ここで奴らの好きにさせるなよ」

 

 千冬が指揮を取り、教師陣に気合が入り緊張した空気が流れる。千冬は傍に立てかけている二本の刀を一瞬だけ見て、視線を画面に変えた時ーー席から突然立ち上がり、画面を操作し始める。

 

(ば、馬鹿な...今のは!?)

 

 画面に食らいつき千冬が見たのは、麦わら帽子を被りぬいぐるみを持つ一夏だった。

 

「そんなはずは...」

 

 画面に映る一夏を見て何度も自分にあれは一夏ではないと言い聞かせ、まるで金縛りにかかったように千冬は画面を見つめ続けるのだったーー 

 

 

 12:40

 

「ありがとうございました」

 

「いえいえ、俺こそ迷子になってた所を...」

 

 女生徒ーー布仏虚が弾に礼を言い二人は資料室から出る。最初はぎこち無かった二人だが、すこしだけ会話もできるようになっていた。

 

「すみません、来客の方にあんな事をさせてしまい...」

 

「いえ、俺は大丈夫ですんで、気にしなくていいですよ...」

 

 互いに頭を下げ合いになり、次第に祭に関する話しになり笑顔も見られてきた。そこで、虚は時計を見てから弾に

 

「実はですね、このあと体育館で劇の方がありまして、よければ見に来てくださいね? それでは...」

 

 虚がそう告げて、どこかに去り。残った弾は人気のない道を進むのだった。

 

 

 13:00

 

 体育館にて劇--いや戦争が行われたいた。

 

 とある巨大な王国の秘密を握る王子。その秘密は王子の頭にある王冠に隠され、秘密が世界に漏れる前に世界を創世した貴族達(乙女達)が王冠を奪い秘密を抹消し、王子を我が手にすると言う無茶苦茶な設定で、王子・・・秋人は絶賛追いかけられている所だった。しかも、学園の女子達に

 

「な、なんでこうなるんだ!?」

 

 舞台を走り、後ろから来る弾丸や弓矢を避けながら舞台裏に入ると突然誰かに掴まれそのまま秋人は姿を消してしまう。

 そして、10分後学園内で爆発が起こるのだったーー

 

 

 13:15

 

 突然の爆発に、建物から緊急の警報が鳴り響きスタッフが安全な場所に誘導を行い、警備が手薄になった、関係者以外は入ってはならない扉に覆面をした弾が侵入する。 

 端末を持ちあらかじめ手に入れた地図を頼りに通路を走ると一体のISが進行方向先に立ち止まり銃を構えていた。当然、動くなと警告するが、弾は聞き入れず折りたたみの十手を取り出し、突如、腕ごと黒く染まった十手でISを吹き飛ばしたーー

 

 

 13:20

 

「さて、間に合うかな...?」

 

 混乱を利用し内部の通路を走る一夏。今は祭にあった骸骨のお面を被り、ゲームで使っていた竹を手に高速に移動していた。

 

 学園の中枢部に通じる道を走り、やがて大きな部屋に辿りつくと部屋の中心にある巨大な機械の前に立ち覆面を脱いだ弾が振り向き一夏を見た。

 

「!? 誰だ!!」

 

 弾は高速に移動し一夏に殴りかかる。一夏は弾の拳を受け止め...攻撃をしてくる男にどこか懐かしさを感じ、一夏は頭を動かすが...

 

「クソ!!邪魔をするなら!!」

 

 黒く染まった十手を弾が振り、一夏は持っていた竹に覇気を纏わせ、黒色に染まった竹を使い防御すると、まるで金属同士がぶつかる音が響く。

 

「なに!?」

 

 弾は思わず驚きの声を出してしまうが、すぐさま気持ちを切り替え十手で連続して攻撃、一夏は反撃をせず竹で防御をする。

 

(こいつ...まさか!! )

 

「弾...」

 

 一夏が呟いた瞬間。一夏の顔面に弾の武装色を纏った拳が入る。ドクロのお面が一部壊れ弾は拳に確かな感触がしこれで倒したと思い口元を緩める。

 

「こいつでどうだ...っ!? 」

 

 だが、一撃をいれたはずの弾の表情が変化する。確かに攻撃が入ったはずなのに何故か目の前の敵は倒れない。一旦後ろに下がり、体勢を整えると今度は一夏の攻撃が始まり十手で防ぐ。

 

「ぐっ!!」

 

 一つの攻撃がとても重く、捌く度に体力を持っていかれていく。戦況はさっきまでと逆になり、そして一夏の持っていた竹の一撃が十手を折り、弾の腹部に命中し吹き飛ぶ。

 

「がぁ!!!! 」

 

 壁に激突し、意識が飛びそうになるのをなんとかこらえ顔を上げる弾...

目の前に立つ男が半分壊れたドクロのお面を剥いで・・・数年ぶりに見る親友の顔を見て大きく目を開いた。

 

「う、うそ...だろ...? い、一夏...?」

 

 さっきの攻撃で頭がおかしくなったのか? と疑問を持ちつつ、恐る恐る聞く弾。

 

「そうだ、俺だ...その、久しぶりだな?」

 

 一夏も弾を見てうなずいて答え、弾は何度も何度も首を振り目を開け、これが夢ではないと改めて自覚し口を開く。

 

「一夏...一夏......生きてた、そうか...生きていたのか...」

 

 顔を両手で隠し彼の目から涙が溢れ出す。一夏は今彼にどう説明したらいいのか、そしてここまで心配してくれた彼にどう謝罪すればいいのか迷いながら、彼に近づくとーー

 

「動くな!!」

 

 突如後ろから一人の女性の声がし...入り口に二本の刀を持ったこの学園の最強にて姉である千冬が殺気を放ち近づく。

 

「貴様ら革命軍の者か? 抵抗せず、大人しくし、ろ...」

 

 一夏が振り向き顔を見せる。すると彼女の動きが止まり、数年ぶり再会した千冬と一夏は見つめ合う。 

 

「いち、か? 」

 

「千冬姉...」

 

 一夏は彼女を見ながら言葉を発す。千冬は体を震わせ一夏を睨みつけ叫ぶ

 

「なぜ、なぜだ!! なぜ今さら、私の前に現れた!! 私はずっと、おまえの事を!! おまえのせいで、秋人がそれだけ心配したか!! 今までどこにいた!! 答えろ!! 一夏!!」 

 

「ごめん今は答えられない...」

 

 質問に答えない一夏に千冬の怒りが爆発し抜刀する。一夏は硬化させた竹で二本の刀を受け止めるが...切り捨てられ、バラバラになる。

 

(切りやがった...!? 武装色の覇気を纏わせたんだぞ!? どんだけ、容赦ねぇんだよ!!)

 

 本気に殺しにかかる千冬を見て一夏は待機状態にしている黒騎士から一本の剣を取り出し鞘を抜く。

 

 西洋の両刃で柄が太陽を模した装飾がされ刃が光に当たり反射して輝く。

 

 冒険の中で手にしたこの剣。

 

 黒刀「夜」同様 最上級大業物12工の一にてその名は...

 

  光剣 「太陽」

 

 一夏は太陽の刃を千冬に向け、一方で千冬は見た事のない剣に驚きを隠せないでいたが、すぐに呼吸を整え構えた。

 

 

「全てを話してもらうぞ!! 一夏!!」  

    

「行くぜ、千冬姉...これが、俺の力だ!!」

 

 太陽を両手で持ち構夏が千冬に接近する。千冬は高速で近づく一夏の剣を二本の刀を交差させ防ぎ、衝撃が辺りに走る。

 

(ぐっ!! な、なんだこの力は!?)

 

 一夏のたった一撃の剣を受けただけで手が震え、額から汗が流れ始める。一夏を押し出し、今度は千冬の二刀流が迫り一夏も光剣で千冬の剣を防ぎ反撃をする。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

「うおぉぉぉ!!」

 

 もはや二人の動きは剣道の試合等と格は違い、本当に相手を殺す気で剣を振るう真剣勝負だった。

 その光景を見ていた弾は信じられないと言ったような顔をする。この学園、いや世界一のISの強さを誇る無敗の乙女とも言われる千冬と互角に戦う一夏の姿をずっと見つめていた。

 

「くっ!!」

 

「はぁ!!」

 

 何度も、何度も剣がぶつかり二つの刀に徐々に傷が増えて行く。このまま行けば折れてしまい、敗北するの察した千冬が一度距離を取り、呼吸を整える。

 

「...」

 

「...っ!!」

 

 

 二人が剣を構え互いに睨む事数秒。千冬が先に動き出す。

 

 篠ノ之流古武術裏奥義 「零拍子」

 

 相手が動くより先に素早く動き出す技で千冬は刀を振るい。遅れて動いた一夏の光剣とぶつかりーー

 

 パキン

 

 千冬の刀が二つとも同時にくだけ散り勝負が確定し力なくその場に座り込む千冬。 

   

「そんじゃ俺は行くから...」

 

 一夏は千冬に背を向けながら短く言い剣を収め、千冬に顔を見られないように弾に覆面をかぶせ肩を貸しその場を去ろうとした時ーー

 

「な、なぜ私が、負けた...? 一夏...おまえは...」

 

「ごめん、話しは今度な。今は秋人をどうにかしないといけないし」

 

 弾と共に部屋を出て行く一夏。千冬は床に散らばる刀の残骸を見つめ目から涙を流すのだったーー

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

   

 

 

 

     




 今回かなり長くなってしまい、見づらいかもれません・・・

 修正等行いましたが、まだできてない部分もあるかもしれないので、何かあればコメントをお願いします・・・・

 後、光剣「太陽」について、オリジナルで考えた剣です。
 
 

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